[Lonely night]
2014.5.21 10:10:10 星見里研究所内部
side:神空 鴉那
月夏はしばらく厳しいかも。
さっきの光景は、私でも結構キツかった。
特に壁に押し付けられたのだろう、赤黒い痕跡と、その臭いは。
月夏がダウンしちゃうのも仕方ない、そもそも一昨日の夜からの強行軍でここまで来たわけで。
万全とはいかない状況で、アレはもう精神の処刑みたいなモノだもの。
「月夏、こっち」
「すまねぇ……」
「気にしないで。
今のうちに治したほうが安全だし」
今度は私が肩を貸して、医務室へ向かう。
その途中だった。
やけに見覚えのある光景が頭にフラッシュバックする。
……私が、閉じ込められてた部屋だ。
月夏との数日で少し蓋がされていたそれが、溢れ出てくる。
「ッ!!」
同時にグワンとした目眩に襲われるが、気合いでグッと堪える。
こんなところで共倒れしたら元も子もない。
「アナ?」
「ん、大丈夫。あの部屋が医務室だよ」
負傷ではないためここが正しいのかはわからない。
それでも、使える物資がある確率は高いと踏んでるけど。
私が先に立ち、部屋へ入る。
電気はきていないのでかなり暗い。
足元だけを、非常灯が照らしてた。
ただ、さっきのオフィスみたいな破壊痕跡はない。
せいぜいが瓶やバインダーが落ちて散乱してる程度。
「思ったほど荒れてないな……」
「だね、怪しいくらいに」
まるで、誰かが居たか、何か目的があって壊されなかったレベルだ。
これは単に運が良かったのか、それとも罠なのか。
……いや、まずは使えるものを探そう。
憂慮はその後でも十分だから。
その時だった。
カタン……
隣の部屋から何が音が聞こえた。
「……なあ」
「静かに」
耳に意識を集める……何かいる気配はない。
ただのネズミ?それとも、化け物……?
"月夏、ちょっと確認してくる。気がついてないフリをして、ちょっとこの部屋に残ってて。
もし、騒音や私の声が聞こえたら来て。
何も無かったら部屋に入る時に、ノックを短く5回して戻ってくるから"
耳打ちで伝え、視線で確認する。
音を立てないようにしながら廊下へ出る。
今の所、気配などは近くに感じられない。
音を立てないように、一歩ずつ、あの部屋へ足を進める。
だけど、その瞬間。
あの時の記憶が、一歩進むたびに脳裏を焼いてくる。
ショクバミで生き物を切らされた日。
禍弾で袋を被せられた
麻酔……管……
研究所の職員たちに……
服……返して……
やめ……
「ハアッ……ハアッ……」
動悸が止まらない。
目眩、吐き気も加速度的に襲いかかり、思い出したくもないことばかりが蘇る。
助けて、月夏……
その声が声にならないよう、必死に呼吸を整える。
一歩、また一歩。
着いた。
たった数メートルのはずなのに、随分と遠かった気がする。
ここに、何か居るのだろうか。
生き残った研究者?
化け物?
ただのネズミ?
どうだっていい。あの日々がここにないのなら、あの日々より恐ろしくないのなら、私は超えられる。
ドアを盾に左側を確認。
クリア。
そのまま正面側へ。
クリア。
隅まで確認しながら、部屋へ入った。
位置や間取りには記憶にあるのと変わらない、あの部屋だった、はずだ。
数少ない心の憩いの場所だった机も、穢されたベットも、破壊され尽くしていた。
あの頃の姿とは見るも無惨な程に。
……何もいない。
あの研究者たちも、師匠も。
そして、あの頃の私も。
……戻ろう。
ここで得られるものは、残念だけど何もなかった。
無茶苦茶になった部屋を後にする。
……でも、戻る道で、あの忌まわしい過去は、もう現れることはなかった。
……今のところは。
Date:2011.3.17 11:41:41
from:H.MOGAMI
to:R.K
title: (null)
秋の日の
ヴァイオリンが奏でしため息は
物悲しき旋律で
鐘の音は息をも殺し
悠久の日々を思い返さじ
流れゆくは、枯葉なるかな
-----------------------------
Date:2011.3.17 11:42:21
from:R.K
to:H.MOGAMI
RE:
Accomplish.
Package dispatched.