【AI利用実験中】ポケモン世界に転生したら、旅どころではなかった 作:うどん風スープパスタ
~ジョウト地方・アサギシティ~
長い船旅が終わり、俺たち家族は無事に目的地のアサギ港に降り立った。
港からは街の東にあるアサギの灯台がよく見えている。
……ゲームの名所を実際に見たら感動するかと思ったが、不思議と心は動かない。ウノ少年程ではないけれど、あの事件のことは俺の心身にも影響があるのだろう。感動は体と心が癒えた時に取っておこう。
「ウノ、疲れたか?」
「ううん、大丈夫。それより新しい家に向かおうよ」
「それなんだが、上司が迎えに来てくれるらしくてね。もう着いているらしいけど、どこにいるんだろう?」
「お~い!! ウド君!」
船を降りていく人混みの向こうから、野太い男性の声が響いた。
そちらに視線を向けると、声の主のやまおとこ……大柄で鍛えられた体の男性がこちらに走ってきていた。
「待たせてすまん! 間違えて隣の船着き場に行っていた!」
「イワオさん。我々も下船したばかりですから。それに迎えに来てくれただけでもありがたいですよ。それより妻のアケノと息子のウノを紹介させてください」
「おお! あなた方がウド君のご家族か! 私はイワオ。ウド君と同じく自然環境の観察研究と保護をしている。これからよろしく頼むよ」
「妻のアケノです。いつも夫がお世話になっております」
「息子のウノです。よろしくお願いします」
「これはご丁寧に」
そこまで言った彼は、膝を折って子供の俺と視線を合わせてくれる。
「ウノ君、ジョウト地方にようこそ。話は聞いた。大変だったそうだね」
「えっ、と……大丈夫です」
「そうか……強い子だ。今度君たちが住む家の周りは、自然が多くて穏やかなところだ。街から遠い不便さはあるが、ゆっくり体を治すにはいい所だよ。私と妻も隣に住んでいるし、困ったことがあればいつでも頼ってくれ」
「ありがとうございます」
いきなりパルデアでのことが話題に上がり、少し戸惑った。
しかし、どうやらこの男性は親切そうだし、父親にも信頼されているようだ。
彼はそっけなくなってしまった俺の言葉を気にも止めず、大きな手で頭を撫でて立ち上がる。
「さて、まずは車に向かおうか。話をするにも外は暑いからね!」
車に向かう途中、足を引きずる俺を見て、イワオさんは肩車を申し出てくれた。初対面だし驚いて一度は断ったが、遠慮しなくていいと言う彼の押しの強さと、足の状態もあるのでお言葉に甘えさせてもらうことにした。
いい年をした大人である
……
…………
………………
イワオさんの車に揺られること2時間。さらに車の入れない森の中を、イワオさんのポケモンの背に揺られること1時間。合計3時間を経て新居に到着。深い森の中に突如現れた湖のほとりに、7軒のログハウスが並んでいた。
自然が多いと聞いていたけど……これは自然のど真ん中というべきだろう。パルデアで住んでいたセルクルタウンにも自然は多かったけど、ここはそれ以上。正直、ここまで自然の中とは思わなかった。
そんな俺の気持ちを、父は察したようだ。
「どうだ? 驚いただろう」
「うん……凄いところだね。綺麗だけど」
「ここでお父さんたちは毎日、色々なデータを取っているんだ」
「……ここ、僕達が住んでいいの? 職員以外、立ち入り禁止とか」
「街よりは不便だし、仕事の都合で長期滞在になるから結婚していない人が多いけど、家族で住んだらダメってルールはないよ。少なくともここにはね」
「その通りだよ、ウノ君。会った時にも話したが、私も妻とここに住んでいるからね。
そうだ、まずは皆に紹介しよう。おーい!! 手の空いている人は集まってくれ!!」
張り上げられた声に応じて、中央のログハウスの中から女性が出てきた。
「ちょっとあなた、いきなり大声はやめてくださいな。皆が驚くじゃないですか」
「すまんすまん! ウドとご家族が来たので、紹介したくてな!
アケノさん、ウノ君。彼女が私の妻のシズカだ」
「シズカです。ウドさんの奥様と息子さんね。いつもウドさんからお話は聞いていますよ。私は主に食堂での調理と、医務室での治療を担当しています。何かあればいつでも声をかけてくださいね」
最初に顔を出したシズカさんは、こちらを見るなりにこやかに笑う。イワオさんと同じでおおらかそうな人だ。
さらに彼女に少し遅れて、金髪でチャラそうな印象の男性、活発そうなショートカットの女性、最後に疲れた顔をした眼鏡の男性も出てきた。
「所長~、一体なにごと……あ~、そっか、今日ウドさんが帰る日か。遠い所をお疲れ様です。俺はケントっていうんで、よろしく」
「ウドさんおかえりなさい! それといらっしゃいませ! ウドさんのご家族ですよね? 私はキリカって言います!」
「……どうも、ミヤビと申します」
俺達がここに来る話は聞いていたようで、彼らは俺と母を見るなり状況を把握していた。
こちらも挨拶と簡単な自己紹介をすると、イワオさんが笑顔で頷く。
「よし。これで顔合わせは済んだな」
「丁度皆集まっていたタイミングで良かったな。
そうだ、引越しの荷物が届いてますよ。運ぶの手伝いましょうか?」
ケントさんが親切にそう申し出てくれて、さらにキリカさんとミヤビさんも後に続き、俺達を歓迎してくれていることが伝わる。
「私はウノ君と少しお話してもいいかしら? 怪我をしたと聞いているし、ここは街から距離があるから。もちろんウノ君が嫌でなければだけど」
「嫌じゃありません。診察、よろしくお願いします。シズカ先生」
ここは街から距離があるので、気軽に病院には行けない。体調のことで何かあった場合、真っ先に頼るのは彼女だ。万が一ということもあるから、患者になる可能性がある人の状態を知っておきたいと考えるのは医師として当然だろう。
それに、子供かつ怪我人では引越しの役には立てない。無理をしても邪魔になるだけだ。
「それでは息子さんをお預かりしますね。
ウノ君、お菓子もあるから、診察が終わったら食べましょうか」
「はい。いただきます」
……とりあえず、ここの人たちは皆いい人そうでよかった。