第二十話
ニャル子「私は邪神の子!宇宙CQCエン!ハン!サー!」
クー子「私、参上!」
ハス太「最初に言っておく!僕はかーなーりー強い!!」
アト子「その命、
頼子「通りすがりの主婦よ!覚えておきなさい!」
ルーヒー「さあ、お前の罪を数えろ!」
クー音「絶望がお前のゴールだ!」
イス
イス香「追跡!撲滅!!いずれもマッハ!!!偉大なるイス人イス香!!」
十六夜「逆廻十六夜、タイマン張らせてもらう!」
飛鳥「貴方の定めは、私が決める」
耀「さあ、ショータイムだ」
白夜叉「さあ、メインディッシュだ!」
テケリさん(友情出演)「ここからは私のステージです!」
ルルイエ・ルル(友情出演)「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!悪を倒せと、私を呼ぶ!聞け!悪人ども!私は邪神の少女!魔海少女ルルイエ・ルル!!」
ルイオス「(’ω’)うわぁぁぁ!!(絶望)」
真尋「やれやれだ」
* * * * *
―――箱庭二一〇五三八〇外門居住区画・"ノーネーム"本拠。真尋の私室。
召喚された日から時は進んで一ヶ月後。窓に露がまだ残る、やや肌寒い時間帯。八坂真尋は日々鋭敏になっていく自身の直感の告げる嫌な予感で、意識が覚醒した。
寝た姿勢のままで真横に一回転すると、つい一瞬前まで真尋の頭があった位置に、小動物ほどの大きさの何かがダイブした。
むいー、むいー。そんなくぐもった音がする。
真尋が横目に音の出所を見ると、何時ぞかの朝のように、シャンタッ君が枕にトペ・スイシーダをかましていた。
「シャンタッ君、おはよ」
みー!
シャンタッ君が真尋を舐めて起こそうとする事は、既に慣れているため挨拶だけして体を起こし、大きく伸びをしてから耳を澄ませてみる。
外からは、チュンチュン、と小鳥の鳴く声。
隣の部屋からは、ドアを控えめに叩く音が三回、続けて四回―――
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン。
「……………いや、叩きすぎだろ!?」
即座に着替えを済ませ、廊下へのドアを開けた。
「真尋、おはよう」
「おはよう、耀。ノック多くなかったか?」
「細かい事を気にしてたら禿げるよ」
「そうだとしたら僕はとうの昔に禿げてる」
廊下へ出ると、そこには問題児三人組の一人、春日部耀が立っていた。耀の隣にいる少女は、年長組の一人だろう。耀がノック連打をしていた部屋は確か問題児三人組の一人、久遠飛鳥の部屋であるはずだ。
『真尋くんもいるの?用意できたし、入る?』
「ん、構わないのか?」
『別にいいわよ?』
「そっか。じゃあ……失礼します」
「失礼します」
「し、失礼します」
部屋に入ると、飛鳥はすっかりお気に入りとなっている赤いドレスを身につけて、ベッドに腰掛けていた。
「ごめんね、飛鳥。せっかく作った朝食が冷めたら勿体ないと思って……」
「い、いいのよ春日部さん」
「うん、今は怒ってもいい場面だと思うぞ」
唇を引きつらせながら耀に笑いかける飛鳥を見て、真尋は軽く同情した。そして耀は割烹着を着た狐耳の少女の背中を軽く押す。狐耳の少女は緊張した面持ちで朝食の載ったカートを押し、ぎこちない動きのまま飛鳥に一礼して、
「り、り、り………りりとおんもします!」
「はい?」
「リリ、落ち着いて」
……多分、「リリと申します」と言いたかったのだろう。そう真尋は見当をつけておく。
「ああ、以前クッキーを持ってきてくれた時の?じゃあこの食事とお茶は貴女が?」
「は、はい。飛鳥様はハーブを好まれると聞きましたので、菜園で採れるものを一式用意しました。特に朝の目覚めが良いものを用意しましたのでその……喜んでもらえたらなあって………」
はにかみながら笑い、ハッと口調を改めようと慌てるリリ。その様子に真尋は微笑ましく感じていた。
「―――それに、ニャル子さん達も手伝ってくれて」
「リリ、その食事をこっちに渡すんだ。適切な手段での廃棄処理をする」
「ふぇっ!?」
真尋の言葉に驚くリリ。なお、この時の真尋の目は真剣その物であった。
「ちょっと真尋くん。それ、私の朝食なんだけど?」
「飛鳥達には言ってなかったな……ニャル子達は、料理が駄目なんだ」
「え?でも凄く手際良く料理してましたよ」
「うん、私も見てたけど凄く上手だった」
「それは知ってる。少なくともニャル子やアト子は料理が得意だというのは理解はしてるんだ」
真尋の言葉に頭上の疑問符を増やす三人。真尋はただ、と前置きを入れて言葉を続ける。
「食材が地球産の物じゃなかったりするから、SAN値が下がる可能性がかなり高い」
「真尋くん、処理お願い」
飛鳥は真尋に料理を手渡した。
* * * * *
真尋が朝食を埋め立て処理した後、真尋とリリで新しく朝食を作り直した。その時、耀と飛鳥が真尋の料理の手際良さに少なくないショックを受けたりしたが、余談である。
「―――本拠から貯水池までの道を戻り、脇の街道の先に、とってもとっても、凄くおっきな農地があったんです。牧場もあって、季節の変わり目には二度の収穫祭を行っていました。今は滅んじゃって死んだ土地ですけど………昔の特別菜園場には有名な霊草とか、マンドラゴラとか、その他にもたくさんたくさん素敵な農園があって………!」
今、飛鳥達は"ノーネーム"の農園の話をしている。"ノーネーム"には元々大きな農園があったらしい。滅びてるとはいえ、今でも"ノーネーム"の領地は膨大と言える程度にはあるのだ。それだけ"ノーネーム"となる前は強力なコミュニティだったのだろう。
「じゃあ目下の目標は土地の再生という事にしましょう。黒ウサギにも相談を―――」
と、飛鳥によって話がまとまりかけた時。ヒラヒラと窓の外から一枚の手紙が降ってきた。
「………あら?」
何処か、既視感のある投書に瞳を瞬かせる飛鳥と耀。そして、何となく―――しかし、確実に。嫌な予感をひしひしと真尋は感じていた。
リリは大きく息を呑んで叫んだ。
「す………凄いです!"サウザンドアイズ"の
「白夜叉から?」
「あのフロアマスターの?」
リリの言葉を聞き、顔を見合わせた後その瞳を喜色に染める飛鳥と耀。真尋は、「また、厄介事か……」と人知れずSANチェックを受けていた。
* * * * *
飛鳥が満面の笑みで走り出し、到着したのは本拠地下三階の書庫であった。
「十六夜君!何処にいるの!?」
「………うん?ああ、お嬢様か………―――」
十六夜の眠そうな声から飛鳥は位置を特定し―――散乱した本を踏み台にして、十六夜の側頭部目掛けてシャイニングウィザードで強襲した。
「起きなさい!」
「させるか!」
「グボハァ!?」
飛鳥の蹴りは、盾にされたジン=ラッセルの側頭部に見事命中し、寝起きを強襲されたジンは三回転半して見事に吹き飛んだ。
「ジ、ジン君がぐるぐる回って吹っ飛びました!?大丈夫!?」
「………。側頭部を膝で蹴られて大丈夫な訳ないと思うな」
「というか、飛鳥何やってんだ………」
ジンが強襲を受けた事に混乱しながらも、駆け寄るリリと顔色一つ変えずに合掌する耀の言葉はもう、飛鳥の耳に入らないようだ。ジンを吹っ飛ばした飛鳥は特に気にも留めず、腰に手を当てて叫ぶ。
「十六夜君、ジン君!緊急事態よ!二度寝している場合じゃないわ!」
「そうかい。それは嬉しいが、側頭部にシャイニングウィザードは止めとけお嬢様。俺は頑丈だから兎も角、御チビの場合は命に関わ」
「「って、
ガバッ!!と本の山から起き上がるジンと共に真尋はツッコミを入れる。
「大丈夫よ。だってほら、生きてるじゃない」
「デッドオアアライブ!?というか生きていても致命です!!飛鳥さんはもう少しオブラートにと黒ウサギからも散々」
「御チビも五月蝿い」
スコーン!っと、十六夜の投げた本の角がジンの頭にクリティカルヒット。ジンは先程以上の速度で後ろに吹き飛び失神。真尋はそろそろ胃痛で気絶しそうだった。
「………それで?人の快眠を邪魔したんだから、相応のプレゼンがあるんだよな?」
「いいからコレを読みなさい。絶対に喜ぶから」
「うん?」
不機嫌そうな表情で、開封された招待状に目を通す十六夜。
「双女神の封蠟………白夜叉からか?あー何々?北と東の"
「そう。よく分からないけど、きっと凄いお祭りだわ。十六夜君もワクワクするでしょう?」
何故か自慢げな飛鳥に、プルプルと腕を震わせて叫ぶ十六夜。
「オイ、ふざけんなよお嬢様。こんなクソくだらないことで快眠中にも拘らず俺は側頭部にシャイニングウィザードで襲われたのか!?しかもなんだよこの祭典のラインナップは!?『北側の鬼種や精霊達が作り出した美術工芸品の展覧会および批評会に加え、様々な"主催者"がギフトゲームを開催。メインは"階層支配者"が主催する大祭を予定しております』だと!?クソが、少し面白そうじゃねえか行ってみようかなオイ♪」
「ノリノリね」
獣のように身体を
「ま、ままま、待ってください!北側に行くとしてもせめて黒ウサギのお姉ちゃんに相談してから………ほ、ほら!ジン君も起きて!皆さんが北側に行っちゃうよ!?」
「……北………北側!?」
失神していたジンは「北側に行く」の言葉で跳び起きるのを見て、真尋は疑問を抱く。―――何故、それで跳び起きるのか。もしかして、"火龍誕生祭"の事を事前に知っていた……?
「ちょ、ちょっと待ってください皆さん!北側へ行くって、本気ですか!?」
「ああ、そうだが?」
「何処にそんな蓄えがあるというのですか!?此処から境界壁までどれだけの距離があると思っているんです!?リリも、大祭の事は皆さんには秘密にと―――」
「「「秘密?」」」
重なる三人の疑問符に、硬直するジンと真尋。振り返ると、邪悪な笑みを浮かべる耀・飛鳥・十六夜の問題児三人組。
「………そっか。こんな面白そうなお祭りを秘密にされてたんだ、私達。ぐすん」
「コミュニティを盛り上げようと毎日毎日頑張っているのに、とっても残念だわ。ぐすん」
「ここらで一つ、黒ウサギ達に痛い目を見てもらうのも大事かもしれないな。ぐすん」
隠す気の無い悪意を前にし、真尋は黒ウサギを呼ぶべく叫ぼうとして―――
「おっと、真尋には眠ってもらうぞ」
―――十六夜の容赦ない一撃に、視界がブラックアウトした。