ホラー系の世界に転生したのにあまりにも怪異がカラっとしている 作:ない因習村:小学生は放課後サリ裏に集まる
「前提としてわたくし共の学校の怪談についてお話しておきましょう」
この学校にも学校の怪談があるらしい。ただウチの学校とは独自の体系を辿っているとのこと。ガラパゴス進化みたいなこと言うんだなとも思うが、怪談なんて噂と共に変化するから大体ガラパゴスとのこと。それもそうか。
一つ一つ説明すると長くなるので割愛するが、音楽フェスを毎夜開催する音楽室の怪異、目の前にいる動く人体模型、調理室で振り回されるメンヘラ包丁、逆に距離が短縮されている学校の渡り廊下、2時を過ぎると突然始まる深夜ラジオ:学校レディオ、美術室に置いてある裸婦像に対して『エロ……』とだけ言う幽霊の6体だった。で、最後7個目の怪談を知ると……というものらしい。
ただ最近になって自分達の知らない7つ目の怪談が現れた。また知らない怪異が学校に入り込んだのか、そう思って追っ払おうとした矢先、事件は起こる。最初の被害者は調理室に居たメンヘラ包丁だった。
某日未明、いつもの如く振られた腹いせに近づくもの全て傷つける勢いで振り回していると、包丁の持ち手部分を掴まれ、そのまま調理に利用。怪異のプライドにかけて傷つけようと刃先を相手に向けようとしたものの、圧倒的なパワーにより抑え込まれ、調理に使われ、見事にちゃんこ鍋が完成した。
それだけならただのパワータイプの調理部員が真夜中にちゃんこ鍋を作っただけだ。これはこれで意味わからないが、まぁギリ話の筋は通る。だが被害はこれだけに留まらなかった。
音楽フェスの怪異達は無残にも騒音被害の張り紙が出され白けた雰囲気となり、学校レディオにはロクでもねぇお便りが届いた。人体模型は渡り廊下と次の被害は誰だ……と話し合っているうちに美術室の怪異が襲われた。
裸婦像よりも強い刺激を受けてしまったらしい。今までの裸婦像に興奮する純粋な彼はもう居ない。呆然とした顔で裸婦像を見つめ『……エロくない』と自失した状態で発見され、これは緊急を要する事態だと否が応でも理解させられた。
誰がこんなことを。義憤に駆られた人体模型は下手人を探し始め、そして発見した。空き教室、夜な夜な何か儀式をしている人影を……。
「アレは悪魔です。怪異を怪異とも思わない卑劣な奴です」
「本人達からしたら真面目な話なんだろうけど細かく見るとギャグなの何?」
なんだよ音楽フェスする怪異。なんだよ裸婦像に興奮するエロガキ怪異。前者は騒音苦情で畳まされ、後者は裸婦像よりも強い刺激を受けたらしい。まぁ此処は中学校、居るとしても中学男子なのだとしたら、そりゃあ裸婦像に『エッロ』と思う思春期男子中学生は居るかもしれない。
そんなエロガキ思春期男子中学生に対して、大人のエッチでもより刺激の強いものを見せたらそりゃあ性癖ごと壊れてしまうだろう。なまじ幽霊で死んでいる。死んでいるからずっとエロガキのままだ。思春期が終わることなく、強い刺激が薄まることはない。これから彼は自分が今までどんな低俗なレベルで『エロ』を扱っていたかをずっと考え続けることになるだろう。それはエロガキにはあまりにも酷だ。可哀そうに。
「彼はもう裸婦像に興奮する事はなくなってしまいました」
「健全では?」
「何を言うんですか!?アイデンティティが……エロガキが失われたんですよ!」
「『エロガキが失われたんですよ』って生まれて初めて聞いたかもしれない」
「彼はもう捻じ曲がった性癖を持つことになり、今後飼育小屋に入り浸る事になるでしょう」
「恐らくケモ系のなにかを見せられてソッチ側に捻じ曲がったであろう事はわかる」
そりゃあ人間の裸婦像よりも動物系の方に興味移るよね……。裸婦像はまぁエロイだろと内なる男子中学生も言っているが、ケモに性癖が移ったなら人間の裸体なんぞに興奮することはないだろう。
話を戻そう。この世からエロガキが一人失われた。これを危惧した怪異達は下手人を何とかしようとして空き教室にてソイツと出会った。
「今もやっていることでしょう……アレです」
そうこうしているうちに目的地へと着いたらしい。空き教室の中を覗くと人影がなにやらロウソクを円形に照らした魔法陣の上に何やら儀式をしている。ブツブツと何かを言っており、よく聞くために扉に耳を当てるとそれが何を言っていることはわかった。
「『ピックアップガチャ、天丼、有償ガチャ、復刻、天丼、課金は家賃まで、天丼、デイリーガチャ、配布、ログボキャラ、人権、天丼、デイリーガチャ、フレンドガチャ……!』」
「ガチャ狂いの14の言葉なかなか聞いたことないですよ」
ガラッと開き、突っ込んだ。それに気づく方も気づく方だがオマージュする方も方だと思う。緑の赤ちゃんならぬガチャの女神を呼び寄せようとするガチャ狂いのプッ〇神父は、ビクゥ!と猫のようにビビり飛びあがり、こちらを向いた。
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ショートボブの黒い髪に日焼けた肌がロウソクの光に照らされる。見た目だけなら陸上部所属の女子中学生だがやってることが文系中学生過ぎる。なぜこんなことをやるのかと問えば、理由は端的だった。
「友達が……欲しかったんです」
人影、もとい彼女はボソボソと語り始めた。この学校に通う中学1年生なのだが入学してから1か月、重い病気にかかり休んでいたらしい。自分が学校に通えるようになった頃にはクラスの人間関係は形成されており、元来陰キャでもあった彼女は順調にボッチの道を進んでいた。その見た目で陰キャなんだという言葉は封印した。
友達に飢えた彼女は考えた。友達がいないなら作ればいい。そう、物理的に。
まず人体錬成に手を出した。途中まで成功したのだが現代の技術では人間の魂を別のナニカに突っ込むことは出来ず、たとえホムンクルスが生まれようとそれは中身赤ちゃんであり、どちらかというと母親になってしまう。生まれてしまった得体の知れないナニカを始末した後、計画はとん挫した。
次に彼女はこう考えた。友達が作れないなら呼べばいい。そう、魔術的に。
奇しくも彼女には才能があった。霊的才能だ。
悪魔召喚の儀式やひとりかくれんぼの儀式を介して友達を呼ぼうとした彼女はここである変な目的を持つことになる。様々な怪異を呼び出せるほどの才能を持っていた彼女は欲張ったのだ。
最強の友達欲しいな……と。
友達が出来ればよかったのに最強を求めてしまった彼女は夜な夜な悪魔召喚の儀式やひとりかくれんぼで呼び出した怪異をガチャと称して、日々レジェンド級の怪異をお友達にしようとしている。なまじ才能がある分成功してしまっているのが問題だった。
彼女は日々、悪魔召喚の儀式に血を捧げ、ひとりかくれんぼでぬいぐるみにナイフを刺し続ける。いつか最強の友達を呼び出すために。レジェンドレアの人権キャラを呼び出すために。彼女はずっと回し続けている。友達になる為のガチャ……通称:フレンドガチャを。
「あんまりフレンドガチャをそういう言い方する人居ないんですけどね」
普通フレンドポイントとかで回すガチャのことを言うのでは……?
「で、でも友達になるなら欲しいじゃないですか!さ、最強の友達が!!」
「最近見たアニメは?」
「妖怪〇ォッチとダークギャ〇リングです……」
「それ組み合わせたら邪悪な妖〇ウォッチなんですよ」
「で、でも……」
彼女は語る。自分がどれだけガチャに費やしてきたのか。まずガチャもとい儀式に捧げる供物はピックアップガチャだ。これが変われば召喚される悪魔も変わる。次に血。彼女はこれを『有償石』『課金石』と呼んだ。確かに課金は身を削るとは言うけれど……!物理的に身を削るのは違くないか?
「でも出し過ぎていつも貧血になるのを耐えるために最近食費ばかりにお小遣いが減って……」
「あぁそれなら課金かもしれないけど……!」
嫌な課金。え、じゃあちゃんこ鍋も……?
「は、はい。ちょっと課金しすぎてフラついたので近場にあった包丁と持ち込んだ材料でちゃんこ鍋を……」
「女子中学生が貧血状態でちゃんこ鍋を!?」
「金銭面やレシピ諸々考えると最終的にちゃんこ鍋作って食べた方が早いなって落ち着きまして……」
え、しかもメンヘラ包丁がこっちに危害を与えようとしている状況で……?
俺は目の前の少女が恐ろしくなった。この子、何気に人体錬成途中まで成功させてるしヤバい奴では……?その危惧は全くもってそのとおりであり、彼女は俺達を見て嬉しそうに言った。
「苦節3カ月……!よ、ようやく私にもログボキャラが来たんですね……!」
「あんまり人のことログボキャラ扱いしない方が良いと思うよ」
げに恐ろしき令和の中学生、友達の為に人体錬成や悪魔の儀式に手を出す少女は、真夜中に訪ねてきた我々をログボキャラ扱いする異常者であった。最近の子ってみんなそうなの……?