【AI利用実験中】ポケモン世界に転生したら、旅どころではなかった 作:うどん風スープパスタ
翌日
「ウノ! いっぱい採れたぞ!」
「カゴの実の他にも色々見つけたぜ!」
「これも一緒に埋めてみるといいよ」
昨日相談したばかりなのに早くも父、ケントさん、キリカさんの3人が、フィールドワークのついでに沢山のきのみを持ち帰ってきてくれた。
「おやおや大量だね。ならばさっそく植えてみようか!」
「場所は準備してありますよ」
さらにその間、イワオさんとミヤビさんは俺達の家の裏に杭を打って縄を張り、地面を耕して“ふかふかなつち”にするのを手伝ってくれていた。
こうして今回植えることになったのは、ミニーブの好物であるカゴの実4つと、クラボ、モモン、チーゴ、ナナシを1つずつ。合計8個のきのみだ。
『ウノ、見てるか? 皆が手伝ってくれてるぞ』
(うん……畑、できてる)
『畑づくりは俺達の体じゃ難しいけど、ここからの世話は少しずつやっていこうな』
(かんばる)
ちゃんと会話が成り立つ。それだけでも進歩を感じる。
このまま少しずつ、ウノが元気になることを祈ろう。
……
…………
………………
さらに次の日
(芽が出た!)
『……早すぎないか?』
確かにゲームでは植えた翌日に芽が出てたけどさ……おかしくない? 偶然か? と思ってホウエン出身のキリカさんに聞いてみたが、きのみなら1日で芽が出るのは普通だそうだ。
「きのみを育てるのが初めてだと驚くわよね。きのみは普通の農作物と違って、成長が早いのよ」
「土と水だけで育つ上に、成長が早い……きのみがあれば、食料問題とか解決できるのでは?」
「確かに成長は早いけど、昨日も話したようにきのみは人工的に育てると自生したものより弱くなってしまうの。具体的には幹が細く、実をつける数は圧倒的に少なく、実を収穫すると枯れてしまう。実をつけるから木と呼ばれているけど、植物としては草に近いのよ。
自生する木はきのみをポケモンが食べて、
(そうなんだ……!)
ゲームの仕様にそれっぽい理由をこじつけた感じがするけど……ウノの反応が良くなっているからいいか。
……
…………
………………
そして3日後。
1日で出た芽はぐんぐんと伸びて、俺達の背を超える細長い木となり、その枝に拳ほどの実をつけていた。
(凄い! もう実がなった!)
『話には聞いてはいても、実際に見るとやっぱり驚くな……』
(早く取ろう!)
ウノが急かすので、一番近くのカゴの実を取ってみる。杖を伸ばして、枝を引き寄せ、丁寧に根元から……よし、っ!?
「嘘、枯れた!?」
(びっくりした……)
なんと、きのみを取った木は気の抜けた風船のようにしおれてしまった。幻でも見ていたのかと思ったが、手に残るカゴの実が、目の前に木が存在していた事実を示している。
『枯れた、しかもそのまま抜けて、地面が植える前の状態に戻ってる』
(ゲームと同じだね)
『実際に見ると違和感が凄いな……でもそうか、これだから空いた場所にきのみを植えられるわけか』
(早速、植えてみよう)
とはいっても、植えられるのは手元にあるカゴの実のみ。
さっきの木になっていたのはこの1つだけだったので、結果的にプラマイゼロだ。
『隣の木には2つあるけど、それでも1個か。生産性が低いな』
(……やっぱり、こやしがないとダメなのかな?)
マズイ! せっかくウノが興味を持ったのに、これで飽きたりしたら水の泡だ。
『ウノ! だったら、なんとかして収穫量を増やせないかやってみないか?』
(なんとかって、どうするの? サノ)
『そうだな……たとえばこやしを自作してみるってのは、体力的に難しいか……ポケモンの糞が材料とは聞いていたし、前世の堆肥の作り方なら知識だけはあるから試してみても良いかもしれないけど……ん?』
そういえば、ゲームに草ポケモンの技で花を育ててる花屋がなかったっけ?
『ウノ、覚えてないか?』
(……あった気がする。たぶん、剣盾のどこかの街。うちの花は“せいちょう”で育てているから大きい、だったかな?)
『それだ! 花が育てられるならきのみだって育てられるかもしれない!』
(! キリカさんも植物としては草に近い、って言ってた!)
『そうだな! それに“せいちょう”ならミニーブが使えたはずだ』
(頼んでみよう!)
どうやらウノの興味を引き続けることに成功したようだ。
……
…………
………………
さらに3日後。
「ウノ君、すごいじゃない!」
「立派な実が沢山ついてるわねぇ」
「うん……」
なんと、苦しまぎれの提案が成功した。まだ細くはあるけれど、全ての木が前回よりは太い。さらに結実したきのみは10個前後、しかも大きめのものが実っている。初回と比べれば大豊作と言えるだろう。
「ミニーブが頑張ってくれた」
「ミッ!」
「ミニーブも頑張ったね。えらいえらい」
「ミ~」
「仕事を褒められて、この子も嬉しそうねぇ」
シズカ先生の言う通り、ミニーブはキリカさんに褒められてご満悦。だがその後ろで、父とイワオさんが首をかしげている。
「ウド君、あの畑に何か特別な事でもしたかい? やけにきのみの数が多いんだが」
「ウノに確認しましたが、ミニーブにせいちょうを使わせただけだそうです。以前、どこかでそうやって大きな花を育てている花屋の話を聞いたことがあったとかで、好きにやらせていたんですが……僕達が手伝いで傍について見ていた限り、本当にそれだけです。
今のウノだと隠れて何かできるとも思えませんし……」
「そうだろうねぇ……でも実際に実の数は多い。調べた限りでは、肥料を与えても人工栽培ではこんなには実らないはずだ。せいちょうがそんなに効果的だったのか……ちょっと本腰を入れて調べてみようか」
「いくつかサンプルも取っておきましょう」
どうやら、今回のきのみの成長は自然環境の研究者の意欲を刺激したらしい。
『ウノ、父さんたちがあんな話してるけど、なにか心当たりあるか?』
(ある)
『だよなぁ……って、あるのか!?』
(たぶん、ミニーブの特性)
『特性? ああ! “しゅうかく”か!』
特性とはポケモンの種類ごとに持っている、自動的に発動する能力の事。
ミニーブの場合は眠り状態から早く復帰する“はやおき”という特性を持つ個体が多いが、稀にターン終了時に自分が最後に使用したきのみが通常50%、にほんばれ時は100%の確率で元に戻る“しゅうかく”を持っている個体がいる。
前世で“夢特性”と呼ばれていた珍しい特性だが……うちのミニーブはこの夢特性なのだ。
『いや、でもしゅうかくは使ったきのみを元に戻す特性であって、収穫量を増やす特性じゃなかっただろ』
(隠し効果として、先頭にしておくと草タイプのポケモンとの遭遇率が50%上昇したはず)
『……そういや、そんな仕様もあったな。図鑑とかに書かれていない効果が発生するやつ』
(あとはゲームのシステム的には存在しなかったけど、現実的に考えたら食べたきのみが確率で元の状態に戻る方がおかしくない? “はんすう”とかならまだ分かるけど)
『確かに。ド正論過ぎて否定できない……きのみが元に戻るのに比べたら、収穫量が増える方がよっぽど納得しやすいか。
ポケモン自体が不思議だし、超能力を使う奴もいるからワンチャン元に戻ってもおかしくないけど……バトル中やエンカウント関係だけじゃなくて、フィールドで効果のある特性もあったもんなぁ……“ほのおのからだ”とか』
(物理技を受けると相手を火傷にする効果と、卵の孵化にかかる歩数の半減だね。あとは野生ポケモンとの遭遇率低下や増加、特定の性格や性別、タイプやレベルを出やすくするとか、バトル中でなくても効果が発生する特性はある。
ゲームでは存在しなくても、現実になると効果が出た。あるいはミニーブがせいちょうを使ったことで、ポケモンの力と一緒に特性が影響した、とか?)
『ないとは言いきれないな』
2人で1つの頭をしばらく悩ませた結果、最終的に俺達は首をかしげている父とイワオさんに特性の話をする事にした。ただし前世のシステム的なことは除外して、ミニーブが収穫量を上げる特性を持っているのではないか? という形で。
「面白い着眼点だね、ウノ君。どうしてそう思ったんだい?」
「えっと……まず、ミニーブの特性は“はやおき”だと言われています。でも、前から僕のミニーブの特性は違う気がしていて」
これは本当。ミニーブが夢特性である事実に気づいたのは、ウノ少年がまだアカデミーに通学していた頃の事だ。
当時、クラスには動けない相手を一方的にボコボコにするのが好きな奴がいて、そいつはバトルの授業で“さいみんじゅつ”を多用していた。その被害者はウノ少年も含めて大勢、中にはウノ少年と同じくミニーブを使っていた子も何人かいる。
その際、他の生徒が持っていたミニーブと比較して、うちのミニーブだけがやけに起きるのが遅いことに気づいたのだ。1回や2回なら偶然かとも思うが、何度も続けば違和感は覚えたし、おそらく他の子供達も薄々気づいていたと思う。
さいみんじゅつを多用する奴も最初はともかく、何度も相手にするうちに経験則で“面白くない”と思ったようで、ミニーブを対象にすることは段々と減っていった。唯一、起きるのが遅かったうちの子だけを除いて。
「そんなことがあったのか……ウノ君がミニーブの特性に着目した根拠は理解した。研究というのは何事もそういった小さなきっかけから仮説を立て、実験を繰り返して得たデータを元に真実を解き明かしていくものだ。
私としても興味深いので実験や調査をしてみたいが、残念ながら我々はミニーブに詳しくないからなぁ……」
「パルデア出身として言えば、ポケモンの専門的な質問ならオレンジアカデミーに問い合わせるのが第一の選択肢なんですが……正直、あそこに頼りたくはないですね。親として、今はまだ関わりたくない」
「特性については置いておいて、とりあえず“せいちょう”が植物の生育に影響する事から確認しませんか? 私のワタッコも使えますから、協力できますよ。あとミヤビ君もウツボットがいるから協力してくれるかも。
他のポケモンでの実験でせいちょうの効果が確認できたら、実の付き方や数の差をミニーブちゃんの育てた木のデータと比較して、差異が確認できればミニーブちゃん固有の何かがあると推定できると思います」
「そうだね。個人的な興味でやるのだから、焦らずのんびりとやっていこうか」
……なにやら、大事になってきた気がする……
『なんか変なことになってきたな』
(別に、いい。それよりきのみをもっと育てたい。もっと沢山、実をつける方法はないかな? 肥料がなくても他の工夫でどうにかできそうだから)
『大人達も嫌々やるわけじゃなさそうだしな。しかし、実をつける方法……そういえば、昔動画サイトで流れてきた動画に、果樹の育て方の方法があった気がする。たしか、成長の途中で上に伸びる枝を曲げて、地面と水平にするんだったかな?
そうすることで花芽が付きやすくなったりするとか、実った果実に手が届きやすくして作業効率を上げるとか、より多くの枝の葉に日光が当たるようにするっていう理由もあったかな……
ってか、果樹の育て方の動画ならこっちでも探せばあるだろ。バナナとかリンゴとか普通にあるし』
(探そう! 参考になるかも!)
偶然のおかげもあったけれど……今回の成功はウノ少年にとって、きのみへの興味をさらに燃え上がらせる結果となったようだ。彼に早く早くと急かされながら、俺は道具を片付けて大人達に一言告げてから部屋に向かった。