その憑依先、既に死体につき 作:憑依転生って?
お盆て暇ですよね。実家に帰ってるときは特に。
そして生まれた文章です。ご査収ください。
著名な文学作品から冒頭を借りるのであれば、「吾輩は幽霊である。名前は七瀬と言うらしい」か。どうやら私は七瀬と言う名の幽霊として存在しているらしい。
どうにも曖昧な表現となってしまった理由としては、私が生前の記憶を保持していないのが主な理由だ。発生した場所も曖昧で、気付けば誰かの走らせている車の助手席で風を感じていた。見知らぬ私が隣にいるはずなのに、気にせずアンパ◯マンのマーチを熱唱する帰宅途中の社会人を見たら、私が異常な存在と認識させるには十分な要素だった。
ネコと比べれば名前を知っているため私が一歩リード。生まれた場所を知らないためネコに追いつかれ接戦といったところで。生まれた理由と生きる理由を知っているアンパ◯マンが大外から私と猫を追い抜きそのまま3馬身差をつけてゴールイン!その後も色んなものが追いついてきて、一着アンパ◯マン、二着ネコ、三着フィッシュ◯中さんでゴールイン。私は着外でしたよと。アンパ◯マン鬼つえー!
生前のことを知らないだけで社会の一般常識は頭に入っているが、どうやら私の知らない非常識も世に犇めいているらしい。現に……
『おおぉ……美しい方よ。どうか卑しき儂めに下着を見せて頂けないだろうか……』
ほうら私のパンツを覗こうとせがんで来る、人間にしては背丈が小さすぎる、時代錯誤な古めかしい三度笠を付けた、杖をつくちっさいオッサン(コイツの名前は今後小さいおじさんと名付ける)がいるからだ。
とりあえずこの小さいおじさんに減るものでもないパンツを豪快に見せつける。流石に知らんオッサンにパンツを見せるのは死後でも嫌なのか、少々顔に蔑みフェイスが浮かんでしまった。小さいおじさんはその蔑みフェイスでより喜び感嘆を挙げていた。キッショ。
大変喜び勇む小さいおじさんへ親指と人差し指を擦り合わせる様を見せつけ、対価を要求することにした。
『儂らについて、ですか?』
ふむぅと髭を撫でるようにしながら返事をする小さいおじさん。私の足に顔を踏まれて横たわっていなかったら様になっていたのかもしれない。
真面目な顔をしながら、妖怪や亡霊がこの世界に蔓延っていることや、現代となり中々に生きづらい世の中になったことなど、色々な話を聞けた。特に気になったことといえば、おひいさまとは何なのだろうか。
『ええ、最近のおひいさまは男の趣味が大変よろしくなく……。あんな化生とまぐわうなど、怖くて怖くて温かいものが流れ出てしまいそうですじゃ。あんな化物より儂を抱いたほうが余程ヒッホホもっと踏んでくだされぇ!』
踏まれて喜ぶとか生粋だなこいつ。
その化け物みたいな彼氏さんも気になるが、おひいさまというものについて聞きたいところだ。おひいさまってお姫様的な意味の敬称のはずだった気がする。妖怪の姫的なことなのだろうか。なら例の化け物みたいな彼氏さんと合うような気がするけど。
『あ、ああ。貴方様は先ほど生まれたばかりと、言っておられましたな。おひいさまと我々は切っても切れぬ縁と言っても過言ではありません。お話いたしましょう』
そう言って、件のおひいさまについて教えてもらった。どうやらおひいさまとは人間の、それもちっちゃい女性だったようで。この小さいおじさんとかの妖怪変化の相談役をやっているらしい。妖怪変化といえど現代へ問題を発生させた場合に妖怪たちでは対応できないことを代わりに対応する、そんな役回りの人だとか。
それにしても妖怪どもに片目と片足を取られた上に相談役を押し付けられるとは……。まだ見ぬおひいさまだが、その苦労が目に浮かぶようだ。
『今は、とある化生を退治しようと動いてくれておりましてな。おひいさまが退治を終えるまでの間、儂はこの街で静かに暮らしているのです』
この現代にて妖怪物の怪の退治とは。おひいさまとはどうやら優秀な巫女か妖怪退治の専門家のようだ。
しかし、その退治される妖怪は余程胡乱な輩なのだろう。
『我々と同じものとは思われたくないですな。おひいさまが対峙なされるは、げに恐ろしい悪鬼、鋼人七瀬という亡霊を退治せんと動いておられるのです』
ふむ、意外にもそのおひい様という方はお務めのようなものにも真面目に熟されているようだ。彼氏の趣味が悪いのも、その真面目さが裏目に出た結果なのだろう。あまり触れることでもない。とはいえ化物にしか見えないとはどんなやつなのだろうか、一目見てみたいものだ。
……ん?んん?今鋼人七瀬って、七瀬って言いました?こいつ急に七瀬とか言い出しましたよ。
おいおいおい、意識芽生えてから名前以外知らん状態で始まったのに、一日足らずで痕跡を見つけるとは、さては生前の私は善行を積んでいたに違いない。
『鋼人七瀬について詳しくお聞きしたいと?うぅむ、儂はそういうのに詳しく無く……。場所ならばお伝えはできますが』
使えるな小さいおじさん!よしよし、ならさっさとそっちに行くとしますか。ついてこい小さいおじさん、私のお供として随伴することを許す。
『いやぁ、儂めはその鋼人七瀬から逃げてきた身でありますし、流石に其処へ向かうのは……』
そういえばこの身体、無駄に胸が大きくて困っちゃうんですよ〜。ほんと胸の下とか蒸れちゃって〜。少し開けよっかな〜。ちらちら。
『夜間に女性一人にするのは如何なものか。儂も同行しよう』
じじ院。
チョッロ。そしてキッショ。この小さいおじさんは後でルイ◯ダの酒場に置いていこう。
ということで、私たちは現場である真倉坂へ向かったのであった。
はい、ということで(ジャンプし着地したら別の場所に移動するテレビのあれ)。
辿り着いたのは真倉坂市のとある街路の道中。真倉坂と名前に坂がつく理由だと主張するような、なかなかな急な坂を見上げるかたちで出てきた訳なのだが。
夜分であることを加味しても静謐に包まれていた。おそらく、鋼人七瀬の噂等で一般の人は外出を控えているのが原因だろう。飲食店とか近ければまだ喧騒はあったのかもしれないが、住宅街らしい街並みではカーテンの隙間から漏れる光くらいしか人の気配を感じさせない。
そんな暗がりの住宅街に幽霊と妖怪が練り歩いているとは住民の方々も思っていないだろう。
『鋼人七瀬らしき亡霊はおりませんな』
まぁこの辺りで出現するってだけで、夜中出歩いているやつを手当たり次第というわけではないのか。この静けさで、実は潜んで私たちを狙ってるなんてことはないだろう。この近くには居ないと見てよさそうだ。
そういえば着の身着のまま鋼人七瀬を探しにやってきたが、その姿がどんな様相をしているのかを知らない。七瀬、という名前なのだし私に似て胸がデカいと予想は付くが、七瀬の前に付いている「鋼人」という名称が想像に足を引っ張っているのだ。もしかしたら全身が鋼の身体に包まれているのかもしれない。仮面ライダーなのかもしれない。会うのが楽しみになってきたぜ。
ちなみに小さいおじさんは知っているのだろうか。ちょっと聞いてみる。
『鋼人七瀬の姿ですか?儂も話に聞いただけですので詳しいことは分かりませんが、それはもう大層胸がたわわでムホホだそうです』
胸がたわわでムホホとな。
『ええ、もしかしたら貴方様の胸と同等のものやもしれぬと思うと、股間部に熱いものを感じますな』
ハハハ、潰すぞジジイ。
なるほど、実質情報はないということか。まぁまぁ一番わかり易い胸の大きさを把握できているため、まぁ何とかなるじゃろうて。
……いや、待て。分かる方法があるかもしれない。腕時計を確認すると九時丁度を示していた。少し早いが、いるかもしれない。
『はて、それは?』
決まってんだろ!二十四時間営業の漫画喫茶だよ!行くぞー!
ランキング上位になってたら呼んでください。息切らしながら書きます。