第24話 『編入初日』
終わった。
本当に終わった。
◇◇◇
校長室を出ても。
家へ帰っても。
翌日になっても。
現実は変わらなかった。
◇◇◇
ヒーロー科編入。
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決定事項。
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拒否権なし。
◇◇◇
「帰りたい……」
◇◇◇
朝から本音が漏れる。
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アルトリアが呆れた顔をした。
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「まだ言っているのか」
◇◇◇
「当然だ」
◇◇◇
「もう諦めろ」
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「嫌だ」
◇◇◇
ナイチンゲールがため息を吐く。
◇◇◇
「子供ですね」
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「まだ十五歳だ」
◇◇◇
事実だった。
◇◇◇
そして。
地獄の時間が始まる。
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雄英高校。
ヒーロー科A組。
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教室へ入った瞬間。
全員の視線が刺さった。
◇◇◇
帰りたい。
◇◇◇
今すぐ。
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「今日からヒーロー科へ編入する」
相澤が言う。
◇◇◇
「七瀬刃人だ」
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教室がざわつく。
◇◇◇
当然だ。
体育祭優勝者。
普通科。
突然の編入。
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話題性しかない。
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「自己紹介」
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丸投げだった。
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ひどい。
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「七瀬刃人です」
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「よろしくお願いします」
◇◇◇
終わり。
◇◇◇
沈黙。
◇◇◇
「短ッ!!」
上鳴が叫んだ。
◇◇◇
笑いが起きる。
◇◇◇
助かった。
◇◇◇
だが。
甘かった。
◇◇◇
「質問!!」
緑谷が立ち上がる。
◇◇◇
目が怖い。
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完全に分析モードだ。
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「七武装輪転について聞きたいんだけど!!」
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来た。
◇◇◇
絶対来ると思った。
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「全部!!」
◇◇◇
即答だった。
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教室中が頷く。
◇◇◇
味方がいない。
◇◇◇
「……分かった」
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ため息を吐く。
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どうせ隠しきれない。
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「第一武装」
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「戒律の鎖」
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クラスが静かになる。
◇◇◇
「拘束特化だ」
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「条件を満たした相手を捕縛できる」
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爆豪が思い切り舌打ちした。
◇◇◇
「クソ鎖」
◇◇◇
「そうか」
◇◇◇
「そうだよ」
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睨まれた。
◇◇◇
理不尽だった。
◇◇◇
「第三武装」
◇◇◇
「深海の釣竿」
◇◇◇
「対象の情報を読み取る」
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「筋肉」
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「呼吸」
◇◇◇
「重心」
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「そういうのが分かる」
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緑谷の目がさらに輝いた。
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怖い。
◇◇◇
非常に。
◇◇◇
「第四武装」
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「機導兵装」
◇◇◇
「変形能力」
◇◇◇
「飛行」
◇◇◇
「高速移動」
◇◇◇
「輸送向きだ」
◇◇◇
「便利そう!」
芦戸が言った。
◇◇◇
「便利だ」
◇◇◇
これは事実だった。
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「第五武装」
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教室の空気が変わる。
◇◇◇
まだ見せていない武装だからだ。
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「宝物庫」
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ざわめき。
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「武器の生成と射出」
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「遠距離戦向き」
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「普通に強い」
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上鳴が顔を引きつらせた。
◇◇◇
「いや十分強くね?」
◇◇◇
「強いぞ」
◇◇◇
実際強い。
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「第六武装」
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「死告の鎌」
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飯田が反応した。
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少し複雑そうな顔だった。
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「状態異常型だ」
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「触れるほど相手を弱体化させる」
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飯田が納得したように頷く。
◇◇◇
「確かにあの時はそんな感覚だった」
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「悪かった」
◇◇◇
「気にしていない!」
◇◇◇
本当に良い奴だった。
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「最後」
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「第七武装」
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「仮面舞踏会」
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「仮面ごとに能力が変わる」
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「体育祭で使ったのは賢者の仮面だ」
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「分析補助能力」
◇◇◇
教室が静まり返る。
◇◇◇
そこまでは良かった。
◇◇◇
問題は。
◇◇◇
次だった。
◇◇◇
切島が指を折り始めた。
◇◇◇
嫌な予感。
◇◇◇
ものすごく嫌な予感。
◇◇◇
「一」
◇◇◇
「三」
◇◇◇
「四」
◇◇◇
「五」
◇◇◇
「六」
◇◇◇
「七」
◇◇◇
終わった。
◇◇◇
完全に終わった。
◇◇◇
「二が無いぞ?」
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全員の視線が集まる。
◇◇◇
緑谷。
八百万。
轟。
爆豪。
◇◇◇
逃げ場は無い。
◇◇◇
内心で舌打ちする。
◇◇◇
第2武装。
◇◇◇
頼む。
◇◇◇
バレるなよ。
◇◇◇
本当に。
◇◇◇
「第2武装は?」
緑谷が聞いた。
◇◇◇
少しだけ考える。
◇◇◇
そして。
嘘を吐いた。
◇◇◇
珍しいことだった。
◇◇◇
だが必要だった。
◇◇◇
「銃だ」
◇◇◇
沈黙。
◇◇◇
「銃?」
上鳴が聞き返す。
◇◇◇
「銃」
◇◇◇
「普通の銃だ」
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芦戸が首を傾げる。
◇◇◇
「能力は?」
◇◇◇
来た。
◇◇◇
一番嫌な質問。
◇◇◇
心の中で謝る。
◇◇◇
ごめん。
◇◇◇
嘘だ。
◇◇◇
完全な嘘だ。
◇◇◇
「特にない」
◇◇◇
「ただの銃だ」
◇◇◇
教室が静まり返る。
◇◇◇
「いや待て」
瀬呂が言った。
◇◇◇
「全部能力付きじゃん」
◇◇◇
「なんでそれだけ普通なんだ?」
◇◇◇
鋭い。
◇◇◇
非常に鋭い。
◇◇◇
だが。
言う訳にはいかない。
◇◇◇
あれだけは。
◇◇◇
絶対に。
◇◇◇
「そういう武装なんだろ」
◇◇◇
肩を竦める。
◇◇◇
緑谷はまだ納得していない顔だった。
◇◇◇
やめろ。
◇◇◇
考察するな。
◇◇◇
頼むから。
◇◇◇
爆豪は数秒こちらを見ていたが。
やがて鼻で笑った。
◇◇◇
「つまんねぇな」
◇◇◇
助かった。
◇◇◇
本当に助かった。
◇◇◇
話題が流れていく。
◇◇◇
その様子を見ながら。
俺は心の底から安堵した。
◇◇◇
バレていない。
◇◇◇
まだ。
◇◇◇
第2武装の本当の能力は。
◇◇◇
誰にも知られていない。
◇◇◇
それでいい。
◇◇◇
あれだけは。
◇◇◇
知られてはいけない。
◇◇◇
そう。
心から思っていた。
第24話 完