ホラー系の世界に転生したのにあまりにも怪異がカラっとしている 作:ない因習村:DBDの鯖側の集まりが悪い
サブタイ補足:DBDは基本サバイバー側が人気なのだがそのサバイバーの集まりが悪いということは……?
「持って帰ってきちゃったなぁ……」
どうしたものかメンヘラ包丁。ファンネルの如く自由自在に動いて野菜を切っていく様を眺めながら俺はどうにもならないため息を吐いた。
なんということをしでかしてくれたのでしょう。
あのエロガキ一閃の顛末としては、性癖捻じきり悪女は無事?辻世界でフレンドガチャを回し始め、人体模型さんは平穏無事な生活を取り戻すことが出来た。真っ二つにされたエロガキについてだがアレでも死んでいないらしい。
というのもエロガキ、なんと自分の身体が半分にぶった切られた時、自我を二つに分けるということをした。そんな高度なことが出来るのかとメリーさんに聞けば、普通は出来ないとのこと。
基本的に人の意識は脳に依存している。というか頭で考えるのだから、頭に意識の主体があるのは当たり前だ。だがこのエロガキ、下半身にこそ主体があるという強烈な意識が袈裟懸けに分離しても強く残り、脳に最低限の意識を残して下半身に全てを移動するというとんでもねぇことをしたのだ。
よってメンヘラ包丁が居なくなった隙間は埋めてくれたのだが……んー、なんというかね。理性のエロガキ……いやこの場合賢者か?どうも袈裟懸けに分かれたせいでエロガキがエロ/ガキに分離したらしい。前者は今までの化け物なのだが後者に至っては
『……したがって地獄への道は善意で舗装されている。忘れないでくれ給え、悪意がなくとも人は人を害せるということを』
マジもんの賢者になっていた。ビックリだよね。俺もビックリした。綺麗なガキ……、かの有名な泉に沈めて生まれた綺麗なガキ大将のような怪異は学校の怪談として迷える子供を導く優しい都市伝説の類になるらしい。
残ったエロの方?は他に学校の怪談役を雇って、エロは7番目の学校の怪談として封印するらしい。7つ目を知ってしまうと良くない事が起こるとされている学校の怪談が、まさかVRに狂わされたエロガキのエロの部分が担当するというのは現代の寓話みたいだなと思った。
あ、そうそう。茄子原さんもあのあと信者契約をした。あのエロガキに入って来られたとしても異世界通行証は便利なものなのでね。あと大学の周りで見える人達にも話を通してみるとのこと。ありがたい、俺一人だと割と限界っちゃ限界なんだよね。なんせ、人よりも怪異の方が知り合いが多い。怪異が神様を信仰してもいいのかどうかわからないので基本的に人間向けにやっている。なんか怪異が神様信仰すると悪い影響でそうなんだよね。あ、神様ではなく怪異の方が。怪異は良くも悪くも影響を受けやすいのだ。
そんなわけでなんとか穏便?に片はついた。そのことでも花子姐さんからお褒めの言葉を頂いた次第。頭を撫でてくれたけど、撫で方がめちゃくちゃ雑だった。男勝り超えて極道なんだよなあの人……。左右じゃないもん上下だもん。
さて……今日は雨が降っている。ジメジメとした湿度の高い部屋は無機物にとって天敵であるらしい。鬼のような形相で除湿を行うメリーさんを傍目に俺は静かに待っていた。誰か?まぁ雨というのは人間だれしもが気だるさというかなんとも言えない面倒くささを抱えるだろうが……雨の日でも元気に外を駆けまわる成人女性というのがこの世に存在する。その人を待っているのだ。
ピピピピピピピピンポーンッ!
「この連打……来ましたか」
俺はようやく来たかといった感じでガチャリとドアを開ける。そこには全身ずぶぬれになりながらも両手をブンブン振り回す成人女性が居た。
「雨!雨よ!雨!恵みの雨よ、祝福よ!」
「あの……せめて水気は全部拭き取りますからね?」
俺はビシビシと水滴をまき散らす雨女さんに辟易としながら部屋へ招くのだった。あんま怪異側が祝福とか恵みとか言わない方が良いんじゃないかなとか思わないでもない。
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雨の日の恒例行事、水に関する怪異さんの『突撃!お前にお悩み相談』だ。雨の日は水に関わる怪異さんの行動範囲が広がるので、こうして普段行けない、行こうとしないところに足を運ぶことがある。俺が住んでいるアパートには近場に水場らしいところはない。よって水関係の怪異さんはよっぽどのことか、こうした雨の日というフィールドアドバンテージがないと来れないらしい。
今日の『突撃!お前にお悩み相談』のお相手は雨女さんだった。ちなみにエンカ率は少ない。なにせ普段ブラック企業に勤めている為あってないような有給の消化か奇跡的に生存していた休日でさえ体力回復のための睡眠に費やされるからだ。
そんな人が珍しく来ているということにやはりよっぽどのことがあったのだろうと俺はリビングで話を聞く。
胸にデカデカと『水死体』と書かれた白のダサTは水に濡れて透け透けになっており、大変ドエロイことになっている。ふむ……
「私メリーさん、目を抉り出すのだけど片方だけで勘弁してあげるわ。右と左、どっちがいいかしら?」
「ごめんなさい。俺は目を瞑っているのでメリーさんが目隠ししてください。男は本能的に見ちゃうものなんです」
「その誠意に免じて許してあげるわ」
俺は両目をメリーさんに目隠しされながら話を伺った。
「絵面スゴ……実はですねぇ……転職を考えておりまして」
「転職を考える脳があったんですか!?」
「私を何だと思ってるの!?」
「ブラック企業に脳を汚染されて考える脳すら失った哀れな奴隷」
「OK雨に穿たれて死ぬ準備は良い?今朝、私は久しぶりに能力バトルものの漫画を読んで、重い雨という概念を練習しつつあることを理解するんだな」
「いやでも毎回SNSで地獄に住む罪人の断末魔よりも憎悪と悲哀に満ちた言葉上げてるじゃないですか」
「最近押し付けられたプロジェクトが炎上して謝罪行脚したけど聞く?」
「精神削られるんでやめときます」
恐らく死んだ目をしているのだろう。メリーさんに目を隠してもらってよかった、こんな最悪な未来が将来につながるかもしれないという事実から俺は目を逸らしていたい。
「あぁでね。私は転職がしたいんだけど会社には復讐したいの。今のプロジェクトを滅茶苦茶にするだけじゃ足りないんだよ。私は」
声がどんどん低くなる。ある種、人間でもあり怪異でもある雨女さん特有のものだろう。人の悪意と怪異としての悪意のミックス。腐った汚泥をよりドロドロに煮詰めたような感情はこの場に居る人間を黙らせるには十二分だった。
「怪異としての私でもない、人としての私でもない。今此処に居て、この瞬間抱えている感情こそが私にとっての『本物』であり、私としての『本物』だと、言葉でなく心で“理解”したのよ」
「恐らく今朝読んだ漫画は精神力で戦うアレであることは理解しました」
「漆黒の殺意はもう持ち合わせている。あとはやるだけ」
「……で、その犯行予告を俺達にされても困るんですけど……」
「何言ってるの。これだけ喋ったのがただ恨みつらみを吐き出したいからなワケないから」
雨女さんは意を決して言った。
「共犯者になってほしいの」
「もしもしポリスメン?」
俺はメリーさんが即座に打ってくれた110番を介して警察に通報した。