石炭時代の終りと淑女   作:小沼高希

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核と中性子
核と中性子 1


 第一回国際核物理学会議の開催が大陸帝国(コンチネンタル)科学院によって公式に決定された。脊梁同盟(レーガ・ドルサーレ)の大学が会場として名乗りを上げ、全会一致でこれを承認。参加者および出資者を募るとともに、会議議長として河川同盟(レーノスブント)化学協会相談役ミスヴィッツが選出された。

 

「このぐらいなら何とかコミュヌも読めますね」

 

 フィーマが大陸帝国(コンチネンタル)科学院の会報を読みながら言う。ミスヴィッツからの手紙はまだ来ていない。どう思われているかわからないし、正直言って顔を合わせるのが怖い。そういうことで、私は少しは涼しい地下の印刷室で椅子にもたれかかっている。

 

「向こうに行ったらコミュヌか共通語(ウルガー)だから頑張ってね……」

 

「通訳としてのミス・バクスターに頼らせていただきます」

 

「やめてよ」

 

 そう言いながら、私はやって来た手紙を確認している。議長はミスヴィッツだが、補佐役と会場設営との折衝役としてクローツルが名簿に入っているし、主催の枠はストヤルティである。これを見ればミスヴィッツが金のために呼ばれたと邪推するのはそう難しいことではないだろう。

 

「しかしよくまあこんな大物揃いの会議を用意できましたね」

 

「欲しいなら写真と署名でも貰えば?」

 

「賢いですね、やります」

 

「は?」

 

 私が言うと、フィーマは印刷室にある木箱から紙を取り出した。何かと思えば見本紙か。

 

「絵葉書を売るんですよ、写真と署名入りの」

 

「何を言っているの?」

 

「逆電子が見つかったときの霧箱写真の複製権は山岳会から貰っています。つまり、こっちで刷ってもいいんですよ」

 

「そういえばそんな契約をしてたわね……」

 

 一応会社設立の時にちゃんとその手の専門家に入ってもらって権利のあたりは小銭で対応できる範囲はなんとかしているし、相互利用条件とかで基本的にはこちらからの持ち出しはないようになっているて、確か要約とか画像の利用とかは許されていたはずだ。

 

「なのでこれらの写真を絵葉書にして、撮影者の署名を入れて、売ります」

 

「……写真用の光版画の機材は」

 

「王認自然学会(ザ・クウェーンズ・フェローシップ)とその傘下の学会が印刷を頼んでいる業者は突き止めてあります。話が通じやすいこともそこで働いている女工さんから聞きました」

 

「よくまあやるわね……」

 

 一応この屋敷の女中補と館長代理と国際集成(レペルトーリオ・インテルナツィオナーレ)主任編集みたいなことをやってのこれである。副業の文筆活動とかができていないんじゃないかと思ったがこの様子だとそれもやってそうだな。一体どこからそんな無尽蔵の体力が湧いてきているんだ。熱量が保存されていないぞ。

 

「まあ余ったら付録にでもすればいいと思います。あと参加者の写真と署名を全員分集めておいて後で困ったら売りましょう」

 

「そんなもの買う人がいるの?」

 

「私の知り合いにそういうの嫌いじゃなさそうな金持ちがいるんですよ」

 

「金貨(クィッド)一枚ぐらいでならいいわよ」

 

「集合写真を絵葉書にもしたいですがこれについては向こうの印刷機材の確保ですね、一週間で間に合うか……」

 

 そんなことを平気でこの少女は考えているのである。いや、少女という年齢ではないが。初めて出会った時は細い少女だったはずなのだが、今ではしっかりと良い肉付きの女性である。空腹は判断を誤らせるゆえに効率の敵である、というのはミセス・ブラッケンの言。

 

「どうせ写真はいくらでも手に入るわよ」

 

「といいますと?」

 

「ラドウィックが言うには宣伝に使うのがクローツルの得意な手段だと」

 

「なるほど、そういう方面でしたら挨拶をしておきたいですね」

 

「やめといたほうがいいわよ、慣れていないと飲まれる」

 

 私はそれなりに外交が上手な人達から色々な方法を学んで育ってきたし、隅の方で外交会談の裏側を見たこともある。というより一応大使館で受けた教育はあくまで子供向けというか淑女向けとはいえ、侮られた上で舞台の隅から状況を把握するためのものだ。どう考えても私の将来を考えてくれていた彼らを無視したような生活をしてしまっているな。

 

「どうやったら慣れることができるんですか?」

 

「実際に会って話して騙されて、とかね……」

 

 私は何度も騙されたが、せいぜい焼き菓子をもらえない程度の騙されだった。彼らも加減してくれたのだろう。彼らにとって私は暴力を振るったり手を出したりできる対象ではあったはずだし、最悪それをやってももみ消される可能性はあったのだが、そう考えるとみんな親切であったな。その優しさを他の人にも分けていきたい。親切というのは具体的には長期的な外交を見据えた戦略予備としての配置とかの話とかである。

 

「それで、共同連邦(コモンウェルス)からは何人出るんですか?」

 

「十人は行かない、ぐらいだと思う。どれぐらい向こうが金を出してくれるかにもよるけど」

 

「文面を見る感じは結構金なら出すので皆来い、みたいな雰囲気でしたが」

 

「雰囲気だけよ」

 

 私は呟くように言う。広告料みたいな枠で百金貨(クィッド)ぐらいを投げはしたが、これは一人か二人を地球の裏側から呼んだら消えてしまう額である。それに基本的には手続きとか調整とかは向こうがやってくれるので、私達は現地に行ってお手伝いをちょっとするぐらいしかやることがない。

 

 というよりこのあたりは大抵の学会の報告についてくる会計報告をミセス・ブラッケンに見せれば概ねわかる。会費と会員数の積を収入と比較して、一冊あたりの雑誌の値段と郵送料をあれこれしていくとどれぐらい持ち出しになっているのかがわかるのだ。この持ち出しというのは学会の中の人が研究や教育や家族との団欒を削って人類の知識の発展と地域の面倒な見栄の張り合いのためにかける時間のことを指している。

 

 とはいえ実に楽しみだ。王認自然学会(ザ・クウェーンズ・フェローシップ)の総帥から通訳兼案内人にならないかという手紙も来ているし、頼まれたら参加せざるを得ない。なおこういう付き添いの人の旅費は招待費用には入っておらず学会の持ち出しだが、学会にはなぜか同じぐらいの額が匿名の寄付として回っているので誰も困っていないのである。




Esaminiamo ora come hanno funzionato i nuovi organi ai quali il Governo fascista affidò lo sviluppo scientifico del paese. Non credo di soffermarmi sull'opera di dettaglio svolta dalla Reale Accademia d'Italia per l'incremento delle scienze. Con premi cospicui a studiosi meritevoli, con pubblicazioni di lavori di notevole importanza, con borse di studio, la sua opera è vasta e complessa; ricordo la decisione recente di pubblicare le opere dello Spallanzani. Ma basterebbe il convegno di fisica nucleare convocato dall’Accademia a cura della Fondazione Volta, avvenimento di importanza scientifica in vero eccezionale, per mettere in evidenza l'azione efficacissima svolta per il progresso della scienza. Al Convegno dedicato al tema sulla Fisica nucleare furono invitati e parteciparono circa quaranta scienziati italiani e stranieri, fra i quali alcuni dei maggiori che nel mondo si affaticano sui problemi della fisica teorica. Il tema trattato « Nuclei ed elettroni » fu di altissima importanza perchè concerneva la struttura dell'atomo, ritenuto base materiale di tutto il creato.

では、結束主義(ファッシスタ)政権が国の科学発展を委ねた新たな機関がいかに機能したかを検討していこう。科学の振興のためにイタリア王立アカデミーによって果たされた詳細な事業については、ここでは詳しく触れないことにする。優秀な学者への多額の報奨、著しい重要性をもつ諸研究の出版、奨学金など、その活動は広範かつ複雑である。スパランツァーニの諸著作を出版するという最近の決定を挙げておこう。しかし、科学の進歩のために果たされた極めて効果的な活動を明白にするためには、真に例外的な科学的重要性の出来事である、ヴォルタ財団の主催によりアカデミーによって招集された原子核物理学の会議だけで十分であろう。原子核物理学に関するテーマに当てられたその会議には、イタリア国内外からおよそ四十人の科学者たちが招待され、そして参加したが、彼らの中には世界において理論物理学の問題に取り組む世界屈指の研究者たちも含まれていた。扱われた主題「核と電子」は、全被造物の物質的基礎と見なされている原子の構造に関わるものであり、極めて重要性が高いものであった。

MARCONI, Guglielmo. Scienza e fascismo. In: Il Popolo d'Italia. 28 ottobre 1932, a. XIX, n. 257 (Numero speciale, parte prima), p. 11.
グリエルモ・マルコーニ「科学と結束主義(ファッシズモ)」、イタリア人民、1932年10月28日
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