爆発で意識飛んだと思ったら顎殴られて意識飛びかけた   作:なはは

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1話 爆発で意識飛んだと思ったら顎殴られて意識飛びかけた

 

 

 気が付くと、顎を殴られていた。

 

 俺はその場に手をついた。頭が重い。目の前がぼやける。

 

 ここはどこだ? 

俺は軍での作戦中に爆発に巻き込まれたはず。

死んだと思ったが、次の瞬間には顎に衝撃が来て脳を揺らされた。意味が分からない。

 

 ぼやけた視界で辺りを見回す。自分の記憶には無い場所だ。

 

「立ちなさい」

 

 正面から女性の声がした。その声を聞いた瞬間、頭に別の記憶が流れ込んでくる。

 

 自分は黒瀬恋(くろせ れん)。7歳。ここは家で、今は稽古中。

目の前にいるのは母親の黒瀬沙希(くろせ さき)。俺を強くするため、黒瀬流と言う格闘術の稽古を俺につけている。そして今、顔を殴られた。ここまでをはっきりと思い出した。

 

「立ちなさい、恋」

 

「は、はいっ……」

 

 沙希の声を聞いて、口と体が勝手に動く。

 

(なんだこれ……手が小さい。それに、声が幼い……子供?)

 

 俺は大人の男だったはずだ。だけど、目に映るのは小さい手、高い声。

これは自分の体じゃない。でも、黒瀬恋としての記憶がこれは自分の体だと肯定している。それがまた俺を混乱させる。

 

 困惑してる俺など気にも止めていないのか、俺の母親、沙希が蹴りかかってきた。

 

 瞬間、俺の体が勝手に動いた。

力で受けずに、技術のみで受け流そうとする。

ただし、黒瀬流ではない。自分の記憶にもない。体が覚えてるだけの動きだった。

だが、腕が短い。速さと力が足りない。体の感覚が違う。完全に勢いを殺せず、腕に痛みが走る。思わず顔をしかめる。

 

「……今のは、誰かに習ったの?」

 

「わか、りません……」

 

 俺は答えられなかった。自分でも分からなかった。

 

 沙希は目を細めた。

 

「……黒瀬は強さだけを求める。黒瀬流は、そのための方法のひとつに過ぎないの。もし今の動きが咄嗟に出たのだとしたら、それはそれで良いわ」

 

 少し間を置いて、沙希は続けた。

 

「黒瀬流は教える。けれど、今の動きを忘れないで。選択肢は多い方が強いわ」

 

 沙希の言葉を聞きながら状況を整理する。とりあえず、自分が誰で、今どこにいるかだけは分かった。

 

「……さて、一旦終わりにしましょうか。お疲れ様、恋」

 

 沙希が道場を出ていく。

時計を見ると、昼前だった。恋の記憶が正しければ、本来なら15時までは続いたはず。

 

(稽古が相当嫌だったんだろうな、嫌な感情が出てくる)

 

 そう思いながらシャワーを浴びに行く。道着を脱ぎ、裸になると、その光景に違和感を覚える。

 

「……ん?」

 

 股間にあるハズのモノが無い。

遅れて黒瀬恋の記憶が、俺は女だったと伝えてくる。

 

「勘弁してくれ」

 

 ただでさえ今の状況を把握するので精一杯なのに、これ以上混乱させないでくれ。俺は叫びたい気持ちを抑えてシャワーに入った。

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