かくして4歳からの運転練習は文太さんの指導とキッドカートスクールのちょいイケメンなお兄さんから同時に習うことになった。やったぜ!!これで拓海よりも先に長いこと練習が出来る!!
そんなワクワクしている私を横目に、拓海は布団の中で、はぁ〜と溜息をついてきた。
「なんてやつだ。わたしのシアワセをまえに、ためいきつくとは!」
「だってイツキ、クルマばっかりなんだもん」
幼稚園のお昼寝時間にて、布団が隣同士の私たちはコソコソと話し合う。
この時間、子供の体とはいえ元気がありあまってる私と拓海は、いつも眠れずにお互いの状況を報告し合っているのだ。
ちなみに拓海はまだ私以外の友達が出来ないらしい。可哀想なやつだ。私があとで、たぬきクラスの可愛い女の子を紹介してやろう。ついでにパンダクラスのイケメンな奴も紹介しとけば眼福に違いない。
ウケケケと笑う私に対して、拓海のジト目が襲ってくる。ちっ、違うもん!!拓海の為だもん!!
そういえば、布団のカラーまで白と黒の私を見て、拓海は呆れた目で見てきたっけな。どんだけハチロク好きなんだよとも言われた気がする。しかしその際の拓海が微妙に口角が上がって、隠そうとして歪んでいたのは逃さなかった。私にしか分からない差異である。
「たくみもすきだよ」
拓海の瞳を見て言えば、布団の中に潜ってしまう拓海。くぐもった声で「……知ってるよ」と聞こえてきた。ふふふ、可愛いやつめ。
にしてもイツキの顔は良くも悪くも普通といった顔だ。原作みたいに私もゲジ眉になるのか?と不安で見た鏡は未だに覚えている。
私の顔は拓海よりも、ぽや〜っとした感じのどこにでも居そうな女の子の顔だった。強いてチャームポイントを言うならば唇の厚さ?
前に拓海にじっと見られて「噛みたくなる」とは言われたことがあるから、イツキの可愛い要素なはず!
「たくみは?なにしたい?」
「おれは……イツキとあそべれば、なんでもいいよ」
「じゃあ、おひるね終わったらウンテイしよ」
「うんてい?」
拓海は次の遊びが車関係じゃないことに目を輝かす。残念だったな、拓海。実はこれも車関係だ。私はその裏があることを教えたりはしない。
拓海の腕力を今のうちにあげておいて、おれの拓海さいきょう!!を作るのだ。
例の言ってはいけないあの先輩は、中学のサッカー部での原作よりも強くなった拓海のパンチを浴びるがいい。さらにガムテープデスマッチの為に腕力も鍛えられることができる。曲がりまくっとる!オレのハチロク!が完全再現出来るのだ。ふははは!!!
すると、突然拓海が「ゲェッ」と顔を青くした。うん?なんだ?心の声は漏らしてないはずだが。
すると、くぅ〜!!と笑ってる私の頭にポスンと置かれる魔の手___幼稚園の先生である。
油を差してない錆びれた機械のように振り返ると、とても晴れやかな笑顔の先生が「寝てない悪い子は誰かな〜?」と言って見せた。
そのあとめちゃくちゃ身体ポンポンされた。
*
時は晴れやかなり。
卒園式のスーツ姿の文太さんカッコよかったな……と思い馳せ、今の光景に意識を切り替える。
「イツキ!!遅せぇよ」
拓海に怒られながら、入学式の場所を思い出す。
「ごめんて!愛しのダーリン!」
「は!……はぁ!?!?」
例のミキシンボイスは未だ健在せず。まだまだ声変わり前の可愛い〜声でまたもや怒られる。
それを見て微笑む父兄たち。うむ、和やかなり。
ニヤニヤしていると拓海から頭を軽く叩かれた。おい!!痛くないとはいえ、乙女に手を出すとはけしからん!
「なんだかなぁ……昔の俺を思い出すよ」
「エッ。文太さんも照れ屋だったんですか?」
なんてエピソードなんだ……。
上を見上げると卒園式以来のスーツ姿の文太さんが煙草を吸おうとして止まっていた。「禁煙ですよ、ここ」と言うと文太さんは人差し指で顬を掻いた。
「よくそんな言葉を知ってるなあ、イツキちゃん」
「文太さんのおかげです!」
「……はは」
育て方間違えちまったか……とボソッと聞こえたぞ、文太さん。というか私は藤原家ではない。
文太さんとイチャコラしてると、拓海がぶすくれた顔で私の腕を引っ張ってくる。先程まで顔が真っ赤になっていたのに、いつの間にか復活していたようだ。
早く行こうよ、とグイグイ引っ張られて、私たちは体育館の中へと入っていった。
ここで文太さんと、うちの親とは別れることとなる。
体育館後部が親、アリーナ席がキラキラ小学生だ。
アリーナ席と言ってもステージに出てくるのは後頭部を気にした校長のみである。あの後ろ髪におく手の動き……間違いない。奴は後頭部を気にしている。
そのことを拓海に伝えるとまたもやパチンと頭を叩かれた。どうやら私の頭のほうが心配らしい。
新品の上履き、新品の名札、新品のランドセルという小学生版三種の神器を持ったまま、我々は指定されたパイプ椅子に着く。
な行は居なかったのか、武内と藤原は隣同士になった。しかも初っ端から同じクラス。そのことに拓海と私はお互いに顔を合わせてニマニマと笑みを浮かべる。あ、ごめん。笑ってたの私だけだったわ。
校長の話はやはり眠かった。
早朝に藤原とうふ店に行って、文太さんの配達と重なったもんだから、文太さんの代わりに拓海の部屋で拓海の顔をずっと眺めてたのもある。
文太さんには親に内緒で来たことを怒られたが、早朝に来たことは怒られなかった。今度は親に言ってから来ようと思う。拓海の寝顔は幼く、まつ毛がバッサァになってた。幼馴染なのにこうも顔面格差があると悲しくなるもんだぜ。そのあと起きた顔面真っ赤な拓海にビンタされたのは記憶にある。拓海、女に手を出さないんじゃなかったのか。
閑話休題。
めっちゃ眠い。眠すぎる。これ、今なら寝れる。
隣にいた拓海の肩に私の頭を預ける。するとトクトクと心音が聞こえてきた。トクトク……?トトト?段々と早くなっていく心音に不整脈を疑っていると、拓海が手で頭を除けてきた。
「おい。起きろ馬鹿イツキ」
「むり、寝れる」
「寝るな馬鹿」
拓海とイチャイチャしてると、左側の教師陣の1人、女教師が羨ましそうにこちらを見ていた。前世でアニオタで読心術を極めていた私を舐めるでない。なになに?ショタ……ありがとう……。なるほど、あとで仲良くなれそうだ。
校長の話が終わると、次は担任が現れて教室に連れていってくれるそうだ。担任は先程のショタ好き教師だった。にこやかに微笑んでいる。
私たちのクラスは1年1組。35人いて、教室内は発狂やら叫び声やらでいっぱいいっぱいだった。ヤンチャな子供たちだらけである。これを纏めるには、中々に骨が折れそうな仕事である。先生って凄いなあと純粋に思った。
私が拓海の前の席、拓海が後ろの席となった。どちらも真ん中の席なので居眠りは許されない。いや、例え窓側だったとしても許されないのだがハードルが高い。
そんな中、先生が書類を忘れてきたと言う。
先生が居ないから、拓海と話そうかな……と思った時だった。
「お前なんで女なのに黒いランドセルなの?」
ク ラ ス の 男 子 が 現 れ た。
拓海の顔がヤバくなる。何がやばいって、眼光鋭くなって親父顔負けの人を殺せそうな顔である。
その顔にヒェッと目の前の男の子は慄いた。
ふぅ、と深呼吸をする。
拓海の頭を撫でてあげると、拓海の眼光が和らいだ。
「これはね、私の好きなものの色なんだ!」
「好きな物?」
「うん!ハチロクっていう車だよ!」
「車!?お、俺も好きなんだ!!」
「「えっ」」
拓海と私の声が重なる。まさかの同士だった。
目の前の男の子の親の車は、フェアレディZらしい。なにそれ!!ちょーー見たい!!
キャッキャウフフしてると、拓海の機嫌がまたもや堕ちていく。「おいイツキ……」と唸るような低い声で言ってきた。
その声に反論する目の前の男の子。「お前ん家の車はなんなんだよ!!」と怒鳴ってきた。すると拓海はキョトンとした目で「ハ、ハチロクだけど……」と照れた顔で言ってみせた。
すると男の子が「すげぇ奴じゃん!!」と嬉しそうな声で拓海に歩み寄る。
なんじゃこりゃ!!可愛すぎる!!今まで自分の車が良いものだって知らずに今知りました感が半端ない。
そして拓海が可愛い!!私は思わず拓海の頭をまた撫でた。ぐしゃぐしゃにしていると拓海が「やめろよ」と不貞腐れる。
それを見た男の子が「なー、お前らって付き合ってんの?」と言ってきた。
「「付き合ってない」」
ダブルコンボすると、男の子はしょんぼりした。
*
ソレは、伊月が小学一年生になっても、相変わらず続いていた。
朝靄の向こうから響く、50ccらしからぬ爆音。
コーナー出口でキッチリとアクセルを開けるその走りは、もはや「スロットルコントロールが感覚で出来てる」……なんて次元じゃない。
ただのブレーキペダル絶対踏みたくない病のクソガキのそれだった。
ピット脇で腕を組み、渋い顔でその走りを見つめる藤原文太。
しかし、その口元から突き出ているのはタバコではなく、伊月からカツアゲした(もらった)ストロベリー味のペロペロキャンディである。棒が上下にピコピコ動いていて、絶望的に格好がつかない。
「……やっと、見れるようになってきたな(チュパッ)」
白い煙が朝の冷気に溶ける。
6歳の伊月が、ヘルメット越しに「おらあああ!」と言わんばかりの形相でステアを切る。
大人のドライバーのような無駄のないリズム――に見えるのは、単に伊月が限界を通り過ぎてアドレナリンで脳がバグっているからだ。恐怖がないのではない。ネジが外れているだけである。
「ブレーキの抜き方、覚えたな。……あのガキ、センスだけは凶暴だ」
隣に立つインストラクターは、引きつった笑いを浮かべていた。
(文太さん、いい声で褒めてる風ですけど、口元からピンクの球体飛び出してますよ)というツッコミは、命が惜しいので飲み込んだ。
*
キキィィィッ! と派手なスキール音を立ててピットに戻る。
ヘルメットを脱ぐと、前髪が額に張りついていた。汗と笑顔。そして「どうよ!?」と言わんばかりのドヤ顔で文太さんの顔を見る。
その様子に、文太さんも(キャンディを口の端に寄せながら)口角を上げた。
「ど、どうだった?」
「___前よりゃマシだ。
荷重移動がスムーズになって、ステアも“待てる”ようになってる。
……ガキのうちにそれだけ生意気な走りができりゃ、上出来だ」
一拍置いて、ふっと口元が緩んだ。文太の笑顔は相変わらず短いが、確かな合格印。ただし、口から覗くキャンディはすでに小さくなり、完全に噛み砕く5秒前の形をしている。
「でもな」
文太はキャンディを一度口から引き抜き、真剣な目で声を落とした。ピンクの液体が糸を引いている。
「拓海には、まだ言うなよ。
アイツにはもうちょっとしたら、お前の大好きなハチロクに無理やり乗せて豆腐を運ばせる予定だ。アイツは豆腐をこぼすと本気で不貞腐れるめんどくせぇタイプだからな。
“お前がカートで無双してる”って知ったら、あのアホ、自信をなくして引きこもるぞ。だからそうだな……”高校生になるまで”は絶対に隠し通せ」
伊月は目を瞬かせて、悪だくみをするようなニヤニヤ顔になった。
「うん、内緒。拓海お兄ちゃん、すぐいじけるもんね。……文太さんも言っちゃダメだよ?」
「おう。俺の口からは言わねぇ。
けど、ハチロクの助手席にイチゴ味の棒が落ちててバレた時はお前の責任だ。俺のせいにすんなよ」
文太は残ったキャンディをガリッ!! と豪快に噛み砕き、もう一度コースの方へ視線をやった。
霧の切れ間に朝日が差し、アスファルトが金色に光る。
その光の中を、6歳の爆走幼児が再びコースへと飛び出していく。小さなカートが、まるで物理法則を無視するように滑らかに旋回していく。
「……悪くねぇ。
___“拓海より先に”、英才教育の被害者になっちまったかもな」
文太さんの呟きは、完全にストロベリーの香りがする風に溶けて消えた。
*
場所はカートスクールの観覧席。
私は他の子の走る姿を見ながら、隣に座っている文太さんの説明を聞いている。
観覧席から見る子供用カートは自転車よりちょい早いくらいだが、乗ってみると意外と速いんだよなあ。
キッズカートは数字だけ見れば、チャリに毛が生えた程度の最高速だ。
ただ___視点が地面に近い分、体感は倍になる。
音も、子供の私には“レーシングカー”に聞こえる。
だから今の私にはそれで十分だった。
____が、8歳になった私は少しレベルアップすることになる。
「8歳なら次は80ccだ。ストレートで怖さを覚えろ」とのことである。ちなみに8歳は60cc〜80ccらしい。
中学一年生……12歳にもなれば100ccを超え、ジュニアになるのだとか。ジュニアとはローカル大会、地区選手権、全国公式戦へのステップが視野に入るコースである。大会に出たら一発で拓海にバレるけど、まだ見ぬ将来を考えるなら出るのもいいかもしれない。道はまだまだ長そうだ。
と言っても、将来決まってないんだけどね。
文太さんはこの場所では煙草が吸えないので、今回は飴玉を舐めている。飴玉サイズの膨らんでいる頬っぺたを押すと、逆に文太さんに私の頬っぺたを掴まれて横に伸ばされた。ごめんなひゃい。
ちなみに前回のペロペロキャンディは、他のカートスクールの子が文太さん指さして笑った為、文太さんの機嫌が下がったので却下となった。
相変わらず沸点がどこか分からない親父である。
そういえば、何故ラリー経験のある文太さんがカートをオススメしてきたのかは理解していなかった。ラリーとカートは全然違う。ラリーは公道を走るが、カートは整備された道路をずっと回る。
一度、文太さんに訳を聞いてみた。
すると帰ってきた言葉は、私は息を飲み込んだ。
文太さんはラリーストだが、だからこそ“基礎”の恐ろしさを知っていた。確かに拓海がホームコースの重要性に気づいた時は嬉しそうにしてたし、基礎は大切にしてそうである。
カートは全てのモータースポーツの始まりだ。
荷重と減速と切り返し──道具が軽い分だけ、誤魔化しが効かない。
まず舗装で“基礎の形”を作れ。
公道に出るのは、その先だ。
それが文太さんの教えだという。
ラリーストの中には子供時代にカートをしていた人もチラホラ居るらしい。
それを聞いて、公道も走りたいと思っていた私は納得した。公道を走りたいと言ってもまだラリーストになりたいと決まった訳じゃない。
何度も言うが、まだ夢は決まってない。拓海みたいになりたいかと言えば、それはなんか違う気がする。
どちらかと言えば、拓海の隣に居たいんだ。
文太さんにそう言うと髪の毛をぐしゃぐしゃにされて撫でられまくった。
「どーやら、ウチの倅は若いうちから悪い子を引っ掛けちまったらしい」
「悪い子とは失礼ですね」
「よく言うよイツキちゃん。お前さんが足繁くこの豆腐屋に来ては拓海にちょっかい掛けてんのは分かってんだ」
「拓海が可愛いから仕方ない」
「おいおい。拓海の”父ちゃん”は俺だけどなぁ」
「そういえば去年クリスマスやりました?」
「…………」
文太さんのジト目が襲う!!親子そっくりなジト目だ。
タイムアップ。アンド、ゲームセット。勝利は武内伊月、我なり。ちなみに今の季節は夏である。拓海のあまりの子供時代に私が勝利するのも頷ける。なんせ中一から自分好みの運転技術に仕上げるぐらいだし。初めての楽しいクリスマスは高3ときた。長い。あまりにも長すぎる。せめて子供時代は親子の想い出を沢山作ってくれ。
「まあ、今年は我が家のクリスマスに藤原家を招待するんで楽しみにしててください」
「へ? なんだい藪から棒に。イツキちゃんが俺までとは珍しいもんだな」
「まあまあ。夏は夏で拓海だけを楽しませるんでね」
「はぁ……やっぱり拓海じゃねえか」
そのわりには息子を大事にされて嬉しそうに破顔する文太さん。
けど文太さん、私知ってるからね。
文太さんの今の楽しみが『私』になってること。
知ってるからね!!!
宣言通り、夏休みは拓海を楽しませることにした。
夏休みが入る前は、給食で拓海が毎回私の分だけ少なめによそるっていう厄介事があったが、まあいい。ちなみにその分拓海から給食を強奪している。拓海ってば、私に奪われるって分かってるのになんで少なめにするのかね?全くもって意味わからん。
さらにプール学習で、拓海のあまり焼いてない肌と(私が)鍛えた体により、キャアキャア女子から騒がれてチヤホヤされてたのも少しムカついた。
そのことを伝えると「お前だって……」と拓海に怒られたのも覚えている。身に覚えがないので首を傾げていたら、拓海にまた怒られたっけな。
「だから拓海の夏休みはこの私が貰ったァッ!!」
「意味わかんねえ。そんな事より、イツキ。国語の問2わかるか?」
「あ、そこは問題文にある文章を探すといいよ」
「ほんとだ……このまま書き写せばいいんだな」
現在、私たちは余生を……いや!バカンスを楽しむ為に宿題を最初の1日で終わらせるという所業をこなしている。夏休みの日記? そんなん最初に架空を作るに決まってる。拓海は私と一緒に居ることにこだわるみたいだから、夏休みの捏造宿題に罪悪感を抱くことは無さそうだ。
ちなみに、今いる場所は藤原とうふ店ではない。
______私の部屋である。
流石に自室は、白と黒のツートーンだと緊張してしまう部屋になるのでナチュラルな部屋にしている。
そして大きく部屋の中で存在を象徴する本棚。本棚には私の年齢からは考えられない難しい本があり、さらに空いているスペースには頭文字Dに出てくる車達を飾っている!!(MFGに出てくる車は発売されていない)
しかしナチュラルとは言ったものの、可愛いものも好きなので、パンダのぬいぐるみをベッドに置いている。窓際に置くと、女児が居るって外から分かりやすいから狙われるらしいのでベッドの頭付近に鎮座している。
拓海は最初こそ女の子の部屋に驚いていたが、2日目で慣れやがった。あまりの落ち着きように拓海を問い詰めると、「これから沢山来るんだから驚かねぇよ」と大変ありがたくないお言葉を貰った。
私が夏休みの宿題を2時間で終わらせると、拓海がジト目でこちらを見てくる。
「お前……本当は中身が大人なんじゃねぇのか?」
「ぅえ!?」
唐突な質問に喉の奥で息が詰まる。
やっぱり拓海は天才だ。感覚派で分かるのかもしれない。
拓海は私の目をじっと見てくる。だがすぐに半目になって馬鹿にした顔をして、ため息をついた。
「なんてな。イツキがもし大人だったらアホなことはしなさそう」
「拓海ィ……」
やっぱり可愛くない。
拓海が必死に宿題をしている中、ファミコンで遊びつつ、6時間も経てば、拓海も夏休みの宿題が終わる。私の倍の時間かかったが、伊達に私の勉強を教えていないからな。拓海に今のペースで教えたら、県内1位の高校は狙えそうである。2位と3位は男子校だし、女子校だし、拓海と一緒に居られないのがネックだよなあ。
そこでふと考える私の脳内……。県内1位は高橋兄弟が居そうだなぁ、とか。絶対茂木なつきちゃん居ないよなぁ、とか。あれ……おかしいな。原作クラッシャー??でも今更な気がする。おいどん、にょただし……、転生者だし……。
まあ、いっか!!!
そこでフラグが立ったとか神のみぞ知る。