「なんかあんたが計算機持ち込んでくれたんだってな、礼を言っておけとそっちの嬢ちゃんから言われて」
議事録用の記録を終わらせた私にそう言ってくるのは若く見える男性。彼が伸ばした親指の先にはフィーマ。話しているのは
「構いませんよ、計算結果はどうなりました?」
「なんか
彼は大げさに肩をすくめて言う。思ったより無茶なことが起きているらしい。まったく、核物理学はなかなか飽きさせてくれなさそうだ。一応これで
「……あなたの信じている神は、予算を持ってきてくれる人では?」
「聖典にもあるだろ、日々の糧を与えてくれるのは間違いなく神だ」
「誘惑に遭わせることなかれというのは?」
「なんのことだか」
まあこの不敬で馴れ馴れしいやつは一応少し手紙をやり取りしたこともある人物だ。エンツォ悪童団の代表格、渾名が「
「エニオ・ガルディだ。よろしく。こう見えて教授をしている」
知ってるよ。これは相手を問わず外さない冗談なのだろうな。彼の教授職就任は成果はともかく明らかに年齢がおかしいので、裏から政治的なあれこれがあったと考えるのが妥当なものだろう。
「バクスターです。『核物理学国際集成』編集員」
私は差し出された手に握手を返す。向こうは私の名前を知っているだろうなと覚悟はしていたが、こんなさらっと名乗られるとそれはそれで困る。あるいはフィーマが伝えたか、かな。まったく、外交儀礼を基準にするならそれなりの無礼になるところだったぞ。
「いやしかしあんたのところすごいな、あそこの嬢ちゃんも相当物理わかってたぞ、言葉はともかく」
「そっちに魔女が珍しくないように、こっちにも科学を学んだ少年少女がいるのですよ」
半分ぐらい嘘。一応冬の講演会があるが、あれに参加している少女も科学の道に進むのが難しいように我らが
ちなみに二回目があるかどうかは誰も知らない今回の第一回国際核物理学会議において、女性を会議参加者としている陣営は
いやまあストヤルティ以外にも物理系には女性が少なくないし、そういう人達の系譜にある人をストヤルティの弟子扱いするのは良くないのですが、それでも三陣営の中で一番女性が物理をやることに寛容というかそういう道が開けているのが
「で、バクスター嬢は
「まあ」
このあたりをあまりこのエニオという若造と話す気にはなれない。いや、私より年上なんですけれどもね? なんていうか、後からやって来たくせに
「俺も好きだ」
「……ええ」
「つまり俺達は
聞かない単語なので一瞬意味を理解するのに遅れてしまった。私の語彙は基本的に論文を見て覚えたものなので、ほぼ母語みたいに日常会話をされてくると追いつかなくなるのである。
「それにしてはあなたにだけ彼女は秘密を明かしているようですが?」
「なんともあいつは浮気性でね、俺が家で妻といる時間に別のところで色々やっているようだ。あんたも手紙で読んでいるだろ?」
「ああ、少し待ってください。あまり冗談が得意ではないのと、
「なんだそうか」
少し悲しそうに彼は肩を落とした。別にお前を喜ばせてやる義理はないんだよ。
「しかし
「もとより
「じゃあいい感じに放射化した核種に対して
「無茶言うなよ」
「あなたならできるでしょう」
「しかしこの感じだと測定とか全部やり直しだな。どうせ皆帰ったら
「一応販売をやっているのでそれさえ買えば個人でもできますからね、こちら宣伝です」
私は絵葉書を取り出す。名刺代わりにフィーマが何枚か刷っていたものだ。今のところ
「……頂いておく」
丁寧に扱われてしまった。いや別に適当に捨ててもいいですし会議参加の記念に誰かに送ってもいいのですがね。なんと料金前納なので宛先を適当に書くだけで届きます。というよりこの種の葉書の料金が安いのを活用すれば縮小投影で文献を埋め込んだ
Bei allen Poststellen, sowie bei den Briefträgern und Landbriefträgern kann das Publikum Formulare zu offenen Mittheilungen erhalten. Ein solches Formular: „Postblatt“ hat die Dimensionen eines gewöhnlichen Briefcouverts grösserer Art und besteht aus steifem Papier, entspricht mithin etwa nach Dimension und Beschaffenheit den in einigen deutschen Postbezirken neuerdings eingeführten Postanweisungen. Die Vorderseite würde oben als Ueberschrift die Benennung des Postbezirkes und eine entsprechende Vignette (Landeswappen etc.) tragen, links einen markirten Raum zum Abdruck des Post-Aufgabestempels, rechts die Postfreimarke gleich in das Formular hineingestempelt. Dann ein Raum zur Adresse (wie bei den Postanweisungen) mit dem Vordruck: „An“, „Bestimmungsort“ und „Wohnung des Empfängers“; sowie die vorgedruckte Notiz: „Die Rückseite kann zu schriftlichen Mittheilungen jeder Art benutzt werden; dieselben können gleichwie die Adresse mit Dinte, Bleifeder, farbigem Stift u. s. w. geschrieben sein; indeß darf bei Verwendung von Bleistift etc. der Deutlichkeit und Dauerhaftigkeit der Schriftzüge, namentlich auf der Adresse, nicht Eintrag geschehen.“
こうした考察を踏まえると、郵便事業において以下のような制度を設けることは、おそらく時宜に適ったものと思われる。
全ての郵便取扱所、ならびに郵便配達人および地方郵便配達員利用者は公開通信用の用紙を入手することができる。このような用紙、すなわち「
STEPHAN, Heinrich. [Den Mitgliedern der 5. Deutschen Postkonferenz in Karlsruhe außerhalb der offiziellen Sitzungen unterbreitet]. [30. November 1865].
ハインリヒ・シュテファン、カールスルーエで開催された第五回ドイツ郵便会議にて、非公式な提案、1865年