長いです。途方も無く長いです。
どの位長いかって言うと、普段の私の一話あたりの文字数は2500文字前後です。九.五話は3200文字位だった気がします。
この話は12000文字超えてます。繰り返します、この話は12000文字超えてます。
もっと短く収めるつもりでしたが、気付けばずるずると長くなり、この文字数です。
そして、面白くないと思います。ネタが薄っぺらく、突拍子も無い展開ばかりです。
そして本編とは一切関係ありません。この話は読まないで結構です。
それでも読んでくだされば幸いです。さらに楽しんで読んでもらえたならばもっと幸いです。
それでは、『ノーゲーム・ノーライフ』改め『ノーフェイス・ノーライフ』をどうぞ。
なお、この話は一巻の最後の辺りまで書いてあります。
ルーシア大陸、エルキア王国―――首都エルキア。
赤道を南におき、北東へと広がる大陸、その最西端の小さな国のまた小さな都市。
神話の時代においては、大陸の半分をもその領土とした国も、今や見る影もなく。
現在、最後の都―――その首都を残すのみとなっている小国であり。
―――もっと正確にいえば。
そんな都市の、中央から少し外れた郊外。
酒場を兼ねている宿屋という、
多くの観衆に囲まれ、テーブルを挟みゲームをしている一組の少女達がいた。
一人は十代
そしてもう一人は―――。
赤毛の少女と同い年ほどだろうが、その雰囲気と服装から随分年上に感じられた。
葬式のような黒いベールとケープに身を包んだ―――黒髪の少女。
行われているゲームは……ポーカーらしい。
二人の表情は対照的で、赤毛の少女は焦りからか、真剣そのもの。
一方、黒髪の少女は死人を思わせるほどの無表情の中にも余裕が窺えた。
理由は明白―――黒髪の少女の前には大量の、赤毛の少女の前には、
つまり―――赤毛の少女が
「……ねぇ、早くしてくれない?」
「や、やかましいですわね。今考えてるんですのよっ」
―――そこは酒場、昼間っから
赤毛の少女の表情は更に苦悩の色に染まっていく。
だが何はともあれ―――随分盛り上がっている様子だった。
……―――。
その勝負が行われていた酒場の、外。
そう、既にその勝負は終わり、ある程度時間が経ったその酒場の外だ。
テラス席の端のテーブルに座っているのは一組の男女。
一人は女装をしたらよく似合いそうな、少しばかり中性的な顔つきの高校生ほどの少年。
もう一人は銀髪と碧眼が特徴的な、美少女という言葉が良く似合う大きなアホ毛の少女。
「真尋さん!酒場ですよ、英語で言うとビィー、エェー、アァァールゥ!!」
「なんでそんなにテンション高いんだよお前は……もう少し落ち着いてくれ」
「まぁまぁ、別にいいじゃありませんか―――で、何時までこの人達は此処にいるつもりなんでしょうか?」
アホ毛の少女は今まで忘れていたとでも言わんばかりに呟き、膝を抱えて座り込んでいる三人の中年と言える男性に目をやる。
よく見ると、テーブルの上には小さな白い直方体がばら蒔かれていた。
それは……どう見ても
「―――インチキだ」
「なんですって?」
座り込んでいた三人の中年のうち一人が呟き、次の瞬間には怒号と言っても良いほどの声の大きさで叫ぶ。
「どう考えてもおかしい!どんなインチキ……いや、イカサマを使ったんだ!」
その言葉に同意するように抗議し始める他二人の中年。それをアホ毛の少女は聞き、悪い顔をして問いかける。
「じゃあ、証拠はあるんですか?」
途端に口を噤む三人の中年。そう、少女の言う通り一切の証拠は無いのだ。例え――ダブリー出してカン三連発からのツモで、
「さて、覚悟は良いですか?さあ!皆さん、【盟約】に誓って全財産の半分を私に献上しなさいな!クククッ、ハハハッ、ア〜ッハッハッハァ!」
「お前もう悪役にしか見えないな」
さて、このアホ毛の少女―――八坂ニャル子と、中性的な顔つきの少年―――八坂真尋は
* * * * *
ある休日の昼下がり、八坂家にて朝食を食べていた八坂真尋に、トラン〇ムでも使ったが如く速度で食べ終えた八坂ニャル子は口を開き、告げた。
「真尋さん、少し異世界に旅行に行きませんか?」
「嫌だ」
〜Fin〜
―――と、此処で終わるわけではない。
突然ニャル子が告げた「異世界に旅行」という言葉は傍から聞けば、『(頭が)大丈夫?結婚する?』みたいな物である。しかし、ニャル子はそれを容易く可能にするであろう事を真尋は身に染みて実感していたのだ。
「つれませんね〜、行きましょうよ異世界!英語で言うと、ゴー・トゥー・ヘヴン!」
「天国に行ってどうする。というかどうして突然そんな事を言い出したんだ?」
真尋が問うと、ニャル子は胸元から一枚の便箋を取り出した。なお、この話はあくまで番外でしかないため読んだら問答無用で異世界行きとなる手紙とは別物である。
「実はですね、私の宇宙大学時代の同級生が『新世界の神になる!』と言ってマジにやったので『マジかよ…ありえねぇよ…』と思っていたらその同級生が唯一神を勤めている世界への招待状が届いたので息抜きにでもどうかと思いましてしかしながら私も真尋さんの身が心配なのでその同級生に確認を取ったところ『大丈夫だ、問題ない』との返事が返ってきたのでならば安心だと考え私は真尋さんを誘う事にしたのです」
「矢継ぎ早に喋るな、もっとゆっくり喋れよ!」
「ゆ っ く り し て い っ て ね[о]З[о]」
真尋がフォークを机に刺す。ニャル子のアホ毛は垂直に伸びたあとへにゃりとしならせる。
「ゴメンナサイ、刺すのだけは止めて下さい」
「まぁ、つまりはお前の宇宙大学の同級生が異世界の唯一神になって招待状を送ってきたってことでいいのか?」
「そうですね」
「じゃあ一人で行け。僕は勉強でもしておくよ」
朝食を食べ終え、自分の部屋に戻ろうとする真尋をニャル子はガシッと掴む。
「やめろ、厄介事の気配しかしないんだよ!」
「大丈夫です!同級生曰く『他者を傷つける事の出来ない世界』らしいので大丈夫です!!」
「……なに?」
そこで抵抗を止める真尋。漸く話を聞く姿勢をとったのだ。ニャル子も説明を始める。
「まず、同級生の彼―――テトはトルネンブラの少年なんですけどね?」
「トルネンブラは生きた音その物で、姿形は無いんだよな?なんで少年って断定できているんだ?」
「……トルネンブラは人型になる事ができまして」
「お前確か十二の上級邪神しか人型になれないっていってたよな?トルネンブラは強力な魔術が使えたわけでもないのにどうやってその祖先は宇宙の覇権を賭けた戦いに勝利したんだよ」
「……さて、話を続けますね」
目を明後日の方向へ逸らしながらニャル子は話を続ける。どうやら詳しくは考えてなかったらしい。
「変わり者であったテトはまず地球の音ゲーに興味を持ちました」
「まあ、確かに音ゲーはクオリティが高い物が割と多いよな。それで?」
「そしてそこからゲームという存在その物に興味を持ったのです」
「ふんふん、まぁ、少しは納得できるかな。で?」
「そして遊戯の神様として異世界の唯一神となりました」
「はいそこ、そこがおかしい。どうやってなったんだよ」
「なんでも
「お前なんでそういう風に一言余計なんだろうな」
真尋がため息を吐いている間にもニャル子の話は続く。
「で、私達の世界と酷似した世界から二人の人間呼び出したからそのついでに遊びに来ない?と誘われたので私が独断で了承しました」
「八坂百裂刺し!」
「ひでぶっ!」
ニャル子に百のフォークの刺し傷が付けられる。ギャグ補正のたっぷりな漫画のごとく即座に回復してはいたが、やはり痛いものは痛いようで涙を滝のように流すニャル子。
「酷いですよ、HEEEEYYYY、あァァァんまりだアァアァ!と叫びたくなるじゃあありま尖閣諸島!」
「くだらない、零点。なんで勝手に了承したんだよ……」
真尋はニャル子のギャグをばっさり切り捨て、ニャル子を
「いえ、テトは唯一神になってその異世界に【十の盟約】を作ったそうで、その内一つに『この世界におけるあらゆる殺傷、戦争、略奪を禁ずる』というものがあったので大丈夫だと判断しました」
「脅迫や詐欺、嫌がらせは禁止されていないんだな」
「あ」
真尋の指摘に今、気付いたと言わんばかりのニャル子。
「どうしましょうか、もう
「え゙?」
―――刹那。
食卓の近くに置かれたテレビの画面に微かなノイズが走り。
同時、ブレーカーが落ちたように、バツンッと音を立てて部屋の全てが止まる。
唯一―――テレビの画面を除いて。
そして―――
「な、なんなんだっ!?」
「あ、迎えが来たみたいですね」
部屋全体にノイズが走り始める。
家が軋むような音、放電するような弾ける音。
真尋が慌てて逃げようとしても、時すでに遅し。
テレビの画面以外の、部屋の全てが砂嵐に呑まれる中。
唐突に白い腕が生えてくる。
「なんなんだよ!これじゃ、トルネンブラじゃなくてイゴールナクじゃないか!」
「もう少し落ち着きましょうよ真尋さん」
画面から伸びた腕は真尋とニャル子を掴み。
抗う余地もない程の力でもって、二人を引きずり込む。
画面の中へ―――。
『ようこそ、僕の世界へ―――なんてね☆』
その声を最後に、気づけば真尋とニャル子は草原に立っていたのだ。そして真尋は一言呟いた。
「なんなんだよ、このクソゲーは………」
これが事の顛末なのである。
* * * * *
「―――で、お前によって無理やり異世界に連れ去られた挙句、お前の賭け麻雀を見学させられて、二人一部屋の酒場の宿で貞操の危機と共に一泊させられた後、王城に連れ去られている僕に何か申し開きはあるか?」
「反省はしている、後悔はしていない」
―――そして、次の日となり、真尋とニャル子は王城へと向かっていた。何でもテトの呼び出したという二人の人間は王城にいるらしい。
「で、どうやって王城に入るつもりなんだ?」
「今は普通に空いていますよ。国王選定が終わって戴冠の儀を行うらしいので観衆が普通に集まっています」
「そうか……」
そして、真尋達がエルキア王城の大広間に入ると大きな声が聞こえた。
「例えばエルフと結託して魔法で優勝した奴を王にしたら、この国は終わりだろ!」
―――数瞬、思考を停止させた真尋は、『ああ、
「お〜、派手にやってますね〜」
「なんでそんなに楽しそうなんだよ……」
「やっぱりこういう人間は見ていて楽しいですよね〜」
「僕は見ていて胃と頭が痛むから嫌いだな……」
「おっと、二人が中庭の方へ行くみたいですね!尾いていきましょう!」
そう言いニャル子はダッシュでテトが呼び出したという人間の元へ走る。それを見てため息を吐きながら真尋も着いていくのであった。
* * * * *
真尋はできる限りゆっくりと歩き、中庭に向かう。そしてなにやら嫌な予感がし、走って到着すると―――
「だが
断る」
二人の内青年の方がジョジョ立ちで立っていた。
黒髪の少女が青年に言葉を紡ぐ。
「―――理由を……聞かせて貰えるかしら?」
「ふふ、それはな……」
隣で感情の読めない顔で成り行きを見守っていた二人の内少女の方を抱き寄せて青年は告げる。
「この『
「「「自分が絶対的有利にあると思っているやつに『NO』と断ってやる事だ…ッ」」」
青年の言葉に、ハモらせるように、乗る少女。
―――そして、その後ろで某異常や過負荷だらけの学園漫画の完全生徒会長の如くコピっているニャル子。
「えっ、誰?」
青年が口を開き、
「いつの間にッ!?」
アルビノの少女が驚き、
「なッ―――!」
黒髪の少女が絶句し、
「アフーム・ザー!!」
ニャル子の頭部にフォークが刺さり奇妙な声とともに倒れる。
「「「「……………」」」」
中庭は混沌で溢れかえっていた。
* * * * *
「そうか、お前もテトに呼ばれたんだな」
「正確に言うならニャル子が呼ばれて、僕はその付き添いだけどな」
その後、どうにか再稼働した黒髪の少女―――クラミーというらしい―――は捨て台詞を告げて去っていった。そしてテトに呼ばれた二人―――青年の方は空、少女の方は白―――と、赤毛の少女―――ステファニー・ドーラという名で、死去した国王の娘らしい―――に謝罪をし、ある程度事情を説明するとどうにかなったらしい。
「で、一つ言っていいか?」
「なんだ、空」
「リア充死すべし、慈悲はない……ッ!」
「この世界では殺傷はできないけどな」
さて、そのように馬鹿話をしながら大広間に戻ると、玉座の前に立てられた小さなテーブルと、一対の椅子。
そしてテーブルの上には―――
「チェス盤……?」
戸惑った声を出したのは、空だった。
「そう、チェスよ。でもこれは―――ただのチェスじゃないわ」
そう言ってクラミーは小箱を取り出し、盤の上にコマをぶちまける。
―――すると。
三十二個、白黒十六個ずつのコマが盤の上を滑るようにして、勝手に定位置に付く。
「次に貴女は『そう、これは『コマが意思を持っている』チェス……』と言うッ!」
「そう、これは『コマが意思を持っている』チェス……ハッ!」
ニャル子の言葉に一瞬驚き、苦虫をかみつぶした
ような顔をした後咳払いをし、説明を続ける。
「更に貴女は『コマは自動的に動く。ただ、命じれば。命令のままに、コマは動く』と言うッ!」
「コマは自動的に動く。ただ、命じれば。命令のままに、コマは動く……ハッ!!」
またもや言い当てられ苛立ちを多分に含んだ顔でクラミーはニャル子を睨む。
「一体、貴女は何がしたいの?」
「場をしっちゃかめっちゃか掻き回すことがした……モゴモゴ」
「いい加減にしろ。すまん、クラミーとやら。こいつは存在感のある空気とでも思ってくれ」
「それ……無視できるものなのか?」
真尋がニャル子の口を手で塞ぎ、クラミーに対処法を述べる。と言っても空の言う通りで、あまり参考になりそうな物ではなかったが。
「あ、そうだ。なあ、これ途中で交代してもいいよな?」
「「―――?」」
訝しむのはクラミーと、白。
「悪いがこっちは二人で一人のプレイヤーなんだわ。それに、そっちが一方的に熟知してるゲームのようですし〜?内部の隅々まで、だろ?」
ケータイを手で弄びながら言う空の意図を図ろうと、目を覗き込むクラミー。そしてしばらく見たあと吐き捨てるように言う。
「―――どうぞ、ご自由に」
予想外に抗議の声を上げたのは―――白。
「……にぃ、しろが、負ける、と……?」
「白、熱くなりすぎ。普通のチェスならおまえが負けるなんて万に一つもない」
「……ん」
空の心からの本心と窺える言葉に、当然だとばかりに頷く白。
―――だが。
「これは普通のチェスじゃない―――"そいつが言ってる以上に"な」
「………」
「忘れるな。俺らは二人で一人、二人で
「……ごめん、なさい。気を、つける……」
「よっし!じゃーいっちょ暴れて来い!」
空はそう言って、白の頭を撫で―――そして耳元で囁くように言う。
「―――俺がイカサマを看破して打開策を練るまで、勝ち抜けてくれ」
こくりと頷いて白がゆっくりテーブルにつく。
小柄である白には若干低い椅子、その上にちょこんと、正座して席に着く。
「話は終わった?―――でははじめましょう、先手はそちらで結構」
「……―――」
白の様子を眺めていた空は真尋に話しかけようと思い、横を見る。
「なあ、真尋―――?」
そこには既に真尋とニャル子の姿は跡形も無くなっていて、虚空のみが存在した。
* * * * *
所変わって
その森の中で魔法を使い、クラミーと『
するとそこには―――
「いつもニコニコあなたの隣に這い寄る混沌、八坂ニャル子!只今、見参!」
「さて、貴女がクラミーとやらの協力者であるフィール・ニルヴァレンであってますよね!合っていたら叩きのめします、合ってなくても叩きのめします!」
「バイオレンス過ぎるだろ」
フィールは警戒レベルを上げた。何故クラミーに手を貸したのがバレているのか、先程までエルキア王国の王城にいた筈なのにどうやって短時間で此処まで来ることができたのか、そして―――
「あなたは、何者ですかぁ?」
「おや、私は先程名乗りましたよね?」
「いやニャル子。そう言う事聞いているんじゃないと思うがな?悪いな、フィール……さん?」
「いえいえ、大丈夫なのですよぉ……それで、何の目的で此処に来たんですかぁ?」
フィールがニャル子の方へ向き、問い掛ける。するとニャル子は嫌らしい笑みを浮かべて告げた。
「フィールさん、ゲームをしませんか?」
「……私はぁ、何かを賭けるつもりはないですよぉ?」
「それでも結構です。私は娯楽に飢えています。そう、英語で言うとォー、アイム、ハングリィー!」
「それだと『お腹が減っています』だな」
フィールは真尋とニャル子のやり取りを見つつ、考える。この人はただのバカなのか、それとも―――
「それで、何のゲームをするんですかぁ?」
「そうですね〜……そうだ、クラミーさんがやっているこのチェスなんて楽しそうですね!」
ニャル子はフィールが魔法で作った覗き穴を指差して、そう告げる。
「ルールの説明は、必要……じゃあないですよねぇ」
「そうですね。先手はフィールさんでいいですよ!」
……しかし、ニャル子とは何なのか。未だに分からない。ただテンションの高いバカのようにしか見えないが、これが演技なのかもしれないとも思えれる。
「―――e2ポーン、e4へ行ってくださいなぁ」
そしてファールのポーンが前に2つ進む。
「e7ポーン、e5へ」
ニャル子のポーンも前に2つ、予想外にもニャル子はまともにやっていた。
「g1ナイト、f3へどうぞぉ」
「b8ナイト、c6へ」
「f1ビショップ、b5へ行ってくださいぃ」
このオープニングのやり方はルイ・ロペスって言う奴だったっけ?もっとも良く使われる定石……だった気がする。ま、この調子ならニャル子が変な事やらかさずに終わりそうで良かった―――
「さて、真面目にするのはこのくらいでいいでしょう」
―――は?
「フィールさん、こっからは私は本気出していきますが、覚悟はよろしいですか?」
「え〜と、どういうことですかぁ?」
「見れば分かりますよ」
ちょっ、ニャル子―――
「 分 裂 !」
ニャル子は分裂し、十六のチェスの駒ほどの大きさのニャル子達と、中学生程にまで縮んだニャル子に分かれた。そして―――
「ア〜ンド、 合 体 !」
チェス盤にちびニャル子達が跳び乗り、ニャル子のチェスの駒のそれぞれと合体……いや、融合し始めた。
「完成、これが私の宇宙CQCver.α!
―――フィールと真尋は無修正融合シーンによってSAN値が減少してしまい、失神していた。
* * * * *
その後、ニャル子から聞いた話によると失神してしまったならしょうがないと言わんばかりに早々に『宇宙CQCver.α』を解除して、チェスの駒も勝手に動かし相手に何もさせないまま勝利を収めたらしい。
「いや〜、SAN値減少の事をすっかり忘れていましたよ。ニャル子ったらうっかりさん☆」
目覚めた僕に告げたそのニャル子の言葉を聞き、無意識に3本ほどフォークを刺したのは、不可抗力と言う奴だろう。
そして王城へ向かうと、王城の門の前には一人の少年が立っていた。その少年を見て、ニャル子が口を開く。
「おや、久しぶりじゃないですか」
「うん?―――あ、ニャル子ちゃんか。久しぶりだね」
そのやり取りで真尋は察した―――否、察してしまった。そう、この少年こそが……
「真尋君は初めまして、が正しいよね。こんにちは、僕は『テト』。唯一神なんて物をやっているよ」
真尋は内心、胃に穴が空いたかもと思い始めていた。
「あれ?マヒロさんにニャルコさんじゃないですの」
声をかけられてそちらを向くと、赤毛の少女、ステファニー・ドーラがいた―――ただし。
過剰ではない程度に―――あざとすぎない程度に露出の多いメイド服を身に纏って。
「……空達の仕業か?」
「……何も聞かないでくれると有難いですわ」
「そうか……」
「あ、そうですわ。ソラ達なら今大議堂にいますけど、どうするんですの?」
「そうですね〜……そろそろ私達も帰らないといけませんし、その報告も兼ねて会いに行きましょうかね。そちらも行きますよね?」
「うん、そうだね。彼らにはお礼も含めて色々話したい事もあるしね」
「……??とりあえず、わかりましたわ。ソラ達に報告してくるので、待ってて下さいな」
ニャル子とテトのやや際どい言葉は幸運にもステファニーには理解できなかったが、真尋は冷や汗をかいていた。
「お前ら……ギリギリ過ぎるだろ」
「大丈夫ですって、一応結界も使ってましたし」
なら、いいんだが……と思っている隙にニャル子とテトは勝手に王城に入る。―――って、
「何やってんだお前ら!」
「いえ、待つのもつまらないですし、私達の方から勝手に出向こうかと」
「そうだね。
「
真尋の言葉を流しつつ、どんどん進む二人。そしてそれにつられて着いて行ってしまっている真尋。気付けば、既に大議堂の扉の前まで来てしまっていた。
「僕は―――無力だ」
「じゃあ扉を開きますよ〜、オープン・ザ・セサミ!」
ニャル子は言葉だけで扉を開ける。いつもの超技術か何かだろう。中を見るとステファニーと『
「あはははは、中々楽しいことになってるみたいだね」
空と白、ステファニー、そして大臣であろう人々が居揃った大議堂に。
コツ、コツ、と―――歩いて、入ってくるテト。
その顔を空と白は見て、口を開く。
「……よお、自称神様じゃん。どったの?」
「やだなぁ。自称じゃなくて、紛れも無く神様なんだけど」
たはは、と頭をかいて、テトは言う。
「そういや名乗ってなかったかな―――『テト』……それが僕の名前。よろしく『
テトの言葉に空と白、真尋とニャル子の四人を除いた全員の毛穴が開き、ぶわっと汗が噴き出す。
大臣であろう人達は血の気の引いた顔で、ステファニーは今にも崩れ落ちそうに体を震わせていた。
だが、そんな一同を気に留める様子もなく。
「どうかな、僕の世界。気に入ってくれたかな?」
「ああ、いいセンスしてるよ。うちの
「……こくこく」
そう、軽口を叩く空と白。
それを聞いているテトは笑顔で。
「それは何より。さて……とりあえず
「ああ、お望みどおりにな」
皆が、え?という顔をするのを見て、真尋はこいつら、気付いてなかったのか……と思う。
「たまたま一番近くにあった街が、たまたま人類の最後の国で、たまたま国王決定戦を行ってた……なんて。まさか偶然なんて野暮なこと、言わないっしょ?」
そう不敵に言う空に、テトは気分よく笑って言う。
「あはは……でも勘違いしないで。僕も基本傍観主義だよ。特定の種族に肩入れはしない―――ただまあ、今回はちょっと、私情が入ったことは認めてもいいかな」
テトは、ふてくされたように、退屈そうに床を蹴って、言う。
「僕の言葉覚えてるかなぁ……"全てがゲームで決まる世界"―――って」
―――ああ、と。その言葉の意図を汲んで、空が先回りして言う。
「……なるほど。唯一神の座さえ、ゲームで決まるってことか」
「「―――なっ―――」」
―――と、感心した様子の白とニャル子を除いた、その場にいる全ての人間が絶句する。
そして唯一、テトは楽しそうに笑って、言う。
「正解♪わざわざ【
「……全種族を制覇するのが、おまえ―――つまり『神への挑戦権』か」
気分よく笑って、テトが答える。
「いいねーその頭の回転。異世界から来たばかりとは思えない順応性だよ」
「そりゃどーも♪」
真尋はテトと空の会話を適当な所でシャットアウトし、ニャル子に話しかける。
「―――なあ、ニャル子」
「はい、何でしょうか……」
「安全だと判断した、って言っていたよな」
「……私のログには無いですね」
「言 っ て い た よ な?」
「…………ゆるしてニャン☆」
「赦さん」
ニャル子の頭部にフォークを刺す、まだ刺す、更に刺す、親の敵と言わんばかりに突き刺しまくる。
「今回はずっと此処にいる訳じゃないから、これで許してやる。次は無いからな」
「うぅ……私だってここまで殺伐としているとは思ってなかったのに……」
空とテトは話を丁度いい所で切り上げて、真尋とニャル子の方を見る。
「なあ、真尋」
「ん?何なんだ空」
「何でお前、いや、ニャル子もなんだが、テトと一緒にいたんだ?」
「門の前で鉢合わせた」
ふーん、と言ったあと、空は続けて言葉を告げる。
「じゃあ、何で
「既にニャル子から話を聞いていたからだな……って、そういえば話をしてなかったよな?」
真尋はようやく理解した。つまりは、真尋までニャル子やテトのお仲間だと思われていたんだろう。
「近くに神がいるような事には慣れている……って、なんかこれだとニュアンスが違う気がするな……」
「某東の方の幻想の郷に住む風祝なのか?」
「誰が東〇谷早〇だ。あー、ニャル子、自己紹介したらわかりやすいと思うから自己紹介してやれ」
「イエッサー!」
ニャル子は一歩前に出て、仮〇ライダーの変身のポーズを決めながら言う。
「いつもニコニコ真尋さんの隣に這い寄る混沌、八坂ニャルラトホテプ―――です☆」
「
流石の空も驚きを隠せずにいる。
「ちなみに僕の家にはニャル子以外にシャンタク鳥、クトゥグア、ハスターも居候している」
「いや、どんな家庭だよ」
「こくこく!」
そして、真尋はざっくりと説明してやる。
「テトが元・トルネンブラで、ニャル子の同級生で、招待状が来たから、息抜き代わりに旅行で来たって―――どういうことだよ……」
空も流石に理解するには時間がかかるようだ。そんな空に僕は告げる。
「そういう訳だから、そろそろ僕は帰るからな」
「いや、もっとゆっくりしてくれてもいいぞ?」
「『こんな
「真尋……死ぬのか……」
「惜しい人を亡くしてしまった」
「はいはい、それじゃあな」
空と白の軽口も程々に流しておいて、テトに話しかける。
「それじゃあそろそろ帰してくれないか?」
「いや〜、真尋君も結構頭回るみたいだし、いっそのことこの世界に永住しないかい?」
サクッ
「それじゃあそろそろ帰してくれないか?」
「
「真尋さんは某鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼すら恐れおののく容赦無さを持ち合わせていますからね……」
真尋は空と白の方へ向き直り、一言告げる。
「それじゃあな、機会があれば家に遊びに来い。一応歓迎くらいはしてやる」
空と白はキョトン、という顔をした後、流れるようにケータイを取り出し、写真を撮って、保存した。
「ファイル名、『ツンデレ中性的顔立ち少年』。これはこれでイけるッ!」
白の言葉に顔を赤くした真尋がフォークを投げるべくポケットに手を突っ込んだ直後―――ニャル子と真尋の視界は暗転した。
* * * * *
気付けば、真尋とニャル子は自宅の居間に立っていた。
「いや〜、楽しかったですね!真尋さん」
「畜生……ケータイ壊す事が出来なかった」
真尋が蹲り、羞恥に悶えているとドタドタと足音が聞こえてくる。
「「「真尋君(少年)、大丈夫だった!?」」」
来たのは頼子と、クー子、ハス太であった。
「皆―――あ、そういえば今まで何してたんだ?」
「『邪神二人と邪神ハンター二人のCoC』のミゴ生中継をしていた」
「本気で何やってんだ!?」
邪神二人は、クー子とハス太だ。邪神ハンター二人は、恐らく頼子と教授と呼ばれる人物であろう。そしてミゴ生中継っていうのは、宇宙版の某笑顔動画こと、ミゴミゴ動画の生放送の中継を指しているのだろう。
意味はわかるが、理解は出来なかった。割とマジで。
「今より5時間前に此処を震源地とした危険域の次元震が観測されて、心配になって来てみたら真尋君とニャル子ちゃん居ないし!セラエノ図書館まで行って調べたんだからね!」
「ハ、ハス太……悪かった」
「私だって少年を心配した」
「クー子……お前、いい奴だったんd」
「少年が居なければ、誰が私にご飯を作ってくれるのか!」
「自分で作れよ」
ああ、この騒がしい環境。僕はようやく戻ってこれたんだな……。感傷に浸るのもいいが、まずは―――
「―――ただいま、皆」
「「「おかえりなさい!」」」
―――僕とニャル子のあの世界での話を語って聞かせてやろう。
〜後日談〜
―――数ヶ月後。
ピンポーン
「あら、誰かお客さんかしら?見てくるわね」
「うん、わかった」
……いや、何だか嫌な予感がするような―――気の所為、だよな?
「一体誰でしょうね〜。夏休みに入ってますし、暮井さん辺りが遊びに誘いに来たんでしょうか?」
「この間行ったばかりなのに来るのかなぁ?」
「真尋く〜ん、貴方の知り合いらしいわよ?」
「余市さんでしょうか?」
「そうかもな、行ってみる事にするよ」
「余市、今日遊びに行くかっ誘いなら乗るけど……」
「真尋、遊びに来たぞ」
「……久しぶり!」
「人違いです」
バタン(扉を閉める音)、ガチャ(鍵を閉める音)、カチャカチャ(チェーンロックをかける音)
「―――さて、今日は家族で一緒に団欒でもしようか」
「あら、お客さんはいいの?」
「うん、隣の家と間違えたみたいだよ」
そう、気の所為だ、目の錯覚だ。『
「クー子、今日の昼飯の希望はあるか―――」
「つ、強いッ!貴様、このゲームやり込んでいるなッ!?」
「答える必要はない」
「『
―――さて、現実逃避もここまでとするか。
「何で来たお前ら」
「何でって……テトを下したって報告も兼ねて遊びに来た」
「コクコク!」
……成程。
「良かったなお帰りはあちらです」
「え〜と、これだな」
ピッ
『機会があれば家に遊びに来い。一応歓迎くらいはしてやる』
ピッ
「このボイスレコーダーに証拠音声は残っている。さて、一泊泊めてくんない?」
「〜〜〜ッ、はぁ……。わかったよ、昼飯は何がいい?」
「「うっし!」」
さて、最も新しい神話も終わった。ならば後は書き記すだけ、その仕事は―――