邪神たちが異世界から来るそうですよ?   作:一反目連

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遅れました。FGOとか短編とかFGOとかテストとかFGOとかFGOで忙しかったのです。―――はい、すいませんでした、私が悪かったです、マジごめんなさい。
それは兎も角、第十九話です。


第十九話

あらすじ

 

恋が始まるには、

    ほんの少しのSAN値があれば十分です。

 ニャルンダール(一七八三―一八四二 ンガイ)

春―――()(づき)。私、ニャル子の心は希望に満ちあふれていました。しかし、桜並木の道を進むと―――目の前の桜の木で、一人の男性が首を吊っていたのです!

ニャル子「いけません!」

ぎゅぅ

ニャル子「命を粗末にしてはいけません!」

ニャル夫「〇×△◇∀♀‰※!!」

男性はじたばたしますが、男性の使っている縄はアト子ちゃんの特別製なのでそう簡単に千切れません。

ニャル夫「おい!台本と違っ、は、離せ、意識が遠の―――………」

男性が完全に動かなくなると、私はその男性から離れて、ぽつりと呟きました。

ニャル子「()りました」

 

真尋「()るなよ」

 

   *   *   *   *   *

 

「………嘘、だろ?」

 

真尋の呟きが静寂の中に響きわたる。その言葉はその場に(たたず)む全員に共通する感想だったのかもしれない。そして十六夜が真尋に変わって言葉を引き継ぐ。

 

「こればかりは俺も驚きだ。まさか―――」

 

十六夜は、ニャル子の目の前にいるニャル夫に目を向ける。

 

「―――戦闘シーン全省略で即座に速攻で完全無欠に封殺されるとは、小物臭全開とはいえど、思わなかったぜ」

 

ニャル夫は、それはもうあっさりと倒されていた。黒ウサギが『魔王って、何だっけ(白目)』などと思うレベルで完敗していた。

 

「仕方が無いでしょう。何せ(にい)s……いえ、あの野良ニャルラトホテプは、魔王の力を模倣しただけの劣化版の力しか持ってなかったみたいですからね。そのくらい私でもできますよ」

「………馬鹿な、馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!これじゃあ、僕の計画が台無しじゃないか!」

 

ルイオスはヒステリックに叫ぶ。余程衝撃的だったのだろう。そしてその直後、轟音が響きわたる。

 

「なっ―――!」

「ハッ、何だ全然手応えねぇじゃねえかコイツ(アルゴール)!」

 

それは、十六夜がアルゴールを吹き飛ばした音であった。ルイオスは苦しげに顔を歪ませ、(ろう)(ばい)して叫ぶ。

 

「き………貴様、本当に人間か!?一体どんなギフトを持っている!?」

 

十六夜はニヤリと笑いながら、その疑問に応えようとギフトカードを取り出す。

 

「ギフトネーム・"正体不明(コード・アンノウン)"―――ん、悪いな。これじゃ分からないか」

 

飄々(ひょうひょう)と肩を(すく)ませて笑う。余裕を見せる十六夜の背中を見てジンは慌てて叫んだ。

 

「い、今のうちにトドメを!石化のギフトを使わせては駄目です!」

 

星霊アルゴールの本領は、身体能力でなく世界を石化させるほどの強大な呪いの光にある。だが、自分の力でねじ伏せたいルイオスは、更に正面対決を望んだ。

 

「アルゴール!宮殿の悪魔化を許可する!奴を倒せ!」

「RaAAaaa!!LaAAAA!!」

 

(うた)うような不協和音が世界に響く。()(たん)に白亜の宮殿は黒く染まり、壁は生き物のように脈を打つ。宮殿全域にまで広がった黒い()みから、蛇の形を模した石柱が数多(あまた)に襲う。十六夜は()けながら思い出したように呟く。

 

「ああ、そういえばゴーゴンにはそんなのもあったな」

 

ゴーゴンには様々な魔獣を生みだした伝説がある。そもそも"星霊"とはギフトを与える側の種でもあるのだ。今や白亜の宮殿は魔宮と化している。周囲が見えていないのか、狂気じみた形相でルイオスは叫んだ。

 

「もう生きて帰さないッ!この宮殿はアルゴールの力で生まれた新たな怪物だ!貴様にはもはや足場一つ許されていない!貴様らの相手は魔王とその宮殿の怪物そのもの!このギフトゲームの舞台に、貴様らの逃げ場は無いものと知れッ!!!」

「僕も巻き込まれているのかよ!?」

 

ルイオスの絶叫と、魔王の謳うような不協和音。そしてルイオスの粛清の対象として巻き込まれた事に対する真尋の嘆き。魔王の(うた)に合わせて変幻する魔宮は白亜の外壁を、柱を、()(かつ)の如き姿に変えて襲い掛かり、十六夜の体を覆う。千の蛇に呑み込まれた十六夜は、その中心でボソリと呟いた。

 

「―――……そうかい。つまり、()()()殿()()()()()()()()()()()?」

 

「「「え?」」」

「お嬢様方、避難しろよ」

 

ジンと黒ウサギ、そして真尋は、嫌な予感がした。十六夜は無造作に拳を挙げた瞬間、真尋は十六夜の意図に気付き―――その直後、拳は振り下ろされた。

 

千の蛇蠍は一斉に砕け、十六夜の周囲から霧散する。直後に宮殿全域が震え、闘技場が崩壊し、瓦礫は四階を巻き込んで三階まで落下した。

 

「わ、わわ!」

「ジン坊っちゃン!」

 

崩壊に巻き込まれそうになったジンは黒ウサギに受け止められ、

 

「ニャル子!」

「アイサー、真尋さん!」

 

真尋及び飛鳥と耀はニャル子達の力を借りて避難する。

翼を持つルイオス達は上空に逃げていたが、その惨状に息を呑んでいた。闘技場には宮殿内と違い、常時防備用の結界が張られている。それこそ山を打ち砕くほどの力がなければ、この最上階を崩落させる事など出来ないはずなのだ。

 

「……馬鹿な……どういう事なんだ!?奴の拳は、山河を打ち砕くほどの力があるのか!?」

 

上空で怒りとも恐怖ともいえる叫びを上げるルイオス。残った闘技場の足場から見上げる十六夜は、やや不機嫌そうに声をかけた。

 

「おい、ゲームマスター。これでネタ切れってわけじゃないよな?」

「………っ……!」

 

まだ宮殿の怪物は生きている。だが、相手には擬きとはいえ魔王を倒す邪神群に、全く種の解らない恩恵(ギフト)を使う人間がいる。間違いなく負け戦になるだろう。

ルイオスは屈辱に顔を歪ませ―――スッと真顔に戻る。そして極め付けに凶悪な笑顔を浮かべ、

 

「もういい。()()()()()、アルゴール」

 

石化のギフトを解放した。

星霊・アルゴールは謳うような不協和音と共に、褐色の光を放つ。これこそアルゴールを魔王に至らしめた根幹。迫り来る褐色の光を十六夜は、真正面からアルゴールの瞳を捉え―――

 

「―――――………カッ。ゲームマスターが、今さら狡い事してんじゃねえ!!!」

 

褐色の光を、()()()()()()

………比喩は無い。他に表現のしようもない。アルゴールの放つ褐色の光は、逆廻十六夜の一撃でガラス細工のように砕け散り、影も形もなく吹き飛んだのだ。

 

「ば、馬鹿な!?」

 

ルイオスが叫ぶ。叫びたくもなるだろう。階下から戦況を見守っていたジンと黒ウサギでさえ叫び声を上げていたのだから。

 

「せ、"星霊"のギフトを無効化―――いえ、破壊した!?」

「あり得ません!あれだけの身体能力を持ちながら、ギフトを破壊するなんて!?」

 

真尋はそれを聞き、得心が行った。きっと、この箱庭では、ギフトを無効化するという事はさほど珍しくは無いのだろう。但し―――それは武具や道具の形を取るのだろう。そうなると十六夜の"正体不明(コード・アンノウン)"はギフト無効のギフトとなる。しかし、十六夜は人智を超えた身体能力を持つ。つまり、その二つの能力が両立したギフトとなるのだ。それは、明らかに矛盾している。

 

「さあ、続けようぜゲームマスター。"星霊"の力はそんなものじゃないだろ?」

 

軽薄そうに挑発する十六夜。だがルイオスの戦意はほとんど涸れていた。"箱庭の貴族"はおろか、"白き夜の魔王"でさえ知らない出所不明・効果不明・名称不明と三拍子揃った、正真正銘の"正体不明(コード・アンノウン)"。それだけでなく、星霊と同程度―――もしくは、それ以上の力を持つクトゥルフ神話の邪神が4柱もいるのだ。

呆然としているルイオスの前に、黒ウサギがため息交じりに割って入る。

 

「残念ですが、これ以上のものは出てこないと思いますよ?」

「何?」

「アルゴールが拘束具に繋がれて現れた時点で察するべきでした。………ルイオス様は、星霊を支配するには未熟すぎるのです」

「っ!?」

 

ルイオスの瞳に灼熱の憤怒が宿る。………しかし、否定の声は上がらなかった。それはつまり、黒ウサギの言葉が真実であるという事だろう。

 

「―――ハッ。所詮は七光と元・魔王様。長所が破られれば打つ手なしってことか」

失望したと吐き捨てる十六夜。これで勝敗は決し、黒ウサギが宣言したら終わり、と真尋は思い―――十六夜が、この上なく凶悪な笑みを浮かべてる事に気付く。

 

「ああ、そうだ。もしこのままゲームで負けたら………お前達の旗印。どうなるか分かっているんだろうな?」

「な、何?」

 

不意を突かれたような声を上げるルイオス。十六夜達はレティシアを取り戻すために旗印を手に入れるのでは無かったのか。

 

「そんなのは後でも出来るだろ?そんなことより、旗印を盾にして即座にもう一度ゲームを申し込む。―――そうだなぁ。次はお前達の名前を戴こうか」

 

ルイオスの顔から一気に血の気が引いた。そこで真尋は一度ため息をつき、言葉を連ねる十六夜のもとへ歩く。

 

「その二つを手に入れた後"ペルセウス"が箱庭で永遠に活動できないように名も、旗印も、徹底して貶め―――」

「そこまでだ、十六夜。勝負は決しただろ」

 

真尋は十六夜を止める。十六夜は苛立ちを隠さず、真尋を睨む。

 

「―――真尋、邪魔するのか?」

「目的を忘れるな。僕らの目的はあくまで元・仲間の救出であり、彼らを貶める事じゃない」

「………チッ、貸一だからな」

 

十六夜と真尋は暫く睨み合い―――十六夜が引いた。不機嫌そうに十六夜は背を向けて歩き出す。その様子を見て安心したように息を漏らすと、黒ウサギは宣言した。

 

「この勝負、"ノーネーム"側の勝利です!」

 

こうして、勝負は決した。

 

   *   *   *   *   *

 

レティシアの受難はむしろそれからだった。所有権が"ノーネーム"に移ったまでは本当に良かったのだ。"ペルセウス"に勝利した十人はレティシアと共に大広間に着いた途端、問題児三人は口を揃えて、

 

「「「じゃあこれからよろしく、メイドさん」」」

 

「え?」

「え?」

「え?」

「………え?」

「え?じゃないわよ。だって今回のゲームで活躍したのって私達だけじゃない?貴方達はホントにくっ付いてきただけだったもの。あ、真尋くんと、ニャル子さん達は除くわよ?」

「うん。まあ、私の仕事が敵の捕捉くらいしか無かったのは残念だったけど」

「しょうがないわ。自重しない策士が此処にいたのだもの」

「つーかラスボス倒したの俺だろ。所有権は飛鳥と耀と真尋と俺で等分2:2:3:3でもう話は付いた!」

「何を言っちゃってんでございますかこの人達!?」

「というか僕それ聞いてないんだが!?」

 

もはやツッコミが追いつかないなんてものじゃない。黒ウサギだけでなく、当人(強制)である真尋も、ついでに言うとジンも完全に混乱していた。唯一、当事者であるレティシアだけが冷静であった。

 

「んっ………ふ、む。そうだな。今回の件で、私は皆に恩義を感じている。コミュニティに帰れた事に、この上なく感動している。だが親しき仲にも礼儀あり、コミュニティの同士にもそれを忘れてはならない。君達が家政婦をしろというのなら、喜んでやろうじゃないか」

「レ、レティシア様!?」

 

焦っている黒ウサギに、嬉々としている飛鳥。少し嬉しそうにしている耀に、人の悪い笑みを浮かべる十六夜。その様子を見た真尋は、言葉を聞き流し―――やがて、考える事をやめた。

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