ホラー系の世界に転生したのにあまりにも怪異がカラっとしている 作:ない因習村:今でもブラボマルチが盛ん
「な、なんでそんな平然として居られるんですか…!」
「そこまで気にすることでもないですし……」
「しょっ引かれるかもしれないんです!ましてや貴方は不法侵入で捕まってもおかしく」
「大丈夫です大丈夫です」
「大丈夫なの?」
「えぇ、メリーさんに助けてもらうまでもありません」
ワタワタと慌てて片づける二人を尻目に俺は逃げも隠れもしなかった。
メリーさんが少し不安な表情を見せるがここは任せてほしい。俺は堂々と空き教室のドアの前に立った。外から見たら人影が丸わかりだ。相手も気づいたのだろう。こちらに近づいてくる。
ガラリ
「あ、あの何して……子供?えーっと今の時間立ち入り禁止になってて不法侵入なんすけど」
のっぺらぼうさんみたいな喋り口調、髪は金髪、少し背丈は高いものの痩せている所謂ヒョロガリで警備服と警棒を持っている。チャラそうな大学生がそこに居た。
「てか包丁もってるじゃないすか。駄目すよ。ちょっと仕事として報告しないといけなくなるんすけ」
「今からいくつかのワードを提示し貴方に考えるだけの時間を10秒上げます。その後貴方に質問をするので答えてください。それ以外の問答は無用です」
「えっ、あっ、はい」
「では行きます。メリーさん、学校、真夜中、悪魔召喚の儀式、トイレの花子さん、怪異、最近の物音の正体、学校の怪談、先輩上司からの忠言、行方不明の仕事仲間、この仕事を続けていく上での禁則事項。以上です。シンキングタイム、スタート」
「えっえっえっ?」
唐突に何を言われたかわからないといった様子だが、それも10秒というシンキングタイムで頭を回すしかない。徐々に回っていくこの世界の適応力という名の毒は恐らく彼の危険信号を気が狂ったように叩きだした。
怪人百面相のようにコロコロと表情を変え、そして最後に無表情になった警備の人に対して俺は問うた。
「では質問します。貴方は今日何か見ましたか?あるいは何か異常がありましたか?」
「ありません。何も見ていません」
「OK。それが互いの身の為でしょう」
俺はサッと自分の電話番号が書かれた紙を渡した。
「もし何か困ったことがあったら電話してください」
「ありがとう、大学生で警備のバイトしている茄子原です。
「具体性がないのでなんのことだかわかりませんが
「わかった。今日俺は何も見ていないし何もなかった。無事バイトを終えた。それだけ」
「えぇ。俺も学校なんて行ってないし貴方と会ったことはないです。ですが偶々偶然、適当な電話番号を打ったら俺が出ることでしょう」
「重ねてありがとう。じゃ」
ふぅ……そそくさと去っていく茄子原さんを見送ると後ろに居た人達がドン引きの顔でこちらを見ていた。なんですか。別に普通のことですよ。
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この世界はホラー系世界だ。世に怪異蔓延り、人間がいつの間にか消えている世界。そんなところで夜の職業全般に就く人達は大概何かしらのネジが外れている。金がないので自分の命を担保にする人、同類、恐怖という感情が失ったマシーン、様々だ。
その中でもこうして学校の見回りをしている警備業の方々はとても素晴らしい勘を持ち合わせていることが多い。見たくないものは見ないふりをし、自身の記憶をセルフ抹消する技術を汎用搭載している。
「というか夜の仕事する人って基本的に怪異が見える人が多いんですよ」
「え、多いんですか?」
「多い多い。なんせ
人間、見えないものよりも見えるモノの方が怖かったりする。
わかりやすく言うとゴキブリだ。見えないといるかどうかわからないが、もし見かけて剰え逃がしてしまった場合、どこかに居るという確信をもって生活することになる。それは怖いだろう。
つまりそれと同じように、怪異が見えてしまうからこそ、見えるところに身を置いた方が安心できる。自分たちの知らないところで動かれるよりも目に届く範囲で付かず離れずの距離感で居たい。知ってしまったからだ。
「あ、あの途中の単語?キーワードみたいなのってなんですか?」
「基本的に怪異は知るとアウトなことが多いんです。見るな、聞くなとか言うでしょう?なので見える人同士になるとそこら辺を避けるために要所のキーワードだけ抜き出して、後は相手の警戒アラートに任せるんですよ」
ようは日本人に標準搭載されている地震警戒アラートと同じだ。揺れたかな?と思ったら肌感で理解できるし、危険な地震はなぜか異常に早く察知することができるアレ。この世界ではそれに加えて怪異警戒アラートが見える人のみにインストールされている。
前半のキーワードは現状の説明。後半のキーワードは恐らく警備の仕事に就く上で上司や先輩から口酸っぱく言われているような事を予想して言ってみただけだ。ちなみにこの世界の夜の仕事は大体こういう上司先輩からの忠言や禁則事項があるので突っつくと怪異警戒アラートをガンガン鳴らせるのでオススメ。
「見える人って怪異警戒アラート標準搭載されてるんですか……?」
「搭載されてないと生き残れませんからね」
「私生き残れない……?」
「いや、貴方はなんか力強すぎてテイッで死んでるじゃないですか」
「あ、そうだった……私はつまり……五〇悟……?」
「最強さんなら飼育小屋の彼の面倒ちゃんと見てくださいね」
「すみませんナマ言いました」
恐らく彼、茄子原さんも同じく見える人なのだろう。往々にして見える人は見えない人に馬鹿にされたり、距離を置かれるので必然的に自力での対処を求められる。
対処できなかったら死ぬので否が応でも対応力は磨かれる。結果、今の臭いものには蓋をし、触らぬ神に祟りなしと距離を置くことができる人材の完成だ。多分あの人逃げ足はピカイチだろう。じゃないと生きていけないからね。
「それに見える人は怪異側から寄って来てちょっかい掛けられて周りに被害が行くので、怪異のちょっかいすら無効にするフィジカルモンスターか、同じく見える側の人か、狂人しか傍に置けないんですよ」
「最悪の三択……えっ、わ、私も同じ感じですか!?」
「えぇまぁ。なので怪異をお友達にするって発想はアリだと思います。基本見える人は見える人同士かよっぽど頭のネジ外れた人じゃないと無理ですよ」
「う、うぅ……猶更最強の友達作らなきゃ……」
「ガチャ感覚で儀式するのやめてください……そう、そのことです。貴女には校内で悪魔召喚の儀式をやめていただきたいんですよ」
「え……じゃあ私はどうやって友達を……!」
「いやそれなら俺達が友達になりますよ……別に人体模型さんもガチャやめてくれるならなりますよね?」
「交換条件として提示されたなら受け入れますがわたくし個人としては彼の責任を取っていただきたく」
「じゃあ貴女のはじめての友達はVRの闇に突き落とした性癖捻じれガキですね」
「いやだぁ~!!!せめて最初の友達はジバ〇ャンみたいな可愛い子が良いのにぃ!もしくはマコラ」
「最強への執着よ。いや場所を変えましょうってことです。提案ですよ。そこで一つお話があるんですが……」
俺は意を決して言った。
「貴女は神を信じますか?」