邪神たちが異世界から来るそうですよ?   作:一反目連

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第二十三話

あらすじ

 

ニャル子「ようこそハコニワパークへ!」

クー子「私はクトゥグアのクー子だよ」

ハス太「すっごーい!」

アト子「貴方はフォークを投げるのが得意なフレンズなんですね」

 

真尋「ご要望に答えて、フォークを投げるぞ?」

 

「「「「ごめんなさい」」」」

 

  *   *   *   *   *

 

「さて、アト子殿の話は横においてだな。実は明日から始まる決勝の審判を黒ウサギに依頼したいのだ」

「あやや、それはまた唐突でございますね。何か理由でも?」

「うむ。おんしらが起こした騒ぎで"月の兎"が来ていると公になってしまっての。明日からのギフトゲームで見られるのではないかと期待が高まっているらしい。"箱庭の貴族"が来臨したとの噂が広がってしまえば、出さぬわけにはいくまい。黒ウサギには正式に審判・進行役を依頼させて欲しい。別途の金銭も用意しよう」

 

聞けば成程と、頷ける話だ。

 

「分かりました。明日のゲーム審判・進行はこの黒ウサギが承ります」

「うむ、感謝するぞ。………それで審判衣装だが、例のレースで編んだシースルーの黒いビスチェスカートを」

「着ません」

「着ます」

「断固着ませんッ!!あーもう、いい加減にしてください十六夜さん!」

 

白夜叉の虚言に悪乗りする十六夜に、怒髪天を衝く勢いで食いかかる黒ウサギ。その時、全くの無関心だった耀が思い出したように白夜叉に訊ねる。

 

「白夜叉。私達が明日戦う相手ってどんなコミュニティ?」

「あ、そうだな。一応聞いても良い情報なら教えてくれ」

「うむ。"主催者"が相手の情報を語るのはフェアではない故、教えられんな。教えてやれるのはコミュニティの名前までだ」

 

白夜叉が指を鳴らすと、昼間のゲーム会場で現れた羊皮紙が現れ、同じ文章を浮かび上げる。そこに記された参加コミュニティを読むと、何故か飛鳥が驚いたように目を丸くした。

 

「"ウィル・オ・ウィスプ"に―――"ラッテンフェンガー"ですって?」

「うむ。この二つは珍しい事に六桁の外門、一つ上の階層からの参加でな。格上と思ってよい。詳しくは話せんが、余程の覚悟はしておいた方がいいぞ」

 

白夜叉の真剣な忠告に、真尋と耀は頷く。それを尻目に、十六夜は"契約書類(ギアスロール)"を睨みながら物騒な笑みを浮かべた。

 

「へぇ………"ラッテンフェンガー"?成程、"ネズミ捕り道化(ラッテンフェンガー)"のコミュニティか。なら明日の敵はさしずめ、ハーメルンの笛吹き道化だったりするのか?」

 

それは余りにも安直だろう、と真尋は声を挙げようとする。しかしその言葉は、飛鳥の隣に座る黒ウサギと白夜叉の驚嘆の声にかき消された。

 

「ハ、"ハーメルンの笛吹き"ですか!?」

「まて、どういうことだ小僧。詳しく話を聞かせろ」

 

二人の驚愕の声に、真尋と十六夜は思わず瞬きをする。白夜叉は幾分声のトーンを下げ、その質問の真意を話し出した。

 

「ああ、すまんの。最近召喚されたおんしらはしらんのだな。―――"ハーメルンの笛吹き"とは、とある魔王の下部コミュニティだったものの名だ」

「何?」

「魔王のコミュニティ名は"幻想魔道書群(グリムグリモワール)"。全二〇〇篇以上にも及ぶ魔書から悪魔を呼び出した、驚異の召喚士が統べたコミュニティだ」

「しかも一篇から召喚される悪魔は複数。特に目を見張るべきは、その魔書の一つ一つに異なった背景の世界が内包されていることです。魔書の全てがゲーム盤として確立されたルールと強制力を持つという、絶大な魔王でございました」

「―――へえ?」

 

十六夜の瞳に鋭い光が宿るのを見ながら、真尋は考える。魔王の下部コミュニティであった"ハーメルンの笛吹き"と、今回の話に出てきた"ラッテンフェンガー"は何らかの関係があるのか。真尋の結論としては―――ある、だ。

もし関係のない者のコミュニティだとしたら、かつて魔王と関わりのあったコミュニティ、それに準じた名前にする必要がない。どういう意図にしろ、その名前にした理由があるはずだ。

 

「けどその魔王はとあるコミュニティとのギフトゲームで敗北し、この世を去ったはずなのです。………しかし十六夜さんは"ラッテンフェンガー"が"ハーメルンの笛吹き"だと言いました。童話の類は黒ウサギも詳しくありませんし、万が一に備えてご教授して欲しいのです」

 

黒ウサギの緊張した顔は、もしも魔王が現れた時のことを警戒してのものだろう。十六夜はしばし考えた後、悪戯を思いついたようにジンの頭をガシッと掴んだ。

 

「なるほど、状況は把握した。そういうことなら、ここは我らが御チビ様にご説明願おうか」

「え?あ、はい」

 

真尋の頭に一瞬疑問符が浮かんだものの、そういえばジンは十六夜と一緒に色々と調べごとに励んでいたな、と思い出す。真尋も一応聞いておこうと姿勢を正したところで、ニャル子が極めて似合っていない真面目な顔で話しかけてくる。

 

「真尋さん、少し話がしたいんですけど―――ついてきてくれませんか」

「………マトモな話だったら、ついていってやる」

「ありがとうございます。すいません、ちょっと私と真尋さんは外の空気を吸ってきますね?」

 

そう言ってニャル子は席を立ち、真尋もそれについていく。サウザンドアイズ旧支店の外まで行くと、ニャル子は少し悩む様子を見せ、口を開く。

 

「―――嫌な予感がするんです」

「僕はいつも嫌な予感しかしてないけどな」

「いえ、そういう意味ではなく………大切なことを見落としているような、忘れてしまってはならないものを記憶から失っているような………真尋さん、気をつけてください。真尋さんを失ったら、私は―――何をしてしまうか、分かりません」

「………それは」

 

ニャル子は、どこか悲壮的な顔で真尋を見つめた。真尋、ニャル子、飛鳥………各々が違う思惑を抱えたまま、その場は解散となった。

 

  *   *   *   *   *

 

―――翌日。真尋と耀はギフトゲームに備え、舞台袖で待機していた。真尋はゆっくりと深呼吸をし、試合に向けて気合いを………

 

『うおおおおおおおおおお月の兎が本当にきたあああああああぁぁぁぁああああああ!!』

『黒ウサギいいいいいいい!お前に会うために此処まできたぞおおおおおおおおおお!!』

『今日こそスカートの中を見てみせるぞおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉおお!!』

 

………入れることに失敗した。余りにもアレ(馬鹿)な、観客の声に気合いも緊張感と共に抜けていってしまった。

 

「大丈夫、真尋?」

「………うん、まあ、多分」

 

真尋の脱力した様子を見て、ジンとレティシアから次の対戦相手である"ウィル・オ・ウィスプ"の情報を確認していた耀から、心配の声がかかる。

 

「情報ありがとう、二人とも。あとはケースバイケースで臨機応変に対応するね」

 

耀の何処か抜けたような言葉に、ジンと真尋は苦笑いする。そして、黒ウサギによってゲームは進行し、試合開始の頃合いとなった。

 

『それでは、入場していただきましょう!第一ゲームのプレイヤー・"ノーネーム"の春日部耀と、"ウィル・オ・ウィスプ"のアーシャ=イグニファトゥスです!』

 

耀は三毛猫をジンに預け、通路から舞台に続く道に出る。その瞬間―――耀の眼前を高速で駆ける火の玉が横切った。

 

「YAッFUFUFUUUUUuuuuuu!!」

「わっ………!」

「おっと」

 

その勢いに仰け反った耀を、真尋が支える。頭上を見れば、火の玉の上に腰かけている人影―――ツインテールの髪に白黒のゴシックロリータの派手なフリルのスカートを揺らす少女。彼女が、愛らしくも高飛車な声で嘲った。

 

「あっははははははははは!見て見て見たぁ、ジャック?"ノーネーム"の女のこの無様な様子!ふふふ。さあ、素敵に不適にオモシロオカシク笑ってやろうぜ!」

「YAッFUFUFUUUUUuuuuuu!!」

 

ドッと観客席の一部からも笑いが起きる。それをまるで気にも留めない耀は、ポツリと呟くような小さな声で告げた。

 

「見て見て、真尋。私みたいにこうして支えてくれる男も居ない万年ボッチが馬鹿みたいな笑いかたしてるよ」

 

空気が凍る。顔を赤くして、口を金魚のように開閉させるだけとなったアーシャを見て溜飲が下がったのか、耀は満足そうに頷く。

 

「はぁ………耀も余り相手側をからかってやるな。そもそも、僕は耀のそういう対象ではないだろ?」

「うん」

「たとえ相手が先に挑発まがいことをしたとしても、一々応戦する必要はないんだからな。"ウィル・オ・ウィスプ"の、アーシャだったか?悪かったな」

「お、おぅ………?」

 

アーシャが毒気の抜かれたような顔をして呆けてるのを確認すると、真尋は黒ウサギに視線で合図する。

 

『あっ………それでは第一ゲームの開幕前に、白夜叉様から舞台に関してご説明があります。ギャラリーの皆さまはどうかご清聴の程を』

 

両者の挑発がうやむやになり、何とも言えない空気となった会場もあらゆる喧騒が消え、はりつめた空気となった。




中途半端な所ですが、一旦区切り。
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