【AI利用実験中】ポケモン世界に転生したら、旅どころではなかった   作:うどん風スープパスタ

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15話 訓練とバザーの準備

 数日後……

 

 ログハウスの裏手に広がるきのみ畑の前に立つ。朝の清々しい空気を吸い込みながら、俺達は豊かに実をつけた木々を静かに見つめていた。傍らではミニーブとウパーが、今か今かと体を揺らしている。

 

「準備はいい?」

「ミニニッ!」

「ウパー!」

 

 気合十分の2匹を前に、目的の確認。

 

 数日前の模擬戦で上級者の戦い方を知った俺達は、ミニーブの育成方針を決定した。

 

 まず基本的な情報として、ミニーブは草タイプ。種族的にすばやさが低く、後手に回りやすい代わりに特攻や特防が高く、特殊アタッカーに向いている。そして足元にいるこの子の性格は“ひかえめ”であり、特攻に1.1倍、攻撃に0.9倍の補正がかかる。

 

 アニポケには“水を克服したサンド”とか苦手をなくす訓練をしていたキャラクターも登場したが、俺達としては別にそこまでしたくはないし、無理をさせるとそれが発作の原因にもなりかねないので、自然と“無理をせず長所を伸ばす”という方針になった。

 

 結論としてミニーブの育成方針は“特殊攻撃中心の持久型”。現状ではタイプ一致の“すいとる”を攻撃の中心とすることで火力を出しつつ、HP吸収による回復で耐久もできるように。そして被弾による精神的な負担を減らしつつ勝機を掴むことを目指す。

 

 早い話がミヤビさんとの試合の時の戦い方。やることは変わらないけれど、方針が明確になったのは今後のためになるだろう。

 

 そしてこれから始めるのは、最重要である“すいとる”のトレーニング。目的は技を使いまくり、精度や速度を高めること。具体的な方法は、すいとるで伸びる根のような部位を使った“きのみの収穫作業”である。

 

「それじゃあ……開始!」

「ミニーッ!」

 

 俺の合図と同時に、気合十分なミニーブが鳴く。彼女の体から細い根のようなものが複数伸び、狙い通りに高い位置にあったオレンのみへ到達。昨日も何度か繰り返したため慣れてきたようで、軌道に迷いはない。

 

「ミッ!」

「ウパッ」

 

 きのみを掴んだミニーブの根が器用に動き、枝からもぎ取って静かに地面へ下ろす。下ろされたきのみはウパーが受け取り、置かれている籠の中に運ぶ。

 

『さて、俺達も見てないで行こうか』

(うん!)

 

 ここで採取に俺も参戦。ミニーブの横から手を伸ばしてきのみをもぎ取り、事前に並べてある籠に放り込んでいく。この訓練は俺達と、ミニーブとウパーのチーム戦であり競争なのだ。

 

 俺達が横から取って行くことで、ミニーブはどのきのみを取るかを取捨選択しなくてはならなくなり、結果的に状況を判断しながら行動する訓練になることを期待しているが……実際にミニーブ達は俺の指示なく行動できているので、無意味ではないはずだ。

 

「ミニニッ!」

『……若干だけど、最初と比べたら確実にペースが上がってるな』

(うん! あっ)

「ミ、ミニー……」

 

 調子は良かった。しかし、しばらく技を使い続けたところでミニーブの動きが鈍る。体力そのものに限界が来たわけではないけれど、技を使い続けたことによる疲労……ゲーム的に言えば“PP”の枯渇状態だ。

 

 ここで使うすは、つい先日作った新しい薬。

 

「ミニーブ、これを」

「ミ~」

 

 腰につけたポーチから、小さな容器を取り出して蓋を開ける。自家栽培のヒメリのみと、大人達が採取してきてくれたピーピーグサを調合した丸薬、ヒスイ式“ピーピーリカバー”だ。

 

 俺が2粒ほど口元へ運ぶと、ミニーブは素直に口を開け……飲み込んだ瞬間、頭のつぼみがピンと立ち上がる。

 

「ミニーッ!」

「ウパーッ!」

 

 活力を完全に取り戻したミニーブが気合の声を上げると、ウパーも釣られて元気に跳ねた。

 PP回復薬の実用化により、練習の継続が可能なのだけれど……ミニーブの反応が“これ大丈夫なのか?”と思わせる。

 

 シズカ先生のお墨付きはもらってるし、ただヒスイの薬がよく効くだけだろう。でもしばらくは注意しておこう。

 

 そんなことを考えつつ、俺も収穫競争に戻った。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

「ふー……」

 

 用意された沢山のカゴに、色鮮やかなきのみが山盛りになっている。今日の目標としていた範囲の収穫作業、つまり訓練の終了まではあと少し。額の汗を拭いながら、俺は大きく息を吸い込んだところで、ミニーブが最後のきのみを摘み取った。

 

 それをウパーが受け取り、籠に入れたところで、

 

「作業終了!」

 

 俺が達成感と共に両手を高く突き上げると、心地よい風が畑を通り抜けた。ミニーブとウパーも俺の動きに合わせて、根や尻尾を精一杯上に伸ばす。万歳のような姿勢で一区切りついたので、少し休もう……と思った矢先のことだった。

 

「ミニニッ!?」

「ウパァッ!?」

 

 突然ミニーブが戸惑ったような声を上げ、間髪入れずにウパーが驚く。思わず目を向けると、ミニーブの全身が白の光に包まれている。見間違えるはずもない“進化”の光だ。

 

『進化……えっ、進化!? ここでか!?』

(道具もバトルもしてないのに、訓練だけで進化するんだ……)

 

 予期せぬ事態に俺が戸惑う中、ウノ少年は純粋な驚きと期待で目を見張る。ミニーブはゲームだと普通にレベル25で進化。バトルで経験値を稼がず、反復練習や農作業で経験値が溜まったのだと思うけれど、そんなことがあるのだろうか? 

 

 というかそもそも、積極的にバトルを始めたのはつい最近の事。具体的なレベルは測定できないため正確には分からないけど、ミニーブのレベルが元から高かった印象はない。ここにきて急成長した? 

 

 いや、実際進化しているのだから、進化できるレベルに達したと考えるしかないんだが……もしかして“メガドレイン”とかも既に使えるんだろうか? 

 

 疑問を抱いている間にも光は収まり、そこには体が一回り大きく、ツボミが2つで髪を御団子にした女の子のような姿になったミニーブ……いや、“オリーニョ”がいた。

 

「オリーッ!」

「びっくりしたけど……進化おめでとう、オリーニョ!」

 

 想定外のタイミングかつ、とてもあっさりとした進化ではあるけれど、パートナーの成長は素直に喜ばしい。俺達が満面の笑みで歓迎すると、背後から足音が近づいてきた。

 

「オリーニョと聞こえたけど……やっぱり進化したのか!」

 

 驚きを含んだ声の主は、籠の回収に来た父さんだった。

 

「オリーニョ、進化おめでとう。ウノ達もよく頑張ったね」

 

 父さんが優しく頭を撫でると、オリーニョは誇らしげに頭のつぼみを揺らす。

 

「ウノもとうとう手持ちの進化初体験か。時が経つのは早いなぁ……」

 

 そんなことをしみじみと呟きながら、父さんは沢山の籠に入ったきのみの状態を確認しながら、家の中に運んでくれる。

 

「今日のきのみもいい出来だったね。あれなら母さん達も喜ぶよ。っと、そうだウノ、お母さんとシズカ先生がバザーのことで悩んでいるみたいだから、少し話を聞いてあげてくれないか? きのみはお父さんが全部運んでおくから」

「バザーの相談? 分かった!」

「ありがとう。2人は食堂にいるからね」

 

 と、父さんに促されて、俺達は食堂に向かうことにした。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 食堂の扉を開けると、母さんとシズカ先生がテーブルに向かい合い、腕を組んで唸っていた。

 

「2人とも、どうしたの?」

「あらウノ。バザーで出店する軽食のメニューについて考えてるのよ。バザーの運営元に出店の相談をしたら、屋台とかキッチンカーのレンタルもできるみたいなの。

 想定していたよりもしっかりと調理できそうなんだけど、普通のお店とは勝手が違うから……丁度いい手軽さで提供できる料理を、って考えてたら迷っちゃって」

「ふ~ん……今の候補は何があるの?」

 

 訊ねてみると、母さんは机の上に置いていたメモを見せてくれた。それによると、現在の候補は以前作ったきのみカレー、チーゴコーヒー、モモナナラッシー、特製きのみサンドの4種類。

 

 どれも作り置きや会場で温めるだけで提供できるもの。なおかつ、庭で採れたきのみを使うことで材料費を抑え、利益を出せるように考えられているようだ。

 

「ほとんど作り置きだから、手間をかけずに提供できる食べ物とデザートをもう一品ずつ追加したいのよね。ウノ君は何か思いつかない?」

 

 シズカ先生も顎に手を当てて訊ねてくる。

 

(サノ、出番)

『いや出番って、まぁ考えるけどさ』

 

 制限のある中で、既存の食材を活かして満足感のある新メニューなんて、プロじゃないと簡単には……っていうか、プロでも頭を悩ませることがある問題だろう。実際、前世のバイト先の人達はめっちゃ悩んでいた。

 

 だから俺にできるのは、数を出すくらいしかない。いわゆるブレインストーミングになることを願って、ぱっと思いついた食材は先程進化したオリーニョのオイル。ミニーブのオイルとは打って変わり、渋みがなくてフレッシュで美味しい。これを使ったサンドイッチはどうだろうか? 

 

 客観的に見ても酷い目にあったとはいえ、パルデアはウノ少年や母さんの生まれ育った場所。その食材と料理には馴染みがある。またパルデアでは昔からポケモンが素材を提供し、人と共存してきた歴史があり、オリーニョのオイルもその1つ。

 

 材料や提供の手間の条件に合致していて、母さんにも伝わりやすく、そして俺達がまず思いつくものと言ったらこれだ。2人にも先ほど進化したばかりのオリーニョを紹介して、説明とオイルの味見をしてもらう。

 

「あらまぁ、凄く爽やかな油ね。これならお料理に使っても美味しそう。パルデアのお料理にも興味を持つ人はいると思うわ」

「……ウノの育てたきのみをたっぷり食べているからかしら? オリーニョのオイルの中でも品質がいいわね……サンドイッチはキャンプでも作れるくらい手軽だから、具材を用意しておけばその場で作って提供できるし、注文によってボリュームも調整できる……いいわね!」

 

 母さんがパッと表情を明るくして、料理人としての情熱を燃やし始めたところで、さらにシズカ先生が一言。

 

「じゃあ、デザートの案はないかしら? もう1つあれば食事メニュー、飲み物、デザートが各2種類ずつで収まりがいいのだけれど」

「デザートなら、定番なのはケーキとか?」

 

 ケーキにしても何ケーキを作るか? 作り置きはできるとしても、大量に作るなら手間がかかる。負担を軽減するなら、他に使う材料でまとめて一気に作るとか? 

 

(だったらフルーツサンドのクリームが流用できそう?)

『だな。逆に流用できそうにないのはカレーとサンドイッチ。クロワッサンカレーとか奇抜な料理を作るならアリかもしれないが、今は奇をてらう必要がない。

 となると残りは飲み物メニューだけど、モモナナラッシーはフルーツサンドと被る。残るはチーゴコーヒーのみ。コーヒーを使うケーキは、あったな!』

 

 チーゴコーヒーとフルーツサンドに使うクリームをチーズ代わりに使い“ティラミス”風のケーキを作るのはどうか? と2人に訊ねてみる。

 

「実際に作ってみないと味がどうなるか分からないけど、提供に関しては問題なさそうね」

「ノンカフェインのデザートとしても売りになりそうだわ。早速今日のお昼で試してみましょう!」

 

 母さんもシズカ先生も、反応は良好。善は急げということで、そのまま俺の提案をもとに昼食兼試作が行われることになり……

 

「うむっ! 美味い! パルデアのサンドイッチは満足感があるね」

「パン丸ごと一本に肉と野菜ぎっしりですもんね。でも、食べやすいから食べきれちゃうし、キャンプ料理っていうだけあって、持ち運びにも便利そう」

「こっちのティラミス風ケーキも美味しい。けどこの生地……もしかしなくてもフィールドワーク用のビスケットでは?」

「あらミヤビ君、気づいたのね」

「えっマジで? あの保存食の、不味くはないけど硬いやつがこれになるのか……」

「丁度在庫の入れ替え時期だったから使ってみたの。自分で焼いても良かったけど、これなら作る手間が省けるし、製造元から仕入れるルートもあるでしょ? 追加購入で価格交渉もできそうだから、いいんじゃないかと思って」

「他にもナナシの実で酸味を足したり、味の方も工夫してみたんですよ」

「これならいくらでも食べられるよ」

 

 と、昼食兼試食会の結果は大好評。必然的にバザーで提供するメニューも無事に確定し、俺とウノ少年も大満足。

 

 昼食を終えて次のきのみの植え付け作業に向かう時には、やる気が体に満ちていた。

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