「……何が起こっているんだ?」
送られてきたものは測定結果ほぼそのままである。助言を求められているのか、あるいは確認でもしろと言われているのか。こちらへの信頼がどうなっているかわからない分、リードフィントン教授よりも厄介だ。
前提として放射性物質が作られる条件は核内部の
そして
そこで行われた軽銀に対する第一種
「どうしたんです、お嬢様」
フィーマが聞いてくる。私も自分の中で何がおかしくなっているのかをゆっくりと考えようとするが、興奮のせいでうまくまとまらない。
「第二種
「えーと軽銀が十三番、燐が十五番。何もおかしくないのでは?」
「その燐が問題なのよ。既に報告されている放射性の燐とは減衰時間が異なる。
「ということは一つ原子番号が増えて質量数三十の硫黄ですか」
「そんなものはないのよ、軽すぎる」
質量数だけ見るなら元素番号が一つ下がった
「逆第二種
「そう色々と逆になってどうするのよ、ただでさえ原理がよくわかっていないのに」
可能性はないわけではない、か。確認をしてもらうのがいいだろうな。というわけで私は何人か心当たりを思い浮かべていく。
電子と逆電子の判定のためには磁場が必要で、はっきり見るなら普通の磁石ではなく電磁石のほうがいい。なのでまずは一つ、
次に逆第二種
そこまで考えて、私は流石にこれを無断でやるのはまずいな、と思う。一応は公開された論文ではあるのだが送られてきたのは地方語のものと、おざなりにつけられたほぼ逐語訳の
それにもしこれが逆第二種
いや、もしこれが逆電子であれば消失時に第三種
こうやって見ると世間というものは実に狭いのである。もちろん大物がいない小さな場所もある。これぐらいの実験なら霧箱と乾板で撮影することは決して難しくないだろう。各地のそういう組織にも一応送っておくか。
というかこれを第一弾にしてもいいんじゃなかろうか。うん、きっとミスヴィッツ氏もそう言いたいに違いない。
「で、ミス・バクスター。私が頑張って目録を作っている間にどのような素晴らしい発見をまたしでかしたのですか?」
「発見というほどではないわよ、ただ各所に連絡しておきたいことができただけ」
線源と軽銀については比較的簡単に揃えられるだろうし、電磁石ではなくとも鋼鉄磁石があれば電子と逆電子の見分けはつく。各所のそういう同好会についても調べてあるので、まずは片っ端から送るとしよう。
郵便というものはなんだかんだ言っても安い。なのでこういう雑誌を作るのでもし良かったら買ってね、これが創刊号ですという手紙と、あと大きな組織にはこの雑誌自体の
「また私が手紙を書かされるんですか?」
「さすがに百枚ぐらいを手で書かせることはしないわよ、機械打ちよ」
「署名はちゃんとしてくださいね」
そう言いながら、フィーマは背筋を伸ばしていた。ラドウィックは今のところ向こうでそれなりに準備をしているようだし、帰ってきたらすぐに最初の雑誌を出すことにしよう。それまでの間にさらなる結果が出てこないことを祈るほかない。
On observe l'émission de nombreux électrons positifs (environ un par détente) provenant de la source. Si l'on remplace l'aluminium qui couvre la source par une feuille d'argent, de paraffine ou de lithium, on n'observe pas d'électrons positifs. Ceux-ci sont donc produits dans l'aluminium et ne proviennent pas du polonium. Le phénomène se produit, si l'on remplace l'aluminium par le bore. L'émission des électrons positifs n'est pas due à l'action des protons de transmutation de l'aluminium sur l'aluminium.
我々は線源に由来する多数の正の電子の放出(およそ膨張一回につき一個)を確認した。もし線源を覆っている
CURIE, Irène ; JOLIOT, M. F. Électrons positifs de transmutation. Comptes rendus hebdomadaires des séances de l'Académie des sciences. 1933, vol. 196, pp. 1885–1887.
イレーヌ・キュリー、フレデリック・ジョリオ『原子核変換に伴う陽電子』、1933年