ホラー系の世界に転生したのにあまりにも怪異がカラっとしている 作:ない因習村:ふるさと納税の返礼品がPC
「力が、欲しいか……」
「take2」
どうやら力を与えてくれる系の怪異らしい。力が欲しいか欲しくないかと聞かれたら欲しいと答えるが、にしても見た目が見た目だった。
電柱の影から半身を出し、ぬっという擬音が付きそうな感じで手を差し出してくる様は怪しさの塊。いつもならスルーするんだけど、今日は猫又さんが居るので聞いて見た。
「アレどんな妖怪ですか?」
「アレは……わかんないにゃ。少なくとも妖怪じゃないにゃ。どっちかてと神様とかソッチ系にゃ」
「ソッチ系ですか」
俺が関わってきた中での経験則だが怪異の案件にもいくつかあり、妖怪案件、神様案件、怪話案件の三つに分けられる。妖怪案件が猫又さんや狼、花子姐さんみたいなタイプで大体現代に適用している。怪話案件も大体現代に適用していると言っていい。都市伝説とかそういう系ね。最近だと口裂け女だろうか。そんな感じのヤツ。
で、神様案件。これは結構幅がある。神様の中でも現代に適用出来た場合と出来なかった場合があるのだ。神様はそこらへん結構激しく、緩い神様は本当にスウェット姿で缶チューハイ片手に降臨したりするけど、置いて行かれた神は本当に置いて行かれる。
目の前の神様は多分置いて行かれた後者側の神様だろう。とりあえず話を聞いて見る。
「えーっと、神様……で良いんですかね。どうしたんですか?お家どこですか?迷子ですか?」
「聞き方が徘徊老人のソレにゃ」
「シット。お家帰れなさそうなら一緒に送っていきますけどどうします?」
そう聞くと、長身の男神はビクッと手を跳ね上げさせ、戸惑いのような動きをした後、再度こちらに手を平を見せた。
「力が、欲しいか……」
「take3にゃ」
「口裂け女タイプですかね?」
「わかんないにゃ。でも答えたら多分ヤバいにゃ」
「それはなんとなく理解できます」
俺達は警戒を怠らずにそぉーっと脇を通っていく。どうやら見てる側と反対側になるように移動しているらしく、道路と電柱の絶対に人が入れないだろう隙間にぬるりと入る様はバグ技みたいな挙動だった。
するとワタワタとしながらなにやら懐からナニカを取り出すとそれを挟んで祈るように両手を合わせてすかさずそのナニカを差し出してきた。
「受け取りますか?」
「安全のために私が受け取っとくにゃ」
お願いします。俺は一応人間の範疇なのでうかつに触れたりすると障りが起きる。障りというのは人間が怪異に触れたりする時に起こる病気みたいなものだ。体調が悪くなる。
一方、猫又さんの場合妖怪なのでそういった障りといった事は起きず、無害らしいのでここは身代わりとさせていただいた。受け取ったものはどうやら紙のようで一瞥した後凄い難しい顔をしていた。サッとこちらに渡される。
「触っていい奴ですか?」
「触っていい奴にゃ。とりあえず読むにゃ」
「あーはい」
生返事をして受け取るとそこにはミミズがのたくったような文字が縦にずらずらと書かれていて……古語だ。申し訳ないと俺は紙を猫又さんに差し返す。
「すみません、俺古文苦手で……」
「あぁそっか、昔の字だから読めないのかにゃ。じゃあ代わりに読んでやるにゃ」
「逆に猫又さんは読めるんですか」
「ママから教えてもらったにゃ。妖怪は大体読めたり書けないと馬鹿にされるにゃ」
「世知辛い世の中だ」
「古いだけの文字に固執する時代遅ればっかりで困るにゃ」
「そんないつまでもハンコに固執して電子に対応しない会社みたいな……」
「一緒にゃ」
……あれ?猫又さんって元猫ですよね?じゃあお母さんも一応猫ですよね?普通の猫が古語を習得しているという事……?俺は降って湧いた疑念に脳を支配されている間に猫又さんが文章を要約してくれた。ドパガキに優しい。
「そこに居るのは辻神。悪神にゃ」
「悪い神様なんですか」
「そうにゃ。でも時代に付いていけなくなって消えかけてる雑魚神にゃ」
「消えかけちゃってますか」
「消えかけちゃってるにゃ。でもアンタが神棚で祀って毎日祈ってくれるからそれで何とか存在を保てたらしいにゃ」
「えっ、多分別の神様に祈ってるんですが」
「祈るやり方が神様の祈り先が雑だったり宛先が書いてなかったりして検索にヒットしなくて宙ぶらりんになってるらしいにゃ」
「完全検索じゃないと届かないタイプの祈りでしたか」
完全検索じゃないとヒットしないタイプの祈りとは?とも思ったけど大体お腹痛くてトイレ籠ってる時に祈る『神様ぁ……!』と同じ祈り方らしい。あー、なら特定の神様とかじゃないですよね。なんかもう、手当たり次第に救ってくれる神に祈りますよね。そんな感じだと届かないので宙ぶらりんになってたらしい。
「その宙ぶらりんの祈りを分けてもらってなんとか存在を保ててるらしいにゃ。おかげで自転車操業だった神様生活もようやく黒字が出てこうして目の前に現れるようになったらしいにゃ。イメージ的には借金して他の借金取りに返済するみたいなやり方からようやく解放されて嬉しいらしいにゃ。めっちゃ感謝してるにゃ」
「純粋に可哀そう」
「で、ようやく生活がまた安定したから恩返しも込めて現れたにゃ」
「そんな……まだ生活の方に注力してください。大丈夫と思った時が一番危ないんですから」
「で、力を与えて信仰先に自身も加えてもらうことでより強大な力を貰えるようにするらしいにゃ」
「流れ変わりましたね」
「感覚的には連帯保証人の名義と一緒にゃ。トンヅラしない代わりに一緒に借金返してほしい感じにゃ」
「最悪の例えですね」
「存在を保つために方々の神様から神の力的なのを借りてたらしいにゃ。それの月々の返済による収支がようやく黒字になっただけにゃ。借金は莫大にゃ。その返済に力を代価に協力させるつもりにゃ」
「ロクでもない神様ですね」
「悪神にゃ」
「悪神でしたね」
借金取りに借金を返すために別の借金取りか借りるとかいうカスムーブ的な意味での“悪”神でしたね。
「力的にはどんな感じの力なんですか?」
「辻……十字路とかT字路で異界に入れる力らしいにゃ。Y字路は異界に入れるけどちょっと時間かかるらしいにゃ」
「めちゃくちゃ限定的なうえに内容が微妙」
「逃げ先に使えるんじゃないかにゃ?辻を通して出入り出来るらしいにゃ」
「あー、この世界なら使い道在りそう……かな?」
「でもそれだけにゃ。時間は止まらないし、多分強い怪異なら入って来れるにゃ」
「益々微妙……まぁでも持っといて損はないですし、良いですよ。力、欲しいです」
せっかくこういう世界に来たんだから特別な力は持っておきたいと思う。それが理由も由来も能力的に微妙でもだ。連帯保証人に名を連ねるのはちょっと怖いのでそのあたりだけはちゃんと聞いておく。
「とりあえずどうやって返済していけばいいんですかね?」
「……おぉ……」
「おぉじゃないが」
「あ、紙が更新されてるにゃ」
「そういう感じなんですね」
覗き込めば紙の文字が変わっていた。要約お願いします。
「はいにゃ。基本はいつも通りで良いらしいにゃ。宛先が不明なところはそのままでプラス辻神にも祈ればOKらしいにゃ。月に一回供物があるととっても嬉しいとも書いてあるにゃ。お酒は白ワインが好きらしいにゃ。コンビニの白ワインはあんまり好きじゃないから地酒屋のちゃんとしたやつが良いらしいにゃ」
「そこは日本酒じゃないんですね。あと要求が図々しい」
前世成人済みですけど今世はまだ未成年なので買えませんよ。まぁ買う宛はあるのでなんとかなると言えばなるけれども。
「それじゃあ、一緒に借金返していきましょう。よろしくお願いします」
「……おぉ……」
「おおじゃないが」