ホラー系の世界に転生したのにあまりにも怪異がカラっとしている 作:ない因習村:小学生は放課後サリ裏に集まる
「あの」
「どうしたのかしら?」
「ケツ揉んでますよね?」
「落ちないようおぶる為には掴みやすい場所をしっかり掴んで抱える必要があるわ」
「いやガッツリ揉んでますよね?」
「私は元々人形よ。材質故に熱の感知には強いけれどその分触った感覚や痛みが鈍い。しっかりとかかえ込んでいるかどうか確認する必要があるわ」
「ガッツリケツに指沈み込んでるんですけど、もう掴んで抱えるっていうか食いこんでるんですけど」
「致し方ない犠牲、コラテラルダメージね」
キリッとした顔で応対するけど絶対セクハラだよね?ねぇ?聞いてる?
「おーいセクハラメリーさん、どうして顔が真横に向いて……いやキモ、角度どうなってんすか」
「私は怪異よ。首の可動域なんて自由自在」
「だからって首が180度近く曲がるのは恐怖の分類なんですよ」
「怪異的には誉め言葉ね」
「それ擦れば良いってもんじゃないんすよ。あとちゃんと前見てください」
ケツをガッツリと揉まれながら夜道を歩く。もうすっかりと暗くなってしまったこの夜に二人で歩いていれば、それはもう怪異に関わってくださいと言っているようなものだ。ましてや相方が怪異たるメリーさんならば、もはや同業者といっても差し支えないだろう。
つまりは世間話のノリで怪異が寄ってくるというワケだ。
夜、横断歩道の信号真下に佇む人影が居る。
その人は赤いコートにマスクを付けた身長の高い女性だった。それだけならまぁワンチャン居るかもしれないので大人しく横断歩道で信号待ちをする。
するとその人はそぉっと囁くような声でこちらに問いかけた。
「ねぇ私、綺麗?」
「普通に身長高い女性は大人の女って感じがして未成年的に憧れはありますね」
「私メリーさん、今からあなたを背負い投げで横断歩道に叩きつけるわ」
「やめてください」
グルンと身体が一回転するところをすかさずメリーさんの身体に背中を這わせて前へと転がり、そのままメリーさんを逆に横断歩道に叩きつけようとしてメリーさんもまた背中を這わせるように前へと一回転させて転がる事でさらに俺が一回転し……
そうして俺達はグルングルンと互いを互いに前へ投げ飛ばし、遠心力で回転しながら横断歩道の赤信号をブッチして夜闇に消えていった。
「えぇ……?」
そういう怪異にしてもあまりに意味不明過ぎて追いかける気にもならなかった。後日、訪ねてきた口裂け女さんは戸惑いとドン引きの感情を綯交ぜにしながらそう答えたのだった。
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「着いたわね」
「着いちゃいましたね」
遠心力走法は双方の息の合った連携とためらいのなさがないと相手を地面にたたきつけることになるので諸刃の剣ではあるのだが、その点『日本に居そうな動物を挙げて言って居なかった動物を言った方の負け』ゲームで3時間掛かっても決着がつかないほど白熱した俺達には問題なかった。マジでメリーさん強い。でもタスマニアデビルはギリ居る事知ってたけどクオッカが居るとは思わないじゃん。不意を突かれたよね。
とりあえず花子姐さんにアポイントメントは取ってあるのでそれ用の来客合図を知らせる。校門の柱と柱の間に右から左へ順々手を通していき、最後に柏手を4回打てばいいらしい。
言われた通りこなせばひとりでに校門が開き、中から人影が見える。スマホのライトで照らしてみれば、それは人体模型だった。
「どうも本日はご足労頂きありがとうございます。わたくし、当学校の人体模型を担当しておりますプラ瀬と申します。当方PVC製です」
「どうもご丁寧に。私はメリーさん。都市伝説のメリーさんその一人で材質はTPEと布製ね」
「それはそれは、熱可塑性同士仲良くできればと思います」
「えぇよろしくお願いするわ」
「無機物同士の会話ってそこで共通話題得るんだ」
すげぇ、知らない世界過ぎるな……材質による加工について一頻り話題を重ねた二人は互いが互いに信頼できる相手と理解できたらしい。わからない。難燃性でなぜ意気投合出来たのかが全く分からない。なんで?
「やはり生物素材は感覚が違うので付いていけないでしょう」
「生物素材はしなやかさしか売りがないものね……」
「なんで今材質マウント取られた?」
置いてけぼりにされた空間でぼへぇっとしていたらプラ瀬さんは此方に気づき申し訳なさそうに本題を切り出した。
「申し訳ありませんお待たせしてしまって。久方ぶりの新たな無機物系怪異との会話でしたので話が弾んでしまいました」
「あ、軟質ジョーク」
「ですです」
「知らない鉄板ジョークやめてください」
「無機物系だとあるあるというか、軟質硬質で一笑い取るのが鉄板よ。価格はマウントになるし、耐久性は耐用年数によってバラバラだから突っ込みにくい。だから軟質硬質が一番触れやすいジョークなのよ」
「いやだなぁ~。価格マウント取るのと耐用年数でキリキリするの。収入と年齢で気を遣うならもう社会じゃん」
「気にされる方は本当に気にされますから……聞きますか?無機物怪異の大御所、唐傘お化けに耐用マウントして動く石像に加工された西洋怪異の話を……」
「ちょっと気になるな……」
「昔、天候に関わる怪異を各地で集めて顔を合わせようという会があったのですが、そこで唐傘様にガーゴイルという方が耐用年数でマウントを取り……日本のゲームの動く石像風味に削られてしまった事件がございまして……」
「あーん、なんか微妙に言いにくい事を……」
「それゆえか、今では唐傘様は新しさに拘る新製ジャンキーとなり、自らをビニール傘に……」
「今の唐傘お化けってビニール製なんですか」
「ビニールで透け透けです……。捨てられた傘が怪異と化した方なので現代的にビニール傘の捨てられ率もとい忘れられ率が多く結果的に力は増していますが……」
「あぁ確かに……現代で言えばビニール傘の方か……」
「見た目があまりにも破廉恥で……」
「不透明ですもんね。モザイク掛かってますもんね」
「周りからはエッチすぎると」
「唐傘の傘部分って服だったんですか」
半透明的な服を着たお化けという事か……透け透けのネグリジェ着てる人みたいな……?
「大体そのような認識です」
「それはまぁ……エッチすぎるか」
嫌だな……俺ってこれから傘使う時透け透けネグリジェだなって毎回思わされんだ。ミーム汚染が過ぎるでしょ。
「そのようなワケで今唐傘様は特別えっち隔離封印措置されているワケなのですが……これは今回関係ないので横に置いておき」
「あぁ、すごい気になることを横に置かれちゃったな……まぁ本題から外れているのはそうなので本題に移りましょうか」
「ありがとうございます。本題なのですが、この学校は未曽有の危機に追い込まれているのです。一人の怪異によって。……見てもらいながら説明した方が早いでしょう。付いてきてください」
そうして俺達は目にすることになる。人間の業の深さというものを。