第25話 『職場体験』
ヒーロー科へ編入して数日。
俺は悟った。
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ヒーロー科はうるさい。
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非常に。
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朝から騒がしい。
昼も騒がしい。
放課後も騒がしい。
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平穏が存在しない。
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「帰りたい……」
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昼休み。
屋上。
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最近の避難場所だった。
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「諦めろ」
アルトリアが言う。
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「嫌だ」
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「無理だな」
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酷い。
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ナイチンゲールがお茶を差し出してくる。
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「大分馴染んでいますよ」
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「全然」
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「そうですか?」
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そうだ。
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一ミリも馴染んでいない。
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その時。
チャイムが鳴った。
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嫌な予感。
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非常に嫌な予感。
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ヒーロー科A組
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相澤が教壇へ立つ。
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「職場体験についてだ」
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教室がざわつく。
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来た。
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職場体験。
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体育祭後の恒例イベントだ。
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プリントが配られる。
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指名されたヒーロー事務所一覧。
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視線を落とす。
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多い。
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思った以上に。
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「すげぇな」
切島が覗き込む。
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「優勝者だもんな」
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嬉しくない。
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全然。
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「希望する事務所を選べ」
相澤が言った。
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少しだけ安心する。
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選べる。
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つまり。
平穏へ逃げられる。
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エンデヴァー。
却下。
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面倒。
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有名事務所。
却下。
◇◇◇
面倒。
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ホークス。
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「論外だな」
思わず呟く。
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「何がだ?」
上鳴が聞く。
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「いや」
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「絶対忙しいだろ」
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適当に誤魔化した。
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本当は違う。
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未来を知っているからだ。
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公安。
潜入。
裏社会。
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平穏から最も遠い。
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絶対に嫌だった。
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結局。
俺は小さな地方事務所を選んだ。
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『風見ヒーロー事務所』
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地方都市担当。
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所属ヒーロー数名。
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知名度低い。
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事件件数少ない。
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完璧だ。
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平和の匂いしかしない。
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放課後
ひなたの家
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「決まりましたか?」
ナイチンゲールが聞く。
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「決まった」
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「どちらです?」
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「風見事務所」
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一瞬。
ナイチンゲールの動きが止まった。
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珍しい。
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「知っているのか?」
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「ええ」
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ナイチンゲールが頷く。
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「私の同級生です」
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沈黙。
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「は?」
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思わず聞き返した。
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「元ヒーロー科です」
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「卒業後に地元で個人事務所を立ち上げました」
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「真面目です」
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「誠実です」
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「患者からの評判も良かったですよ」
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医者視点だった。
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「なら安心か」
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少しだけ肩の力が抜けた。
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アルトリアも頷く。
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「ナイチンゲールが評価するなら問題ないだろう」
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珍しく安心できる情報だった。
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だが。
ナイチンゲールは続けた。
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「ただ」
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嫌な予感。
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「ただ?」
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「少し変人です」
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終わった。
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「どのくらいだ」
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「授業中に犯人心理学について三時間話し続ける程度です」
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終わった。
◇◇◇
完全に終わった。
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アルトリアが遠い目をした。
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「懐かしいな」
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知っているのか。
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「知っているのか」
◇◇◇
「知っている」
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最悪だった。
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夜。
自室。
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ベッドへ倒れ込む。
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平穏そうな事務所だと思った。
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実際。
平穏なのだろう。
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ただ。
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どうにも。
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嫌な予感が消えなかった。
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七瀬刃人の予感は。
大体当たる。
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だからこそ。
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今回も外れない気がしていた。
第25話 完