ホラー系の世界に転生したのにあまりにも怪異がカラっとしている   作:ない因習村:ふるさと納税の返礼品がPC

2 / 5
転生しました。隣人が死体を食べる猫だそうです。ヤニは吸いませんがトイレをするとき宣言します

「おはようございます」

 

 俺は神棚に手を合わせた。俺は転生した。現代だった。ホラー世界にしては珍しいとも思ったけど今時はやっぱり現代か。感覚的に四谷怪談とか鬼太郎とかソッチ方面を考えていたのでなんともだった。まぁでも夏目〇人帳的な世界だと思えばまぁ……?

 

 神様が転生してくれたこともあり、今世の俺はとても信心深くなった。東洋系と言っていたので神棚を選んだというワケ。神棚って東洋っぽくない?

 

 というわけで、というわけで?無事……無事?高校生になり、俺は一人暮らしを始めている。こちらの世界はホラー系の世界という名にふさわしく怪奇現象や奇妙な出来事、失踪事件に事欠かない。それは隣人にも言える事だった。

 

「『ウンチが出るにゃ!!』」

 

 学校に近いからと安いアパートを選んだのが失敗だった。とても壁が薄く隣人の声がはっきりと聞こえてしまう。それに隣人ガチャにも外れてしまった。隣人はトイレをするとき、叫ぶ癖があるのだ。

 

「『おしっこも出るにゃ!』」

 

 最悪な目覚まし時計を聞きながら学校の準備をする。今日はちょっと遅かったな、お腹の調子が悪いのかな。俺は胃腸薬を片手に玄関を出ると、お隣さんもちょうど扉を開けて出るところだった。

 

 黒髪ショートに赤の差し色、猫耳が生えた同い年の女子高生。二つの尻尾がチャーミングポイント。火車で猫又の猫又さんだ。名は体を表し過ぎる。

 

「おはよーにゃ。昨日はニンニクマシマシ豚骨ラーメン食ったからちょっとお腹の調子が悪いにゃ」

 

「はい、胃腸薬です」

 

「どーもにゃ」

 

 水なしで飲める胃腸薬をさらさらと流し込んで咽る猫又さんは見た目だけならとても美人だと思う。だが質問させてほしい。トイレを実況する人とは付き合えるだろうか?学校でも叫ぶから問題児扱いで、しかも実況が実況なので本当にやめてほしい。

 

『下痢にゃ!ショットガンにゃ!』

 

 これが引っ越した初日の夜に聞こえたファーストボイスだった。引っ越しの際少しごたついて挨拶周りは次の日にしようと思った矢先のことだった。俺は初日で後悔した。もっとちゃんと内見をしておけばよかった。安さに負けるんじゃなかった。

 

「今日は現国の小テストがあるにゃ。バッチリにゃ?」

 

「まぁ多分、大丈夫かと。あと常々思ってるんですがその語尾はやっぱり猫又だからですか?」

 

「にゃ?これにゃ?違うにゃ。キャラ付けにゃ。……普通にしゃべる事も出来るが、それだとキャラが立たないから自分で付けている。昨今の妖怪業界はハッキリとした個性がないと埋もれていく修羅の時代になりつつあるからな」

 

「すごい、根が真面目な人ってこんな変な方向に真面目ることあるんだ。じゃあやっぱりトイレするとき宣言するのもキャラ付けですか?」

 

「違うにゃ。小さい頃トイレが下手すぎてまき散らしてたからトイレするときにせめて事前に言うようにしろって家族に怒られたにゃ。その名残にゃ」

 

「トイレ下手だったんですか」

 

「そうにゃ。ウンチ付きの猫砂を兄弟姉妹にバラまいてたにゃ」

 

 最悪だ。というかトイレするときに鳴く猫がいるってこういう理由な時もあるんだ。

 

「猫形態での話なんですね」

 

「にゃ?私は元々猫にゃ。猫が長生きして猫又になるにゃ。で死体を食べ始めると火車になるにゃ」

 

 おいくつですかとは聞かない。だって言ってないのにこっちを睨みつけているからだ。思っただけだよ。それだけなら許してください。俺はとりあえず頭を下げるとうむと許された。助かった。話を戻そう。

 

「死体食べるんですか」

 

「昔は食ってたけど今は食わないにゃ。普通にラーメンの方が旨いにゃ」

 

「時代ですね」

 

「火車としてのアイデンティティを時代で片づけるのも変な話にゃ」

 

 俺達はそんなことを言いながら学校へ向かう。向かってる学校も色々変だ。ウチの学校には人よりも怪異の方が多い。そして少数派の人間達も大概何かしらの変なものを持っている。それに人間達は人間達で同じ生徒だというのに怪異の存在に気づいていない。

 

 俺は神様に転生させられたのか、はたまた今世の生まれによるものかそうしたみんなが普通に接している怪異の怪異怪異してるところはちゃんと見える。猫又さんだって人間達からすれば、赤のメッシュが入ったウンチの実況をする女子高生にしか見えないのだ。この世は狂ってる。

 

「そう言えば今日満月ですね」

 

「満月にゃ。(ロウ)がハッピーになる日にゃ」

 

「準備しとかないといけませんねぇ」

 

「花子姐さんがバッチシにゃ」

 

「なら安心ですね」

 

 友人である狼は俗にいう狼男だ。名をばウルフリック。名は体を(以下略)。西洋系の妖怪?らしく外国人で銀髪にマッシブというピ〇シブで人気が出そうな見た目をしている。ちなみに無駄毛が嫌いらしくつるつるらしい。満月になると狼男としての本性が出るのだが、それと同時に剃った毛も生えてくるので翌日泣きながら剃毛する姿が見られる。永久脱毛しても月のパワーで生えてくるらしい。教頭先生(禿)が羨ましそうな顔をしていた。

 

 この世界はホラー系の世界だ。世に怪異が蔓延り、怪談、ヤバい神様、都市伝説がのさばっている。そんな中レジェンド級の活躍をするのがトイレの大御所花子姐さんである。ここら辺の地域は花子姐さんの管轄だ。よって、本当にヤバいタイプの怪異はあんまり出てこないようになっている。

 

 今日も満月で活性化するタイプの怪異を集めて花子姐さんがワンパンさせて鎮静化させると聞いて俺はひとまず安心した。花子姐さんなら大丈夫だろう。あの人は少し性癖を拗らせてこの世界に居着いてるのであんまり近づきたくないが、今日の感謝は伝えなくてはいけない。

 

 と、学校に向かう為の辻を曲がると、世界から唐突に人の気配が消えた。後ろを振り返る。誰も居ない。前を見る。誰も……居た。

 

 辻を曲がった先、電柱の影に誰かが居る。

 

 妙に身長が高く、線は細い。十中八九怪異だ。だって3m以上ある。これで一般人だったら3mの男がこの世に存在することになる。世界一身長が高い人でも272㎝なのだからギネス認定されるだろう。あとは……多分男だろうか?怪異の性別なんて気にするのかというが、じゃあお前は花子姐さんの前でチンチン連呼できるのかという話だ。女性の前で下ネタの話をしない良心は昨今の怪異にも要求されることを覚えておいてほしい。兎角、男は低く、風が壁の隙間を通るような声でこう言った。

 

「力が、欲しいか?」

 

「あ、A〇MS?」

 

「多分今の子にはミームしかわからないにゃ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。