ホラー系の世界に転生したのにあまりにも怪異がカラっとしている 作:ない因習村:広報用ボイスロイドが存在する
あと1話で第一回黄昏DBD終了です。
「というわけで、なんとか返済頑張ってみますので辻神様も頑張ってくださいね」
「……おぉ……」
「おぉじゃないが」
なんとも頼りない神様を背に俺は念入りに体をほぐしていく。疫病神様がおっしゃることが本当ならこの辻ワールドを出たら雨女が「やぁ」して怪異おねショタが始まってしまう。男子高校生とブラック企業勤務草臥れ雨女との絡みと書くとピク〇ブでハートが1000いってそうなものだが内実はデス鬼ごっこなので濃厚といえば濃厚な絡みだろう。主に血と内臓的な意味で。
雨女さん、悲しいことに現代の怪異は人の恐怖を食らったりするだけでは生きていけなくなってしまった。いや、正しくは人の恐怖
そんなわけで雨女さんは人を怖がらせる傍らブラック企業に勤める怪異である。ストレスでたまに頭がおかしくなり、未成年を誘拐して食らう。ちょうど頭がおかしくなった時期に黄昏時でエキサイトしてしまったんだろう。
「あの人妙にアグレッシブなんだよなぁ。……大学でセパタクロー部って言ってたけど」
セパタクロー部なんてあるわけないだろと思うのだがあのアグレッシブさは確かにセパタクローをやっていないと見に着かないだろう。それを生かした仕事をすればいいのに普通にITの企業に就職したよな。
「さて……」
辻の傍に立つ。此処を抜ければ辻ワールドを抜けるだろう。俺は最後に一つ深呼吸してから、また辻の先を曲がってワールドを抜ける。
そこには……
「イタ……イタイ……イタイ……イタイィ」
「今日、スイパラ、行きたかった」
妙にむすくれた表情のランドセルを背負った小学生が手に持った傘で全身真っ赤となった成人女性を叩いている絵面だった。
──────────
血に塗れた傘をピッと振り抜いて血を振りしきり、背中とランドセルの間に差し込んだのはベテラン幼女パイセンだ。この界隈……というか黄昏時に巻き込まれる人は数少なく、その数少ない人もキラー(怪異)によって殺される。よって生き残っている人は大概知り合い関係になる。
このベテラン幼女パイセンは親の都合で各地を転々としながら、そのオカルト的な素養から色々な場所の黄昏時に巻き込まれ生き残った古強者である。最近ようやくここら辺に定住したらしい。というかお父さんを物理的にパージ(転勤一人暮らしさせた)したとのこと。
「あぁ、ベテラン幼女パイセン。こんにちは。また巻き込まれたんですね」
「黄昏、ほぼ必中、逃げられない」
「まぁ逃げられませんよね」
「イタイィ……」
血の雨に降られ、全身を真っ赤な鮮血で染めた女性はその赤黒い髪の間から目を大きく見開いて玉のような涙をこぼした。あぁ、可哀そうに。折りたたみ傘で血の雨を避けながら、ハンカチをそっと差し出す。
「雨さんまた幼女パイセンにいじめられたんですか。セパタクロー部なのに」
「シヌ……ツヨイィ……」
「そりゃあ歴戦の幼女パイセンですからね。知っていますか?ホラー系で生き残っている女児は戦場で生き残りのジジイババアと同じ扱いですから。そのセパタクローで培ったアグレッシブさを逃走に費やさないと。幼女パイセン相手はキラーじゃなくてサバイバーとして考えてください。有効打を与えられるのは邪神とかですよ」
「むっ、邪神でも相手できる」
「邪神でも逃げる側じゃないとダメらしいです」
「シラナイィ……」
「まぁ」
雨女さんは普通に喋れるタイプの怪異だが、この黄昏時でエキサイトする怪異は大概こう……オデ、オマエ、コロスみたいな感じになるので言語野にちょっと不調が出る。ノイズがかかるというか……
血に触れたハンカチがしゅわぁという音を立てて穴が開いていくのをひとしきり眺めながらそっと広げて顔の上に乗せる。死んだ人に布を被せるみたいになったがそれもすぐに血で溶けていった。
「酸性の血なんですね」
「血液に、酸性アルカリ性、あるの?」
「人間の血液は弱アルカリ性らしいです。酸性だと糖尿病とか腎不全に該当するとか」
俺はインターネットで拾ってきた知ったかぶり知識を披露した。まぁ多分合ってる。
「雨、糖尿病?」
「かもしれないです。大方ストレスでしょうね」
「大人、未来がない」
「悲しいけどこれが現実なんです」
「大人になりたくない」
「残念ながら大人ってなるものじゃなくていつの間にかなってるものなんです。明日になったらなってるかもしれませんよ」
「怖い、目の前の怪異よりよっぽど怖い」
幼女パイセンは数多の怪異とやりあってきた大御所だ。怪異から逃げ、隠れ、時に今のように叩きのめしてあらゆるものを拾い集めて来たという実績がある。家には怪異から強奪もとい拾ってきた様々な呪物がハンティングトロフィーの如く飾られ、それ等が時に動き出すという。
そんな幼女パイセンでも怖いものがあるというと、感慨深いものがあるのだがそれが社会の闇というのがなんとも……
「あぁそう。ベテラン幼女パイセン。ちょっと宗教信じません?」
「私、神様に何度か殺されかけてる。のー」
「ちょっと事情がありまして……」
そういって俺が置かれている状況を説明した。神様を哀れに思って連帯保証人にサインしたこと、その代わりに辻ワールドという異世界の出入り許可証を貰ったこと、信者を増やせば力も増し色々出来ることが増える事。話を聞き終わった幼女パイセンはしばらく悩んだものの、デメリットらしいデメリットがない事を確認した幼女パイセンは渋々頷いた。
「いいよ、信者になる。異世界渡りの方法はいくつあっても足りないし」
「いくつか持ってるんですね」
「持ってる。天狗に、蜘蛛に、メリーさん」
「なんか聞いたらヤバそうなのでこれ以上聞かずにおきますね」
「うん、懸命。メリーさんは話したら
「いえいえ、少々お手を」
「ん」
幼女パイセンの手を取る。手のひらと手のひらを重ね合わせ、そこに十字を三回書く。辻神様から教わった割符と呼ばれる符牒合わせのやり方だ。これをすると辻神の力が伝わる……らしい。
「これでいいハズです。辻……十字路やT字路、Y字路で異世界に入る事が出来ます。Y字路はちょっと時間かかるらしいので基本的に鋭角の道を選ぶことをおススメします。時間が止まったりはせず、力が強い怪異なら入ってくることもあるらしいのでご注意を」
「ん、意外に便利」
「便利なんですか」
「時が止まらないのが良い。天狗なら止まる。時間が流れる、逆に時間稼ぎができるってこと」
「あぁ、黄昏時なら時間いっぱいまで引きこもってればいいってことですもんね」
「うん、便利」
「それじゃあ信者仲間としてよろしくお願いします。ベテラン幼女パイセン」
「うん。そっちも、よろしく」
よし、一人信者が増えた。とりあえず返済のやり方を伝達しておき、流れで一緒に換金ショップに行くことになった。歩幅的に俺が歩いた方が早いので幼女パイセンを抱え、肩にドッキング。幼女を肩車する男子高校生という大層事案な絵面だが、その後ろでよろよろと立ち上がろうとするのは未成年を誘拐して食い散らかすショタコンロリコンの社畜女なのでどちらがマシかは推して知るべし。