ホラー系の世界に転生したのにあまりにも怪異がカラっとしている 作:ない因習村:コンビニ同士の距離が近い
「豪雪地帯のレミオ〇メン、ドカ~雪~ねぇ」
「死罪ね」
夜になるまで暇なのでユーモアテストを受けている。最近のカスユーモアのせいで俺のユーモアはとんでもないことになりつつあるのでリハビリも兼ねてセンスを磨く次第。
「語感で決めた感があって浅いわ。底が」
「ドカ雪ですよ?」
「それなら絵面的にドカ食いでもいいじゃない」
「ドカ食いのレ〇オロメン?」
「ドカ~食い~ねぇ」
「んふっ、クソッ負けた……」
「あと前置きするならドカ食いじゃなくてデブのレミ〇ロメンね。通しでやってみなさい」
「デブのレミオロ〇ン、ドカ~食い~ねぇ……んふふ。ズルッ、これは負けです」
予想出来ている面白さはズルイ。敗北宣言だ。ドカ食いの方が面白いな。俺はカスユーモアに汚染されて正常なユーモアを判断できなくなっているのでメリーさんにユーモアの何たるかを教示してもらっている次第だ。
「ユーモアは説明せずとも通じるからユーモアよ。説明ありきのユーモアは総じて死罪ね」
「ユーモアに厳しい。せめて情状酌量の余地を……」
「死ね」
「酷い」
「……一連の流れを踏みなさい」
「………………あっ、罪がないから無罪ってことか」
「これがカスユーモアよ。一連の流れを踏まえて言うのもユーモアだけれど、相手に気づいてもらえないなら鮮度が落ちて死ぬわ。こうしたユーモアは鮮度とセンスに依存するのよ」
「結局ユーモアってなんなんでしょう?」
「ね、安易に下ネタに頼らない言葉遊びかしら?」
「死もなくなった……あっ、シモない言葉遊び」
「鮮度ギリギリでしょ?」
「これ相手の理解が一歩遅れたら腐るんですか。諸刃の剣過ぎません?」
「だから言葉を磨くしかないのよ」
「言葉は刃ってそういう……」
達人の試合みたいな独特の空気感があるんだよなこの会話。一歩踏み外すとカスユーモアになるというギリギリを攻めつつ、どちらが相手の理解がギリギリ及ぶか及ばないかの範囲で言葉遊びするかみたいな。
カフェを出ると即座に黄昏時間に誘拐される。結構長い事喋っていたような気がするが、どうやらまだ終わってなかったらしい。遠くで巨人の顔なし……恐らくのっぺらぼうさんだろう……が顔面の横にベテラン幼女パイセンを張りつかせて徘徊する様を眺めている。
「あぁいうのを見ると人間がまだまだ捨てたものじゃないと思えるのよ」
「幼女が顔なし巨人の頬に張り付いてる姿で?」
「私達怪異は人間のおかげで生まれた者も多いわ。あれから生まれる怪異がどんなのか気になるじゃない?」
「幼女パイセンから生まれた怪異……多分人間も怪異も対処できないと思いますよ。てか、幼女パイセン自体が怪異になるのはありえそうですけど。あの人平然と体内に怪異飼ってますし」
「あの子そんな恐ろしいことしているの……?」
どうやら怪異側にとって幼女パイセンがしていることはとんでもねぇことらしい。そうだよね、犬猫を拾った感覚で怪異の物持ち帰るし、怪異も持ち帰っちゃうのはさすがにおかしいよね。
話を聞いた時は確か、幼女パイセンはいくつかの怪異を体内に隠し持って身を護る道具として使っていた。確か言及していたのは『以津真天』『塵塚怪王』だったかな?
『以津真天』は弔われなかった死人がいつまで死体を放置するんだという恨みを持って生まれる妖怪だ。可哀そうだから弔ったら付いて来たらしい。
『塵塚怪王』は幼女パイセンらしい理由だった。黄昏時間や異界等色んな所から拾ってきたよくわからない物が合体していつの間にか『塵塚怪王』らしい。由緒あるものや触れるだけで病気になりそうなものばっかだったので霊的な力が事足りてそうなっちゃったらしい。
主な仕事は移動と護衛。本人的に誰かに頼ってばかりじゃ生きていけないというストロング強者の考えを持つが、本当に危ない時は『塵塚怪王』が壁を形成し『以津真天』が空飛んで逃げるらしい。あと頼ってばかりはダメなので頼り過ぎない程度に使っているとのこと。
あぁ今見えた。
鵺の鳥版みたいな『以津真天』がのっぺらぼう巨人から離脱し、その足元に片手で捕まるようにして幼女パイセンがぶら下がっている。その類まれなるフィジカルは自らの体重を片手で支えきれるほどで、ぶらんとぶら下がったまま、もう片方の手をかざした。
瞬間、放出されるゴミの山が情け容赦なくのっぺらぼうの横っ面を張り倒し、轟音を立てて倒れ込むのっぺらぼう巨人とこっちまで轟く風と音を眺めながら俺は再度聞いた。
「あれから生まれた怪異はたぶん誰も処理できないと思うんですよ」
メリーさんは真顔でそれから家に帰るまで、何も言わなかった。
──────────
「『血便にゃ!!!』」
「大丈夫ですか!?」
思わず叫んでしまった。いつものトイレ実況を聞いていたらふいに血便宣言されたので心配になってしまった次第である。
メリーさんはドグラマグラを逆さまに読みながら我関せずで、俺だけで血便に対処しないといけないことになった。どうしよう?とりあえず……ボラギ〇ール……か?
ベランダからボ〇ギノールを片手に移動する犯罪者まっしぐらの姿で猫又さんの部屋に入ると、ケツを押さえた猫又さんが床に土下座するように倒れ伏していた。
「最近ケツを労わってなかったからひでぇ痛みにゃ……」
「どうぞ、〇ラギノールです」
「あんがとにゃ。」
ボラギノー〇を俺の手から奪い取ってトイレに籠った猫又さんを見送るんだが、今日一日トイレの話しかしてない気がする。……マジで今日トイレしかないの?ずっと?
そうしているとドンと壁を叩かれる。お隣のお隣さんだ。どうやら五月蠅かったらしい。俺は平謝りするが、ドンドンと次第に音は大きくなってきている。ブチギレだ。
「どうしましょう猫又さん、お隣さんめちゃくちゃ切れてるんですけど」
「私のケツもキレてるにゃ……」
「いや切れてはいるんでしょうけどお隣さんもキレているんですよ」
「ボラ〇ノール渡すからお隣さんにも塗ってきてにゃ」
「ボラギノ〇ルで隣人に謝罪!?」
塗れと!?隣人に!?
ドンドン強くなる壁ドンドン、片手には今しがた渡したはずのボラ〇ノール。俺は意を決してボ〇ギノール片手にベランダからお隣さんのお隣さんに侵入した。
「本当にごめんなさい!!お詫びに〇ラギノールを……!」