休日だった。
目覚ましをかけない朝は静かだ。
カーテンを開ける。
空は青い。
「洗濯しよう。」
洗濯機のボタンを押して、お湯を沸かす。
コーヒーにしようか。
少し迷って。
今日は牛乳を温めた。
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昼前。
洗濯物を取り込んで、近所を歩く。
風が気持ちいい。
目的はない。
散歩みたいなものだった。
歩いているうちに、見慣れたパン屋さんが見えてくる。
「あ。」
そういえば。
久しぶりだった。
扉を開ける。
小さなベルが鳴る。
「いらっしゃい。」
店主のおばあさんが笑った。
「こんにちは。」
「今日は遅かったねぇ。」
「そうですね。」
自分でも少し笑う。
遅かった、と言われるほど通っていた覚えはない。
でも、このお店ではそうらしい。
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棚を見る。
クロワッサン。
あんパン。
メロンパン。
焼きたての食パン。
今日はどれも美味しそうだった。
「クロワッサン、一つください。」
「はいよ。」
袋に入れてもらう。
受け取る。
「あら。」
おばあさんがレジの横を見た。
「また猫ちゃん来てる。」
店の外。
窓際の日陰に、一匹の茶トラが丸くなっていた。
「最近よく来るの。」
「そうなんですか。」
「この子がいる日は、お客さんもなんだか笑って帰るのよ。」
「ふふ。」
私は少しかがんで猫を見る。
猫もこちらを見る。
少しだけ目が合って。
興味をなくしたように、また丸くなった。
「じゃあ、また。」
「ありがとうね。」
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帰り道。
公園のベンチへ座る。
袋を開ける。
まだ少し温かい。
一口。
「……美味しい。」
風が吹く。
葉っぱが揺れる。
遠くで子どもが笑っている。
そのくらいしか音はなかった。
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夜。
配信開始。
「こんばんは。」
『こんばんは!』
『今日は休みだった?』
「うん。」
『何してたの?』
「散歩。」
『健康的』
『えらい』
『どこ行ったの?』
「パン屋さん。」
『あ、この前言ってたパン屋?』
「そう。」
『クロワッサン?』
私は少し笑った。
「今日はクロワッサンが美味しかった。」
『今日"も"じゃないんだw』
『今日は、なんだw』
『その言い方好き』
「なんとなく。」
コメント欄は笑って流れていく。
誰も気にしない。
私も気にしない。
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配信が終わる。
机の上に、パン屋さんの袋が置いてあった。
小さなスタンプカードが入っている。
十個たまると、一つ好きなパンがもらえるらしい。
押されていたスタンプは、九個。
「あと一つ。」
財布へしまう。
そのまま部屋の明かりを消した。