【AI利用実験中】ポケモン世界に転生したら、旅どころではなかった 作:うどん風スープパスタ
翌朝
~食堂~
昨日はたった1試合だけど、バトルをして疲れていたのだろう。夜は早く寝て朝までぐっすり、起きたのは朝食の時間ギリギリで少し慌てた。
「ゆっくりでいいから、よく噛んで食べなさい」
笑いながら母さんが俺の朝食を持ってきてくれる。今日のメニューはパンとコーンスープにサラダとベーコンエッグ。シンプルだが栄養バランスがいいメニュー。何より作っているシズカ先生と母さんが料理上手なので、とても美味しい。
「あっ、そうだウノ。シズカ先生からの伝言で、食べ終わって30分ぐらいしてから来てほしいそうよ。食堂の後片付けもあるから」
「わかった」
バトルから一晩経った後の様子が知りたいのだろうか? まあ行ってみればわかるだろう。とにかく今は目の前の朝食を食べてしまおう。
……
…………
………………
約束通り、食後に医務室にいた先生から話を聞いたところ、その内容は予想していたものとは違った。
「あのウパーが元気になったんですか?」
「ええ、初期対応が間に合ったから、回復後のリハビリも早く終わったそうよ。今はもうすっかり元気になったって、ポケモンセンターのジョーイさんが言っていたわ」
「それはよかった。本当に」
あの騒動の後、傷だらけのウパーは状態が安定してから街のポケモンセンターに送られたと聞いている。ただ、俺への配慮として大人たちは話題にしなかったので、俺もあまり聞かずにいた。
どこまで回復するかもわからなかったし、話題にしにくかったのもあると思うけれど……こうして元気になったことを聞くと、やはり嬉しいし安心できる。
「それでウノ君と話したいのは、これからあのウパーをどうするか? ということなの。あのウパーはウノ君のポケモンとして登録されているから」
「ああ……」
パニックを起こして気絶していたから、正直実感がないのだけれど……あのウパーは俺のポケモンとして登録されている。
治療に関しては緊急的な措置として、シズカ先生の判断で移送と治療の方針を決めて貰ったけれど、回復した後の処遇には所有者である俺の判断と意思表示が必要なのだろう。
「えっと、どうするのがいいのでしょうか?」
「ウノ君が選べる選択肢は2つあるわ。まず1つはウノ君がこのままトレーナーとして引き取ること。もう1つは、ウパーの所有権を手放して保護施設に送ることね。
傷ついた野生のポケモンを保護した場合、通常は治療後に元居た場所へ帰すという選択肢もあるのだけれど……あのウパーは色違いで最初から群れを追い出されたみたいだから、おそらく群れには戻れないわ」
環境的には、生まれ育って慣れ親しんだこの付近で生活する方が良いけれど、ただ野に放つだけではまた同じことになってしまう可能性が高い。
色違いでなくとも保護したポケモンに人の匂いがついてしまって、必ずしも野生の群れに戻れるというわけではないのだから、あのウパーだとさらにハイリスク。それなら俺か施設、どちらにしても人の保護を受けた方が安全だというのも分かる。
『……ウノ、どうする?』
(……どっちがあの子にとって良いことかな?)
『保護施設っていうのがどんなところかわからないからなぁ……施設によってもピンキリだろうし、専門家がたくさんいて健やかに育ててくれるならいいけど』
(前世のニュースで、動物の保護団体の問題はいくつもあったよね……)
『何かの動画で見たな……ポケモンのアニメでも保護団体や保護活動をしている人の話はあったけど、ロケット団とかポケモンハンターとか、違法な移動している連中もいるから絶対安全とは言い切れないし……
そう考えると、俺たちの目の届くところに来てもらう方が、個人的には安心かな? 世話に関しては大人たちを頼ることになるかもしれないけど、幸い今の手持ちはミニーブしかいないから、フルパで旅をするのと比べたら負担も少ないと思う』
(そうだね。よくわからないまま知らないところに送られるより、慣れ親しんだ環境の方がいいと思う)
『なら、そういうことで話を進めてもらおうか。もしもここでの生活でウパーに悪影響が出るようならその時に改めて、頭を下げて保護施設を頼らせてもらおう』
ウノ少年との相談を終えて、ウパーを引き取ることを伝えると、シズカ先生は朗らかに笑った。
「分かったわ。それじゃ引き取ることを先方に伝えておくわね。早ければ3日で向こうの最終検査と退院手続きが終わると思うから、連絡が来たら私が引き取りに行くわ」
「よろしくお願いします」
こうして俺達に、新たな仲間ができることが決まった。
……
…………
………………
そして3日後、お迎えの日。
昼頃になり、朝から街に出ていたシズカ先生が帰ってきた。
そして手渡されるモンスターボール。やはり、少し緊張する。
一度深呼吸をして、ボールを投げた。
「ウパー!」
元気な声で鳴きながら飛び出してくるウパー。記憶の中では体液と泥にまみれてまだら模様になっていたが、今は全身が綺麗な薄ピンク色だ。腹部には小さくない傷跡が残っているが、痛みはないのだろう。
ここで周囲を見渡すようにくるくると回っていたウパーが、俺を見てピタリと動きを止めた。
「……」
じっと俺の顔を見つめている……愛嬌はあるが、どこかボーっとした顔からは何を考えているかが読み取れない。怖がっているのだろうか? 少し屈んで視線を合わせたらどうかと思ったが、足が不自由なためにそれもできない。
どうしようかと悩んでいると、ウパーが飛び跳ねながらこちらに近づいてくる。
「ウ? ウパッ? ウパー!」
「うわっ!?」
一歩、また一歩と近づくにつれて勢いがつき、最後には俺の胸に飛び込んできた。慌ててウパーをキャッチすると、初対面なのに体をこすりつけてくる。これは、なつかれているとしか思えない。ほぼ初対面なのに。
「あらあら、きっとこの子はウノ君が自分を助けてくれた事を理解しているのね」
「そう、なの?」
「ウパッ!」
そうだと言わんばかりに、ウパーは大きな声を上げた。
……俺というトレーナーに馴染んでくれるだろうかという心配は、しなくて良さそうだ。
「これからよろしくね」
「ウパッ!」
……
…………
………………
「さて、始めましょうか」
ところ変わって、ログハウスのキッチン。いきなりだが、今日はきのみを使って料理をする。ウパーが家にやってきたので、ささやかだが歓迎の意味も込めて。もちろん俺達一人では満足に料理できないので、母さんとシズカ先生に手伝ってもらう。
「今日のメインはガラルカレーだったわよね?」
「基本のレシピはネットで見つけてプリントしておきました。これならきのみも大量に消費できそうです」
「なるほど……このカレーをベースにして、好みで色々なきのみを入れるのね?」
「こだわる人だと入れるきのみに合わせて香辛料の配合も変えるみたいだけど、初めてだと難しそうね。下手にアレンジせず、入れるきのみだけ考えましょう」
今回はウパーの歓迎会、ウパーの好みに合わせたい。
ということで、まずは素材であるきのみの味見をすることになった。
『うん、おいしい。モモンは汁気が多くて甘味が強めだな』
(普通に桃、だけど若干薄いかも?)
『次はナナシ。すっぱいけど爽やかだから嫌な酸っぱさじゃない』
(梨っぽいけど、酸味が強いからか柑橘っぽくもあるね)
『クラボは、トウガラシの辛みにフルーティな香りがするな』
(チリペッパーにサクランボ風の香りだけがついた感じが近いかな)
『チーゴは確かに苦いけどコーヒー系の苦みだな。濃くもないから食べやすい』
(……僕は砂糖とミルクが欲しいかも……)
『カゴは……なんだろうこの渋さ……レーズンとかプルーンみたいな感じ?』
(たぶん、ポリフェノール?)
そんな話をしながら、同じく味見をしているウパーの様子を見てみると、
「ウパッ! ウパパッ!!」
どうやらこのウパーは好き嫌いがないタイプだったみたいだ。全部のお皿に頭を突っ込んで、貪るように食べている。
「お腹がすいていたのかな?」
「……それだけじゃないと思うわ。
治療をしてくれたジョーイさんから聞いたのだけれど、この子は怪我だけじゃなくて栄養失調も酷かったらしいの。野生だった頃はろくに食事もできていなかったみたいよ」
「! そうですか……シズカ先生、今はもう大丈夫ですか?」
「ええ、そちらは栄養剤の投与で改善できたわ。今は食べられなかった反動で、食べられるときに食べようとしているんだと思うの。これからは食べ過ぎにならない範囲で、お腹いっぱい食べさせてあげましょうね」
「はい!」
ウパーのためにも頑張ってカレーを作ろう!
(でも、ウパーがどの味でも食べるなら、カレーはどうしようか?)
『ん~……ウノ、俺の感覚で選んでいいか?』
(あっ、うん、いいかも。サノは前世で料理人だったんだもんね)
『ただの飲食店バイトだよ。歴は長かったし調理師免許も持ってはいたけどな』
料理人と呼べるほどではないが、バイトを掛け持ちして色々な店に行っていた。色々な店のまかないを食べて自然とセンスが磨かれたのか、たまに店の人から新メニュー考案の相談を受けたり、味見に呼ばれていたこともある。
ぶっちゃけ細かい味の調整なんて考えず、これとこれを入れたら美味くなりそう! という直感的な意見しか言ったことはないけれど、それなりに頼りにされていたから自信はある。後のことは、母さんに任せれば何とかなるだろう。
ということで、きのみを選ぶ。
今日はカレーだから……やっぱり辛い方が美味いよな? ってことでクラボは確定。あと隠し味にリンゴとかチョコとかコーヒーを入れるレシピがあったし、モモンとチーゴも入れよう。ナナシとカゴは、カレーにはナシかな。
甘味、酸味、辛み、苦み、酸味。ゲーム的に言えばそれぞれの味に+10。カレーに入れるきのみは10個以内を推奨とレシピに書かれている。現実ではそれ以上入れることもできるだろうけど、今はレシピに従おう。
「決めた! クラボを多めに6個、モモン2個、チーゴ2個にする!」
「分かったわ、それじゃ早速作ってみましょう」
母さんが俺の選んだきのみをカットしてタネを取る。その手つきは一切の淀みがない、本物のプロの技。実はウノ少年の母は、結婚前はテーブルシティーのレストランに務めていた経歴のある本物の料理人。セルクルタウンではジムリーダーと私的な交流もあったのだ。
……そんなことを考えているうちに調理は進み、シズカ先生の補助もあり、あっという間にカレーは完成。味見をしてみると、
「!」
「あら、おいしいわね」
「ちょっと辛みが強いけど、深みがあるわ」
母さん達の腕もあって、最初からかなり美味い“からくちカレー”ができた!
グレードは不明だけど、将来性も期待してダイオウドウ級くらいあるんじゃないか?
『どうだ? ウノ、結構いけるだろう』
(確かに味はおいしい。けど、辛くてあまり食べられないかも……)
『ん? そうか、子供の舌には辛いか。ミニーブも辛い味は苦手だしな……だったら』
「シズカ先生、牛乳はありますか?」
「モーモーミルクなら冷蔵庫にあるわよ。飲むの?」
「辛いものが苦手な人のために、モモンとナナシを混ぜてミキサーにかけたらどうかと思って」
強い辛味を緩和するには、水より牛乳がいい。そして前世のカレーの本場であるインドには“ラッシー”というヨーグルトドリンクが存在した。辛いカレーに爽やかな甘みと酸味を加えたラッシー風の牛乳ドリンクを合わせてみると──
「!!」
「これは……癖になりそうな組み合わせね!」
「交互に食べると手が止まらないわ。ウノにはこんなセンスもあったのね」
『ウノ、どうだ?』
(うん! これならいっぱい食べられる)
母にも、シズカ先生にも、そして何よりウノ少年にも満足してもらえるメニューができた!
このカレーなら、ウパーや他の皆さんにもきっと喜んでもらえるだろう。
なお、作業がスムーズに進んだことで夕食までには時間があったので、この後結局“あまくちカレー”と“しぶくちカレー”も作るのだった。