第16話 『創造』
『START!!』
開始と同時。
ルーレットが回る。
黄金の盤面。
そして停止。
数字は三。
◇◇◇
光が収束する。
右手に現れたのは一本の釣竿。
《深海の釣竿》
◇◇◇
観客席がどよめいた。
「また釣竿だ!」
「アレ強いのか?」
「分からねぇ!」
◇◇◇
俺は肩を竦めた。
正直。
俺も最初はハズレだと思った。
だが違う。
この武装はかなり厄介だ。
◇◇◇
対する八百万は警戒していた。
創造。
即座に盾を生成する。
さらに金属棒。
捕縛ネット。
次々に武装を作り出していく。
◇◇◇
流石は推薦組。
動きに迷いがない。
◇◇◇
だが。
糸は既に放っていた。
◇◇◇
ビーチ・ボーイの糸は物体をすり抜ける。
盾も。
鎧も。
肉体すら。
◇◇◇
誰にも見えないまま。
糸は八百万の身体へ侵入する。
◇◇◇
その瞬間。
感覚が伝わった。
筋肉の収縮。
骨格。
重心移動。
心拍数。
呼吸。
血流。
全部だ。
◇◇◇
「なるほど」
◇◇◇
右へ動く。
その判断をした瞬間。
俺も右へ動いた。
◇◇◇
八百万が振るった金属棒が空を切る。
◇◇◇
観客席がざわつく。
「避けた!?」
「今の見えたのか!?」
◇◇◇
違う。
見ていた訳じゃない。
分かっただけだ。
◇◇◇
次。
八百万の腕が動く。
脂肪細胞が消費される。
筋肉の動きが変わる。
◇◇◇
創造する。
そう分かった。
◇◇◇
直後。
俺は釣竿を引いた。
◇◇◇
シュッ!!
◇◇◇
鋭いフックが腕を掠める。
◇◇◇
「あっ……!」
◇◇◇
八百万の集中が途切れる。
生成途中だった閃光弾が消えた。
◇◇◇
観客席がどよめく。
◇◇◇
「今何した!?」
「攻撃したのか!?」
◇◇◇
説明できる人間は少ない。
ビーチ・ボーイは見た目以上に分かりづらい能力だからだ。
◇◇◇
八百万の表情が変わる。
◇◇◇
読まれている。
◇◇◇
そう気付いたらしい。
◇◇◇
突撃。
後退。
フェイント。
創造。
◇◇◇
全て読まれる。
◇◇◇
なぜなら。
糸はまだ繋がっている。
◇◇◇
心臓の鼓動が速くなる。
呼吸が浅くなる。
体重移動が変わる。
創造前に筋肉が動く。
◇◇◇
全部分かる。
◇◇◇
まるで身体そのものが喋っているみたいに。
◇◇◇
「強いですね」
八百万が言った。
◇◇◇
「お前もな」
◇◇◇
本音だった。
創造は万能だ。
だからこそ。
本来ならまともにやり合いたくない。
◇◇◇
だが。
相性が悪かった。
◇◇◇
最後。
八百万が大型砲を生成しようとする。
◇◇◇
その瞬間。
俺は糸を引いた。
◇◇◇
身体が僅かに泳ぐ。
重心が崩れる。
◇◇◇
砲身生成失敗。
◇◇◇
そこへ。
フックが首元へ到達する。
◇◇◇
あと数センチ。
◇◇◇
沈黙。
◇◇◇
八百万は理解した。
負けたと。
◇◇◇
「……参りました」
◇◇◇
ミッドナイトが手を上げる。
◇◇◇
『勝者ァァァァ!!』
『七瀬刃人ォォォォ!!』
◇◇◇
歓声が響く。
◇◇◇
だが俺はため息を吐いた。
◇◇◇
また勝った。
また目立った。
◇◇◇
「帰りたい……」
◇◇◇
そう呟きながら大型モニターを見る。
そこには次の対戦カード。
七瀬刃人 VS 爆豪勝己
の文字が映し出されていた。
◇◇◇
「うわ……」
◇◇◇
今までで一番面倒な相手だった。
第16話 完