朝起きる。
カーテンを開ける。
曇り。
「……降るかな。」
スマホの天気予報は晴れだった。
でも、傘立てから一本だけ透明な傘を持つ。
折りたたみじゃない方。
なんとなく。
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駅まで歩く。
空はまだ明るい。
傘はいらなかった。
少しだけ荷物になったかな、と笑う。
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事務所へ着く。
「おはようございます!」
「おはよう。」
「今日は暑いですねぇ。」
「そうだね。」
「アイス食べたいです。」
「分かる。」
それだけで会話が終わる。
静かだけど、嫌な静けさじゃない。
こういう朝は好きだった。
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昼。
収録を終えて外へ出る。
「ご飯どうしよう。」
少し歩いて。
定食屋さんへ入る。
「いらっしゃいませ。」
窓際の席へ座る。
メニューを見る。
生姜焼き。
焼き魚。
唐揚げ。
「……焼き魚で。」
注文を済ませて、お茶を飲む。
店内には昼のニュースが流れていた。
誰も見ていないテレビ。
誰も聞いていないアナウンサー。
そんな空気が、少し心地よかった。
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店を出る。
ぽつ。
頬に冷たいものが当たる。
「あ。」
雨だ。
少しずつ。
少しずつ。
さっきまで晴れていた道が濡れていく。
透明な傘を開く。
「持ってきてよかった。」
それだけ。
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夕方。
配信まで少し時間がある。
コンビニへ寄る。
飲み物だけ買うつもりだった。
雑誌コーナーの前を通る。
表紙に猫。
立ち止まる。
「かわいい。」
少し迷う。
少しだけ。
結局、買わなかった。
今日は写真だけで満足だった。
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夜。
「こんばんは。」
『こんばんはー!』
『待ってた!』
『今日もきた!』
「ありがとう。」
『今日雨すごかった』
「あ、降ったね。」
『傘忘れてびしょびしょ』
『会社出た瞬間だった』
『最悪だった』
「風邪ひかないようにね。」
『優しい』
『ありがとう』
それだけでコメント欄は次の話題へ流れていく。
ゲーム。
晩ご飯。
新作のお菓子。
猫。
猫。
また猫。
今日は猫の日らしかった。
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配信が終わる。
「お疲れさまでした。」
マイクを切る。
部屋が静かになる。
窓の外では、まだ少しだけ雨が降っていた。
私はベランダへ出る。
街灯に照らされた雨を眺める。
嫌いじゃない。
雨の日は、外が静かだから。
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部屋へ戻る。
机の上には、朝持っていった透明な傘。
壁に掛けながら、小さく笑う。
「今日は役に立ったね。」
それだけ言って、電気を消した。