ホラー系の世界に転生したのにあまりにも怪異がカラっとしている 作:ない因習村:広報用ボイスロイドが存在する
「疫病神様、見て、辻神よ。辻神様、見て、疫病神よ」
「【あぁ、うん。ども】」
「……おぉ……」
「おぉじゃないが」
アクスタと栗ご飯を見せ合うミームのように挨拶を終わらせてから今更のように疑問を吐き出す。
「どうして疫病神様がここに居るんですか?」
疫病神様は近所の神社で信仰されている神様だ。形代喰いと呼ばれる行事や神社に行けばちょくちょく会える。といっても見える人にしか見えないし見えると障りが起きるのだが。ちなみに形代喰いというのは厄落としとか厄払いの儀式で、人の厄を紙で作った人形に込めて食べてもらう儀式である。本来は魂をちぎって込めて形代……つまり生贄の代わりに捧げるという結構ヤバメの儀式が源流となっている。その代わり豊穣や健康を祈るみたいな。
「【いやぁ、借金相手が返せる目途が見つかったっていうから様子を見に来たんだよ】」
「あ、借金取りだったんですね」
「【ちなみにいうとこの地域の代表ね。ここらへんで借金してる神は大体我を仲介してるから】」
「借金エリアチーフだ」
「【結構負債だった子が返せそうってことでこっちとしても嬉しいよ。次支払遅れたらコレだったからね】」
といって首を手で掻っ切るような仕草……あぁもうほんとギリギリだったんですね。
「どうしてこうなるまで相談しなかったんですか。いや、近所の神様なら悪神でも支援しますよ。神様なんですから」
「……おぉ……」
「おぉじゃないが」
一先ず用意された座布団に腰を下ろして、茶柱がべきべきに圧し折れたお茶を飲む。うん、ぬるい。折れすぎて呪物の手みたいな感じになった茶柱を記念に貰っておく。なんか呪い籠ってそう。
「【いやぁ、辻のは人の子に頼れないとか思ってんだよ。それに借金返せなくて消えても良いって自暴自棄になってたし】」
「借金で首が回らなくて自暴自棄になってたんですか神様」
「……おぉ……」
「いやだからおぉじゃないが」
この神は何?悪神は悪神でも悪のベクトルが違い過ぎる。ただの借金を踏み倒そうとするカスなのよ。本当に神か?
「【あぁ、で君にも借金の説明しとかないといけなくてね。ほら、連帯保証人となったんでしょ?】」
「まぁなりましたね」
「【んじゃ。借金について。まず金は要らない。いるのは信仰、神の力にはそれが必要だからね。祈りだけだと正直君が生涯をかけても返せる量ではない】」
「足りないんですか」
「【全然足りないね。君の家系がこれから7代続いていってかつ7代全員命を賭せば半分返せるくらい。祈りだけならね。だので三通りの方法がある。一つ目、奉納。神様にお酒や供物を奉納する。価値は此方で決めるけど大体お神酒とか神聖なものであるほど良い……が、物によるし全然焼酎でも良い】」
「白ワイン奉納しろって言われましたね。コンビニに売ってない地酒屋のヤツ」
「【我的にはやっぱり麦焼酎とかの方が良いなぁ。御神酒が一番とか思われるけど、あれって正直手軽に飲めないんだよね。仕事用っていうか仕事道具カウントされるからさ。儀式の時とかに飲んだりするもので、普段飲みには向かないんだよ】」
「神様裏事情だ。やっぱり力とか籠ってるんですかね」
「【籠ってる籠ってる。あと人間でいうと役所書類みたいなものなのよ。必要書類の一つみたいな。儀式もスピリチュアルに見えてやってること公共事業みたいなものだし。提出する書類がね、不足してると上に怒られて差し戻されるんだよ~~】」
「知りたくなかった」
「【神様も仕事だからねぇ】」
あまりにもお役所仕事で世知辛すぎる。もっと神々しくあってくれよ。
「つまりは日常生活で飲める用のお酒が欲しいということで?」
「【そそ。借金なんて堅苦しく言ってるけど神様同士の信仰の譲り合いなんて昔からあったしねぇ。まぁキッチリ払ってもらうけど。対価に関してはこっちで自由に決めてもいいでしょ?だから麦焼酎はレート高くしとくよ?ツマミもあれば尚よし】」
「じゃあ白ワインとは別に奉納しときますね」
「【ヨッシャ】」
「ちなみに何ですがどのくらいの神様から借金をしているので?」
「【おん?気になる?】」
「えぇまぁ。その方たちの好みも知っておきたいなと」
「【殊勝~~。君ウチの子にならない?】」
「この世界で神様のものになるのはちょっと……」
「【あはははははははははははははははははははははは……………ジョークだよ】」
「ジョークというには笑みと間」
「【まぁ君ちょっと特殊だから手を出すとアレなんだけどね】」
「アレなんですか」
「【うーん、例えて言うなら戸籍のない人の給与取得ってややこしいじゃん?】」
「なんとなく理解しました」
「【だからまぁチョメチョメしてもらう分には都合が良い人材だから今回はその点が良いんだけど】」
「じゃあ手を出すのもダメなんじゃないですか?」
「【逆逆。守るものがないからなんとでも出来る人材が君。ほら、戸籍なかったら色々とさ。出来るじゃん?】」
「純粋な闇」
「【まぁ疫病神で一応悪神の分類だし】」
「悪神でしたか」
「【ちなみに辻神の借金相手も悪神だからね。悪神借金ネットワークよ】」
「多分闇金なんだろうなって予想できますね」
「【いやいやぁ。そんなといちなんて暴利“今”はないよ】」
「昔はあったんですね」
「【今はほら。信用ってあるからさ。それに神様も人材不足でねぇ。信仰が少なくなってパイの取り合いになって色々大変なのよ~。だから消えてもらっちゃあ困る】」
「そんな同僚をブラック企業から逃げ出さないようにするみたいな」
「【逃がさないよ。神様なんて信仰が消えるまで仕事だからね。消えたら消えたで他に仕事が回るワケだし。逃がすわけないじゃん】」
「闇金よりもブラックだ」
「【あぁ、話を戻して。一つ目が奉納ね。で二つ目は連帯保証人を増やす事……つまりは信者を増やす事】」
「宗教勧誘の皮を被った連帯保証人増やしはどう言い繕ってもカスの所業では?」
「【カスの所業だよ。悪神だからそこはさ。しゃあない】」
「ほなしゃあないか」
「【辻のは逢魔が時とか深夜に外出るならそこそこ便利な能力だから徘徊仲間に紹介してやってよ】」
「辻から異世界に飛べるんでしたっけ」
「【今はそれだけだけど、多分信仰増えたら辻結界とかできるんじゃない?あとはまぁ、一応神の末席に名を連ねてるから守護はあるだろうね】」
「言ってることは真っ当だし便利っぽいんだけど理由と過程がカスなんですよね。まぁ頑張りますよ。連帯保証人探し」
「【じゃあ次。最後、三つ目が此処での換金。逢魔が時で拾って換金するでしょ?換金する時に返済額を表示してもらえるよう頼んだから、そっから返す事も出来る】」
「あぁピ〇ミン2始まっちゃった」
「【実質ピク〇ン2みたいなものだからね】」
「使役されてますもんね」
「【信者って大体ピク〇ンよ。さっき言ってた借りてる神様の好みのものとかも換金ショップに表示しておくから。それと合わせて返済頑張ってね~~。うん、……説明すべきことはないね。OK。終わりだ。じゃ、我行くから】」
「あ、はーい。ありがとうございました」
「【うむうむ。あ、あと我疫病神で居るだけで厄を招くから多分辻世界から出たら雨女がスタンバってるよ】」
「なんということを……」
「【じゃねー。頑張れよ~~】」
最後にカスみたいな爆弾を残して帰っていった。前世の転生させてくれた神様とノリが一緒なので多分前世の神様も悪神だったんだろうなと思わなくもない。