ミス・バクスターに伝えられたし 1
「……収支上は釣り合いが取れています」
ミセス・ブラッケンが帳簿を確認して言う。雑誌の売れ行きが上がった。これについては会議を主催してくださった皆様には感謝するばかりである。
「よかったです、部数が増えて」
「追加印刷に資金がかからないのがよかったですね。事業拡大に手間がほぼかからないのはいいことです」
「……ただ、懸賞金はすぐに尽きましたけどね」
賭けた金額、二百
会議の内容とその予測する未来は保留込みで発表され、大騒ぎとなっている、らしい。ただしそれは一部の世界でだけだ。今日もラドウィックがとっている新聞には新型軍艦の何番艦かが竣工したとある。いったいいくつあるんだ。
ちなみにこれらの船は維持が面倒なのでしばしば植民地や同盟国に押し付けられる。地球の裏側の大洋を管理するなら同盟国とか南洋植民地に任せようということだ。まあそれを見越して無茶な話とかもあるんだがな。
同盟締結前の話だが、こんな冗談がある。
この頃にはまだ
彼らはなぜか電文の内容を知っていて、その二割ぐらいまでであれば受注獲得にむけての経費だとして色々と注ぎ込んだ。三陣営がそれぞれ六百万
そして海軍は議政院に提出した予算として通常なら三百万
そして同盟締結と引き換えに色々と根回しをした上で「最強の軍艦を」という注文を受けた
ちなみにこの冗談は嘘だ。時代も予算も関係者も合わない。それに送られた賄賂は軍艦製造ではなくもっと地味なものに使われている。おかげで向こうの方ではお取り潰しになった藩国があったとかなんとか。向こうの方では結構簡単に領主が家ごと交代するのである。こっちも爵位はそういうところがないわけではないのだが。
まあ、そんなことはいい。各地から送られてくる電報は未だに整合性が足りない。一つの研究室で丁寧に実験をやったところで、一つ大きな見落としがあればその測定自体が信頼ならざるものになるという結果が出たのはよく知られている。
なおエニオが送ってきた絵葉書には「
とはいえ電文ならどうか、と言われるとまた難しいところである。そもそも人間が話す以上の速度で文字が送られてくるし、読む方もしっかりと集中しなければ間に合わない速度で
ちなみにこの装置は原則受信用である。送信は近場の郵便局で行います。そもそもそんなにこちらから送ることないしね。送信者側が金を払うのでこちらが必要なのは通信線を屋根裏から通す工事の費用と五年分の契約料などなど。近場の大学とか企業とかが電信を引いていたのもあって銅線代もそこまでかからずに済んだ。このあたりの複雑な工学についてはあいにく扱いきれていない。
とまあ、そういうことで私は中性子発見から間もなく四年が過ぎようとする時代を吐き出された印刷用紙に埋もれながらのんびりと生きていたのである。いやあんまりのんびりできていなかったな。各地から集められた数字をまとめてそれぞれの実験条件を整理しておくとか大変なんですよ。一応発表があった
そして
最近ニールスとマルグレーテに会った 共に元気だが事態には心を痛める コッククロフトとモード・レイ・ケントに伝えられたし
[MEITNER, Lise] [Cable to O. W. Richardson]. [Spring 1940]. Quoted in: CLARK, Ronald W. The Greatest Power on Earth: The Story of Nuclear Fission. London: Sidgwick & Jackson, 1980.
リーゼ・マイトナーよりオーウェン・リチャードソンへの電報、1940年春
Owen Willans RichardsonがJohn Douglas Cockcroftに宛てたMaud Ray Kentについての問い合わせ(1940年5月)などに書き写された電文に基づくとみられ、原本は未確認。なお、他文献に基づいて原文「Margarethe」の綴りは修正されている。