七武装輪転の転生者は平穏に暮らしたい   作:ポーンδ

13 / 37
昼休み

第13話 『昼休み』

 

騎馬戦が終わった。

 

正直。

 

疲れた。

 

肉体的ではない。

 

精神的にだ。

 

◇◇◇

 

障害物競走一位。

 

騎馬戦二位。

 

結果だけ見れば十分すぎる。

 

だが。

 

俺にとって問題はそこではない。

 

目立ったことだった。

 

とてつもなく。

 

全国放送で。

 

思い切り。

 

「終わったな……」

 

思わず呟く。

 

◇◇◇

 

「まだ終わってねぇよ」

 

隣で心操が呆れた顔をする。

 

「個人戦が残ってる」

 

「だから終わったんだ」

 

「意味分からん」

 

そうだろう。

 

普通はそう思う。

 

◇◇◇

 

だが俺からすると違う。

 

障害物競走で目立った。

 

騎馬戦でも目立った。

 

個人戦なんて始まったらさらに目立つ。

 

本当に最悪だった。

 

◇◇◇

 

昼休憩。

 

選手達は食事や休憩を取っている。

 

観客席も盛り上がっていた。

 

俺はため息を吐く。

 

「帰りたい」

 

「毎回それだな」

 

心操がスポーツドリンクを投げてきた。

 

受け取る。

 

◇◇◇

 

「ありがと」

 

「珍しいな」

 

「何がだ」

 

「礼を言った」

 

失礼だった。

 

◇◇◇

 

だが少しだけ笑う。

 

心操も笑った。

 

悪くない。

 

こういう時間は。

 

◇◇◇

 

「お兄ちゃーん!!」

 

聞き慣れた声が響く。

 

振り返る。

 

孤児院のみんなだった。

 

◇◇◇

 

「すごかった!」

 

「飛んでた!」

 

「一位だった!」

 

「次も勝って!」

 

◇◇◇

 

囲まれる。

 

完全包囲だった。

 

◇◇◇

 

「落ち着け」

 

「無理!」

 

「かっこよかった!」

 

◇◇◇

 

子供達は興奮していた。

 

後ろでは院長が苦笑している。

 

◇◇◇

 

「人気者だな」

 

心操が言う。

 

◇◇◇

 

「勘弁してほしい」

 

本音だった。

 

◇◇◇

 

その時。

 

「お疲れ様です」

 

アルトリアが近付いてきた。

 

◇◇◇

 

「疲れていませんか?」

 

「少しな」

 

「そうでしょうね」

 

◇◇◇

 

アルトリアが飲み物を差し出す。

 

ありがたく受け取る。

 

◇◇◇

 

続いて。

 

「刃人さん」

 

ナイチンゲールもやって来た。

 

◇◇◇

 

「怪我はしていませんか?」

 

「してない」

 

「本当に?」

 

「本当に」

 

◇◇◇

 

ナイチンゲールは少し疑わしそうな顔をした。

 

信用が無い。

 

心外だった。

 

◇◇◇

 

だが。

 

その様子を見ていた人物がいた。

 

◇◇◇

 

少し離れた場所。

 

ヒーロー科控室付近。

 

◇◇◇

 

峯田実だった。

 

◇◇◇

 

「なぁ」

 

震える声で言う。

 

◇◇◇

 

「なんでだ?」

 

◇◇◇

 

上鳴が振り返る。

 

「何が?」

 

◇◇◇

 

峯田は指を差した。

 

そこには。

 

俺と。

 

アルトリア。

 

ナイチンゲール。

 

そして子供達がいる。

 

◇◇◇

 

「なんでアイツあんな美少女と美人なお姉さんに囲まれてんだよ!?」

 

◇◇◇

 

絶叫だった。

 

◇◇◇

 

周囲の男子がそちらを見る。

 

◇◇◇

 

「普通科だぞ!?」

 

「しかも一位取ってるぞ!?」

 

「意味分かんねぇ!!」

 

◇◇◇

 

切島が苦笑した。

 

「知らねぇよ」

 

◇◇◇

 

瀬呂も頷く。

 

「まぁ羨ましいけどな」

 

◇◇◇

 

「羨ましいじゃねぇ!」

 

峯田が叫ぶ。

 

◇◇◇

 

「俺なんか話したこともねぇのに!!」

 

◇◇◇

 

「知らねぇって」

 

上鳴が呆れていた。

 

◇◇◇

 

一方。

 

こちらは平和だった。

 

◇◇◇

 

「次も頑張ってくださいね」

 

アルトリアが言う。

 

◇◇◇

 

「できれば頑張りたくない」

 

◇◇◇

 

「無理です」

 

即答だった。

 

◇◇◇

 

ナイチンゲールも微笑む。

 

◇◇◇

 

「期待されていますから」

 

◇◇◇

 

子供達が何度も頷く。

 

重い。

 

期待が重い。

 

◇◇◇

 

その時。

 

遠くで峯田が膝をついた。

 

◇◇◇

 

「人生不公平だろ……」

 

◇◇◇

 

心底悔しそうだった。

 

◇◇◇

 

「何やってるんだあいつ」

 

俺が首を傾げる。

 

◇◇◇

 

「さぁ?」

 

アルトリアも分からない。

 

◇◇◇

 

「熱中症ではないでしょうか」

 

ナイチンゲールが真面目に分析した。

 

◇◇◇

 

「違うわぁぁぁぁ!!」

 

◇◇◇

 

峰田の悲痛な叫びが響く。

 

周囲が笑った。

 

◇◇◇

 

俺だけ状況が分かっていなかった。

 

◇◇◇

 

やがて昼休憩終了のアナウンスが流れる。

 

観客席が再びざわめき始めた。

 

◇◇◇

 

個人戦。

 

本番が始まる。

 

◇◇◇

 

「行くか」

 

心操が立ち上がる。

 

◇◇◇

 

「ああ」

 

◇◇◇

 

俺も腰を上げた。

 

◇◇◇

 

その瞬間。

 

大型モニターへ対戦カードが表示される。

 

◇◇◇

 

第一試合。

 

七瀬刃人

 

VS

 

飯田天哉

 

◇◇◇

 

「うわぁ……」

 

思わず本音が漏れる。

 

◇◇◇

 

速い。

 

真面目。

 

真っ直ぐ。

 

そして強い。

 

◇◇◇

 

面倒な相手だった。

 

本当に。

 

◇◇◇

 

だが。

 

逃げるわけにもいかない。

 

◇◇◇

 

孤児院のみんなが見ている。

 

心操もいる。

 

アルトリアも。

 

ナイチンゲールも。

 

◇◇◇

 

なら。

 

少しくらいは頑張るか。

 

◇◇◇

 

そう思いながら。

 

俺は闘技場へ向かって歩き出した。

 

第13話 完

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。