邪神たちが異世界から来るそうですよ?   作:一反目連

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Yes!ウサギが喚びました!?
プロローグ


心地の良い朝を迎えた。

 

今日は誰かさんが抱き枕に変装して布団に潜り込んでいる訳でも無く、誰かさんが素っ裸で夜這いに来た訳でも無く、騒がしい取っ組み合いの声も聞こえない。

 

八坂(やさか)真尋(まひろ)はそう少しばかり寝ている頭で思った。

 

そして―――

 

「まっひろさぁーん!朝ですよぉ!」

 

―――今日も平穏に暮らす事は不可能だと改めて感じた。

 

「真尋さん!愛しのニャル子が起こしに来ましたよ!英語で言うとMorning call!」

 

「少年、今日は勤労感謝の日。少年に何かプレゼントをあげたい。という訳でデート……しよ?(ポッ」

 

「あ!僕も真尋くんとデートしたい!」

 

八坂真尋は完全に覚醒した眼差しで、ドアを吹き飛ばして部屋に入って来た美少女と言える見た目の三人――ニャル子、クー子、ハス太――を見やった後、ベッドの近くにある机の引き出しに手を伸ばした。

 

「真尋さん?はっ、もしかして私に何かプレゼントですか給料二ヶ月分ですか結婚指輪片手にプロポーズです………!!?」

 

―――ニャル子の言葉は真尋の取り出した小さな金属製の先の分かれているヘラのようなもの……フォーク(・・・・)を見て完全に止まった。真尋はフォークを三本取り出して構えると―――

 

「――お前ら!朝ぐらい静かにしろぉぉ!!!!」

 

―――ザスッ、と三人の頭に突き刺した。

 

「「「ギャフン!!!」」」

 

   *   *   *   *   *

 

「うぅぅ……真尋さんが朝から冷たいです……」

 

「諦めたら駄目だよニャル子ちゃん!諦めたらそこで試合終了なんだよ!」

 

「少年の特殊強ワザのフォーク投げは3DO版のザンギエフの空中デッドリードライブと同威力…」

 

さて、此処で彼女達の説明をしていこう。

八坂ニャル子――名字が同じだが、八坂真尋の姉妹でも許嫁でも無い。八坂真尋の家に住んでいる居候である。見た目は銀髪碧眼の長髪アホ毛付きの美少女だ。そして彼女はニャルラトホテプ―――クトゥルフ神話と呼ばれる架空の神話形態における邪神の一柱なのである。彼女だけでない。

八坂クー子や八坂ハス太もクトゥルフ神話におけるクトゥグアとハスターと呼ばれる邪神の一柱である。

 

ニャル子達は正確に言うと宇宙人で、ニャルラトホテプ星人、クトゥグア星人、ハスター星人という分類らしく、八坂真尋はとある事件から彼女達に出会い、何やかんやで今も尚、住み着かれているのだ。

 

「……なぁ、お前ら何時まで此処に居るつもりなんだ?」

 

「そりゃあ、真尋さんが死ぬまでですよ!出来る事なら私は真尋さんと一緒に一生を過ごしたいですね!」

 

「ニャル子、お前は千の貌を持つ者(ニャルラトホテプ)だろうが。お前の寿命が尽きるまでに僕の方が死ぬよ。」

 

彼女達は見た目がただの美少女とはいえ、立派に邪神であるため、強大な力を持っているのだ。

 

「僕も真尋くんと一生を添い遂げるよ!真尋くんが死んだら僕も死ぬ!!」

 

「それはそれでマズイだろ……、そもそもお前は()だろうが」

 

「愛の前に性別の壁なんて無いんだよ!」

 

なお、八坂ハス太は見た目美少女の男、所謂(いわゆる)(おとこ)()なのである。

 

「私はニャル子が此処に居るから此処に居る。ニャル子が死んだら私も死ぬ。ニャル子が星に帰ったら私も付いて行く…」

 

「私はアンタなんかとはお断りですよ!」

 

八坂クー子はクトゥグア星人の中でも変わり者でニャルラトホテプ星人である筈のニャル子に恋愛感情を抱いてるらしい。肉欲的にも。クー子の祖父が『ニャルラトホテプに恋するクトゥグアがいてもいい』等というとち狂ってる発言をしたからなのか、クー子はニャル子に遠慮無しでアタックしている。

 

   *   *   *   *   *

 

「それじゃあ、僕は買い物行ってくるからお前らは留守番してろ」

 

「何を言ってるんですか、私も付いて行きますよ!」

 

「ニャル子の居ない留守番なんてつまらない」

 

「僕も一緒に行くよ!」

 

「もう好きにしてくれ………ん?」

 

八坂真尋がポストを確認すると何時の間にか一封の封筒が入っていた。

 

「……?おかしいな、郵便屋は来てなかったと思うんだが…。ニャル子、お前なんか注文したか?」

 

「いえ、私は何も注文してませんよ。それに最近у.com(ヤマンソドットコム)は空間湾曲システムを使った技術で郵便物を注文者に直接送るシステムになったそうですし」

 

「少年、私とハス太も何も注文していない。それにその封筒には少年宛と書いてある」

 

確認すると確かに『八坂真尋殿へ』と書かれている。差出人や宛先の住所も書かれてない(・・・・・・・・・・・・・・・・)のに、である。

 

「………明らかに怪しいな」

 

「そうですね〜、でも安心して下さい!私が此処にいる以上、真尋さんが危険な目に合うことは無いでしょう!」

 

因みに、ニャル子は相手組織を潰すために真尋を囮にして敵を呼び出した事がある。おまいう

 

「…まぁ、見た感じただの手紙らしいし、内容を読まなきゃ判断できないしな」

 

真尋が封を切り、中の手紙を読む

 

   *   *   *   *   *

 

(なや)み多し異才を持つ少年少女に告げる。

 その才能(ギフト)(ため)すことを望むのならば、

 (おのれ)の家族を、友人を、財産を、

 世界の(すべ)てを捨て、

 我らの"箱庭"に来られたし』

 

   *   *   *   *   *

 

「わっ」

 

「きゃ!」

 

「なっ!」

 

八坂真尋は気づくと二人の少女と一人の少年と共に上空4000m程の場所にいた。

落下に(ともな)う圧力と自分が転移したことによりパニックになった。

 

「ど………何処だここ!?」

 

そして、八坂真尋は気づく。眼前に見える断崖絶壁に縮尺を見間違うほど巨大な天幕に覆われた未知の都市。

 

彼らの前に広がる世界は―――完全無欠に異世界だった。




「くっ!不覚を取ってしまうなんて!」

「あれは恐らく異世界へと転送するための何らかの仕掛けがあったと思われる」

「早く真尋くんを助けなきゃ!」

「しかし、私達が真尋さんの所へ行くのはかなり難しそうですね……」

「私も5チャンネルを使って何とか少年と同じ世界に行くための方法を探してみる」

「……ねえ、ニャル子ちゃん、クー子ちゃん」

「何ですか、ハス太くん」

「ニャル子ちゃんの輝くトラぺゾへドロンを真尋くんが持っていれば転移できるんじゃないかな?」

「「それだ!」」

「よっしゃー!これでニャル子もそちらに行けますよ!待ってて下さいね真尋さーん!」

「(真尋くんが輝くトラぺゾへドロンを開けなきゃ駄目なんだけどなぁ………)」
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