第11話 『一千万ポイント』
障害物競走が終わった。
だが。
俺の胃痛はこれからが本番だった。
◇◇◇
大型モニターへ順位が表示される。
第一位 七瀬刃人
自分の名前を見て。
深いため息を吐いた。
「終わったな……」
本日何度目か分からない台詞だった。
◇◇◇
「だから始まったばかりだろ」
隣で心操が呆れている。
だが。
こいつは分かっていない。
一位がどれだけ面倒か。
◇◇◇
原作を知っている俺は知っている。
次の競技。
騎馬戦。
問題は。
一位のポイントだ。
◇◇◇
『さぁ続いて第二種目ォォォ!!』
プレゼント・マイクの声が響く。
観客席が盛り上がる。
大型モニターへルール説明が映し出された。
◇◇◇
騎馬戦。
チーム戦。
ポイントの奪い合い。
ここまでは普通だ。
問題は次だった。
◇◇◇
『第一位通過者のポイントはァァァ!!』
会場が静まり返る。
そして。
『一千万ポイントォォォォ!!』
◇◇◇
大歓声。
大歓声の後。
全員の視線が俺へ向いた。
◇◇◇
「ほらな」
「なるほど」
心操が納得した顔をする。
「終わったな」
「終わったな」
初めて意見が一致した。
◇◇◇
一千万ポイント。
つまり。
俺を倒せばほぼ勝ち。
そういうことだった。
◇◇◇
周囲を見る。
目が合う。
また別の奴とも目が合う。
さらに目が合う。
全員。
獲物を見る目だった。
◇◇◇
「帰りたい」
「無理だ」
「知ってる」
◇◇◇
チーム編成時間。
生徒達が動き始める。
仲間探し。
戦力集め。
上位陣への勧誘。
会場が一気に騒がしくなった。
◇◇◇
だが。
俺の周囲には誰も来ない。
◇◇◇
正確には。
来たがらない。
◇◇◇
一千万ポイント。
魅力的。
その代わり。
危険すぎる。
◇◇◇
「当然か」
思わず呟く。
俺でも組みたくない。
◇◇◇
その時だった。
「なぁ」
心操が近付いてくる。
「組むか?」
◇◇◇
少し驚いた。
◇◇◇
「いいのか?」
「どうせ他に誘われねぇ」
「それはそうだ」
「お前もだろ」
「それもそうだ」
◇◇◇
お互い少しだけ笑った。
気楽だった。
心操と話している時は。
◇◇◇
「よろしく頼む」
「こちらこそ」
これで二人。
だがまだ足りない。
◇◇◇
その時。
元気な声が聞こえた。
「見つけた!」
振り向く。
◇◇◇
発目明だった。
◇◇◇
サポート科。
原作でも有名な発明家。
いや。
発明狂だ。
◇◇◇
「君達組まない?」
「理由は」
「宣伝!」
即答だった。
◇◇◇
実に発目らしい。
◇◇◇
「私の発明を全国へ見せたい!」
「正直だな」
「褒めてる?」
「多分違う」
◇◇◇
発目は楽しそうに笑った。
◇◇◇
こうして。
俺。
心操。
発目。
三人が揃った。
◇◇◇
「あと一人だな」
心操が言う。
◇◇◇
少し考える。
そして。
結論を出した。
◇◇◇
「いらない」
◇◇◇
沈黙。
◇◇◇
「は?」
「は?」
二人の声が重なった。
◇◇◇
「いや待て」
心操が言う。
「探せよ」
◇◇◇
「面倒だ」
◇◇◇
即答だった。
◇◇◇
発目が吹き出した。
「本当にそればっかりだね!」
◇◇◇
仕方ないだろう。
知らない人間と組むより。
今いるメンバーの方が遥かに気楽だ。
◇◇◇
「三人で十分だ」
「根拠は?」
心操が聞く。
◇◇◇
俺は少し考えた。
そして。
正直に答える。
◇◇◇
「ない」
◇◇◇
「ダメじゃねぇか!」
心操が突っ込む。
◇◇◇
発目は爆笑していた。
◇◇◇
だが。
不思議と悪くない。
◇◇◇
発目は騒がしい。
心操は面倒見が良い。
そして。
二人とも居心地が悪くない。
◇◇◇
友達。
とまではまだ言えない。
だが。
少なくとも嫌いではなかった。
◇◇◇
競技開始直前。
各チームが整列する。
◇◇◇
一千万ポイント。
その文字が俺の鉢巻に表示されている。
目立つ。
非常に。
◇◇◇
「全員狙ってるな」
心操が周囲を見る。
◇◇◇
当然だ。
俺でも狙う。
◇◇◇
「逃げ切れると思うか?」
心操が聞いてくる。
◇◇◇
少し考える。
そして首を横に振った。
◇◇◇
「無理だろうな」
◇◇◇
正直な答えだった。
◇◇◇
一千万ポイントを持ったままでは勝てない。
絶対に。
◇◇◇
なら。
別の方法を考えるしかない。
◇◇◇
『位置につけェェェ!!』
プレゼント・マイクの声が会場へ響く。
◇◇◇
全チーム整列。
観客席も盛り上がっている。
孤児院のみんなも見ている。
◇◇◇
子供達は楽しそうだった。
院長も笑っている。
◇◇◇
なら。
少しだけ頑張るか。
◇◇◇
ただし。
平穏のために。
◇◇◇
『STARTォォォォォ!!』
開始の号令が響く。
◇◇◇
その瞬間。
全チームが一斉に動き出した。
狙いは一つ。
◇◇◇
一千万ポイントを持つ七瀬チーム。
◇◇◇
そして俺は。
開始と同時に。
全員が予想もしなかった行動を取ることになる。
第11話 完