第17話 『爆心地』
準決勝。
七瀬刃人 VS 爆豪勝己。
その文字が大型モニターへ映し出された瞬間。
会場が爆発したような歓声に包まれた。
◇◇◇
「うわ……」
思わず本音が漏れる。
帰りたい。
本当に。
◇◇◇
だが現実は残酷だった。
逃げられない。
俺は重い足取りでフィールドへ向かった。
◇◇◇
反対側のゲート。
爆豪が出てくる。
凶悪な目付き。
獣みたいな威圧感。
そして何より。
圧倒的な闘志。
◇◇◇
強い。
今まで戦った相手の中でも間違いなく上位だ。
◇◇◇
「テメェ」
爆豪が睨む。
「ぶっ潰す」
◇◇◇
「そうか」
◇◇◇
「その反応腹立つんだよ!!」
◇◇◇
理不尽だった。
◇◇◇
観客席が笑う。
◇◇◇
『READY!!』
◇◇◇
開始の合図。
◇◇◇
七武装輪転。
ルーレットが回る。
カラカラカラカラ。
◇◇◇
止まった数字は。
『1』
◇◇◇
光が収束する。
右腕へ絡み付く銀色の鎖。
◇◇◇
《戒律の鎖》
◇◇◇
当たりだった。
相手が爆豪ならなおさら。
◇◇◇
『START!!』
◇◇◇
開幕。
爆豪が消えた。
◇◇◇
爆発。
加速。
突撃。
◇◇◇
ドォン!!
◇◇◇
衝撃波が地面を砕く。
◇◇◇
速い。
◇◇◇
鎖を振る。
受け流す。
避ける。
流す。
◇◇◇
正面から受けない。
受ける意味もない。
◇◇◇
「逃げてばっかじゃねぇか!!」
爆豪が叫ぶ。
◇◇◇
「そうだな」
◇◇◇
正面から殴り合うほど馬鹿じゃない。
◇◇◇
爆豪は強い。
だから慎重に削る。
それだけだった。
◇◇◇
ジャラッ。
◇◇◇
鎖が伸びる。
◇◇◇
爆豪が回避。
◇◇◇
また伸ばす。
◇◇◇
回避。
◇◇◇
さらに伸ばす。
◇◇◇
回避。
◇◇◇
観客席から見れば鬱陶しい攻防だった。
◇◇◇
だが。
問題ない。
目的は拘束じゃない。
◇◇◇
掠らせること。
それだけだった。
◇◇◇
腕。
肩。
脚。
◇◇◇
少しずつ。
確実に。
鎖が爆豪へ触れていく。
◇◇◇
「チッ!」
◇◇◇
爆豪が舌打ちした。
違和感を覚え始めたらしい。
◇◇◇
だが遅い。
◇◇◇
戒律の鎖が本当に恐ろしいのは拘束ではない。
◇◇◇
制約。
封印。
支配。
◇◇◇
徐々に獲物を追い込むこと。
◇◇◇
クラピカの鎖を元にした武装なら当然だった。
◇◇◇
「捕まえた」
◇◇◇
刃人が鎖を放つ。
◇◇◇
今度こそ。
そう思った。
◇◇◇
だが。
爆豪は避けなかった。
◇◇◇
「……は?」
◇◇◇
違和感。
◇◇◇
次の瞬間。
爆豪が笑った。
◇◇◇
獰猛に。
◇◇◇
「やっと引っ掛かったなァ!!」
◇◇◇
嫌な予感。
◇◇◇
爆豪の左腕がこちらを向く。
◇◇◇
「誘ってたんだよ!!」
◇◇◇
ドォォォォォォォン!!!
◇◇◇
凄まじい爆発。
◇◇◇
視界が真っ白になる。
◇◇◇
衝撃。
熱。
轟音。
◇◇◇
身体が吹き飛ぶ。
◇◇◇
地面へ激突。
◇◇◇
一回。
◇◇◇
二回。
◇◇◇
三回。
◇◇◇
何度も転がる。
◇◇◇
肺から空気が抜けた。
◇◇◇
呼吸ができない。
◇◇◇
痛い。
◇◇◇
転生して初めてだった。
◇◇◇
ここまでのダメージを受けたのは。
◇◇◇
観客席が静まり返る。
◇◇◇
「おい……」
「七瀬……」
◇◇◇
爆豪が肩で息をする。
◇◇◇
だが。
口元は笑っていた。
◇◇◇
「どうしたァ!!」
◇◇◇
「普通科の怪物!!」
◇◇◇
「終わりかよォ!!」
◇◇◇
立ち上がろうとする。
◇◇◇
身体が痛い。
◇◇◇
制服もボロボロだ。
◇◇◇
口の中に鉄の味がする。
◇◇◇
血。
◇◇◇
口元を拭う。
◇◇◇
赤かった。
◇◇◇
「効いたな」
◇◇◇
本音だった。
◇◇◇
爆豪の笑みが深くなる。
◇◇◇
「そうだろうなァ!!」
◇◇◇
「初めてだ」
◇◇◇
刃人が立ち上がる。
◇◇◇
「こんなダメージ受けたのは」
◇◇◇
会場がどよめく。
◇◇◇
それだけの爆発だった。
◇◇◇
だが。
倒れない。
◇◇◇
爆豪はさらに笑った。
◇◇◇
「なら倒れろ!!」
◇◇◇
爆発。
再加速。
◇◇◇
突撃。
◇◇◇
しかし。
◇◇◇
その瞬間。
◇◇◇
ジャララララララッ!!
◇◇◇
銀色の鎖が爆豪の身体へ絡み付いた。
◇◇◇
右腕。
左腕。
胴体。
脚。
◇◇◇
完全拘束。
◇◇◇
「なっ!?」
◇◇◇
爆豪の表情が変わる。
◇◇◇
「いつの間に……!」
◇◇◇
答えは簡単だった。
◇◇◇
ずっと前からだ。
◇◇◇
何度も掠らせた。
何度も触れた。
◇◇◇
全てこの瞬間のため。
◇◇◇
「壊れろォォォォ!!」
◇◇◇
爆豪が力任せに暴れる。
◇◇◇
爆発。
爆発。
爆発。
◇◇◇
だが。
鎖は壊れない。
◇◇◇
ウボォーギンですら破れなかった鎖。
◇◇◇
それが簡単に壊れる訳がなかった。
◇◇◇
刃人はゆっくり歩く。
◇◇◇
血を流しながら。
◇◇◇
一歩ずつ。
◇◇◇
爆豪の前へ。
◇◇◇
「お前は強い」
◇◇◇
本心だった。
◇◇◇
「だから」
◇◇◇
「正面からは戦わない」
◇◇◇
銀色の杭。
◇◇◇
鎖の先端を爆豪の額へ向ける。
◇◇◇
沈黙。
◇◇◇
数秒。
◇◇◇
爆豪は最後まで睨んでいた。
◇◇◇
だが。
勝負は決まっていた。
◇◇◇
「勝負あり!!」
◇◇◇
ミッドナイトの声が響く。
◇◇◇
次の瞬間。
会場が爆発した。
◇◇◇
『勝者ァァァァァ!!』
◇◇◇
『七瀬刃人ォォォォォ!!』
◇◇◇
歓声。
拍手。
絶叫。
◇◇◇
だが。
刃人はその場に座り込んだ。
◇◇◇
痛い。
◇◇◇
久しぶりに本気で。
◇◇◇
「……爆豪強すぎだろ」
◇◇◇
思わず漏れた本音に。
観客席から笑いが起きた。
◇◇◇
だが。
その顔は少しだけ満足そうだった。
◇◇◇
初めて。
本当に初めて。
◇◇◇
体育祭で。
七瀬刃人へ大きな傷を残した男。
◇◇◇
爆豪勝己。
◇◇◇
その名は確かに。
刃人の記憶へ刻まれた。
第17話 完