ホラー系の世界に転生したのにあまりにも怪異がカラっとしている 作:ない因習村:ふるさと納税の返礼品がPC
死んだと思う、多分。大往生だ。大往生って本人自ら言うのか?という疑問は捨ておくことにする。
何故にあいまいな表現なのかというと、自分が死んで幽霊的なナニカとして肉体を抜け出すという中々になかなかな状況を味わったし死因が謎だったからだ。だって霊体が足から抜けていくとは思わないじゃん。普通頭からじゃないの?足なんだ。
海老ぞりから逆立ちするように足が徐々に上に引っ張られていき、俺はメリメリと肉体的な頭と幽霊的な頭を剝がされてようやく自分が死んだということに気づいたワケだ。
当たり前に死んているワケだが死因も謎だ。恐らく心臓麻痺だと思われるが……それにしてはちいかわ映画の不老不死になった子達と同じ感じで倒れた。『ウッ』の声すらなくぱたりと倒れた。充電切れ?絶賛放映中だから見てほしい。それは置いといて、自身が単三電池二本で動いている可能性があるのが嫌だ。せめて単二か単一にしてくれよ。そっちの方がレアっぽいじゃん。
そんなワケで死んだ。気を抜くと足から天に引っ張られていくので近場にあった電柱にしがみついている次第。道端で死んでしまったことに申し訳なさを感じるものの、それはそれとして生に執着していたいので電柱に張り付く蝉のように両手両足でしがみついてる。
「みーんみんみんみんみん」
「うわっ逆さまで電柱に張り付いて蝉の物まねをする幽霊が居る。しかも妙に上手い」
声がした。見上げる……この場合見下げる?見下げ果てると天から神っぽいナニカがスウェット姿で降りてきた。挨拶をしておこう。
「しゅわしゅわしゅわしゅわしゅわ」
「クマゼミの鳴き声だ。しかもこっちも妙に上手い。キショイ」
なんだってスウェット姿の神に蝉の物まねを酷評されねばならんのだ。俺は抗議の意味を込めて最近練習していたツクツクボウシの鳴き真似をした。
「つくつくぼうし……つくつくつくつくぼーし」
「ツクツクボウシだ。さっきの二つよりちょっと下手」
「練習中なんです。ヒグラシも練習中で人様に見せられる完成度じゃなくて」
「急にしゃべるなよ、そういう世界観だったじゃん。というかセミの鳴き声に完成度を求める人間が死んでしまった事実に私は悲しみを押さえきれないよ。人類の珍宝が消えてしまった」
「ちんぽ?」
「ちんぽう」
「ちんぽの古語?」
「そうだけどそうじゃないよ」
よく見れば神様はスウェット姿に缶チューハイ片手だった。ストゼロのオレンジのヤツ。
「うわっ、ストゼロのじゃない方飲んでる」
「じゃない方って」
「ストゼロはダブル檸檬以外は邪道だと思っているので」
「ストゼロの檸檬以外を認めない過激派、美味しいよ」
「死んでるので遠慮しときます」
「それもそうだった」
差し出された缶チューハイを片手で拒むとそっかそかっとグイと一飲み。ぷはぁとおっさんくさい息を吐くと神様は言った。
「ごめん死なせちゃった」
「死なせちゃいましたか」
「8缶目……いや9缶目だっけ?を取ろうとしてうっかり帳簿の君のページにダブル檸檬零しちゃって」
「記憶忘れるほど飲んでますね。ダブル檸檬なら許しましょう」
「あぶねー、ダブル檸檬飲んどいてよかった~。あぁでね?一応人の命とリンクしてる帳簿だからさ。濡れて破れたら死んじゃうのよ。ダブル檸檬拭こうとしたらビリっと行っちゃっいましてね」
「いっちゃいましたか。あー、濡れた紙って破れやすいですもんね」
うっちゃりうっちゃりとてへぺろ顔で言いますけど多分それで許してくれるのあんまりいないと思いますよ。許しますけど。
「思ったんですが、裏のページとか無事なんですか?」
「いや、無事じゃないから君と同じ境遇の子にはさっき話付けて来たよ。文句言われたけどまぁ私、神だからさ?」
「態度が鼻に付きますね」
「神だからね。文句ばっかりだから次の生まれ先は虫にしてあげたよ」
「心も狭い。でも神っぽいですね。独善的というか」
「でしょ~?昨今の神様イメージは押しつけがましいんだよね。休日も神様やってらんないでしょ」
「プライベートに仕事を持ち込まない人だ」
「そりゃね。まぁそのプライベートで仕事に支障をきたしてるんだけど」
「ダブル檸檬なら許しましょう」
「やったぁ、檸檬狂信者のおかげでスムーズに終わりそう」
ダブル檸檬なら仕方ない。スウェット姿の神様は缶チューハイをくしゃりと潰して厳かに言った。
「汝を別の世界に転生させてあげましょう」
「ありがとうございます?」
「といっても転生先は選べるわけじゃなくてこっち指定なんだけどね。適性が高いところだから成功は……まぁ本人が頑張れば成功できるよ」
「わーい?」
「もっと喜んでいいよ」
「足を舐めます」
「うむ、よきにはからえ」
逆さまのまま電柱を離れて神様にしがみついて足をべろべろと嘗め回した。汚いとか思わないんですね。
「いや、汚いとは思っているぞ。ただ服従や感謝の態度は受け取っておかないと後々面倒なことになるでしょ」
「上に立つ人としての苦悩だ」
神様にもそういう辛いところがあるらしい。神様社会の不毛な闇を知った。あぁ、そう。神様に会ったら聞きたいことあったんだ。
「やっぱり神様って今も不倫とかするんですか?」
「あぁアッチ……西洋系の話?」
「すごい偏見ですけど西洋系です」
「まぁ私は東洋系だしあんまりないね。アッチじゃまだ聞くよ。てか国際交流増えてきてから増えたような気がしなくもない」
「遠距離恋愛ですか」
「遠距離不倫ね。いうて神様的には地球の範囲なんてマンションの隣室レベルだから普通の不倫だね」
「普通の不倫しちゃいましたか。いいんですか?神様が」
「まぁ現代まで処女貫いてるの大体処女神しか残ってないし」
「嫌な神様裏話だ」
「最近生まれた神もすーぐ手出されるしなぁ」
「爛れてますね」
「神様界隈で爛れてないことないでしょ」
「ド級の偏見、ド偏見だ」
「神様本人の発言だからどっちかってとリークでしょ」
「ド級の不倫リーク、ドンフリーク」
「脳死で会話するのやめない?」
「脳死んでますけどね」
「「ははっ」」
俺は神様からしがみついた手足を離した。逆さまのパ〇マみたいに空へ昇っていく俺に神様は手を振ってくる。
「そう言えば、君が転生するところ深〇廻とかホラーゲームの世界がてんこ盛りの世界だからよ道には気を付けてね~。ワンチャン昼道も気を付けてね~」
「もっと早くいってほしかった」
最後にすごくすごい不安なことを言われながら俺は空へと消えていった。