魔女教襲撃の次の日、俺は村から少し離れた森の中にいた
ひとまず自身の今の状況を確認しよう
まず、俺は今魔女教の大罪司教だ
そして権能は他者の寿命を奪い自身の力に変えること
そして奪う条件は相手の心臓の鼓動を確認すること
そして権能を手にしたことで分かった。寿命とは魂の残量だ
例えるなら魂が大根で、人は生きるためにその大根をすりおろさなければならない。そのすりおろしてない残りの量が寿命だ
つまり何が言いたいかというと、俺は寿命だけでなく魂も扱えるということだ。ビッグマムごっこができるな
そして俺は昨日、パンドラの魂を吸収した。それ自体はいいのだが問題はその魂にパンドラの意思と魔女因子が宿っているということだ
下手をすればパンドラが復活してしまう。かといってパンドラの魂を使用すれば魔女因子は適性のある誰かの元へ行ってしまうだろう
第二のパンドラが生まれるというのはとてもめんどくさい。不本意だが、本っ当に!!不本意だが俺の体内にパンドラを飼うことに決めた
『ふふ、安心してください。私にあなたを害する気はありませんよ。むしろ私はますますあなたに興味が湧いています。これが恋というものでしょうか」
こんなふうに時々パンドラが話しかけてくる。しかもその度に恋だの愛だのと囁いてくる。
「はいはい、それは勘違いだから静かにしておけよ」
『ふふ、連れない方ですね。ですがいつか、あなたにも理解していただける日が来ると私は信じています」
だめだ話が通じない。
いやそれは分かってたけどこのまま一生はきついな
取り敢えずそんなことは置いておいて、これからどうするか
スバルがこの世界に来るのがいつか正確な日付はわからない。でも確か大体10年後辺りだった気がする
……ホントに何しよう
一応俺も大罪司教の端くれになったんだから魔女教の基地みたいなとこがあるなら行ってみたいな
リゼロ世界の裏側を観光できるとか願ってもない
ならひとまず目標は怠惰ペテルギウスだ
あいつは大罪司教の中では一番話が通じる
ifルートのスバルが友達になれてたくらいだ。なら俺も是非ともあの顔芸を近くで拝みたいものだ
でもペテ公は神出鬼没で有名だから居場所掴めるかな…
あぁ〜〜めんどくさい!もうあっちから来てくれないかな
そんなことを考えていたその時
「お初にお目にかかります。寵愛の使徒よ」
藪の中から声が聞こえた
「ワタシは魔女教大罪司教『怠惰』担当ペテルギウス・ロマネコンティ……デスッッ!!」
ホントにあっちから来た
うわぁ…なんか上手くいきすぎて怖いな。まぁいいか、どうせならこの機会を利用しよう
「これはご丁寧に。僕は魔女教大罪司教『傲慢』担当マールス・イムムタービリス。よらしくね!」
あっやばい噛んじゃった。どうしよう、これでこいつが怠惰怠惰言って襲ってきたら面倒だな
「おお、素晴らしい!!実に勤勉な挨拶ですよ!!アナタを歓迎します。寵愛の愛子よ!!」
大丈夫だった。他の大罪司教、特に頭ノミの奴とかならキレて襲ってきたかもしれないな。やっぱこいつは比較的まともなのか
……いや、こいつでまともって冷静に考えなくてもやばいな、うん
「で、随分情報が早いみたいだがどうやって僕が大罪司教になったことを知ったんだ?」
俺は一番気掛かりだった疑問を投げかけた。ひとまず歓迎ムードだがパンドラを殺したことがバレれば一気に牙を剥いてくる可能性がある。だからどこまでこいつが知っているのかを把握しないとボロが出る
「おお!おお!!何と勤勉なことか!!自身の疑問を放置せず、解消しようと行動するとは!!それに比べてワタシはアナタへの説明を怠った!!アァ怠惰怠惰怠惰怠惰怠惰ーー!!」
「いや、別に僕は気にしてないから、大丈夫だから」
「おお!!何と寛大なお心をお持ちなのデスか!!あなたのお心に感謝し、ワタシも勤勉にお答え致しましょう。先の鬼族襲撃にワタシの指先も参加していましてね。近くで待機していたワタシに実に!!実に!!勤勉に報告をしたのですよ!!」
「……なるほどな。よーく分かったよ。ありがとう」
「いえいえいえいえ、礼には及ばなのデスよ!!」
ひとまず情報源は分かった。だがどこまで知っているのかがわからないな。ひとまずボロを出さない様に気をつけよう
「して、アナタは虚飾を打ち下したようデスね」
「…ヒュッ…!」
場の空気が変わった。喉から息が鳴った。こいつは最初から知っていたんだ。ならなぜ最初から敵意を出さなかったんだ?いや、こいつらの行動に意味や理由を考えても無駄だな
「…あぁ、そうだ。俺が殺した。で、何だ?仇討ちでもするの?」
「とんでもない!!ワタシには感じるのデス!!アナタの中で彼女が生き続けていることが!!愛するものと心身共に一つになる!!これこそこれこそが『愛』!!なのデスッッ!!」
「そりゃどうも」
愛だの何だのいっているがひとまず敵対する気は無いみたいだ。なら話が早い。俺のストックを増やすのに協力してもらおう
「ところでさ、僕は魔女教入ったばっかで権能がまだ育ってないんだ。だからあなたの部下の中で弱く怠惰な者を僕に吸収させて欲しいんだ。そうすればその者が生み出す利益以上のものを僕が出せるよ。これって『勤勉』じゃない?」
「おお!!おお!!実に!!実に実に実に実に実にィィィ!!勤勉な提案です。あぁ脳が!!脳が震えるるルルルルル!!」
僕の提案に一通り発狂した後に急に落ち着き、言葉を続けた
「分かりまシタ。アナタのご希望に添えるよう、ワタシも勤勉に働くとしましょう」
そういってペテルギウスの影から十人ほどの魔女教徒が姿を表した
「さぁ!!さぁ!!アナタはこれらと一つになり!!さらなる高みへと至るのデスッッ!!」
「うん。ありがとうペテさん。これで僕も勤勉に働けるよ」
「おお!!ペテさん!!愛称デスね!!これもまたアナタとワタシの距離が縮まったという愛の形デスッッ!!」
そう言った後に俺は魔女教徒の首元に手を当て、権能を発動した
そして全員の寿命を奪った時俺のストックは524年と6ヶ月になった。これだけあれば他の大罪司教にもそう負けないだろう
「さあさあさあさあ!!寵愛を受けたのならそれに見合う働きをしてもらいマス!!福音を受け取り!!従い!!勤勉に働くのデスッッ!!」
そういってペテルギウスは小さな黒い本を渡してきた
「……何も書いてないけど…」
パラパラと福音の中身を見てみたけどどのページにも一文字たりとも文字がなかった
「ナント!!ナントナントナントナントナント!!これも魔女がアナタに与えた試練なのデスッッ!!アナタの望むままに行動せよと魔女は言っているのデスッッ!!」
となると俺は特にまたやることが無くなったってわけだ。なら俺は──
「そっか。じゃあ僕はしばらくここで自分の権能を使いこなせるように勤勉に修行するよ」
「おお!!ナント勤勉なことか!!であるならば。ここで一度ワタシ達は別れる運命のようです!!デスがこれは一時的なものであり再び運命はワタシ達を導き合わせるでショウ!!」
どうやらペテルギウスは福音に従いここを去るようだ。やっとこの勤勉勤勉うるさいやつとおさらばできる。話合わせるの疲れるんだよ
「そっか。じゃあまたな、ペテさん」
「ええ!!再会が楽しみデスねッッ!!」
そういってペテルギウスはケタケタと笑い声を上げながら森の中に消えていった
さて、じゃあ俺はスバルがこの世界に来るまでの10年弱、ここで自身の権能と向き合うとしよう
まぁ寿命のストックは切れたらまた魔女教のやつ狩って補充しよう
出来るだけ一般人や罪のない人を殺したく無い。
だってスバルに嫌われちゃうしね
ひとまず拠点がいるな。村の残骸から何か作れないかな
そんなことを考えながら俺はかつて村だった場所へと向かっていった