俺はもう、この世の全てに飽きてしまった。
何をやっても面白く感じない。
こんな状態なら、生きててもしょうがないのではないか?
そんなふうに思ってしまう。
もともと飽きっぽい性格で、担任の教師と折り合いが悪かったのもあるが高校も辞めてしまった。
何事も長続きしない性格なのだ。
こんなことばっかり考えてもしょうがない。トイレに行こう。
トイレで、おしっこをしていると突然、目の前に死神が現れた。
「君の命をもらい受けに来た。君はもう全てに飽きてしまったのだろう?」
死神はギロリと俺をにらみつけて言った。
いやいやいや、冗談ですやん。言ってみただけですよ?
俺は死神の言うことを否定した。
「それでは死に急いでいるわけではないと?」
「もちろんです」
「とりあえず今日のところは帰ることにしよう」
そう言って死神は唐突に消えてしまった。
死神のことなんかすっかり忘れて日々を過ごしていた。
買い物に出かけた帰りまたしょんべんがしたくなってきた。
我慢ができなくなって道端で立ちしょんべんをすることにした。
すると、またもや死神が現れた。
なぜしょんべんをした時ばかり?
「呼ばれた時以外、自分がこの世に現れるには媒介が必要なのだ」
それがしょんべんなのだろうか?
「お前とは何かと縁があるな」そう言って死神は笑った、…ように見えた。
こいつは何が何でも俺の命が欲しいらしい。
俺は自分の幼馴染みのことを死神に教えた。
「僕の代わりにこいつの命を持っていってください」
俺は幼馴染みを生贄として差し出した。
死神の持っている鎌の、柄(え)の部分で殴られた。
「…ごめんなさい」俺は謝った。
「お前に死神の眼を与えよう」
「死神の眼?」
「死期の近い人間がわかる。病で伏せっている人間がいたらこの眼で見ろ。死神の影が見える。
足元にいたらまだ助かる。枕元に立っていたら助からない。枕元に死神の影がいる人間がいたら俺を呼べ」
「呼べと言われても…」
「ただ、頭の中で呼びかければいい。そうしたら俺は死期の近い人間の枕元に立つ、そして魂を奪う」
病院に行き、たくさんの患者が寝る大部屋に入った。
大嫌いだった高校の担任の教師だ。高校生のころさんざん嫌な目に遭わされた。
足元に死神の影をまとっていた。
枕元にいた、と言えばこいつの魂を持っていくのではないか?
俺は死神を呼んだ。
「こいつで間違いないか?」死神は問いかけた。
「間違いない」俺は力強くうなずいた。
「嘘をつくな」俺はまた鎌の柄で殴られた。
死神に地下の洞窟へ連れて行かれた。怒っているのだろうか?
無数のロウソクを見せられた。
「これは人間の寿命を表している」
自分のロウソクの残り火が消えかけていることを知った。
「新しいロウソクへ火を移せば助かるぞ」死神は言った。
そう言われた俺は、焦ってロウソクに火を移そうとしたが失敗した。
男は「あ、消えた」と言って倒れた。
男の命はつきてしまった。
アンモニアを媒介として死神はこの世に現れる。
最近は、すっかり死神を見かけることがなくなったが、その恐ろしさは今も伝わっている。
トイレに行った後必ずしっかり手を洗う、
犬がおしっこをした後に、飼い主がペットボトルの水をかける、
そんなふうにして死神がこの世に現れてこないように努力する光景がよく見られる。