爆発で意識飛んだと思ったら顎殴られて意識飛びかけた 作:なはは
4時限目は道徳。ホワイトボードに書いてあるのは、友達となかよくする、嘘をつかない、困っている人を助けるという内容だ。
先生が短い話を読み上げる。クラスは真面目に聞いている。ひなたもノートを開いて、うんうんとうなずいている。
ありきたりだ。前の自分でも知っている話だが、それが逆に落ち着く。頭が静かになる。今のうちに休もう。
その後は昼食を取り、教室の掃除、帰りのホームルームを終えて下校。こんなに早く下校出来るとは思わなかった。俺が学校に通っていた時もそうなのかは覚えていない。
帰宅しても俺の1日は終わりではない。帰宅後、沙希による稽古がある。
「始めるわよ、恋」
沙希の稽古が始まる。学校での授業を頭おかしいと表現したが、沙希との稽古は常軌を逸しているとしか言えない。それほど激しかった。
沙希の攻撃をひたすら捌く。簡単に対応させないように、時折フェイントを混じえたりする沙希に恐怖を覚えた。子供相手に本気すぎる。
「今日は終わりにしましょう、恋」
「ありがとう……ございました……」
休憩を挟みながらの稽古だが、終わる頃には時間は夜になっていた。乱れた息を整えながら沙希に返事をする。ここから風呂に入って、柔軟して、寝て……起きたら朝のランニング。
正直しんどいが、こっちの方が気は楽だった。肉体的な負荷は慣れている。
それよりも、この世界の常識の方が負荷が酷かった。毎日カルチャーショックのような衝撃を受けながら過ごすので、落ち着く暇もなかった。
そんな生活も2ヶ月経てば慣れていき、1年経つ頃には何とも思わなくなってきた。
4年生になってしばらくしてから、ずっと前から気になっていたことを沙希に聞いてみた。
「母さん、ひとつ聞きたいことがあるんだけど」
「何かしら、セレン」
「男性にも護身の授業があるけど、なんで? 護衛を雇えば良いんじゃないと思うんだけど」
沙希は少し考えてから、説明する。
「いくつか理由があるのだけど、蒼凪学園には護衛科があるの。男性生徒も護衛科に進む可能性を考慮して、基礎でもある護身は授業に組み込まれているわ」
「護衛科に行く男の子っているのかな? 荒っぽいの苦手そうだからやらないと思うけど。学校は良いとこのご令息が多いから家が反対しそうだし、尚更行かなさそう。」
「男性も護衛科に進むことがあるわ」
「そうなの?」
意外だと思ったが、俺の世界にも女性のボディーガードはいた。そう考えると不思議ではないか。
「ええ。強くなりたいという男性もごく稀にいるし、男性護衛は需要があるの。女性護衛と違って安心感があるという理由よ。分かるでしょう?」
安心感の一言じゃ分からない可能性もあるだろ。分かるけど。
そんな事を考えていると、沙希が言葉を続ける。
「でも、護衛の道に進みたいのに、基礎も分からないままじゃ他の生徒に遅れを取ってしまうでしょう?」
「そうかも。でも、苦手な子は多いんじゃない? うちのクラスの男の子、護身の時すごい嫌そうな顔してるよ」
「確かにセレンの言う通り、護身の授業が苦手な子もいるでしょうね。でも、基礎を覚えていれば襲われても最悪でも時間稼ぎ、良ければ返り討ちにできるもの。大事な大事な息子の為にと、護身の授業目当てでこの学園に入学させるところも多いのよ」
まあ確かに、自衛手段はあった方が良い。
「護身の授業は4年までね。男の子と護身について話す機会があれば、今年で終わりだからもう少しの辛抱だと教えてあげなさい。ちなみに、護衛科は5年からよ。分かってるわよね? あなたは必ず入りなさい」
「心得ています……」
分かってるから、その
ともあれ、納得だ。疑問が晴れてスッキリした。
「……これは男性護衛の話から逸れるのだけど、強い女は他の女よりモテるわ。だから、鍛えなさい。セレン」
「あ、はい」
1年経って分かった事だが、俺の母は堅物に見えて意外と俗っぽいところがある。まだ小4の娘にそんなこと言うな。
「後、稽古なのだけど、もう少し私の攻撃は防ぎなさい。あなたが怪我すると、ダニエルに怒られるの。怪我の箇所が多ければ多いほど、冷たい目をされるの」
「そんな事言われても……」
「分かったわね?」
「はい」
あとこの女ダニエルの事が好きすぎる。攻撃防いでも痛いもんは痛いし、傷は出来る。
何度思ったか分からないが、こっちはまだ小4だぞ、大人に蹴られて死んでないだけ上出来だと思うんだが。