おしゃべりな不審者と深夜徘徊   作:忍者タラバガニ

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不審者、街に現る。
今回は不審者目線です。


1日目 その1

 

 

 

僕はとある分野においての専門家だ。

その分野とは、俗に言う「おばけ」「怪異」「都市伝説」「幽霊」etc etc…要するに霊能関係である。

 

「そういう」家系に生まれて「そういう」風に育てられたが色々あってドロップアウトした。

 

ちなみに僕は呼称としては「怪異」を採用している。何故なら動物なんかの低級のものから伝承に残る神格の類まで包括できる便利な言葉だからだ。

 

 

 

話を戻すが、僕は怪異に関する問題を抱えた依頼者から受けた相談を解決している。

信条としては「地獄の沙汰も金次第」。

要するに霊能関係のフリーな何でも屋だ。

『現金、または物品での支払いも可。お手頃価格で問題解決。不気味な顔のおしゃべり男がなんでも解決します。』なんて文言を店先に書いた友人を未だに許していない。誰が『不気味な顔のおしゃべり男』だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題

 

今回僕が受けた依頼は『とある山沿いの街を調査すること』だ。

あの全身に呪いが赤い糸のように巻き付いていた依頼人は「あの街を調査して、できることなら問題を解決して欲しい、私は恐らくもうすぐ死ぬ、調査したものはこの住所に送って欲しい。」と言ってどことも分からない家の写真と住所を書いた紙と前払いの大金を渡してフラフラと帰っていった。

 

 

取り敢えず聞き込みだ。

探偵を気取るつもりはないが、やはりこういうのは噂話から考えるものだ。

 

 

そう考えて小学生に話しかけたら初手で通報された。

引っ越して早々不審者と勘違いされて通報された。

 

 

「ただでさえ不気味なんだからお前はもう少し笑ってろ」と言われたのでニコニコ笑っていたのだが、逆効果だったらしい。泣きながら逃走され、次の日家に警察が来た。しかしなんやかんやで重要な情報は手に入った。なんでも、『この街で夜に出歩く子供はおばけに攫われる』らしい。

 

 

 

 

 

今僕はこの街の地理を把握する為、ついでに怪異を探す為、目立たないように真っ黒な服を着ていくつかの道具を持って深夜徘徊をしている。決して不審者ではない。

 

 

 

1時間後、僕は悟った。この街は駄目だ。

 

 

 

怪異の数が尋常じゃない、土地神が全柱死んだりしたのか?

いや、それにしては神特有の気配は健在だ。

夜に出歩く人間がほとんどいないのはこれが理由か。

怪異を一部調査してみると危険なもの、特に人間に明確な殺意を持つものが多い。どうしてまだ人がいるのか疑問になるレベルだ。

 

 

 

道を塞ぐ毛玉や一つ目の犬、幽霊電車、燃えて転がるタイヤ、ここはあれらにとって狩場、もしくは溜まり場のようだ、非常にバリエーション豊かなあれらがいた。特に山は不味い、山に続く道からこちらを引き込もうとしてくる悪意をひしひしと感じる。あれは駄目だ。入ったら必ず死ぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんとうに?

 

 

 

 

 

 

 

 

調査するべきだ

 

 

 

 

 

 

 

おかしい、情報が揃っていない現状でこの場所を調査するのは得策じゃない。そんなことは誰でも分かることの筈だ、なのに何故今僕は自分からそんなことを考えたんだ?

 

 

 

 

まあいいや

 

 

 

 

 

 

山に行ってミよウ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なるほど。

僕の精神に何かしらが影響を与えている。

この場にいるべきではない、一度引き上げるべきだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タッタッタッ

 

 

 

 

 

 

小さな走る音と荒い息遣いが聞こえる。

 

 

 

 

曲がり角から青いリボンをつけた小学生ほどの女の子が飛び出してきた。

 

すぐ後ろから一つ目の犬のような姿をした怪異が迫っている。

 

恐らく隠れる為なのだろう、電柱の下に置かれている看板に向けて全力でダッシュをしている。

 

 

 

夜に出歩く人をこの街で初めて見た。話しかけて聞き込みをするべきだ。

 

 

看板まで滑り込んで隠れて犬が去るのを待つ少女の為に取り敢えず犬に後ろから近づいて蹴り飛ばす。

 

 

 

想像よりずっと軽かったそれは「ギャンッ!」と鳴いてそのまま何処かに飛んでいってしまった。

 

 

 

 

 

さて、どうしようか。

目の前で顔を覆って座り込み、恐らくこちらに気づいていない少女に怯えられないように話しかけるには。

 

 

十数秒後顔を上げた少女は後ろの僕に気づかない。

突然立ち上がり「そんなことない!ユイは生きてる!探さなきゃ!」と大きな声を上げ振り向く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が合った。

 

 

 

 

取り敢えず話しかけよう。笑顔で、笑顔で、小粋なジョークを挟んで場を和ませ、出来るだけ優しい顔をしながら。

 

 

 

 

 

「やあ」

「こんばんは」

 

 

 

 

 

小さな悲鳴をあげそうになった少女は僕を怯えた目でいつでも走り出せる姿勢を見せながら、一応返事をしてくれた。

 

 

 

「こ、こんばんは」

 

 

 

 

 

 

怯えられている。ここまで怯えられていては聞き込みもままならないだろう。最大限優しく笑みを浮かべながら。

 

「こんな時間に何をしてるの?」

「おばけが出るよ」

 

決まった。『既にいるやないかい!』というツッコミの完璧な布石になった。

 

おずおずとこちらを見上げながら少女は何かを言おうとしている。

来い、来い!ツッコめ!

 

 

 

「わ、わたし、ユイを、友達を探してるんです!」

 

 

あ、なるほど、これシリアス(真面目)なやつか。

 

 

迷い込んだ子供かと思っていたが、目的があって外に出てきた訳か。

しかし、それ深夜()じゃなきゃ駄目?

 

取り敢えず説得して家に帰してあげた方がいいだろう。

その旨を少女に伝えて手を伸ばすが、少女は一歩退く。

 

 

 

 

「わ、わたし帰りません!ユイを見つけるまで帰りません!」

 

 

 

 

 

 

強い目だった。僕に怯えていた先程の目とは別人のように強い目だった。

 

 

 

 

 

何処かで見たような目を、助けたくなるような目をしていた。

 

 

 

 

 

しかし、この子からは何やら厄ネタの気配がする。

具体的に言うとあの山関係の何か。

神特有の気配がこの子から強く感じる。

 

正直言って関わりたくない。一銭の得にもならないのに人助けなんかしたくない。

なにより、「ただでさえ不審者扱いされているというのに、行方不明者を閉じ込めてるんじゃないかなんて警察に言われて家宅捜査されるのはもう懲り懲りだ。」

しかし、ここでこの少女を助けないのは心に良くないものを残す。

 

どうするべきか。

 

 

「そうだ!」

 

 

 

 

「うひゃう!?」

 

おっと、つい声に出てしまっていた、考えている事がよく口に出てしまう僕の癖もいいかげん直した方がいいだろう。聞かれたくないことを聞かれてしまうような展開を防ぐために。

 

 

「君、うちで働かないかい?」

 

 

 

少女を安心させるため保っていた笑顔を保ちながら僕は提案する。

 

 

「要するに、君が今まで見たおばけ、僕が『怪異』と呼ぶあれらの情報を教えて欲しいんだ。」

「どんなものでもいい、何に反応するか、どう対処するべきか、大きさや姿、その情報を僕は欲している。」

「その代わり、君が教えてくれた情報に見合う分の力を与えよう。」

「君が扱えるものなら、協力な光を放つライトから、とある商売繁盛の神様が作り出した清めの塩、呪いの釘、果ては身代わりになってくれる式神まで。」

「どうだい?」

 

 

 

僕が目線を合わせて差し出した手を、少し迷った末に少女は取った。

 

「君、名前は?」

 

「ハルです。」

僕をまっすぐ見つめた少女。

 

「夜にようこそ。」

僕は彼女を見てただ笑った。

「進むと決めた以上、君に残された道にあるのは暗闇と苦痛だ。」

ほんの少し明かりを照らすくらい、()()()は許してくれるだろう。

 

 

 

 

 




この男、割とトンチキなのである。
雑に犬を蹴り飛ばしてたけど彼正直素手だとそこまで強くないです。
一般怪異の赤ちゃん霊とか動物霊と五分五分くらい。
でも今までの依頼で支払いとして受け取ってきたアイテムを駆使して上級怪異(章ボス)以上神様未満ぐらいの強さです。
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