心臓は、まだ夢を見ている   作:ディーバイエム

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[第七章]おっさんトレーナー

長い夏休みは、思っていたよりも静かだった。

 

クラシックの春が遠ざかり、寮の中の空気も少しずつ季節を変えていった。

食堂の献立に冷たいものが増え、洗濯物の乾きが早くなり、朝の調教へ向かう時間の空がだんだん明るくなる。

 

シェイクユアハートは、走ることから完全に離れたわけではなかった。

 

身体を緩めすぎないように。

食べすぎないように。

自分の走りを忘れないように。

 

宮田先生から出された夏休みの宿題は、思ったより難しかった。

 

「ほわ~……休むのも仕事って、けっこう大変ですねぇ……」

 

シェイクは、朝の軽い運動を終えたあと、日陰のベンチで麦茶を飲みながら呟いた。

 

宮田先生は隣で予定表を見ている。

 

「何もしない休みやないからな」

 

「何もしない休みも、してみたいですぅ……」

 

「お前の場合、それやると食堂と花壇だけで一日終わるやろ」

 

「幸せそうですねぇ……」

 

「戻ってこい」

 

宮田先生は軽くため息をついた。

 

けれど、その声に焦りはなかった。

 

春の扉は閉じた。

それは確かだった。

 

だが、閉じた扉の前で立ち尽くす時間は終わりつつある。

身体は少しずつ厚みを増し、走り方にも前より芯が出てきた。

重賞で熱を浴び、大寒桜賞で距離を測り、休むことでようやく、自分の足音を聞き直せるようになってきた。

 

夏の終わり、宮田先生はシェイクを呼んだ。

 

「札幌へ行く」

 

「札幌……」

 

「富良野特別や。一勝クラス。芝二千」

 

「ほわ~……北海道ですぅ……」

 

「旅行ちゃうぞ」

 

「分かってますぅ……たぶん」

 

「たぶんか」

 

宮田先生は資料を閉じ、シェイクを見た。

 

「それでな、今回の担当やけど」

 

「藤川弟さんですかぁ?」

 

「いや」

 

「岩橋さんですかぁ?」

 

「いや」

 

シェイクは首を傾げた。

 

「藤川兄さん……?」

 

「違う。古吉トレーナーに頼む」

 

その名前を聞いた時、シェイクはすぐには反応できなかった。

 

古吉トレーナー。

 

寮の中で何度か名前は聞いたことがある。

フリーのトレーナー。

宮田先生が昔から時々頼む人。

藤川兄トレーナーがなぜか「古ちゃん」と呼ぶ人。

 

ただ、シェイクにとってはまだ遠い人だった。

 

「古吉さん……」

 

「知っとるか?」

 

「お名前だけですぅ」

 

「昔からの縁がある人や」

 

宮田先生の声が、少しだけ低くなった。

 

「俺が初めて大きいところを取った時にな、担当してくれたのが古吉さんや」

 

シェイクの耳がぴんと立った。

 

「大きいところ……?」

 

「アインブライド。あの子の時や」

 

その名前は、寮の古い写真の中で見たことがあった。

 

宮田先生の部屋の棚に、少し色あせた一枚が飾られている。

若い頃の宮田先生。

晴れやかな顔のウマ娘。

そして、その横で少し照れくさそうに立っている若いトレーナー。

 

あれが、古吉トレーナーだったのだろうか。

 

「ほわ~……昔のすごい方なんですねぇ……」

 

「すごいかどうかは知らん」

 

「知らないんですかぁ?」

 

「派手な人やない。でも、うちの子には合う時がある」

 

「合う……」

 

「お前にも、一回合わせてみる」

 

宮田先生はそう言った。

 

期待ではなく、実験でもなく、確認するような言い方だった。

 

シェイクは自分の胸に手を当てた。

 

藤川兄トレーナーのやさしい声。

藤川弟トレーナーのまっすぐで少しこわい声。

岩橋トレーナーの勝負の匂い。

 

そこに、古吉トレーナーはどんな音を足すのだろう。

 

「古吉さんは、どんな方ですかぁ?」

 

シェイクが聞くと、宮田先生は少し考えた。

 

「おっさんや」

 

「ほわ」

 

「いや、悪口やないぞ。地味で、口もそんなに上手くない。今どきの華やかさはない」

 

「おっさん……」

 

「けど、変に気負わせん」

 

宮田先生は、そこで少しだけ目を細めた。

 

「お前、最近ちょっと考えすぎる時があるやろ」

 

「わたしがですかぁ?」

 

「せや。ほわほわしながら、奥で考えとる。春が閉じたことも、重賞で足りんかったことも、親のことも、全部どっかに置いたまま走っとる」

 

シェイクは黙った。

 

言われてみれば、そうかもしれなかった。

 

休んでいる間も、胸の奥にはいくつものメモが貼られていた。

 

春の扉は閉じた。

重賞は怖かった。

2200は長かった。

親はきっと、大きな場所を見たかった。

自分はまだ足りない。

 

それを全部、ほわほわした顔の下にしまっていた。

 

「古吉さんはな」

 

宮田先生は続けた。

 

「そういう荷物を、一回横へ置かせるのが上手い」

 

「荷物を……」

 

「本人はたぶん、そんなつもりないけどな」

 

札幌へ向かう日、シェイクは少し浮かれていた。

 

北海道の空気は、寮とは違った。

夏なのに、どこか涼しい。

芝の匂いも、風の触り方も違う。

遠くが広く見える。

 

「ほわ~……空が大きいですぅ……」

 

競馬場に着いて、シェイクはまず空を見上げた。

 

「そこからか」

 

低い声がした。

 

振り向くと、一人の男が立っていた。

 

特別に背が高いわけではない。

特別に華やかなわけでもない。

服装も、表情も、どこか普通だった。

ただ、目だけが妙に落ち着いている。

 

岩橋トレーナーのような熱い鉄の匂いではない。

藤川兄トレーナーのような陽だまりでもない。

藤川弟トレーナーのような冷たい水でもない。

 

なんというか。

 

古い木の椅子みたいな人だった。

 

「古吉トレーナーや」

 

宮田先生が紹介した。

 

「今日、頼む」

 

「古吉です」

 

古吉トレーナーは短く頭を下げた。

 

シェイクも慌てて頭を下げる。

 

「シェイクユアハートですぅ。よろしくお願いします」

 

「おう」

 

会話が、そこで一度止まった。

 

シェイクは古吉トレーナーを見た。

古吉トレーナーもシェイクを見た。

 

沈黙。

 

風が吹く。

シェイクの耳が揺れる。

 

「ほわ~……」

 

「何や」

 

「おっさんですねぇ……」

 

宮田先生が咳き込んだ。

 

古吉トレーナーは眉を上げた。

 

「初対面でそれ言うか」

 

「すみません、宮田先生がそう言ってたのでぇ……」

 

「宮田先生?」

 

古吉トレーナーが宮田先生を見る。

 

宮田先生は視線を逸らした。

 

「悪口やないです」

 

「言うとるやろ絶対」

 

そこへ、藤川兄トレーナーが現れた。

今回の担当ではないが、別件で札幌へ来ていたらしい。

 

「古ちゃん、久しぶりですね」

 

「古ちゃん言うな」

 

「すみません、古ちゃん」

 

「謝る気ないやろ」

 

藤川兄トレーナーはにこにこしている。

言葉は敬語なのに、呼び方だけ妙に近い。

 

シェイクはそれを見て、少し目を丸くした。

 

「藤川兄さん、古吉さんと仲良しなんですかぁ?」

 

「はい。古ちゃんには昔からお世話になってます」

 

「世話した覚えはあんまりない」

 

「そういうところですよ、古ちゃん」

 

「何がや」

 

古吉トレーナーは面倒くさそうに言った。

けれど、本気で嫌がっているわけではなさそうだった。

 

その空気が、シェイクには少し不思議だった。

 

この人は、周囲から派手に持ち上げられるタイプではない。

でも、宮田先生は信頼している。

藤川兄トレーナーは懐いている。

古ちゃんと呼ばれて、文句を言いながらもその場にいる。

 

おっさん。

 

でも、ただのおっさんではないらしい。

 

レース前の打ち合わせは、思っていたより短かった。

 

古吉トレーナーは資料を見ながら、ぽつぽつと言う。

 

「無理に前取りに行かんでええ」

 

「はいぃ」

 

「下げすぎもせんでええ」

 

「はいぃ……」

 

「札幌は直線だけで何とかする場所やない。三、四角で置いていかれんようにする」

 

「はいぃ」

 

「でも、考えすぎんでええ」

 

シェイクは首を傾げた。

 

「考えなくていいんですかぁ?」

 

「考えすぎんでええ、や」

 

古吉トレーナーは映像を止めた。

 

「お前、考えてへん顔して、わりと考えとるやろ」

 

「ほわ」

 

今日二回目だった。

宮田先生にも同じようなことを言われた。

 

「春のことも、重賞のことも、距離のことも、親のことも、まあ色々あるんやろうけど」

 

古吉トレーナーは、そこで一度言葉を切った。

 

「走る時に全部持っていかんでええ」

 

シェイクは、湯呑みを持つ手を止めた。

 

「持っていかない……」

 

「持っていったら速くなるもんだけ持っていけ」

 

「どれですかぁ?」

 

「知らん」

 

「ほわ」

 

「それを探すんがレースやろ」

 

ずいぶん雑な答えだった。

 

藤川兄トレーナーなら、もう少しやさしく言ってくれる。

藤川弟トレーナーなら、もっと明確に指示を出してくれる。

岩橋トレーナーなら、勝負どころの腹のくくり方を教えてくれる。

 

古吉トレーナーの言葉は、そのどれとも違った。

 

雑で、短くて、少し突き放している。

 

でも、不思議と胸の奥が軽くなった。

 

「古吉さん」

 

「何や」

 

「わたしの親のこと、気にならないんですかぁ?」

 

古吉トレーナーは、資料から顔を上げた。

 

「気にしたら速くなるんか?」

 

シェイクは瞬きをした。

 

「……ならないですぅ」

 

「ほな、いらんやろ」

 

「ほわ~……」

 

雑だった。

 

でも、とても楽だった。

 

親の名前。

名家の期待。

春の扉。

重賞の熱。

それらが全部、古吉トレーナーの一言で消えたわけではない。

 

ただ、レースへ持っていかなくていい荷物なのだと思えた。

 

富良野特別の日。

 

札幌のパドックは、シェイクが知っている競馬場とは少し違っていた。

空が広い。

風がやわらかい。

けれど、芝は簡単ではなさそうだった。

 

シェイクは歩きながら、周囲を見た。

 

久しぶりのレース。

春以来の実戦。

長い夏休みを経て、身体は少し変わった。

けれど、レースの音を忘れてはいない。

 

古吉トレーナーが隣に来た。

 

「緊張しとるか」

 

「たぶん……」

 

「たぶんか」

 

「少し、ですぅ」

 

「それでええ」

 

「古吉さんは、緊張しますかぁ?」

 

「するで」

 

「ほわ。するんですかぁ?」

 

「するやろ。せん奴は信用ならん」

 

「岩橋さんも、怖いまま行けって言ってましたぁ」

 

「あの人は言いそうやな」

 

「古吉さんは、怖いまま行けって言わないんですかぁ?」

 

古吉トレーナーは少し考えた。

 

「怖かったら、怖いなりに行ったらええ」

 

「同じでは?」

 

「知らん。似とるだけや」

 

シェイクは少し笑った。

 

不思議だった。

古吉トレーナーの言葉は、格好よくない。

胸が熱くなるような響きもない。

なのに、足元が少し安定する。

 

ゲートへ向かう前、古吉トレーナーは短く言った。

 

「気楽に行こか」

 

シェイクは耳を動かした。

 

「気楽でいいんですかぁ?」

 

「気ぃ張って勝てるなら、みんな勝っとるわ」

 

「ほわ~……」

 

それは、シェイクの中にすっと入ってきた。

 

気を張って勝てるなら、みんな勝っている。

 

確かにそうだ。

 

扉が開く。

 

シェイクは久しぶりのレースの流れに入った。

 

札幌の芝二千。

中京とも、阪神とも違う。

直線だけでは足りない。

前から中団で、脚を残しながら、三、四角で置いていかれないようにしなければならない。

 

古吉トレーナーの声は、思ったより静かだった。

 

「急がんでええ」

 

焦らない。

 

「そこでええ」

 

無理に動かない。

 

「置いていかれるな」

 

でも、離されない。

 

シェイクは走りながら、少し驚いていた。

声が強くない。

優しく包むわけでもない。

ただ、そこにある。

 

背中を押すというより、横に置かれる石みたいだった。

足を引っかけるわけではない。

でも、目印になる。

 

三コーナー。

前が動く。

 

胸が鳴る。

 

ここか。

まだか。

春の記憶が一瞬だけよぎる。

 

大寒桜賞。

きさらぎ賞。

足りなかった直線。

 

「シェイク」

 

古吉トレーナーの声。

 

「今は前だけ見とけ」

 

シェイクの耳が前を向いた。

 

そうだ。

 

春は終わった。

親はここにはいない。

重賞の熱も、今は持ってこなくていい。

 

今は、前だけ。

 

「はいぃ」

 

四コーナー。

シェイクは動いた。

 

脚はある。

でも、久しぶりのぶん、反応がほんの少し鈍い。

前との差が思ったより詰まらない。

外から伸びる子もいる。

 

直線に向く。

シェイクは最後まで走った。

 

前を追う。

脚を使う。

胸が鳴る。

それでも、勝ち負けには届かない。

 

ゴール板が過ぎた。

 

六着。

 

結果だけ見れば、きさらぎ賞と同じ数字だった。

 

シェイクは息を整えながら、芝の上でしばらく立っていた。

 

「ほわ~……」

 

古吉トレーナーが来た。

 

「六着やな」

 

「はいぃ……六着でしたぁ」

 

「久々やし、こんなもんやろ」

 

「こんなもん……」

 

「悪い意味やない」

 

古吉トレーナーは、シェイクの方を見た。

 

「最後まで走っとった。位置も悪すぎへん。ただ、勝ち切るにはまだ足りん」

 

「はいぃ……」

 

「次やな」

 

短い。

 

それだけだった。

 

もっと言われると思っていた。

春の後の大事な復帰戦。

長い休み明け。

古吉トレーナーとの初めてのレース。

 

六着。

 

悔しくないわけではない。

でも、不思議と胸が潰れるような感じはなかった。

 

「古吉さん」

 

「何や」

 

「負けたのに、あんまり苦しくないですぅ……」

 

古吉トレーナーは、少しだけ眉を上げた。

 

「ええことや」

 

「いいんですかぁ?」

 

「苦しむために走っとるわけやないやろ」

 

「ほわ~……」

 

「負けても、次に持っていける負け方ならええ。全部背負って沈む負け方が一番あかん」

 

シェイクは黙って、その言葉を聞いた。

 

全部背負って沈む負け方。

 

春のあと、自分が少しそうなりかけていたことに気づく。

 

親の期待。

クラシックを諦めたこと。

重賞の壁。

自分に足りないもの。

 

それを全部抱えて走ったら、きっと脚より先に心が重くなる。

 

「次に持っていく負け方……」

 

「せや」

 

「じゃあ、今日は持っていけますかぁ?」

 

「持っていけるやろ」

 

「何をですかぁ?」

 

「札幌の走り方と、久々でもレースは嫌になってへんってこと」

 

シェイクは、少しだけ笑った。

 

「レース、嫌ではなかったですぅ」

 

「ならええ」

 

宮田先生が戻ってきた。

 

「どうやった」

 

古吉トレーナーが答える。

 

「休み明けとしては悪くないです。まだ緩いところはあるけど、気持ちは重くなってへん」

 

宮田先生は頷いた。

 

「そうか」

 

「この子、考えてへん顔して考えすぎるタイプですね」

 

「せやろ」

 

「でも、走る時に少し置けるなら、良くなると思います」

 

シェイクは二人を見た。

 

自分の話をしている。

けれど、値踏みされている感じはしなかった。

 

先生とトレーナーが、次の道を探している。

それだけだった。

 

帰り道、札幌の空は夕方の色になっていた。

 

シェイクは窓の外を見ながら、古吉トレーナーの言葉を思い返した。

 

気楽に行こか。

気ぃ張って勝てるなら、みんな勝っとるわ。

気にしたら速くなるんか。

ほな、いらんやろ。

 

どれも格好いい言葉ではない。

けれど、胸の奥で小石みたいに残っている。

 

軽くはない。

でも、重すぎもしない。

握って走れるくらいの言葉。

 

「古吉さん」

 

「何や」

 

「古吉さんは、少女漫画には出なさそうですねぇ」

 

「何の話や」

 

「藤川兄さんは出そうですぅ」

 

「せやろな」

 

「藤川弟さんも、顔は出そうですぅ」

 

「顔は、て」

 

「岩橋さんは、劇画ですぅ」

 

「分かるような分からんような」

 

シェイクは、少し考えた。

 

「古吉さんは……」

 

「おう」

 

「商店街の定食屋さんですぅ」

 

「なんでや」

 

「なんか、落ち着きますぅ」

 

古吉トレーナーはしばらく黙った。

それから、窓の外を見たまま言った。

 

「褒めとるんか、それ」

 

「たぶん……」

 

「そこは言い切れ」

 

「褒めてますぅ」

 

「ならええ」

 

宮田先生が前の席で笑いをこらえていた。

 

寮に戻った夜、シェイクは机に向かった。

 

大寒桜賞のメモの下に、新しい紙を置く。

 

富良野特別六着。

古吉トレーナー。

おっさん。

でも、負けたのに苦しくなかった。

持っていける負け方。

 

少し迷って、さらに書き足す。

 

気楽に行くのは、手を抜くことじゃない。

 

書き終えて、シェイクはペンを置いた。

 

胸の奥で、心臓が静かに鳴っている。

 

春の扉は閉じた。

夏休みは終わった。

札幌の復帰戦は六着だった。

 

何かを成し遂げたわけではない。

大きな結果を出したわけでもない。

 

けれど、シェイクユアハートは知った。

 

走る時に、全部を背負わなくてもいい。

期待も、悔しさも、閉じた扉も、親の名前も。

速くなるものだけ持っていけばいい。

 

古吉トレーナーとの出会いは、華やかではなかった。

 

少女漫画でもない。

勝負の匂いが濃い劇画でもない。

ただ、商店街の定食屋みたいに、そこにある。

 

でもたぶん、今のシェイクには、それくらいがちょうどよかった。

 

「ほわ~……」

 

ベッドに転がりながら、シェイクは小さく呟いた。

 

「おっさんですけど……走りやすいかもですぅ……」

 

その時はまだ、誰にも言わなかった。

 

けれどその言葉は、シェイクの胸の奥で、次の鼓動に少しだけ混ざった。

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