【AI利用実験中】ポケモン世界に転生したら、旅どころではなかった 作:うどん風スープパスタ
一か月後
ウパーが家にやってきて、早くも1月が経過。ウパーはミニーブや両親、他の人達とも良い関係を築けている。最近は日々の散歩中、湖畔で日向ぼっこをするミニーブと湖に入って浮かぶウパーの2人で、何かを話している様子をよく見るようになった。
厳密に何を話しているのかは分からないけれど、おそらくきのみの栽培について話しているのではないかと思う。
……というのも、ウパーは俺達が育てていたきのみ畑に興味津々。助けたことへのお礼としてなのか、もっと食べたいからか、自然と畑の世話を手伝うようにもなった。働きぶりは水・地面タイプということもあり、普段の水やりと畑の拡張で大活躍だ。
きのみの味には好き嫌いがないし、熱心に畑の世話をしているから、おそらく性格は“がんばりや”だろう。バトルにはあまり積極的じゃないけれど、それならそれで構わない。
ただ……ウパーの協力とウノの熱意の結果、果樹園は2か月前の2.5倍まで広がった。1本1本の木は細いし、大人たちもまだ暖かく見守ってくれているが、ちょっと張り切りすぎでは? 本当にダメならストップがかかるだろうけど……ん?
「ミ……」
「ああ、すぐ用意するからな」
ミニーブがズボンを引いて合図してくれたので、果樹園の片隅にある農具置き場からバケツを用意する。
「いいぞ」
俺がバケツを持って合図を出すと、ミニーブは頭の上の実からゆっくりとオイルを注ぎ始めた。
ミニーブは取り込んだ栄養をオイルに変えて実に蓄えておく習性を持ち、蓄えがあれば一週間飲まず食わずでもへっちゃらなポケモン。だけど最近のミニーブは3食+好みの渋い味の実を大量に食べるようになったことで、オイルの生産量も増えている。
『今日の分はどうするんだっけ?』
(今日はシズカ先生。自家製石鹸にするって言ってた)
『そうだったな』
ミニーブのオイルは飛び上がるほど渋くて苦いので食用には向かないけれど、それはそれで使い道が色々ある。進化系のオリーニョやオリーヴァはオイルを分けて人と共生してきた歴史もあるし、こういうポケモンとの付き合い方も楽しい。トラウマは克服したいけれど、バトルやコンテストが全てではないのだ。
「ウノー?」
おや、母さんが呼んでいる。何か用だろうか?
「お母さん?」
「ああ、そこにいたのね。急だけど、シズカ先生とお買い物に行くことになったの。それで、よければウノも一緒にどう?」
……おそらく、最近は外に出ることが増えたからだろう。無理強いをするつもりはないが、ウノ少年への心配も感じる。
『ウノ、どうする?』
(……行く)
『! 本当か?』
(うん……お母さんが心配してくれているのは、分かるから。心配させたくない。
サノにお願いすることになるけど)
『了解。基本はこっちで動くことにするよ。ウノは中からのんびり眺めておいてくれ』
相談を終えて、母さんについていくことを伝えると、
「本当!? 嬉しいわ。じゃあ、準備しましょうか」
母は喜びよりも安堵した様子で、準備のために俺達の手を優しく引いた。
……
…………
………………
「おつかれさま。どうだった? 初めての空の旅は」
「すごかった……」
シズカ先生は移動や買出しのため、手持ちは6匹全てがペリッパー。“そらをとぶ”で最寄りの街まで連れてきてもらったけれど……正直、慣れないとキツイ。別に高所恐怖症とかではないのだけれど、風が全身にぶち当たるので結構なスリルを感じた。
「ふふふ、ここからは車だから安心して頂戴」
シズカ先生はポケットから取り出した鍵で、貸し駐車場に止めていた車のドアを開ける。その間に周りを見ると、俺達がログハウスに向かうためにこの駐車場に来た時より、停まっている車の数が明らかに多い。それに街の方から、賑やかな音楽も聞こえてくる。
「先生、今日はお祭りか何かあるんですか?」
「この街では2週間に一度バザールが開かれていて、今日はその日なの。近隣の街からも人が集まるから、会場は賑やかよ」
そうなのか……と納得しかけて気づく。そんな街、ゲームのジョウト地方にはなかった。そもそもこの街の名前を車窓から探してみると“ミズハタウン”という街であることが分かる。
『引っ越して来た時に気づけよ俺』
(あの時は色々大変だったから)
『まぁ、周りを見る余裕がなかったのは確かだけど……アニポケっぽいな』
ポケットモンスターのアニメ、通称アニポケではゲームに登場した以外にも街や公式のジムがあり、トレーナーは各々好きにジムを巡って8つバッチを手に入れればポケモンリーグに出場できる。8個以上バッチを集めることもできるというオリジナル要素があった。
(実際にミズハタウンがここに存在しているし、バトルもターン制じゃないしね)
『きのみに関してはゲームの設定が反映されたように見える。単にそう見えただけかもしれないけど、よく分からない世界だな』
そもそもゲームでもアニメでも、ポケモンという1つのジャンルであるのだから、ある程度共通点があって当然か? ……どちらだとしても俺達がやること、できることは変わらないのだから、あまり気にしてもしょうがないか。
シズカ先生の車に揺られながら考えているうちに、俺達はミズハタウンの中心に近づいていく。
……
…………
………………
~バザー会場~
「ふぅ……」
ミズハタウンのバザーは町はずれにある大きな道路を封鎖した“歩行者天国”で開かれていて、露店はごく一般的な食べ物から個人経営の怪しい出店等々。街の人が趣味で作った小物や不用品を並べている店もある。
先生の言葉通り、周囲の街から多くの人が集まっているようで賑やかだし、大抵のものは手に入りそう。だけど……残念ながら、ウノ少年の興味を引くお店や物はなさそうだ。
母さん達を心配させたくない一心でついてきたけれど、疲れてきたので休ませてもらおう。
「それじゃ、ここに座ってるね」
「一人で大丈夫?」
「大丈夫だよ。移動するわけでもないし、人の目もあるから」
「そう……じゃあ、私と先生はそこのお店を見てくるわね。すぐ戻るから」
心配されつつ、俺達は出店が並ぶ道の横に設置されたベンチで休憩。バザーが開かれている道の左右には広大な駐車場が併設された“競技場”と“森林公園”があり、俺達がいるのは森林公園側。程よく日陰になっていて涼しい上に、空気が清々しい。
バザーの活気と自然の穏やかさが合わさって、これはこれで落ち着く空間だ。
「ニャアン」
「え?」
か細い鳴き声が下から聞こえた。思わずそちらを見ると、いつの間にかベンチの下にニャースがいる。ついさっきまでは確実にいなかったはず。いつの間に来たのだろう──と思っていたら、
「ニャ!」
「ん!?」
「ニャァ~ン、ゴロゴロゴロ……」
目が合った瞬間、ニャースが俺の持っていた杖と足に頭をこすり付け始めた。
『なつかれてる、っぽいな』
(とりあえず敵意とか危険はなさそう。よく見たら首輪がついてるし)
『あ、本当だ。和柄の布で綺麗だな……ってことは誰かのポケモンか。近くにトレーナーがいるのかな?』
周囲を見渡しても、それらしい人の姿はない。人ならバザーの方に沢山いるが、ポケモンがいないことに気づいていないだけなのだろうか?
『困ったな……誰かに聞こうにも、ここを動くわけにはいかないし……』
(しばらく待ってるしかないね。この子もしばらくはどこにも行きそうにないから)
確かに。足に頭を擦り付けた後は、ベンチに上って肩にすりつき始めている。
「……」
「ニャッ、ニャン」
こちらからも撫でてみると、撫でやすいように喜んで首を持ち上げた。さらに続けてコロリと転がり、俺の太ももを枕に、ベンチの背もたれに体を預けてお腹を見せる。
完全に飼い猫だな……と思いつつ、撫で続けて穏やかな時間が過ぎていき……
「お待たせ──あら?」
「ウノ君、その子どうしたの?」
ニャースが自ら立ち去るよりも、保護者2人が帰ってくる方が早かった。
引き続きニャースを撫でながら、2人に事情を説明する。
「そういうことだったのね。迷子かしら?」
「でもお母さん達が来るまで、探していそうな人はいなかったよ」
「バザーの運営に相談窓口があるから、お客さんのポケモンだったら一言放送がされる可能性が高いし、街の人のポケモンなのかしら? 近くで出店をやっているとか」
「ちょっと聞いてみましょうか」
「ニャ?」
母はニャースを抱き上げて、近くの出店に歩いていく。抱き上げられたニャースの目が俺を見ているので、なんとなく俺も立ち上がって傍にいることにした。
そして、最寄りの出店にいた男性に母が声をかけると、
「ニャースの迷子? ってその首輪、ネコメ婆さんのとこの子じゃないか! こんなとこまで来たのかよ……」
「この子のお家を知っているんですか?」
「この街で首輪を付けたニャースと言ったら、ネコメ婆さんのところの子だからな。間違いはないと思うぞ。ただ、ここからだと結構な距離があるから、自力で帰るのは難しいかもな……
見た感じ、あんた達になついてるみたいだし、時間があるならその子を家まで送って行ってくれないか?」
そこで母さんは俺とシズカ先生に目を向ける。当然、俺達の答えは問題なし。シズカ先生と母さんも、もう見終わって帰るところだったそうで、満場一致でニャースを家まで送り届けることになった。
「ありがてぇ。俺はまだ仕事があるもんでな。住所は思い出せないが、ネコメ婆さんの家はこの街の端っこ、一番デカい家だからバザー会場から西に向かえば着く。コイツと同じ首輪をしたニャースが沢山いるから、近づいたら分かるはずだ。
万が一家が分からなかった場合は首輪をつけたニャースを探すか、西側で放してやれば勝手に帰るから、あまり気にはしなくていいぞ。少なくともこの街の人間は、ネコメ婆さんのニャースを見つけたらそうしてるんでな」
「わかりました。ありがとうございます」
こうして俺達は、迷子のニャースを届けに行くことになった。
……
…………
………………
「このお家みたいね」
「ニャァン!」
出店の男性から聞いた情報を頼りに、シズカ先生の運転する車でミズハタウンの西側へと移動。街の端、静かな住宅街の中でひときわ目を引く大きな門の前に車を停めて車から降りると、迷子だったニャースは嬉しそうに鳴いて尻尾を揺らす。
しかし、
(家は大きいけど、古いしちょっと汚い……)
『確かに。門の前とか手入れがされている形跡はあるけど、行き届いていないというか、若干変な匂いもするし……大丈夫か? この家の人』
門の横の生垣の隙間に空いた穴が目について、思わずのぞいてしまった。すると中には広い敷地が見えたが、驚いたことに迷子のニャースがつけているものと似た、和柄の首輪をしたニャース達が何匹も、20匹以上はいる。
それぞれ日向ぼっこをしたり、遊んだり……本人たちは楽しそうだけれど、ところどころに何故かゴミも落ちていて、綺麗とは言い難い。なによりも流石に飼い過ぎではなかろうか? 前世のニュースで見た多頭飼いのゴミ屋敷を思い出して心配になる。
「インターホンはないのね……ごめんくださーい! どなたかいらっしゃいますかー!」
母さんが代表して声を張ると、しばらくして年老いた女性の声が聞こえてきた。
「はいはい、今行きますからね」
それからしばらくして門が開き、一人のお婆さんが出てきた。足が悪いようで、右手で杖をついている。彼女がネコメさんで間違いないのだろう。
「ニャーン!」
足元にいた迷子のニャースも、彼女の姿を見るなり嬉しそうに鳴き声を上げた。しかしすぐに駆け寄ることはせず、驚いたようにネコメ婆さんの持つ杖と、俺の持つ杖を交互に見比べ始める。
(この子、もしかして)
『俺が杖をついて歩いていたから、ネコメ婆さんと思って懐いてきたのか』
「あら? まぁ、あなた今朝から姿を見ないと思ったら。あなた方がこの子を連れてきてくださったの?」
ネコメさんが一緒にいるニャースを見て事情を察してくれた。答え合わせをするように母さんが新ためて説明すると、本人もバザー会場まで行くとは思っていなかったようだ。
「一体どうしてそんなところに……ああっ、ごめんなさい。せっかくこの子を送ってきてくださったのにお礼もしないで、どうぞ中に入っていらして。大したおもてなしはできませんが、美味しいお茶とお菓子があるの」
急なことで戸惑ったが、せっかくのお誘いを無下にするのも気が引けたし、この家の状況もちょっと気になった。母さんとシズカ先生を見ると、どうやら2人も似たようなことを考えているようで……
二言三言のやり取りの後、俺達はネコメさんのお誘いを受けることに決まった。