今回はお話回です。
「改めてようこそ」
「何でも屋『術中八九』へ」
「僕のことは『やもりさん』とでも呼んでくれ」
散らかってて悪いね、なんて言いながらアパートの一室にわたしを招いて、外国の変なお面やら大きな刀やらをひっくり返してスペースを作り、テーブルとヤカンを持ってわたしを案内したやもりさんはお茶とお菓子を出してわたしの話を聞いてくれた。
「だから、わたしはユイをさがしてるんです」
メモを取りながら話を聞いていた彼はすっかり冷めてしまったお茶を一息に飲み干し、眉毛と目の間くらいを抑えながら聞き逃してしまうくらいちいさな声で「山、山かぁ…」「それに、『ハサミを持った腕のおばけ』ってもしかしなくても…様だよなぁ」「うわぁ…」と苦しそうに呻いていた。
「あ、あの、わたしを追いかけてくるおばけたちって一体なんなんですか?」悩ましげな表情を浮かべていた彼はわたしの質問に少しの沈黙のあと「お茶を注いでくる、長くなるからね。」と言いながら初めて会ったときに見せた不気味な笑みを見せた。ひょっとして優しく笑っているつもりなのかな?
「結論から言おう。」一口お茶を啜ってやもりさんは言った。
「君が『おばけ』と呼び、僕が『怪異』と呼ぶあれらは人間の想念だ。」
「人々の恐れ、伝承、執着、祈り、そういった想いが死や信仰という強い感情を核として集まったもの。」
「古来より人間は理解できないものを物語、あるいは神と呼んだ。餓鬼に河童、だいだらぼっちに見上げ入道。現代ではその正体が解明されているものもある。例えば餓鬼憑きは空腹による血糖値の減少が原因だとか、河童は水死体だとか、見上げ入道は木が影で大きく見えただけだとか。他にもetc…」
「全ての怪異にはそこにいる理由があり、伝承があり、物語があり、結論があり、祈りがあり、恐れがあり、畏れがあり、そして、信仰がある。」
「要するに怪異は人の作り出したイメージに縛られる。」
「口裂け女はポマードと唱えれば逃げるし、トンカラトンは指示を聞けば殺されない。」
「怪異はイメージが全てだ。」
「恐怖を糧にするもの、信仰を糧にする神、そこはどちらも変わらない。」
「あれらが人を襲うのもそれが理由だろう、恐怖の対象とされることは怪異にとって大きなエネルギーになる。」
「有名な神ほど力が強いのは有名であるからこそ、その存在をより鮮明にイメージしてもらえるからなんだ。」
「例外もいくつかあるがね。」
「死者の姿をした怪異だ。」
「通常、死者の姿をしている霊は死んだ張本人という訳ではない、あくまで生前の彼ら彼女らを知る誰かが持つイメージのパッチワークだ。」
「しかし、誰にも知られることなく死んだ者、または神に死へと導かれた者は記憶を持ったまま、人格も生きていた頃と殆ど変わらず、他人のイメージに左右されることがない。」
「恐らく、本来は死者に向けられるイメージが神に注がれているのかな?」
「まあ、そこまで難しく考えなくてもいいよ。」
「要するに噂で聞くような対処法は結構相手に聞くことが多いんだ。」
「む、むずかしい」パンク寸前なわたしを見てチョコレートを食べながら笑うやもりさん。
「話を戻すけど」顔を上げて「どこか探すアテはあるかい?」と聞いてきた。
「図書館に行ってみようと思うんですが」
「そりゃまたどうしてだい?」
「ユイに呼ばれてるような気がして」とわたしが言うと怪訝な顔をするやもりさん。そりゃそうだ、そんな闇雲な探し方で上手くいく訳がない。彼はとっても困ったような顔をして何か考えているようだった。
「ほぼ確実に……の仕業だなぁ、でも少女を探す唯一の手がかりだし、この…には…るしかないなぁ」どうやらやもりさんは考え事をしてるとき内容が声に出てしまう癖があるみたい。
「ちょっと待っていなさい。」と言って大きな本棚からファイルを持ってきて何やら読んでいる。
「図書館…大鏡…ふむ、ならばこれが
そう言いながら部屋の隅っこをガサガサと探した後数枚のタオルくらいの大きさのとっても真っ黒な布とわたしが使ってるものとおんなじくらいの大きさのライトを持ってきた。
「このライトは君が今持つそれより強いライトだ、使うといい。」
「こっちは光をよく吸収して逃がさないスグレモノだ。光に寄ってくる怪異や逆に暗闇を苦手とするような怪異への目眩しに使いなさい。」
「良いんですか?」 「ライトの方は支給品、仕事をする上でのサービスだ。そしてこの布は君のくれた情報に見合った品だ、つまり正当な支払いだ。」ウチは現物での支払いも可能なんでね、なんて言いながら使い方が書かれた紙と一緒に袋に包んでくれた。
「ありがとうございます!」差し出されたライトと布を取ろうとしたわたしから一歩離れ、言い含めるように言った。
「出くわした怪異のことはできる限りしっかり観察するんだ。」
「その情報がきっと君の助けてくれるだろう。」
「頼んだよ。」
わたしは元気よく頷き、アパートから飛び出していった。
やっと不審者の名前を出せました。
おしゃべり感出せてますかね?
彼は事前調査を最低限しているので、街の情報とか神社のことは知ってます。山の神の干渉に勘づいて抵抗できたのは「山で話しかけてくる何か」がいることを知っていたからって設定です。
でもまだ「何か」が干渉しているのが分かるだけでそれが神の仕業ってことには気がついてないです。
中の人が受験生なので投稿遅くても許してください。