「何で、お前がいるんだ…パンドラ!!」
俺は目の前の銀髪の魔女にそう叫んだ
こいつはやばい。リゼロのラスボス候補に上がることもあるほどの化け物だ。そんな奴が何でこんなところにいるんだ。ゲームバランス崩壊してんでしょ
「まぁ、私のことを知っているんですね。ますますあなたに興味が出てきました。そしてその魔女の香り、あなた傲慢ではありませんか?」
「傲慢だぁ?」
「えぇ、そうです。あなたにはその素質がある、これはとても名誉なことなのですよ」
「ここまで嬉しくない褒め言葉は初めてだよ」
さらにまずいことになった。
もしかしてとは思っていたが俺にもスバルきゅん同様魔女の残り香があるらしい。そのせいでこいつに目をつけられた
そしてもしこの誘いに乗っててしまったが最後、スバルきゅん達に敵認定されて追いかけられてしまう
そうなれば俺に勝つ方法はない。それにスバルきゅんの敵になりたくない!
「さぁ、私たちと来てください。きっとこの出会いも運命なのです。私とあなたはここで出会うべくしてあった。そう、それこそが『愛』なのです」
「悪いけど俺はアンタ達の仲間になる気はさらさらないから!『アル・ドーナ』」
俺はパンドラの勧誘を断り、最大出力のアル・ドーナを放った
おそらく俺の今まで放ってきた中で一番の威力だった
しかし
「あら、物騒ですね。私たちには言葉があります。話し合いをしましょう。互いのことを理解するために」
そう言って何もなかったかのように目の前にパンドラはいた
やはり普通の魔法はこいつには通用しない。さらにこいつの権能のせいで逃げることも不可能
つまり詰みだ
どれだけ強かろうとこいつに勝つには物理攻撃だけでは足りない。
それこそ封印や権能でもなければ
「それにしても。かわいそうに、あなたの魔法に
「は?」
パンドラの言葉に俺は魔法を放った場所を見るとそこには岩石によって頭や腹がえぐられ中身が露呈している鬼族の姿があった。そしてその中には
「父さん…母さん…?」
俺の父と母の姿があった
二人とも出血が多くもう助からないだろう
……俺が、殺した…?
いいや違うあいつだ、パンドラの権能だ。
それは分かってる。けど俺が魔法を使ったから死んだ…?
人を、同族を、親を、自分で
息が早くなる。胃の中が気持ち悪い。寒い
「ハァッ…ハァッハァッ…うっうぉぇっっっ!!」
「まぁ、かわいそうに。あなたの大切な人だったのでしょうか。ですがそれもまた一つの愛の形です」
「ですが、あなたがもし傲慢を受け入れるのなら彼らも助かるかもしれませんよ」
「え……?」
「権能というのは使用者の望みによって形が変わります。あなたの愛が深ければ、もしかすると…」
パンドラが語るのは言ってしまえば魔女教徒になれば父さん達を助けられるかもしれないという内容だった
父さん達は今、俺が味わったあの最大の恐怖を感じているのだろう
痛い苦しい嫌だ
なんで、誰も助けてくれないんだろう
そんな感情でいっぱいになる
「……ってやる」
「すいません。聞き逃してしまったのでもう一「魔女教徒にでも何でもなってやるって言ってんだ!早くしろ!」
そう答えるとパンドラは満足そうに微笑んで小さな箱を渡してきた
「これが傲慢の魔女因子です。見事使いこなせれば、あなたの望む結果をうむことができるでしょう」
そう語るパンドラから強引に箱を奪い取り箱の中身を自身の心臓の上に当てる
すると急激な苦痛、快楽、全身にマナが走っていく感覚が俺の体に襲った
「おめでとうございます。やはり見込み通りあなたは適応できましたね。これであなたは晴れて魔女教大罪司教です」
そして全てが落ち着いた後、俺は今まで感じたことのない全能感を感じていた。今まで紙を通してこの世界を見ている時はどうやって権能の効果に気づくのかずっと疑問だった
だが、今ならわかる。まるで人差し指を動かそうとしてどうやって動かすのかがわからなくなることがないように
自身の体一部として溶け込んでいる
自然と何ができるのかがわかる。だからこそ俺は理解した
「この力じゃ…救えないじゃないか!!」
俺の権能の中で致命傷を治癒することはできるだろう。だがすでに父さん達は息をしていない
死者の蘇生は、俺にはできない
「あらあら、それはとても残念ですね。しかしそれはあなたの愛が足りなかったのです。これから愛を育んでいけばきっとあなたも救われますよ」
「殺す」
そう言って俺はパンドラに向かって飛びかかった
だが数人の魔女教徒が俺とパンドラの間に割って入る
俺はその魔女教徒達の首を掴んで権能を発動する
すると魔女教徒達は魂が抜けたようにその場に倒れこんだ
「まぁ、それがあなたの権能なのですね。素敵です」
パンドラが何か言っているが無視して権能を発動する
「『100年使用』」
その声と共に俺の身体能力が今までと比べ物にならないほど強化されたのがわかった
「なるほど、あなたの権能は他人の寿命を自身の力に変えるというものですか。素敵です。それもまた傲慢な愛の形です」
そんな的を得ない発言をするパンドラだが俺の目にははっきりと勝つ方法が浮かんでいる
そして強化した身体能力でパンドラの目の前まで迫る
「まぁ、あまりボディタッチが激しいと私も照れてしまいますよ」
そう言葉には出しているが無表情で話すパンドラの心臓の上に俺は手を置いている
「最後に言い残すことはあるか?」
「いいえ、ありません。これであなたの一部になる。それもまた愛です」
だが普通に考えればこのままこいつに権能を使っても見間違いにされるか、最悪の場合他の人が犠牲になる
だがパンドラと出会ってから俺はずっと考えていた
パンドラの権能の発動条件についてだ
パンドラは死んだ後でも権能を発動できた。なら効果を口に出すというのは除外される
次に考えられるのは殺された直後の意識がある一瞬で権能を発動するということ
だがこれもない。なぜならレグルスに一度殺された時頭のてっぺんから足の先まで粉々に吹っ飛ばされていた
そして最後に辿り着いたのは魂だ
権能は魂に宿っていて死後も魂で発動できるなら全ての辻褄があう
そして権能を手にしてわかった。寿命とは魂の残量だ
簡単にいうと寿命は魂であり魂は寿命なんだ
そして俺の権能は寿命を奪うという内容
上手くできすぎている
そう、上手くできすぎているのだ
俺はパンドラが魔女因子を取り込むことを提案したあの時から父さん達を助けられる権能を願っていない
全てはパンドラを倒せる権能を願っていたのだ
パンドラの目には父さん達を救うことが目的だと思う様に演技をしてきた
望み通りの権能を引けるかはギャンブルだったが俺は賭けに勝った!!父さん達もできれば助けたかったけど、まぁ仕方ないね
だってスバルきゅん達に会うためだもん
そのためなら何だってしてやる
「言っとくが、俺の権能を使えばお前は復活できないぞ」
「えぇ、わかっていますよ」
「は?」
パンドラから帰ってきた言葉は俺にとって想定外のものだった
「先ほども述べた様に、それもまた一つの愛です。私はあなたの一部となり生き続けるのです」
「……理解できねぇな」
「そうかもしれませんね。しかしあなたもいつかきっと理解します。自身が愛されているということに。あなたもきっと私の様になれます」
その言葉を言い終えたパンドラは体を支える力を失い地面に倒れ込んだ
何とも後味の悪い決着だがこれで一番の不安要素が消えた
そして村の方を振り返ってみると、地獄が広がっていた
家は燃え、魔女教徒の剣先は赤く染まり、そこかしこに死体が転がっていた
そして唯一生き残っているラムとレム、そして珍妙な化粧をしたピエロ。ロズワールがいた
二人ともちゃんと保護された様だ
これで原作から大きくずれることはないだろう
それだけ確認して俺は村に背を向けた
もう俺は魔女教、しかも大罪司教だ。
スバルきゅんには事情を話せば分かってくれるかもしれないが、国はそれを許さないだろう
捕まれば処刑か拷問か実験か、何にせよろくなことにならないだろう
スバルきゅん達の仲間にはもうなれない。ならもっと傲慢になるべきだ
「スバルが欲しい」