ホラー系の世界に転生したのにあまりにも怪異がカラっとしている 作:ない因習村:神様の扱いが害獣レベル
季節の変わり目は気を付けよう(ちゃんと体調不良でした。一日お休みして申し訳ないです)
基本五話で終わりなんですが、1万字いきそうなので切りました。
スッと悪女との距離が開いた。多分心の距離はもっと広くなったと思う。悪質な宗教勧誘と思われているんだろうか。それはちょっと勘弁してほしい……そんじゃそこらの悪質宗教勧誘よりこちとらマジもんの悪神を信仰しているのだ。……いやもっとダメか?邪教じゃん。カルトじゃん。
「すみません、宗教はちょっと……」
「模範的な日本人対応ありがとう。でもこの怪異蔓延る世界で神様がいないと思うのは違くないですか?」
「……それもそうですね」
納得した。そりゃあね?この世界で神様居ないとか思えるならあまりにも救いがないよ。逆に神様が居るならなんで救ってくれないんだ!みたいに言われるかもしれないけど、日本の神様思い浮かべてよ。信じてなきゃ全然見捨てるタイプの神が多いし、なんなら関わっただけでアウトな神も多いじゃん。それで神様が居ないっていうのはねぇ……
逆に神様が居るなら神様のせいに出来て安らか(?)に死ねるわけだから救いがない方よりマシってワケよ。
「で、でも私神様の恩恵あんまり感じたことないんですけど……」
「あぁー、多分ちゃんと信仰する相手がいないとダメなんですよ。ほら、全方位にお辞儀してる八方美人ってあんまり好かれないじゃないですか」
「日本人の性質全否定しますね……」
それはね。うん、まぁそういうものよ。確かに日本人は仏教も神道もクリスなチャンも混ぜ合わせてるごった煮信仰がデフォルトだけどさ。まぁそれで助けてくれる神様なんてごく少数だよねっていう。
「やっぱりね。神様も自分のことが好きな人を好きになるモンなんですよ」
「な、生々しい……」
じゃあお前、自分のこと好きじゃない奴を好きになれって言われて好きになれるのか。
「成れません。ごめんなさい。そうですよね、神様も神様ですもんね」
そうだよ、神様だもん。
大体の人間が日本的神様の荒神的サムシングを理解しているから通じる文言だ。神様って基本キレると怖いし、ワガママなもんですよ。俺は昨今のジャパニーズ神様論を引き合いに出して黙らせることに成功したのでちゃっちゃと概要を説明する。
「今俺が信仰している神様っていうのが所謂消えかけの神様なんですよ」
「あー、信仰が廃れた的な……夏目〇人帳で見ました。信仰が少なくなると小さくなっちゃうんでしょう?」
「いやなりませんけども」
やっぱり最近の子は物分かりが良いね。説明の手間が省けるというもの。てかその例えだと初期の話じゃなかったっけ?雨露の神様の話でしょ?令和っ子ならギリ生まれてないのでは……?
「いやぁ~、昨今のドパガキだからと言って気になったアニメを見ないワケじゃないですよ」
「おぉ~~」
「ショートの無断転載で流れてきて気になったので見ましたね」
「理由が現代の最悪のドパガキ過ぎるでしょ」
いやまぁ勝手に流れてくるものだからほぼ回避不可能っちゃ不可能だけどさぁ……。あまりにもあんまりな現代っ子すぎる回答はたじろぐがまぁちゃんと見てるだけマシか。
「無断転載で見るんじゃなくちゃんと本編見る当たりセーフ……?」
「ア〇プラで一気見して致死量のエモを浴びましたね」
「令和特有の例え方。まぁリアルと比べるとあまりにも違い過ぎるからギャップを感じるのはそう」
勘違いしちゃうよね……でもどっちかっていうとちょくちょく挟まる『本来怪異ってこういう怖い奴だよね』っていう話が大体なのよ。それこそ人間にやさしい奴なんてほぼいないからね。
「あぁ、で話戻すけども……。信仰消えかかってる神様がいて~、その神様をなんとか立て直しましょうっていう神様存在支援プロジェクトに参加してるんですよ。神様って基本信仰が消えない限り消えることがないらしくてね。でまぁ神様世界でも仕事って基本無くならなくてぇ……結論から言えば仕事がなくならないのに神様消えるから他に仕事が回って地獄を見るので意地でも消えてなるものかって他の神様に言われてます」
「世知辛すぎませんか?」
残念ながら……人は神の似姿であると言われるように、神様ブラック界隈もまた被造物に受け継がれてしまったという事らしい。カナシイネ。ちなみに神様存在支援プロジェクトは疫病神様が宴会の時にノリで発案したら真面目な神様たちがザッと草案作ってそのまま神様たちの議会で議題としてあげちゃったらしい。辻神様で結果が出たら他の神様も任せるとのこと。
知らないうちに話がデケェ規模になってるなと思わないでもないが、神様が消えて困るのはこっちも同じなので渋々事後承諾した次第。てか神様の言う事なんて拒否できるわけないだろ!腐っても相手疫病神だぞ!あ、疫病神腐ってはいるか……。腐れっていうか疫病全般だけれども……。
「それでまぁ神様存在支援プロジェクトの第一弾としてとある神様の信者を増やすよう言われてるんですよ。もちろん特典もあります」
な、な、なんと!辻に入ることで辻ワールドに移動する事ができる!空気もある!時間も進む!ただ異世界だから普通の人間(ここ重要)はいないので儀式し放題!強い怪異は普通に入ってくるけど黄昏時間や深夜での徘徊で逃げ場所としても使えるぞ!
「び、微妙……いや誰も居ない異世界って言うのはアリですけど……」
「いや、普通に居ますよ」
「居るんですか……」
「まぁ辻ワールドって一人一人個別に配られるものじゃないですからね。全員で共通の世界に通行証だけ渡されるみたいなモンですから」
「つまり……マルチ鯖ってことですか?!」
「いやまぁ……違わないか?」
マルチ鯖と言えばマルチ鯖……か?もっとこうさ。異世界だよ?現代ファンタジーものだよ?良いのその例え?ジャンルが現代ファンタジーからMMOになっちゃうじゃん。ホラーMMOはニッチな需要過ぎるでしょ。人海戦術でホラー駆逐されるじゃん。
「私!マルチに憧れがあったんですよ!!みんなでこう世界に手を加えていく感じ……!」
「いやまぁ基本辻ワールドは自由にしていいとは言われていますけれども」
この子、あのサンドクラフトの某有名ゲームのそれと思ってない?
「ほしいです!私クラフトしたいです!!」
「友人を?」
「友人を!!!」
うーん……まぁ、まぁ学校に被害が出なくなるし……良いかなぁ……?
俺は何となく釈然としないまま希代の悪女に割符を渡すのだった。あ、ちなみに悪女は
「人体模型さん、とりあえずこの悪女を引き離すことができたのでOKってことでいいですか?」
「うーん、わたくし的には彼の責任を取ってほしいのですが……まぁ夜な夜な儀式が無くなるだけでも大分マシにはなるでしょう。精神病は根気強く接していかないといけませんから……」
「怪異の精神病って治るんですかね?」
「死んでるから進行も根治もしなさそうですが……やってみないことにはわかりません」
それに……人体模型さんは儚げな表情で言った。
「彼もきっと苦しんでるはずです。周りのわたくし達が諦めてどうするというのですか」
「苦しんでるかなぁ……?」
性癖捻じ曲げられただけだし、苦しみ……いやまぁ求めるものが手に入らない苦しみはありそうだけど……。
そんなわけで何となく釈然としないものを抱えつつ、夜な夜なフレンドガチャを回す性癖捻じ曲げ悪女を辻ワールドに封印することに成功した。これだけならまぁハッピーエンドかもしれない、花子姐さんの依頼は解決してるし。
だがしかし、この話の中でただ一人、救われていない奴がいたことを俺達は忘れていた。いやまぁ忘れていたというか本人の問題だから俺達どうしようもなくねと思っていたもの。
廊下をドタドタと駆ける音がする。なんだなんだとドアから覗いてみれば、それは先ほど分かれた茄子原さんだった。後ろには……
「なんですか……アレ」
「アレは……エロガキくん!」
「名前それでいいんですか!?」
「彼、何か咥えているわね。いえ、食べているのかしら?」
「アレ、なんか生きていませんか……?」
俺達はサッと顔を青ざめさせた。茄子原さんの後ろ、アスリート走りで駆けてくる件の性癖ねじ曲がりエロガキは口に何かを咥えていた。それは間違いなければ小動物。それも学校ではよく飼われている動物だろう。
「アレ、ウチの学校のウサちゃん……」
「ひぃ!」
今日、俺は初めて人体模型の悲鳴は甲高いというのを知った。俺だって悲鳴が上がらなかったのが奇跡だ。メリーさんでさえ絶句している。エロガキはウサギさんの頭を口から咥えていた。そして、よく見なくともウサギさんは暴れていて、言い換えるなら生きているという事だ。生きたまま咥えている。
こんな時に唐突だが、怪異には幾つかの不思議な力を持っている。それが口を介さずとも会話が出来たりするというものだ。狼とかカスユーモアだって喋りにくかったり、紙だったりするので喋れなかったりするのだが、そこらへんをカバーする標準機能みたいなものが怪異にはある。それはまるで俺達の頭を響くように聞こえてきた。
「『ケモ度4くらいのウサギくんになりたぁい!!!』」
「やべーぞ怪異だッッ!!!!」
俺達は全力で逃げ出した。
──────────
茄子原さんが脅威の逃げ足で俺達に追いつき、走りながら状況を説明してくれた。
「はぁっ!アイツ!飼育小屋を確認しに行ったら居たんすよ!アイツ、ウサギをしゃぶってたんす!」
飼育小屋の見回りに入った時、エロガキは飼育小屋の中でウサギたちに囲まれていた。おそらく怪異の力を使ったのだろうか?兎角怪異の力でウサギを集めたエロガキは全身をモフモフに覆われながらも虚無の目をしていた。そして言った。
『違う……俺自身が……ウサギにならないと……』
そう言っておもむろに近場に居たウサギさんを掴んで……
モッモッ
そんな効果音が聞こえそうな感じでウサギさんの頭を咥えていた。もちろんウサギさんは抵抗するで?足でといった具合に渾身の蹴りを与えていたが残念なことに怪異に物理はあまり有効打にならない。エロガキは純幽霊だ。人体模型さんみたいに物理的な身体を持たないタイプなので物理は効きにくかったりする。
幸い、現状のウサギさんに特段の害はない。エロガキに頭をはむはむされるという精神的ダメージを除けばいたって健康体だろう。それにエロガキサイドも何も食べようとしているわけではない。人が猫吸いでエネルギーを吸収するようにウサギを食むことでウサギエネルギーを吸収してエロガキからケモ度4バニーエロガキに完全変態しようとしているだけだ。
………俺はいったい何を言っているんだ?
いや、いやいや。落ち着け。今はそんな事より重要なことがある。それはこれ以上はむはむされるとエロガキの瘴気によって障りが起こるかもしれないということだ。精神衛生的にも一刻も早く救出しなければならないだろう。
「ウサちゃんになんてことを……動物虐待ですよ!」
「いやまぁ怪異に法律は効かないから……というか責任は君にあるよね?君が変なもの見せなければあぁはならなかったよね?」
「うぐっ」
「どうするんですか!?彼はもう取り返しがつかない悪霊になってしまったんですよ!!」
「あんなバケモノどうしろと!?」
「兎に角まずは隠れた方が良いんじゃないかしら?」
「てかめちゃくちゃ速いのにアイツ、全然距離が近づきませんね」
「あぁ、それは渡り廊下の怪異さんがこちらを縮めてあちらを引き延ばしてるかららしいです」
「ありがとう渡り廊下さん!!!」
「……そうだ!辻!辻ワールドなら逃げ込めませんか!?」
「でもここに辻なんてないわよ」
「いや、渡り廊下の突きあたりがちょうどT字のはずです。屋内なので辻判定が下るかわかりませんが……!」
「信じるしかない……!ガバ辻判定に……!」
「じゃ、じゃあ渡り廊下さん!突きあたりまでお願いします!」
「うぉ~!!辻神様ァ!信者も増やしたんでよろしくお願いしまーす!!!」
俺達はガバガバ辻判定を信じて渡り廊下を曲がり抜けた。