心臓は、まだ夢を見ている   作:ディーバイエム

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[第二十章]ひとりしか隣に立てない

タガノデュードが淡路特別を勝った日、シェイクユアハートは心から喜んだ。

 

それは本当だった。

 

同じ部屋で、同じお茶を飲んで、同じようにメモを並べてきた子が、ようやく次の足場へ上がった。

未勝利を抜け、朝日杯で高い場所を見て、春に風に押され、夏に取り消し、秋にエコロヴァルツの背中を見て、冬に室影トレーナーと勝ち、古吉トレーナーへ戻って、そして淡路特別を勝った。

 

三勝クラスへ。

 

それは、デュードにとって大きな前進だった。

 

だからシェイクは笑った。

 

「ようこそですぅ」

 

と、言った。

 

「沼ですぅ」

 

とも、言った。

 

デュードは少し困った顔をしながら、それでも嬉しそうに笑った。

 

けれど、その夜が明けて、予定表に二人の名前が並んだ時、宮田先生は笑えなかった。

 

阪神、御堂筋ステークス。

 

三勝クラス。

芝二四。

 

シェイクユアハート。

タガノデュード。

 

同じレース。

同じ距離。

同じクラス。

 

そして、どちらも古吉トレーナーと走ってきた。

 

宮田先生は、予定表を前にして、長く黙っていた。

 

「……こうなるか」

 

部屋には誰もいなかった。

それでも、思わず声が出た。

 

いつか来るとは思っていた。

 

シェイクは三勝クラスで長く足踏みしている。

デュードが上がってくれば、どこかで重なる。

それは、戦歴を見れば予想できることだった。

 

けれど、いざ同じレースに二人の名前が並ぶと、紙の上の話では済まなくなる。

 

古吉トレーナーは一人しかいない。

 

どちらにも立たせることはできない。

 

宮田先生は、シェイクの資料を見た。

 

比叡ステークス、四着。

サンタクロースステークス、二着。

八坂ステークス、六着。

関門橋ステークス、三着。

ダイワスカーレットカップ、二着。

下鴨ステークス、三着。

テレQ杯、二着。

ムーンライトハンデキャップ、二着。

修学院ステークス、二着。

オリオンステークス、三着。

寿ステークス、二着。

飛鳥ステークス、三着。

 

ずっと、近い。

 

ずっと、勝っていない。

 

その多くを古吉トレーナーと走ってきた。

シェイクにとって古吉トレーナーは、ただの担当ではなかった。

 

余計な荷物を下ろしてくれる人。

心臓を足元に戻してくれる人。

定食屋兼安全帯。

 

妙な呼び方だが、たしかに合っていた。

 

次に、デュードの資料を見る。

 

未勝利を古吉トレーナーで勝った。

朝日杯で五着。

春に揺れ、夏に取り消し、秋にエコロヴァルツの背中を見た。

室影トレーナーと勝ち、そして古吉トレーナーへ戻って茶臼山高原特別二着、淡路特別一着。

 

デュードにとっても、古吉トレーナーは特別だった。

 

古吉でなければ走れない、ではない。

室影トレーナーと勝ったことで、それは証明した。

 

けれど、勝てる足場と帰りたい足場は違う。

 

デュードは、そういう場所まで来ていた。

 

「……どっちも、古吉さんやな」

 

宮田先生は、眉間を押さえた。

 

同じレースに出す以上、どちらかは古吉トレーナーでは走れない。

 

どちらを選んでも、もう片方には言葉が必要になる。

 

そして、その言葉はたぶん、あまり優しくはならない。

 

古吉トレーナーは、呼び出されてもいつも通りだった。

 

先生の部屋に入ってきて、予定表を見て、短く言った。

 

「かぶりましたね」

 

「かぶりましたね、やないんですよ」

 

宮田先生は少しだけ声を荒げた。

 

「どっちも古吉さんでここまで来とるんです」

 

「せやな」

 

「せやな、やないんですよ」

 

「俺は一人ですし」

 

「それは分かってます」

 

分かっているから、困っている。

 

古吉トレーナーは資料を手に取った。

 

シェイクの資料。

デュードの資料。

 

どちらにも、古吉トレーナーの名前が並んでいる。

 

「シェイクは、長いですね」

 

「長いです」

 

「そろそろ勝たせたい」

 

「それは、こっちも同じです」

 

「デュードは、上がってきたばかり」

 

「でも、淡路特別は古吉さんで勝った」

 

「せやな」

 

「本人も、戻ってきた感じがあると言ってました」

 

「言うてました」

 

宮田先生は椅子に座った。

 

「正直、シェイクに古吉さんを残したい」

 

古吉トレーナーは何も言わなかった。

 

「ここまで三勝クラスでずっと惜しい。古吉さんと積んできた。今回も距離は二四。シェイクの流れを切りたくない」

 

「分かります」

 

「でも、デュードにもそれを言うのがきつい」

 

「分かります」

 

「分かりますしか言わんのですか」

 

「俺が二人になれたらええんですけどね」

 

「古吉さんが二人いたら、それはそれで困ります」

 

「何でですか」

 

「片方が定食屋で片方が安全帯になりそうなので」

 

「何の話ですか」

 

宮田先生はため息をついた。

 

少しだけ空気が緩んだ。

 

けれど、問題は何も解決していない。

 

「代わりを探します」

 

宮田先生は言った。

 

「デュードの方ですか」

 

「……はい」

 

言葉にするまで、少し時間がかかった。

 

「シェイクは、もうここまで来ている。ここで古吉さんを外すのは、やっぱり怖い」

 

「デュードは?」

 

「デュードは、古吉さん以外でも勝っている。室影トレーナーで勝った。美幸トレーナーとも走った。丹頂トレーナーとも重賞を経験した」

 

「だから、大丈夫と?」

 

「大丈夫、とは言いません」

 

宮田先生は首を振った。

 

「でも、デュードには外の足場を見せてきた。ここでそれを使わないなら、何のために見せたのか分からなくなる」

 

古吉トレーナーは、しばらく黙っていた。

 

それから、資料を机に戻した。

 

「デュード、傷つくでしょうね」

 

「分かってます」

 

「シェイクも、気にするでしょうね」

 

「分かってます」

 

「先生も、しんどいでしょうね」

 

「分かってます」

 

「なら、言うしかないですね」

 

古吉トレーナーは、いつも通り短かった。

 

「誰がですか」

 

「先生が」

 

「分かってますよ」

 

宮田先生は、深く息を吐いた。

 

その日、先に呼ばれたのはシェイクだった。

 

シェイクは宮田先生の部屋に入ると、少し不安そうに耳を動かした。

 

「宮田先生、呼びましたかぁ」

 

「呼んだ」

 

「御堂筋ステークスのことですかぁ?」

 

「そうや」

 

シェイクは椅子に座った。

 

宮田先生は、少し間を置いてから言った。

 

「御堂筋は、古吉さんで行く」

 

シェイクは瞬きをした。

 

ほっとした顔になりかけて、すぐに止まった。

 

「デュードさんは……?」

 

やはり、そこへ行く。

 

宮田先生は頷いた。

 

「別のトレーナーになる」

 

「……古吉さんじゃないんですかぁ」

 

「同じレースや。古吉さんは一人しかおらん」

 

「はいぃ……」

 

シェイクは、自分の手元を見た。

 

嬉しい。

 

それは、どうしてもあった。

 

長い三勝クラス。

何度も近くて届かなかった場所。

古吉トレーナーと一緒に、もう一度走れる。

 

それは心強い。

 

けれど、その心強さは、デュードから古吉トレーナーを借りたような形でもある。

 

「わたしが、取ったみたいですぅ……」

 

小さな声だった。

 

「違う」

 

宮田先生はすぐに言った。

 

「これは先生が決めることや。お前が取ったんやない」

 

「でも、デュードさんも古吉さんに戻ってきたところですぅ」

 

「分かっとる」

 

「淡路特別で勝ったばかりですぅ」

 

「分かっとる」

 

「それなのに……」

 

「それでも、今回はシェイクを古吉さんで行かせる」

 

宮田先生の声は、静かだった。

 

「お前は、ここまでずっとこの壁の前におる。古吉さんと積んできたものがある。今回、それを切らない」

 

シェイクは耳を伏せた。

 

「デュードさんに、どう言えばいいですかぁ」

 

「言わんでええ」

 

「でも、同室ですぅ」

 

「言わんでええ、は無理か」

 

宮田先生は少し苦い顔をした。

 

「謝るな」

 

「ほわ?」

 

「謝ると、デュードは余計に困る」

 

「じゃあ、どうすれば……」

 

「自分のレースを走れ」

 

宮田先生は言った。

 

「デュードはデュードのレースを走る。お前はお前のレースを走る。それしかない」

 

シェイクは黙った。

 

その言葉は正しい。

 

でも、正しい言葉は、いつも軽いわけではない。

 

次に呼ばれたのは、デュードだった。

 

デュードは部屋に入った時点で、何かを察している顔をしていた。

 

「御堂筋ステークスのことですね」

 

「そうや」

 

「古吉さん、シェイクさんですね」

 

宮田先生は、少しだけ目を細めた。

 

「分かるか」

 

「分かります」

 

「デュード」

 

「はい」

 

「今回は、山杉トレーナーで行く」

 

その名前を聞いた時、デュードは一瞬だけ眉を動かした。

 

「山杉さん……藤川先生のところの?」

 

「そうや」

 

「若い人ですよね」

 

「若い。問題もある」

 

「問題がある人を今ここで出してきますか」

 

デュードの声は、少しだけ鋭かった。

 

宮田先生は逃げなかった。

 

「腕はある」

 

「問題があるけど、腕はある」

 

「そうや」

 

「現場で一番困るタイプですね」

 

「分かっとる」

 

「朝の調教前まで酒の匂いがすると聞いたことがあります」

 

「それも分かっとる」

 

「合わせ調教に遅れたこともあるとか」

 

「分かっとる」

 

「分かってて、ですか」

 

「分かっててや」

 

デュードは、しばらく黙った。

 

「古吉さんじゃ、駄目なんですか」

 

分かっているはずなのに、聞いた。

 

宮田先生は答えた。

 

「同じレースや。古吉さんは一人しかおらん」

 

「はい」

 

「シェイクは、ここまで三勝クラスで古吉さんと積んできた。今回は、シェイクに残す」

 

言葉は、まっすぐだった。

 

デュードはそれを正面から受けた。

 

「わたしは、上がってきたばかりだからですか」

 

「それもある」

 

「室影さんで勝てたから、古吉さんじゃなくてもいいと?」

 

「それだけではない」

 

「でも、そういうこともありますよね」

 

宮田先生は、少し沈黙した。

 

「ある」

 

嘘をつかなかった。

 

デュードは、目を伏せた。

 

「……分かりました」

 

「納得はしてないな」

 

「してません」

 

「せやろな」

 

「でも、分かります」

 

デュードは、手元を握った。

 

「古吉さんじゃないと走れない、では駄目だと自分でも言いました。室影さんで勝ててよかったとも思いました。外の足場を見ることも必要だと、分かってます」

 

「うん」

 

「でも、淡路特別で古吉さんと勝って、三勝クラスへ上がって」

 

言葉が少し詰まった。

 

「その最初が、古吉さんじゃないんですね」

 

宮田先生は、すぐには答えなかった。

 

それは、答えようのない言葉だった。

 

「……すまん」

 

「謝らないでください」

 

デュードは顔を上げた。

 

「謝られると、わたしがかわいそうな子みたいになります」

 

「そうやな」

 

「わたしは、山杉トレーナーで走ります」

 

「頼む」

 

「ただし」

 

デュードの目が、少しだけ現場の目になった。

 

「山杉さんが朝に酒の匂いをさせていたら、わたしは本人に言います」

 

「言ってええ」

 

「遅れてきたら?」

 

「言ってええ」

 

「現場なら退場です」

 

「それも言ってええ」

 

宮田先生は、少しだけ苦笑した。

 

「たぶん、山杉にも必要や」

 

山杉トレーナーとの初顔合わせは、最悪ではなかった。

 

ただし、良くもなかった。

 

藤川先生の紹介で来た山杉トレーナーは、若かった。

目は鋭い。

立ち方も悪くない。

レースを見る感覚も、たしかにある。

 

だが、デュードは最初の数分で眉をひそめた。

 

「山杉さん」

 

「何や」

 

「酒の匂いします」

 

山杉トレーナーは、一瞬だけ目を逸らした。

 

「気のせいや」

 

「現場なら朝礼前に退場です」

 

「ここは現場か?」

 

「現場です」

 

「宮田先生のとこの子は、みんなそう言うんか」

 

「わたしが言ってます」

 

山杉トレーナーは、少し面白そうに笑った。

 

「聞いてたより、きついな」

 

「わたしも、聞いてたより危ない人だと思いました」

 

「はっきり言うやん」

 

「危険箇所は共有します」

 

山杉トレーナーは、そこで少しだけ真顔になった。

 

「腕はあるで」

 

「それは聞いてます」

 

「ならええやろ」

 

「やれるのと、預けられるのは違います」

 

デュードはまっすぐ言った。

 

山杉トレーナーは黙った。

 

それから、ふっと笑った。

 

「おもろいな」

 

「面白くないです」

 

「でも、走るんやろ」

 

「走ります」

 

「なら、勝ちに行こか」

 

「勝ちに行く前に、遅刻と酒をやめてください」

 

「厳しいな」

 

「安全管理です」

 

その夜、部屋でデュードはシェイクに報告した。

 

「山杉さん、酒の匂いがしました」

 

「ほわ~……だめですぅ……」

 

「だめです」

 

「でも、走るんですかぁ?」

 

「走ります」

 

「怖いですかぁ?」

 

「怖いです」

 

デュードは机に座った。

 

「でも、腕はありそうでした」

 

「じゃあ、大丈夫ですかぁ?」

 

「腕があるから困るんです」

 

「ほわ?」

 

「下手なら、嫌いになれば済みます」

 

デュードはペンを置いた。

 

「腕があるから、腹が立つんです」

 

シェイクは少し黙った。

 

「デュードさん」

 

「はい」

 

「ごめんなさいは、言わない方がいいですかぁ?」

 

「はい」

 

「じゃあ、言いません」

 

「ありがとうございます」

 

「でも、わたしは、古吉さんと走りますぅ」

 

「はい」

 

「嬉しいですぅ」

 

デュードは少し驚いた顔をした。

 

シェイクは、湯呑みを両手で持って続ける。

 

「嬉しいです。心強いです。でも、デュードさんのことも気になりますぅ」

 

「はい」

 

「どっちも本当ですぅ」

 

デュードは、しばらくシェイクを見ていた。

 

それから、小さく息を吐いた。

 

「それでいいと思います」

 

「いいですかぁ?」

 

「はい。変に謝られるより、ずっといいです」

 

デュードは自分のメモに書いた。

 

御堂筋ステークス。

三勝クラス。

シェイクさんは古吉トレーナー。

わたしは山杉トレーナー。

古吉さんに戻ったはずなのに、戻りきれない日がある。

山杉さんは危険箇所。

でも、腕はある。

 

シェイクはそれを覗き込んだ。

 

「危険箇所って書かれてますぅ……」

 

「事実です」

 

「山杉さん、現場でカラーコーン置かれますぅ」

 

「置きたいです」

 

二人は少しだけ笑った。

 

笑えたことに、二人とも少し救われた。

 

それでも、部屋の空気はいつもより複雑だった。

 

同じレース。

同じ距離。

同じクラス。

 

古吉トレーナーは一人しかいない。

 

シェイクは古吉トレーナーと走る。

デュードは山杉トレーナーと走る。

 

勝てる足場と、帰りたい足場は違う。

 

デュードは以前、そう書いた。

 

けれど今回は、帰りたい足場が目の前で別の子の隣に立つ。

 

それを見ながら、自分は別の足場で走らなければならない。

 

シェイクもまた、知っていた。

 

自分が古吉トレーナーと走ることは、デュードが古吉トレーナーでは走れないことでもある。

 

でも、譲ればいい話ではない。

 

ここは三勝クラスだ。

 

心臓の優しさだけでは、勝てない。

 

御堂筋ステークスへ向かう前夜、二人は遅くまで起きていた。

 

お茶はすっかり冷めていた。

 

「デュードさん」

 

「はい」

 

「明日、同じレースですねぇ」

 

「はい」

 

「変な感じですぅ」

 

「変です」

 

「同じ壁ですぅ」

 

「同じ壁ですね」

 

「でも、足場は違いますぅ」

 

「はい」

 

デュードは窓の外を見た。

 

「シェイクさん」

 

「はいぃ」

 

「わたし、山杉さんで走ります」

 

「はいぃ」

 

「嫌だなって気持ちもあります」

 

「はいぃ」

 

「でも、山杉さんで走るなら、山杉さんで走ります。古吉さんじゃないから、という言い訳は持っていきません」

 

シェイクは、ゆっくり頷いた。

 

「わたしも、古吉さんだからって、勝てると思いすぎないようにしますぅ」

 

「それ、難しいですね」

 

「難しいですぅ」

 

「でも、シェイクさんはずっと古吉さんと積んできました」

 

「はいぃ」

 

「なら、ちゃんと走ってください」

 

シェイクは少し驚いた。

 

「デュードさん」

 

「はい」

 

「強いですぅ」

 

「強くないです」

 

「強いですぅ」

 

「悔しいだけです」

 

デュードは少しだけ笑った。

 

「でも、悔しいなら、走れます」

 

その言葉に、シェイクの心臓が鳴った。

 

「はいぃ」

 

部屋の机には、二人のメモが並んでいる。

 

シェイク。

 

御堂筋ステークス。

古吉トレーナー。

三勝クラスの壁。

デュードさんと同じレース。

嬉しいも、気になるも、どっちも本当。

自分のレースを走る。

 

デュード。

 

御堂筋ステークス。

山杉トレーナー。

古吉さんに戻ったはずなのに、戻りきれない日。

山杉さんは危険箇所。でも腕はある。

言い訳は持っていかない。

悔しいなら、走れる。

 

宮田先生は、その夜、遅くまで資料を見ていた。

 

選んだ。

決めた。

 

だが、それで軽くなるわけではない。

 

シェイクを古吉トレーナーで行かせる。

デュードを山杉トレーナーで行かせる。

 

それが正しいかどうかは、レースが終わっても簡単には分からないだろう。

 

どちらかが勝てば正解、という話でもない。

どちらかが負ければ間違い、という話でもない。

 

ただ、同じ距離、同じクラス、同じトレーナーを必要とする二人が、同じ場所に来てしまった。

 

それだけは事実だった。

 

宮田先生は、最後に予定表へ目を落とした。

 

御堂筋ステークス。

 

シェイクユアハート。

タガノデュード。

 

名前が並んでいる。

 

「……どっちも、走れ」

 

小さく呟いた。

 

ひとりしか隣に立てない日。

 

それでも、走るのは二人だった。

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