ホラー系の世界に転生したのにあまりにも怪異がカラっとしている 作:ない因習村:深夜に因習ラジオがある
めちゃくちゃ寝てしまったのでいっぱい投稿します
メリーさんに担がれている。誘拐?プランプランと揺れながら運ばれている俺を奇妙な目をして見送る生徒達に手を振って挨拶しつつ学校を出た。
出た瞬間にいつもの如く黄昏時間に持ってかれる。学校内は花子姐さんのテリトリーなので起こらないのだが、一歩出るとこうなるんだよな。
「私は都市伝説のメリーさん、都市伝説のメリーさんが有名なのだけれどそれでも他のメリーさんの逸話がないわけではないわ。今の私はハイエースのメリーさん。なぜかドライブテクニックがピカイチだったメリーさんに倣っているわ」
「そこはかとなく犯罪臭がするのは車種だからですかね?」
「車に対象を引きずり込んで車ごと湖に突っ込んで持ち主をダイナミック不法投棄する技を得意としていたわ」
「殺意が高いし車使い捨てかい」
「運搬系に補正がかかるわ。これで卵運びも安心ね」
「横から話聞いてる時も思ったんですけど感覚がゲームのジョブとかそういうものだと思ってません?メリーさんって」
「私の場合、服飾関係に補正がかかるわ。さしずめお針子メリーといったところね。でも今の私は運び屋メリーよ」
ノッシノッシと擬音が出そうなほどの安定感で黄昏内を歩くメリーさんは遠くで見える巨人のなにかに目を細める。
「うーん、レイド討伐するには違うジョブの方が良いわね」
「ジョブチェンジ?伝説のメリーさんとかはどんなジョブになるんですかね?」
「暗殺者の最上位職、凶手メリーよ」
「益々ゲームっぽくなってきた。そしてつよそう」
「その道に至るまでには苦難の道よ。具体的にはレベル上げのほかに特殊な条件を必要とするわ」
「っぽい奴だ」
「まず初期ステータスのSTRとINTが合計30以上」
「初期ステータスを参照するタイプだ。難易度が高そう。というかメリーさんゲームするタイプなんですね」
「人並みに……ね。ほら、ゲームの服装って案外可愛いものが多かったりするでしょう?結構参考になるのよ」
「ありますよねぇ。キャラクターを着飾らせるって結構大きなコンテンツですし」
「いくつかゲーム内の服装をデザインする仕事が会社に届いたことあるのだけれど、中々に得難い経験をしたわ。ほら、アクション系だとキャラクターが動くから派手に見えても動きに視線がズラされてあんまり特徴的に見えないのよ。現実の服よりも個性的になる理由の一端を知れたわ」
「そういう話すごく興味ありますね」
「なら今から向かうカフェで好きなだけ話してあげる。……黄昏を抜けるわ。掴まっていて」
俵担ぎで捕まるも何もないのだが、とりあえず回されている手を安全バーのように掴んで落ちないようにする。
「黄昏時間って抜けられるんですか?」
「えぇ。黄昏時間は元々エキサイトした怪異を隔離する為の異界よ。でも霊的才能が高い人は怪異判定を食らって一緒に隔離されちゃうのよ。霊力を基準にしているから、一般的な人は弾かれるけど例外的に高い人が取り込まれる」
「だから逃げられないんですね。怪異判定されてたんだ」
「えぇ、でもいくつか抜け道があるわ。一、霊力を減らす事。怪異は弱体化するけれど人間でいうとフルマラソンくらいの疲れで抜けることができるわね」
「想像以上に物理的だし大変」
「二、異界渡り持ちや移動系の力。辻神の辻ワープも該当するわね。黄昏時間からまた別の異界に入ってしまえば良い。もしくはメリーさんみたいに移動する力を持っていれば異界を抜けることができるわ」
「前者はわかるんですけど後者はどういうことです?」
「そうね……『私、メリーさん。今貴方の後ろに居るの』この言葉をトリガーに距離を無視して相手の後ろにワープしているのよ。『私、メリーさん。今貴方の家の前に居るの』だとかもそうね。電話をかけて、居場所を宣言することでその場所に“居たことにする”のが私達の移動の正体よ。だから例えばこんな風に……」
メリーさんがスマホを取り出し、どこかに電話を掛ける。
「『私、メリーさん。今黄昏を抜けた貴方のアパートの部屋の中に居るの』」
すると周辺景色が捻じ曲がり、いつの間にか俺の部屋の中に居た。はえぇー、こういう理屈でワープしてたんですね。そりゃあ家に自在に入って来れるわ。侵入し放題じゃん。
「こうしてみると本当に怪異って対処不能の化け物ですよね」
「あら、今更?」
フフッ、メリーさんは人を化かすような笑みでこう言った。
「怪異は得てしてそういうものよ。さぁ行きましょう。初デートよ」
手を取って家を出ようとするメリーさんに俺はとりあえず最初に思ったことを突っ込んだ。
「デートの前に同棲してるんですけどね。順番逆じゃないですか?」
なんだかんだ受け入れている自分が居るも自分だと思う。
──────────
「私は舐り回しメリーさん。貴方のカップを舐り回すの」
「別種の怪異にならないでください」
いつも通っているカフェの一席、珈琲とケーキのセットが一つテーブルに置かれている。カップを手に取ったメリーさんはそれは丁寧に、丁寧に、カップの縁に唇と舌を這わせてぐるりと一周、二周、三周……
「長くないですか?」
「触れてない場所がないように念入りにする必要があるわ。因みにコーヒーの味だけれど美味しいわね」
「俺珈琲じゃなくて唾液飲むことになるんですけど」
そう言いながら嘗め回されたカップの縁を指で少し拭ってから口を付ける。間接キスは良いけどさすがに舐り回されたコーヒーカップに口を付ける自信はない。じゃあもう主体は唾液じゃん。いやメリーさんの場合、唾液じゃなくてそれっぽくしたローションだけども。
「この珈琲にケーキを合わせるのが良いんですよ」
「じゃあケーキも」
そういってケーキを一口食べて、いくらか咀嚼してからんべぇと出す。
「出さないでください」
「でも食べても消化できないもの」
「良いですよ。逆に食べたものを出すのがマナー違反ですって。普通に幻滅ものですよ」
「それならやめておくわ」
まぁ特殊性癖持っていれば興奮できるかもしれないが、生憎無残に噛み潰されたケーキに性的興奮を覚えないタチなので……一口貰った形になったメリーさんと改めてこれからのことについて話す。
「結局……同棲するんですよね?」
「えぇそうよ。何か不満があるのかしら?」
「不満というか……人間ここまでスピーディーにコンクリに埋められると思考が止まるんだなって感じです」
「考える暇を与えないわ」
「彼女なんですよね?」
「彼女よ」
「考える暇……」
「ないと思いなさい」
「ねぇどうして」
おかしいな。二段か三段飛ばして彼氏彼女関係は、まぁ……百歩、いや千歩、いやもっとだな。万歩譲ってOKとしても彼氏に思考の余地を与えないのは良いの?彼氏彼女的に。
「私に隙を見せたら死ぬと思いなさい」
「彼女なんですよねぇ?」
「彼女よ」
「同棲するんですよね?」
「同棲するわね」
「隙見せたら死ぬんですか」
「死よ」
おかしいな、家って心休まる場所のハズなのにいつからサリ裏みたいに殺伐とするようになったんだろう。何分初めての彼女なもんだから比較対象がない。比較対象がないにしてもあまりにもおかしいとは思うのだが周りに居る人間が全員おかしいのでこれくらい普通に思ってしまう。
だって現にトイレの花子姐さんがメリーさんの身体からぬるりと出てきてしまっているし。
「若ぇのが仲良くしてんじゃねぇの」
「花子姐さん学校の外に出れたんですか?てか出方キモ」
お腹あたりから突き破るみたいなノリで小学生女児が抜けだしてくる絵面はエイリアンを思い起こさせるだろう。グロじゃん。まぁ怪異的なノリなのかメリーさんには何もダメージはないのだが。
ぬるりと出てきた花子姐さんは手近にあったケーキを鷲掴みで食べながら上半身だけをメリーさんからはみ出しながら答えた。
「ちげぇよ。アタシのテリトリーはトイレだ。トイレがあるところにしか行けねぇに決まってんだろ」
「待って」
「あん?だからアタシは」
「待って」
それ以上はいけない。メリーさんが出てきた事といい、その発言はよからぬ語弊を招く恐れがある。昨今のコンプライアンスに真っ向から反抗する発言になってしまうので一旦、お口チャックして。ね?
「ちげぇっつってんだろ。男も女もトイレだつってんだよ」
「アウッ……いや、どっちも差別してるからいいのか……?」
男女平等の差別ならアリ……なのか?そして花子姐さんはさらに語弊を招くレベルの大言壮語を吐いた。
「この世は大体トイレみたいなモンだろ」
「うーん、発言しづらい」
「何勘違いしてるか知らねぇけど、アレだからな?犬猫だってそこらへんにウンコやしょんべんすんだろ?アレトイレ判定になんだよ」
「アレトイレ判定になるんですか!?」
「そうだよ。鳥の糞掛けられたことはあるか?犬猫にしょんべんひっかけられたことは?もしくは犬のふんを踏んだり……あと細けぇのだと蟲の糞とかな。昔ァ野クソも当たり前だったからそこらへんほっつき回れたが、今じゃこうして人間経由しねぇと動けねぇんだよ」
「ひっかけられるとその人トイレ判定になるんだ……」
「おぅ、宇宙もそうだぜ。お前等が宇宙に行くようになってから暇なときは宇宙行ったりしてる。宇宙に居る奴等、ウンコを宇宙に捨ててんだよ。だから宇宙がトイレ判定になってアタシは宇宙を航行できるようになった」
「字面と絵面が面白過ぎる」
トイレの花子さん、宇宙に進出。