【AI利用実験中】ポケモン世界に転生したら、旅どころではなかった   作:うどん風スープパスタ

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16話 こやし

 メニュー決定の翌日……

 

 今日は朝からミズハタウンにやってきた。初回と同じくシズカ先生のペリッパーに乗せてもらい、街の駐車場から車移動。しばらく走ると大きな木造の門が見えてくる。ゴミ屋敷でなくなったせいか、最初のうらぶれた雰囲気は綺麗に消え去り、今では歴史と風情を感じさせる。

 

 車輪が砂利を噛む音と共に車が止まると、タイミングを見計らったように門が開いた。

 

「いらっしゃい。今日もよく来てくれたわね」

 

 扉の奥から現れたのは、俺と同じように杖を携えたネコメさん。今日は母さんとシズカ先生がバザー出店のために、必要な資格と許可を取りに街にやってきた。そしてその間、俺はネコメさんに預かっていただくことになったのだ。

 

「おはようございます。今日は一日、ウノのことをよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「うちは来客なんて滅多にないから、いつも一人で寂しく過ごしているの。家が明るくなっていいから気にしないでちょうだい」

 

 穏やかに笑っているネコメさんと母は一言二言だけ会話をして、もう出発するようだ。

 

「それじゃあウノ、いい子にしているのよ」

「分かってる。お母さんたちは気をつけてね」

 

 俺はネコメさんの隣に立って、しっかりと頷いてみせる。

 

「それじゃ、行ってきます!」

 

 シズカ先生が窓から手をふり、母が助手席から笑顔を見せて、車が発進。排気音を残して住宅街の奥へと消えていった。

 

「さあ、中へ入りましょう。うちの子たちも待っているわ」

「ニャーン!」

「ニャ、ニャオ!」

「おっと」

 

 ネコメさんに誘われて門の中を見ると、既に大勢のニャース達が玄関までの道に集まっている。まるで遊園地のパレード状態の中を進んでいくと、俺の足元に次々と擦り寄ってきた。

 

「大人気ねぇ。みんな、ウノ君のことを歓迎しているのよ」

 

 それは嬉しいけど、ちょっと踏みそうなのが怖い……と思っていたら、

 

「はいはい、皆落ち着いて。時間はあるから、一旦庭で遊んでなさい」

『ニャーン!』

 

 ネコメさんが号令をかけると、思い思いの場所に散っていくニャース達。ぬくもりと柔らかな毛並みが一気に遠ざかったことに若干の寂しさを覚えつつ、俺達は歩きやすくなった道をゆっくりと、屋敷の中まで歩んでいく。

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

「ウノくん、朝ごはんは食べたかしら?」

「はい、家でしっかり」

「それじゃ、お茶とお菓子を持ってくるわね。好きなところに座って待っていてちょうだい」

 

 そう言われたので、ゴミ回収の日と同じ縁側に腰を下ろす。今日は日差しが柔らかく、庭から吹き込む風が涼しくて心地よい。空を眺めているうちに、お茶の香りが漂ってきた。

 

「お待たせしたわね。お口に合えばいいのだけれど」

「ありがとうございます。いただきます……美味しい」

「まぁ、よかったわ」

 

 香り高く、苦味が少なくて飲みやすい緑茶だ。次に隣に添えられていた羊羹を一切れいただけば、甘さ控えめで小豆の味がしっかりと感じられる。

 

『……これお高いお店のやつなんじゃないか?』

(サノの記憶にあるやつに似てるね)

『昔、バイト先の店長がガチでやらかして、フォローした後にもらったやつな』

 

 老舗の名店のやつで、値段は知らないけど高級なものだったはず。こんな無造作に子供に出すお菓子ではない気がするが……

 

「この味も久しぶりねぇ……このお茶と羊羹は私の思い出の味でね。以前は常備していて、お客様が来た時はいつもお出ししていたの」

「思い出って?」

「大したことではないのよ。この羊羹のお店はエンジュシティにあるのだけれど、私は若い頃に舞妓さんをしていてね、踊りを見に来るお客様が差し入れてくれるお菓子の定番なの。

 私の現役時代にも沢山貰ったけど、子供の頃からお師匠様や姉さん方におこぼれを貰ったりしていたから……楽しい時も苦しい時も、私の人生の半分くらいはこの味と一緒に生きてきたことになるわね」

「そうなんですか」

 

 舞妓さんだったのか。道理でゴミ屋敷に住んでいたのに、立ち居振る舞いはどことなく品が良いと思った。

 

「思い出すわ……夫もこれを、踊りを見に来た日は必ず持って来ていたわね」

「旦那様が、ということはもしかして」

「うふふ、最初は舞妓とお客様だったの。舞妓の時点での恋愛はご法度だったから、距離を置いてたまにお話しするくらいの関係だったのだけれど、私が芸妓になってすぐに告白されて驚いたわ」

 

 さらに話を聞くと、ネコメさんは最初の申し出は断ったとのこと。舞妓というのは見習いとか修業期間の間の呼び方であり、一人前になって芸妓と呼ばれるようになる。つまり、告白されたタイミングはネコメさんがようやく一人前になって間もなく。

 

 さらに芸妓さんは結婚すると引退するのが一般的だったため“すぐに結婚まで行くとは限らないけれど、お付き合いをするということは、将来的にそういうことも考えなければならない。ようやく1人前になったばかりで、引退のことは考えられない”ということらしい。

 

 しかし、それを伝えても旦那さんは諦めることなく“それならば引退していいと思えるまで待つ”と言って、実際にネコメさんが引退を決めるまで待ち続けたそうだ。

 

「あの人のお仕事の都合で会えるのは年に数回。数年間が空くこともあったから、まさか本当に最後まで待つなんて、最初は思ってなかったんだけどね……最後には根負けしてこの街にきたの」

「何故この街に?」

「あの人の生まれ故郷だったのと、私はずっとエンジュシティしか知らなかったから、違う町を見てみるのもいいと思ったのよ」

 

 旦那さんとの新生活は楽しかった、しかし、良い事ばかりではなかったとネコメさんは語る。

 

「夫は優しかったけれど、私はあまりいい妻ではなかったわ……最低限の家事は修行中に身につけていたけれど、それ以外は芸事ばかり。家計のやりくりやご近所さんとのお付き合いとか、妻としての仕事は中々上手くいかなくてね……

 元々壁は感じていたのだけれど、間に入ってくれていた夫が亡くなってからは、段々とご近所との付き合いも減って……ニャース達が増え過ぎて、ゴミが溜まるようになってからは、当然だけど良い目で見られなくて。今ではもう、すっかり街の嫌われ者よ」

 

 そんなことがあったのか……

 

(寂しいね……)

『そうだな……でもニャースと家の状態に関しては、避けられる理由として妥当だからなぁ……加齢と健康上の理由でのゴミ屋敷化は仕方ない部分があるとしても、匂いはしていたし、あと多頭飼いの印象も普通に悪い。

 こっちではたしか“6匹が適切な世話をして愛情を注げる限界”とか言われてるんだろう?』

(それは旅に連れ歩く場合の話であって、家とか安定した環境の場合は特にポケモンの所持数に関する明確な上限や規則はない。ポケモン牧場とか、保護活動をしている人もいるから……とはいえ1人で100匹近い数はさすがに多いよね)

 

 俺達はもう彼女とニャースの関係を見て知ったから、ちゃんと世話と躾ができていることに疑いはない。けど、あまり親しくなくて、それを知らない人だったら飼育崩壊を危惧するだろうし、ネコメさんに悪い飼い主という印象を抱くのは無理ない。

 

「あらいやだ、こんな話をされても困っちゃうわよね」

 

 ここでネコメさんは謝罪を口にして、話を変えようとする。後ろ向きな話をするつもりはなかったのだろうけれど、このままだと気まずくなりそうだ……気にするなと言っても意味は無いだろうから、逆にこちらの話をしてみることにした。

 

 これまで気を使って聞かないでいてくれたであろう、足のこと。その原因となった事件と、パルデアを出てジョウトにきた理由。勉強という面でいえば優秀だったけれど、人付き合いはろくになく、自分が悪いとは思っていないが、嫌われ者という意味では俺も大差がないのだと。

 

 俺もウノ少年も結構鬱憤が溜まっていたのか、愚痴っぽくなってしまったかもしれない。しかしネコメさんは一通りの話が終わるまで、黙って聞いてくれた。

 

「ウノ君も苦労したのね」

「ん……でも今は問題ない。みんな親切だから。ネコメさんも」

 

 パルデアの話をしたせいか、珍しくウノ少年も言葉を発した。これまではウノ少年が言いたいことも、俺が一度聞いて代弁していたのだけれど、いまはウノ少年自身が喋ったのだ。他の人にはまるで理解できないだろうけれど、これは俺たちにとって大きな進歩だ! 

 

「そう言ってくれるのね、ありがとう。それなら嫌われ者同士、これからも仲良くしましょうね」

「うん!」

 

 頷いて、最後の羊羹一切れとお茶を飲み切った。そして話が一区切りついたところで……なるほど。ウノ少年の目が、チラチラと以前設置したコンポストの方に向かっている。

 

「ネコメさん、ちょっとコンポストを見てきていい? あとポケモンたちも出してあげたい」

「もちろんよ」

 

 ということで、腰のモンスターボールから2匹を庭に出す。

 

「オリー!」

「ウパァ!」

『ニャニャッ!』

 

 2匹は元気に出てくると、たちまち日向ぼっこをしていたニャースたちに囲まれる。前回のことを覚えていたのだろう、仲良さそうに体や頰を擦り付けているので、2匹も穏やかに受け入れている。

 

「あら、あの子はミニーブちゃん? 進化したの?」

「はい、いまはオリーニョというポケモンです」

 

 そういえばネコメさんは初見か。せっかくなのでオリーニョとウパーにも挨拶をさせると、彼女は優しく2匹の頭を撫でた。本人の優しさが伝わっているようで、2匹も気持ち良さそうに体を預けている。

 

 だが、そうすると次は自分も! とニャースたちがやってきて、あっという間にネコメさんの周りにはニャースが集まり、団子のようになってしまった。

 

 しばらく続きそうなので、俺たちは一声かけて回転式コンポストに向かう。

 

『さて、ニャースたちのフンや枯葉が、うまく堆肥化できているかどうか……おっ?』

 

 コンポストの横に取り付けられた攪拌用の大きなハンドルに手をかけると、片手でそれほど力を入れていないにもかかわらず、軽く回った。

 

(前よりもハンドルが軽い!)

『フンやきのみの水分が抜けたんだな。ってことは発酵や分解も進んでるはず』

 

 回転を止め、上部にある蓋のロックを解除してからそっと開けると、かすかな熱気を感じた。しかし、フンのアンモニア臭や腐敗臭など、嫌な匂いは一切ない。たとえるなら雨が降って湿った森の中の匂いのようだ。

 

 蓋の隙間から見える限り、元のフンや枯葉の形は完全になくなっていて、暗褐色の土のようなもので埋め尽くされている。

 

(これって成功!?)

『堆肥にはなっていると思うけど、堆肥ってこんなに早くできるものだったか? 少なくとも1ヶ月くらいは必要だった気がするけど、これはまだ1週間ちょいだろ』

(ゲームのコンポストはきのみを入れたらその場でこやしになってたよ? きのみもあっという間に成長するし)

『本当に何でもかんでも早いんだよなぁ……ゲームで1つ作るのに1ヵ月とかかけてから、テンポ悪くなるから仕方ないのかもしれないけど』

 

 現実化したポケモン世界にゲームの要素が混ざっているのか、ゲームの世界に現実的要素が混ざっているのか。相変わらずよくわからない仕様だけれど、とりあえずそういうものと理解しておくしかない。

 

 それはそれとして……

 

(サノ、どうしたの?)

『ウノ、ひとまず成功したと仮定して、ゲームのどのこやしになったのかわかるか?』

(……分からないね)

 

 ゲームで登場していたこやしは、まず第四世代に4種類。

 

 ・すくすくこやし:きのみの成長速度が早くなるが、土が乾燥するのも早くなる。

 ・じめじめこやし:土の乾燥が遅くなるが、きのみの成長速度も遅くなる。

 ・ながながこやし:きのみが実った後、地面に落ちるまでの時間が長くなる。

 ・ねばねばこやし:実が落ちて枯れた後、新しい芽が自動で生えてくる回数が増える。

 

 そして第六世代に登場するのが4種類。

 

 ・ぐんぐんこやし:土の乾燥を早めて水やりの頻度を増やし、収穫量を引き上げる。

 ・たわわこやし:きのみが実ったときの最低収穫数が2個増える。

 ・びっくりこやし:特定のきのみを隣り合わせに植えると、突然変異の発生確率が上昇。

 ・とんでもこやし:上記3つの効果がすべて同時に発動する究極のこやし。

 

 以上、合計8つのこやしが存在した。

 

 前者4つはソノオタウンのフラワーショップでの購入。コンポストで作れたのはX・Yだから、後者の4つのどれかなのか? そもそも堆肥としては成功していても、こやしとしては成功なのか? 

 

 ……知識不足もあるけれど、今回はさらに庭のゴミ処分も兼ねていたから、材料の比率も色の組み合わせも把握できていない。となると、使ってみて効果の有無と内容を確かめるしかないか……

 

 そんな風に悩んでいたところ、

 

「ウノ君、どうしたの? 何か困りごとかしら?」

 

 いつの間にかネコメさんが後ろで心配していたので、誤解を解くために理由を説明すると、

 

「それなら、この庭で試したらいいじゃない」

「えっ、ここで?」

「この庭、皆さんのおかげで綺麗になったけど、今度は何もなくなって寂しいでしょう? 特に何かに使う予定もないし、ウノ君が何か植えたければ植えていいわよ。

 うちの子たちも、少しは木陰があったほうがいいかもしれないし……」

 

 ここで、ネコメさんはふと家の方に目を向ける。

 

「そういえばあの日から今日までに、またうちの子たちがきのみを拾ってきてね。ウノ君にあげようと思って保管しておいた物があるわ。それを使って植えてみたらどうかしら」

「本当に? ありがとうございます!」

 

 ウノ少年はもちろん、俺も嬉しくなって即座にお礼を口にすると、ネコメさんは笑ってきのみを取りに行った。

 

(サノ、ニャースたちが拾ってきたきのみって何だろう)

『わからないけど、植物だからな。ポケモンに運ばれることはあっても、自分で移動するわけじゃないから、この前見つけたのと同じやつの可能性が高いんじゃないか?』

(まだ見てないきのみだといいな)

 

 コンポストの前でネコメさんが戻ってくるのを待ちながら、新しいきのみの可能性に期待する。

 

「お待たせ。これなんだけど、ウノ君の畑にあるものと同じかしら?」

「これは……!」

 

 戻ってきたネコメさんは、きのみを盛ったお盆を運んできていた。そしてそれを目にした瞬間、俺たちは思わず身を乗り出してそれらを凝視してしまう。

 

 そこに置かれていたのはきのみではない……いや、きのみではあるけれど、俺たちがこれまで育てていたきのみとは明確に区別されていたもの。

 

 表面がどんぐりのように硬い殻で覆われていて、形状は多少歪なものもあるが、基本的に綺麗な球体。そして何より同じ形で様々な色がある。これは食用ではなく、職人の手によって特別なモンスターボールへと加工される素材。

 

「“ぼんぐり”だ!」

 

 考えていたきのみとは違ったが、これも植えて育てるもの。さらに新しいアイテムとなれば、ウノ少年が喜ばないわけがないし、俺も大変興味深い。

 

「気に入ってもらえたみたいでよかったわ。

 それとこやしを運ぶ手間も少ないほうがいいだろうから、植える場所は目の前のここがいいんじゃないかしら」

 

 ネコメさんはすでに植える前提で、場所を提案してくれている。コンポストの目の前なので、すぐに作業ができて負担の少ない位置だ。ここまで勧めてくださるなら、断るのも悪い。

 

「ありがとうございます。お言葉に甘えて、ここに植えさせてもらいます。

 オリーニョ、ウパー、手伝ってくれる?」

「オリ!」

「ウパッ!」

 

 2匹のやる気に満ちた鳴き声が、作業開始の合図になった。

 

 まずはオリーニョが“すいとる”の根を伸ばして地面に打ち込む。こうすることで根が地面を押し広げていき、地中に隙間が生まれる。

 

 そこにウパーが“みずでっぽう”で地面を緩め、オリーニョが根を引き抜いて崩れた地面を、さらにウパーが体を擦り付けるようにして砕いていく事で、ちょっと湿った“ふかふかなつち”に変えてくれる。

 

 最近はこの作業を何度も繰り返しているせいか、徐々にオリーニョは地面に根を打ち込むのが早くなっているし、ウパーもオリーニョの助けがあまりいらなくなってきた。オリーニョの技の強化や、ウパーが“あなをほる”を習得しないかと密かに期待もしている。

 

(サノ、僕たちも)

『了解、頑張ろう』

 

 2匹が頑張ってくれている間、俺たちはネコメさんから前の片付けでも使ったボロ布を借りて、コンポストの下に敷く。そしてコンポストの蓋を開けたまま回転させることで、中身をボロ布の上に出したら、布を引きずって植える場所のそばへ運んでいく。

 

 これを繰り返すうちに2匹の仕事が終わったので、次は実験のために場所を半分に分け、穴を掘りつつ片方の土にだけこやしを混ぜ込んでもらう。そして最後にネコメさんからもらったぼんぐりを植えて、ウパーに水を撒いて貰えば作業は終了。

 

 今回はこやしの実験のためにオリーニョのせいちょうは使わなかったことと、オリーニョたちの手際がよかったため、さほど時間はかからなかった。

 

 植えたぼんぐりは、赤、青、白の3色。初めて使うこやしと、初めて育てるぼんぐり。どうか無事に芽吹いて、増えてほしいものだ。

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 ~ネコメの家・縁側~

 

 ぼんぐりを植え終わる頃にはお昼になっていて、俺たちはネコメさんが用意してくれたご飯をごちそうになった。そして一息ついた後、ウノ少年から提案を受ける。

 

(サノ、お昼ごはんのお礼にハーブの手入れに行こうよ)

 

 ゴミ処理の時に庭で見つけたメンタルハーブをはじめとしたハーブ類は、思い出の品として一部を庭の一角に植え直していた。片付けのついでだったので、しっかり手を加えたわけではない。様子を見ておくのはいい考えだろう。

 

「ネコメさん、ちょっとハーブのお手入れをしてきますね」

「気にかけてくれてありがとうね。無理はしないのよ」

 

 ネコメさんに見送られながらハーブ園に向かうと、ハーブに混ざって雑草が顔を出していた。そして土も少し乾燥している。オリーニョとウパーの力も借りて、まず草取りを行う。

 

「ウニャ?」

「ニャニャ?」

 

 ここで作業が気になったのか、ニャースが数匹近寄ってくる。

 

「一緒にやってみる?」

「ニャッ!」

 

 何気なく聞いてみたら、やる! と言われたように感じた。

 そしてハーブと雑草の見分け方を説明すると、咥えたり引っ掻いたり。

 しかし、ちゃんと雑草だけを取り除き始めた。

 

『ゴミの分別の時にも感じたけど、この子たち頭いいな。オリーニョたちもよく言うことを聞くしポケモン全体の頭がいいのか』

(これならハーブ園の手入れもニャースたちがやってくれるかもね)

 

 そうなってくれたらまたネコメさんの負担が減るだろうと思い、興味を持ってくれたニャースたちには丁寧に作業を教えてみた。

 

 こうして手入れが進み、ハーブ園も綺麗になった頃、外から聞き覚えのあるエンジン音が聞こえて、止まった。

 

『シズカ先生の車か?』

(帰ってきたかも!)

 

 この予想は正しかった。考えて数秒後には車から誰かが降りる音が聞こえて、さらに門の向こうから声がかかる。ネコメさんと一緒に外に出ると、やはり母さんとシズカ先生が立っていた。

 

「ただいま。ウノ、ちゃんと良い子にしていた?」

 

 よくある親子の会話だが、開口一番に尋ねられたので今日のことを説明すると、母はちょっと呆れたようだ。

 

「ウノったら、他所のお宅にまできのみを植えて」

「アケノさん、きのみのことは私から提案したのよ。寂しかった庭だしハーブの手入れまでしてくれて、ウノ君はとってもいい子だったわ」

「それならいいのですが……」

「お母さんたちは大丈夫だった?」

 

 こちらからも尋ねてみると、シズカ先生が答えてくれた。

 

「バッチリよ。アケノさんはパルデアの調理師免許と実務経験があったから、必要な資格は書類審査と筆記試験だけで取れたし、バザーの出店許可も問題なく取れたわ」

「そうなんだ! おめでとう、お母さん」

「ありがとう。でも、ここからがスタートなんだから、気を緩めずに頑張らなくちゃね」

 

 熱意に満ちた母さんは、パルデアにいた頃とは比べ物にならないほど明るい。ウノ少年の回復もそうだが、母さんの心も少しずつ癒えてきているようで、本当によかったと思う。

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