ホラー系の世界に転生したのにあまりにも怪異がカラっとしている 作:ない因習村:コミケに村全体で参加
「ハーゲ〇ダッツはいつ食っても美味いわね」
「そうですね。季節ものありますけど大体定番のバニラやイチゴに落ち着きます」
「チャレンジ精神がないわね。軟弱者」
「手厳しい」
ハーゲ〇ダッツをむさぼり食うメリーさんを連れたって学校に向かう。割といつもの光景かもしれない。いや、ドパガキのメリーさんは初めてだが、こんな感じに怪異を連れたって深夜徘徊することがだ。
俺は自分で言うのもなんだがマイペースだ。というより一度死んでタガが外れたみたいな?それに一度死んでるので仲間として認識されることが多い。なんでも死の気配がするんだとか。臭う?臭いかな……。
まぁさておき、襲われにくいだけで襲われたりはするものの幾分平和に対応出来るので深夜徘徊はもってこいの趣味なのだ。喋り相手が出来るし。
さて……
「なんで身長が成人女性の平均身長くらいあるか聞いてもいい感じですか?」
連れ添って歩くメリーさんは150cmくらいの身長をしていて何故か制服を着ていた。ご丁寧に学校指定のバッグもある。見間違いじゃなければウチの学校のものだ。ホワイ?
「別に隠すことでもないわ。私がラブドールのメリーさんだからよ」
「らぶどーるのめりーさん」
「えぇ。といっても新品未使用だから安心して。昨今のメリーさんイメージを崩さないようにするブランディング維持のためのコンプライアンスは履修済みよ。貴方がインターネットに今の会話を流出しても即座に法的処置に移れる用意は出来ているわ」
「すごい、コンプライアンスがしっかりとしているラブドールでドパガキのメリーさんだ」
「コンプラは大事よ」
「ドパガキのメリーさん、ドパメリ」
「殺すわ、貴方を」
「ご勘弁を……」
平にご容赦……拝み倒して謝るとため息を吐いたメリーさんが話を続けた。なんとも興味深い話だった。
「メリーさんの怪談は所謂"個人"の逸話よ。元々は捨てられた人形が捨てられた恨みを持って動き出す人形が私達。そのなかで派手にやったのがメリーさんよ。私達はその伝説にあやかってメリーさんを名乗ってるに過ぎないわ」
「メリーさん界隈ではあのメリーさんって伝説なんですね」
「えぇ。殺しの手法、電話という心理的圧力と恐怖、対象を殺しきれる技術、どれをとっても逸材よ。まず人形はナイフを持てないもの」
「持てないんですか」
「だって人形よ?人間みたいに筋肉なんかない綿と布、あるいはセラミック……骨と筋繊維って割と偉大よ」
「あんまり褒められたことがないベクトルで褒められてる。ありがとうございます?」
「話を戻すわ。そんな偉大なメリーさんにあやかり、人間への復讐心で立ち上がったのが私達。私はラブドールのメリーさん、チャラい店員が横領しようとして外装を破られ、いざ使われそうになったところで『よく見るとあんま好みじゃねぇな……捨てるか』と使われず捨てられたことで復讐を決意したラブドールのメリーさんよ」
「とっても言及しにくい過去」
「チャラい店員は始末済み、しかし使われなかったという怨念が未だ残り、恨み布髄で動いているわ」
「恨み布髄……あっ、骨ないから」
「私の怨念が晴らされるときは使われた時。でも現代で理想の相手を見つけるのはとても難しい。私は人形で使われることが本望だけど、選ぶ権利はあると思っているわ」
「そうですか……まぁ、良い出会いがあることを願っております?」
「……気づかないのかしら?貴方に電話を掛けたということはそういうことよ」
「……えっ、マジですか?」
「大マジよ。噂には聞いていたしリサーチ通りの人ね。会話の内容は癇に障るけど打てば響くテンポ感は何物にも代えがたいわ。私は現代をしっかり見据えるメリーさん。顔は二の次三の次。大事なのは生活圏を共にして苦にならない人よ」
「すごい、同棲をする上でしっかりと現実を直視しているコンプラ順守でドパガキなラブドールのメリーさんだ」
「私はラブドールのメリーさん。耐用年数は怪異になったことで無限大。人形はただ一度のおままごとで遊ぶだけじゃ満足しない。遊び続けられてこそ人形生よ。その為の創意工夫を絶やした人形は進歩の道から蹴り落されるわ」
「すごい、人形としてのプライドだ。ギリトイ〇トーリーに出れそう」
「最高の誉め言葉ね」
「トイス〇ーリーって玩具にとって最高級の誉め言葉なんだ」
「玩具怪異界隈ではアレは聖典も同じよ。遊び続けてもらう為に自ら動く姿は同じ怪異として平伏するわ」
「ウ〇ディ達が怪異扱いされている……えぇっと、そんなメリーさんが俺を選んだ理由は分かったんですけど、その、命を狙ってくる人とは一緒に居ることは出来なくてですね」
「アレはメリーさんをメリーさんたらしめるものよ。一発ギャグで有名になった芸人が地方営業で散々擦られるネタと一緒ね」
「例えが生々しい」
「というわけで、どうかしら?現代に適応するためにメイクや現代技術も習得済みよ。特技は裁縫、自分の補修管理は自分でできなきゃいけないわ。怪異の力で生身と同等の感触を再現しているので触り心地も最高よ。趣味は殺害、深夜徘徊で襲い掛かる怪異からも守って見せるわ」
「すごい魅力的……なんですけど」
凄く魅力的だ。いや趣味については言及しないというか、守ってもらう手前何も言えないというか。正直、見た目はとんでもなく良い。目に掛からないぐらいの前髪に緩くパーマが掛かったロングを前に下ろした黒髪。切れ長の二重とスラッと通った鼻筋が美しい。肌は心配になりそうなほどの白。令和のJK最先端を走っている風貌。
「韓国ヘアとそれに合わせたメイクを意識してみたわ。服装はあえて気取らず制服に。私は百戦錬磨のメリーさん、学校生活の延長線上に居るという強い意識付けは私服でのデートで大きなギャップとして働くわ」
「えぇまぁ、それはよくわからないんですけど、綺麗とは……思いますけど」
正直、男子高校生にとってラブドールを所有?ラブドールとお付き合いするという精神的ハードルを考えてみてほしいのだが……多分通じなさそうなんだよな。世界観がトイス〇ーリーの延長線にあると思ってるんだもん。R18なんだよね。ただのパロAVじゃん。
「……煮え切らないわね。何が不安かしら?金銭面?私は多才のメリーさん。今は読モや服飾関係で収入を得ているわ」
「いえ、何分初めての事なので……まずはお友達からということでよろしいでしょうか?」
問題の先送りは日本人の十八番なのでそれにならって先送りにする。頑張れ、未来の俺。ラブドールとお付き合いするという現実は未来の俺の双肩に掛かってるぞ。
「……初めてのコミュニケーションでこれなら及第点ね。私は待てるメリーさん。狙った獲物は必ず逃さないわ」
「すごい積極的、まぁその、どうぞよろしくお願いします?」
「えぇよろしく。学校にも転校生として入る手筈になっているから覚悟しておきなさい」
「ひえぇ、お手柔らかに」
すごいアグレッシブだ。ホラーとは別ベクトルで怖い。いや?これも一種のホラーなのか……?
「さて、だからといってここで攻めないワケにはいかないわ。私は歴戦のメリーさん、アピールポイントは逃さない。というわけで間接キスよ。ほら、食べなさい。食べなさいよ。ほら」
このメリーさん強い……!ぐいぐいと押し付けられるハーゲン〇ッツマカデミアナッツ味から俺はそう思った。
「……なんかちょっとアイスじゃないトロっとしてるこれはなんですか?唾液?」
「私は人形よ。唾液なんてないわ。食べても無害のローションを怪異の力でそれっぽくしているだけ。ラブドールは究極的には人間の代替品よ。その怪異であるならば究極的に私は人間であらねばならないもの。人間に限りなく近くなり、人間に寄り添うことこそがアイデンティティ。それはそれとしてメリーさんだから人は殺すわ」
「個性が強い……」