爆発で意識飛んだと思ったら顎殴られて意識飛びかけた 作:なはは
気が付くと、顎を殴られていた。
俺はその場に手をついた。頭が重い。目の前がぼやける。
ここはどこだ?
俺は軍での作戦中に爆発に巻き込まれたはず。
死んだと思ったが、次の瞬間には顎に衝撃が来て脳を揺らされた。意味が分からない。
ぼやけた視界で辺りを見回す。自分の記憶には無い場所だ。
「立ちなさい」
正面から女性の声がした。その声を聞いた瞬間、頭に別の記憶が流れ込んでくる。
自分は
目の前にいるのは母親の
「立ちなさい、恋」
「は、はいっ……」
沙希の声を聞いて、口と体が勝手に動く。
(なんだこれ……手が小さい。それに、声が幼い……子供?)
俺は大人の男だったはずだ。だけど、目に映るのは小さい手、高い声。
これは自分の体じゃない。でも、黒瀬恋としての記憶がこれは自分の体だと肯定している。それがまた俺を混乱させる。
困惑してる俺など気にも止めていないのか、俺の母親、沙希が蹴りかかってきた。
瞬間、俺の体が勝手に動いた。
力で受けずに、技術のみで受け流そうとする。
ただし、黒瀬流ではない。自分の記憶にもない。体が覚えてるだけの動きだった。
だが、腕が短い。速さと力が足りない。体の感覚が違う。完全に勢いを殺せず、腕に痛みが走る。思わず顔をしかめる。
「……今のは、誰かに習ったの?」
「わか、りません……」
俺は答えられなかった。自分でも分からなかった。
沙希は目を細めた。
「……黒瀬は強さだけを求める。黒瀬流は、そのための方法のひとつに過ぎないの。もし今の動きが咄嗟に出たのだとしたら、それはそれで良いわ」
少し間を置いて、沙希は続けた。
「黒瀬流は教える。けれど、今の動きを忘れないで。選択肢は多い方が強いわ」
沙希の言葉を聞きながら状況を整理する。とりあえず、自分が誰で、今どこにいるかだけは分かった。
「……さて、一旦終わりにしましょうか。お疲れ様、恋」
沙希が道場を出ていく。
時計を見ると、昼前だった。恋の記憶が正しければ、本来なら15時までは続いたはず。
(稽古が相当嫌だったんだろうな、嫌な感情が出てくる)
そう思いながらシャワーを浴びに行く。道着を脱ぎ、裸になると、その光景に違和感を覚える。
「……ん?」
股間にあるハズのモノが無い。
遅れて黒瀬恋の記憶が、俺は女だったと伝えてくる。
「勘弁してくれ」
ただでさえ今の状況を把握するので精一杯なのに、これ以上混乱させないでくれ。俺は叫びたい気持ちを抑えてシャワーに入った。