七武装輪転の転生者は平穏に暮らしたい   作:ポーンδ

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優勝者

第21話 『優勝者』

 

歓声が鳴り止まない。

 

雄英体育祭。

 

優勝。

 

その結果が大型モニターへ映し出されていた。

 

第一位 七瀬刃人

 

◇◇◇

 

「本当に優勝したのか……」

 

自分で言うのもなんだが実感がない。

 

◇◇◇

 

目標は優勝じゃなかった。

 

孤児院のみんなを喜ばせること。

 

それだけだった。

 

◇◇◇

 

だが。

 

結果として。

 

優勝してしまった。

 

◇◇◇

 

『優勝者ァァァ!!』

 

『普通科のダークホース!!』

 

『七瀬刃人ォォォォ!!』

 

◇◇◇

 

プレゼント・マイクの声が響く。

 

会場が再び揺れた。

 

◇◇◇

 

「帰りたい……」

 

◇◇◇

 

心からの本音だった。

 

◇◇◇

 

表彰式。

 

◇◇◇

 

中央の表彰台へ立つ。

 

視線が痛い。

 

◇◇◇

 

二位。

 

轟焦凍。

 

◇◇◇

 

三位。

 

爆豪勝己。

 

◇◇◇

 

なお爆豪は未だに不機嫌だった。

 

◇◇◇

 

「クソがァァァ!!」

 

◇◇◇

 

いつも通りで少し安心した。

 

◇◇◇

 

その時。

 

表彰者が現れる。

 

◇◇◇

 

オールマイト。

 

◇◇◇

 

会場が爆発した。

 

◇◇◇

 

「オールマイトだ!」

 

「本物だ!」

 

◇◇◇

 

歓声。

 

拍手。

 

熱狂。

 

◇◇◇

 

だが刃人の内心は違った。

 

◇◇◇

 

平和の象徴。

 

◇◇◇

 

そして。

 

未来で消える男。

 

◇◇◇

 

原作を知っているからこそ。

 

少し複雑だった。

 

◇◇◇

 

「おめでとう!」

 

◇◇◇

 

オールマイトが笑う。

 

◇◇◇

 

「ありがとうございます」

 

◇◇◇

 

握手。

 

◇◇◇

 

大きな手だった。

 

◇◇◇

 

「素晴らしい戦いだった!」

 

◇◇◇

 

「あまりそうは思いません」

 

◇◇◇

 

「何故だい?」

 

◇◇◇

 

「目立ったので」

 

◇◇◇

 

沈黙。

 

◇◇◇

 

オールマイトが固まった。

 

◇◇◇

 

轟も固まった。

 

◇◇◇

 

爆豪も固まった。

 

◇◇◇

 

観客席も少し静かになる。

 

◇◇◇

 

「……変わった少年だね」

 

◇◇◇

 

「よく言われます」

 

◇◇◇

 

本当によく言われる。

 

◇◇◇

 

表彰は終わる。

 

◇◇◇

 

優勝メダル。

 

賞状。

 

そして。

 

大量の視線。

 

◇◇◇

 

本当に最悪だった。

 

◇◇◇

 

体育祭終了後。

 

◇◇◇

 

控室へ戻る。

 

扉を開けた瞬間だった。

 

◇◇◇

 

「お兄ちゃぁぁぁん!!」

 

◇◇◇

 

衝撃。

 

◇◇◇

 

子供達が突撃してきた。

 

◇◇◇

 

「優勝した!!」

 

「すごかった!!」

 

「かっこよかった!!」

 

◇◇◇

 

完全包囲。

 

◇◇◇

 

逃げ場なし。

 

◇◇◇

 

「落ち着け」

 

◇◇◇

 

「無理!」

 

◇◇◇

 

当然だった。

 

◇◇◇

 

後ろでは院長が笑っている。

 

◇◇◇

 

「おめでとう」

 

◇◇◇

 

「ありがとう」

 

◇◇◇

 

素直に礼を言う。

 

◇◇◇

 

院長は少し驚いたようだった。

 

◇◇◇

 

「珍しいな」

 

◇◇◇

 

「何がですか?」

 

ナイチンゲールが聞く。

 

◇◇◇

 

「ちゃんと礼を言った」

 

◇◇◇

 

失礼だった。

 

◇◇◇

 

アルトリアも笑っている。

 

◇◇◇

 

「良かったですね」

 

◇◇◇

 

「そうか?」

 

◇◇◇

 

「はい」

 

◇◇◇

 

少しだけ。

 

本当に少しだけ。

 

優勝して良かったと思った。

 

◇◇◇

 

この人達が喜んでいるから。

 

◇◇◇

 

その時だった。

 

◇◇◇

 

「七瀬」

 

◇◇◇

 

後ろから声。

 

◇◇◇

 

振り返る。

 

◇◇◇

 

心操だった。

 

◇◇◇

 

「優勝おめでとう」

 

◇◇◇

 

「ありがとう」

 

◇◇◇

 

「普通科の星だな」

 

◇◇◇

 

「やめろ」

 

◇◇◇

 

本当にやめてほしい。

 

◇◇◇

 

心操が笑った。

 

◇◇◇

 

「次は俺も負けねぇ」

 

◇◇◇

 

「ああ」

 

◇◇◇

 

短い会話。

 

◇◇◇

 

だが悪くなかった。

 

◇◇◇

 

友達。

 

そう呼んでもいいかもしれない。

 

◇◇◇

 

夜。

 

◇◇◇

 

ひなたの家。

 

◇◇◇

 

帰宅。

 

◇◇◇

 

玄関を開ける。

 

◇◇◇

 

「優勝おめでとう!!」

 

◇◇◇

 

クラッカーが炸裂した。

 

◇◇◇

 

「うわっ」

 

◇◇◇

 

驚いた。

 

本当に。

 

◇◇◇

 

部屋中が飾り付けされている。

 

◇◇◇

 

料理もある。

 

◇◇◇

 

ケーキもある。

 

◇◇◇

 

歓迎会だった。

 

◇◇◇

 

「やりすぎじゃないか?」

 

◇◇◇

 

「全然!」

 

◇◇◇

 

子供達が笑う。

 

◇◇◇

 

院長も笑う。

 

◇◇◇

 

アルトリアも。

 

ナイチンゲールも。

 

◇◇◇

 

みんな楽しそうだった。

 

◇◇◇

 

平和だ。

 

◇◇◇

 

久しぶりにそう思った。

 

◇◇◇

 

だが。

 

その夜。

 

◇◇◇

 

パーティーが終わった後。

 

◇◇◇

 

縁側へ座る。

 

一人。

 

夜空を見上げた。

 

◇◇◇

 

優勝した。

 

◇◇◇

 

だが。

 

同時に理解している。

 

◇◇◇

 

今日から。

 

俺はもう無名じゃない。

 

◇◇◇

 

全国へ顔が知られた。

 

◇◇◇

 

プロヒーロー達も見た。

 

◇◇◇

 

公安も見るだろう。

 

◇◇◇

 

そして。

 

◇◇◇

 

オール・フォー・ワン。

 

◇◇◇

 

あの男が知らないはずがない。

 

◇◇◇

 

「最悪だな……」

 

◇◇◇

 

ため息が漏れる。

 

◇◇◇

 

孤児院のために戦った。

 

後悔はない。

 

◇◇◇

 

だが。

 

確実に。

 

平穏は遠ざかった。

 

◇◇◇

 

静かな夜。

 

◇◇◇

 

笑い声の消えた庭を見ながら。

 

◇◇◇

 

七瀬刃人は。

 

近付いてくる嵐をまだ知らなかった。

 

◇◇◇

 

平穏な時間の終わりが。

 

少しずつ近付いていることを。

 

第21話 完

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