あらすじ
ニャル子「『邪神たちが異世界から来るそうですよ?』前回の三つの出来事!」
クー子「一つ!異世界間戦争勃発を防ぐ為アト子襲来!」
ハス太「二つ!真尋君の突飛な策に翻弄されるガルド=ガスパー!」
アト子「三つ!永年の鍛錬を重ね、遂に大魔王ガルド=ガスパーを打ち破る!」
十六夜「四つ!大魔王を裏で操っていた真の敵、白夜叉が我々に立ち塞がる!」
黒ウサギ「なんで三つの出来事なのに四つ目があるんですか!?」
真尋・白夜叉「「オイコラ」」
* * * * *
「見て。館まで呑みこまれてるわよ」
"フォレス・ガロ"の本拠に到着する。虎の紋様を施された扉は無残に取り払われ、窓ガラスは砕かれている。豪奢な外観は塗装もろともツタに蝕まれては剥ぎ取られていた。
「ガルドは二階に居た。入っても大丈夫」
内装もやはり酷いものだ。といっても『内装は無いそうです』のような某四角い建築ゲームの定番という意味ではないが。贅を尽くして作らせた家具は打倒されて散在している。流石に三人はこの舞台に疑問を持ち始めていた。
「この奇妙な森の舞台は………本当に彼が作ったものなの?」
「………分かりません。"主催者"側の人間はガルドだけに縛られていますが、舞台を作るのは代理を頼めますから」
「代理を頼むにしても、罠の一つも無かったわよ?」
飛鳥のその疑問に耀が応える。
「森は虎のテリトリー。有利な舞台を用意したのは奇襲のため………でもなかった。それが理由なら本拠に隠れる意味がない。ううん、そもそも本拠を破壊する必要なんてない」
そう、それが一番の疑問だった。彼の野望の象徴とも言えるだろう、自己顕示のためのこの豪奢な本拠。その本拠を意味も無く無残な姿にするだろうか。三人は今までとは全く違う緊張感の中で散策を開始する。
「二階に上がるけど、ジン君。貴方は此処で待ってなさい」
「ど、どうしてですか?僕だってギフトを持ってます。足手まといには」
「そうじゃないわ。そもそも、このゲームでは『プレイヤーがクリア条件を満たせなくなった場合、敗北とする』と記してあるのよ。三人纏まって行動して、三人とも行動不能になるような事になればそれで敗北なのよ?そんなヘマはやらかすつもりは無いけど………念の為、ね」
ジンはやや不満そうに飛鳥を見ていたが、取り敢えずは了承して階下で待つ事にした。飛鳥と耀は根に阻まれた階段を物音立てずにゆっくり進む。階段を上った先にあった最後の扉の両脇に立って二人は機会を窺う。意を決した二人が勢い良く跳び込むと中から、
「ギ………」
「――――………GEEEEEYAAA――」
「何だか、ごめんなさいね」
言葉を失った虎の怪物は、飛鳥の持っていた白銀の十字剣によって喉を切り裂かれ、あっさりと息絶えた。
* * * * *
話はギフトゲーム開始前に遡る。
「そもそも、『指定武具でのみ討伐可能』という物の何が一番厄介なのか………わかるか?」
「………私の身体能力を活かせないという事?」
「いや、耀は別に肉弾戦限定で強いわけじゃないだろ?だからそれは違う」
耀の言葉を否定する真尋。十六夜が口を開く。
「指定武具の調達………か?」
「正解だ十六夜。その理由は一つ、指定武具が何なのかが分からない所、もう一つ、指定武具の場所が分からない所にある」
「で、策って何なのかしら?」
「つまり、だ。さっさと指定武具の調達を済ませてしまえば良いんだよ」
その真尋の言葉に一同は顔を顰める。一同の心中を飛鳥が代表して真尋に告げる。
「それが出来ないから、指定武具の調達が難しいのでしょう?」
「それを可能とする裏ワザがあるんだよ。ニャル子」
真尋がニャル子に目をやると、壁に向けて歩き続けたり飛び跳ねたり奇妙な踊りをしていた。
「………ニャル子?」
「あ、ちょっと待ってて下さい。あの技は発動率0.2%切ってるので乱数調整しておかないと」
真尋がフォークを構えるとニャル子は1フレームの間に土下座を済ませていた。
「さっさとしろ」
「了解!いっきますよ〜、私の宇宙CQC体験版、『ニャル子の鷲掴み』!」
ニャル子が虚空に向けて手を伸ばすと、虚空に穴が現れてその中にニャル子の腕が入った。
「ふんふん、うわっ、変なもの触った!気持ち悪ッ!………っと、これですね」
「いや、何触ったんだよ」
真尋のツッコミをスルーして、ニャル子は虚空の穴から一本の剣を取り出す。それは、白銀の十字剣であった。黒ウサギはそれを指差して、真尋に問いかける。
「えーと、それは何デショウカ?」
「ニャル子が間違えてなければ、今回のギフトゲームの指定武具」
絶句する一同を余所に、真尋は剣をニャル子から受け取ると、本拠の敷地内に投げ捨てる。
「さて、これで指定武具の調達は楽になったな」
「「「「「いやいやいやいや」」」」」
つまりはこういう事なのだ。『指定武具を先に盗っちゃって』、『ゲームテリトリーに再配置して』、『ゲーム開始直後にもう一度入手したらいい』。とんでもないインチキであった。